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溶けかけ。
2024-08-17 20:52:40
1886文字
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ほぼ日刊
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夜に咲く花
skさんの浴衣ヌフが可愛すぎて書きました。
前半はりんご飴、後半は花火の話です。
※無許可です。誠に申し訳ありません。(土下座)
フォンテーヌ廷の広場を行き交う人々の声、調子外れな笛や太鼓の音。
――
「次は何処に行こうか」なんて、目を細めて言うキミはいつもよりちょっと子どもっぽい。
「ふふ
……
ヌヴィレット。そんなに焦らなくてもお祭りは逃げたりしないよ」
僕が笑ってそう言えば、彼が振り向いた。
「そうなのだが
……
」
そわそわ、そわそわ、僕もキミもお祭りの熱気に当てられてつい早足になってしまうんだ。
「神里家と千織には感謝しないとね。勿論、キミたちにも」
赤い提灯がそこら中に吊り下げられ、道の両端には見たこともないようなお店
――
屋台というらしい
――
が並ぶ。稲妻を切り取ったかのような風景はどこか現実味に欠けていて、心が弾む。
「せっかくだし、屋台に寄ってみよう」
フリーナの提案にヌヴィレットも頷いた。
「お。お嬢ちゃん可愛いね。そっちの兄ちゃんとデートかい?」
「僕はそうだと思ってるんだけど
……
彼はどうかな?」
屋台のおじさんから品物を受け取りながらフリーナが返す。後ろでムッとした顔のヌヴィレットを見て、屋台のおじさんがヒュウ、と口笛を吹いた。
「こりゃ、おじさん当てられちまったな」
小首を傾げるフリーナにおじさんは「彼氏を待たしちゃいけねぇな」と笑った。
「それはなにかね?」
「林檎飴って言うんだって。
……
このまま食べるらしいよ」
赤い実を齧る。甘酸っぱいリンゴと上にかけられた飴のぱりぱりとした軽い食感が口の中でハーモニーを奏でる。
「美味しい
……
!
――
ほら、キミも食べてごらんよ」
フリーナがヌヴィレットの口元にりんご飴を寄せる。
「む
……
しかし
……
」
「僕が一口食べたくらいでお金を請求するような薄情者に見えるのかい?」
「そうではなくてだな
……
」
「なら食べてみなよ、ほら」
きらきらとしたフリーナの視線に耐えきれなくなったヌヴィレットは諦めたようにため息をついて口を開けた。
――
あれ? 僕たち、とてつもなく恥ずかしいことしているんじゃ
……
近づくヌヴィレットの顔にフリーナは慌てて制止をかけようとするも、時すでに遅し。かりっという音とともに彼の顔が遠ざかる。
「
……
確かに美味だ。リンゴの汁気も悪くない
――
フリーナ殿?」
間接キスだということに気付いたフリーナの顔がりんご飴より真っ赤に染まる。ヌヴィレットが気まずそうにそっぽを向いた。
「だから、私は止めたのだ
……
」
そう言う彼の耳の先も僅かに紅く染まっていた。
「たーまやー」
「なんだそれは」
パレ・メルモニアの屋上で、花火を見ながらフリーナが不思議な言葉を声高に唱えた。
「よく知らないけど稲妻で花火を見る時にかける言葉なんだって。
……
知ってるかい? 稲妻で夏に花火を上げるのは鎮魂のためなんだ。
――
とはいえ、最近はただのイベントになってしまっているらしいけど」
そう言って彼女はどこか寂しそうに笑った。
「お盆って言って、死者が家に帰ってくる日だと聞いた
……
キミも見てるのかい?
――
フォカロルス
鏡の中の僕
」
ヌヴィレットにはかける言葉が見つからない。この場にいたのが旅人、あるいはナヴィアやクロリンデであったのなら彼女に適切な言葉をかけてやれたのだろうか。
「いいんだよ。キミは側にいてくれるだけで」
ヌヴィレットの心情を読んだかのようにフリーナが眉を下げて言った。肩に重みがかかる。
「少しだけ、肩を借りてもいいかな?」
「
……
ああ。好きなだけ借りるといい」
夜空に花が咲いては散っていく。眼下の人々が立ち止まり歓声を上げた。
一際大きな花が咲いて、辺りは俄に静まり返る。
「
……
終わりみたいだね。
――――
帰ろうか」
フリーナが立ち上がって手を差し出す。ヌヴィレットがその手を掴み立ち上がる。
「来年も見られるかな?」
「幸いなことに、『またして欲しい』という声が大量に届いている」
「ははっ
……
それはいいね。来年は1週間とかどうだい?」
「流石に問題があると思うが
……
とはいえ、水神を努め上げた君の意見だ。参考にしよう」
ヌヴィレットが真面目な顔をして考える素振りをする。
「来年は僕も出資しようかな」
「それはいい。君が出資をするなら我も、と手を挙げる者も多いだろう」
「えー。本当かなぁ
……
?」
二人揃って歩き出す。
夜空に咲いた大輪の花は、ほんの少しの後悔と寂寥感を僕らに残した。
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