私の世界。

ユリアから見えている景色。

最初は白黒。
なにもありませんでした。
私にも、世界にも。
やがて黒は茶色になり世界はセピアに染まりました。
ここに家族が居ました。
相変わらず、私にはなにもありません。
視界には白いシーツと色あせた花。
窓にはクモの巣にかかった白い蝶が居ました。
当時の私には「分からない」感情でした。
それがとても悲しい事だというのに。
親の付き添いでN社に行きました。
その中に周りより一段と白く眩しい方がいました。
私には明るくて何故か暖かく感じました。
その時の記憶は鮮明に残っていて。
「彼」がそこに居たのです。
名も知らない「彼」が。
胸の中にジクリとした痛み、そのあとから苦味のようでけれど暖かいものが。
体中を駆け巡りました。
他の方に聞いたところ、彼は「ムルソー」という方だと知りました。
ぼやけて見えていた世界が初めて家族以外の人間をくっきり、はっきりと映し始めたのです。
きっと私が他の方に聞いた時、彼がこちらを向いた。目が合った。
胸が脈を打ち始め、世界がだんだん、明るく色鮮やかになりました。
だから、これは私の初恋で。
頭から離れなくなりました。
今バスに「彼」と乗っていると思うと何もかもが新しく感情もたくさん芽生え始めたのです。

 
「ユリア、ユリア・ドルシッラと申します」
「ムルソーだ」

彼との淡白な会話。
それでも彼は私があの時に見た時と変わっていませんでした。

好きです。
ムルソーさん。
私は、貴方が好き。
貴方のおかげで貴方の髪の色をした夜に浮かぶ月がこんなにも美しいことを知りました。


「ムルソーさん月が綺麗ですね」