三毛田
2024-08-16 16:42:20
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21 01. 名前を呼ぶ(この世でただ一つ特別な)

21日目 大切なあなたの名前を

「丹恒」
「どうした、穹」
「丹恒」
「用があるなら、さっさと言え」
「たんこぉ〜!」
「だからっ」
 名前を呼ぶだけで、他に何も言わない俺にじれったくなったようで、声に少しだけ怒った気配が混ざる。
 でも、名前を呼びながら抱きつくとため息を付きながら抱きしめてくれる。
 チョロ……じゃなかった。相変わらず俺に甘すぎる、砂糖を吐けるレベルに甘い。
「丹恒は丹恒だからさ。名前って大事だなって思って」
……ありがとう」
 思うところは多々あるようで、少しためらってからお礼を口にする。
 だって、転生してしまえばその人ではない別の存在だって言う割に、仙舟の大部分は丹恒の過去の飲月君であった人に誰も彼もが執着している。
 過去ばかりを気にして、丹恒を丹恒として見ていない。既に別の意思を持った一人の人であるのに。
 だから、あんな最低な奴らの代わりに、俺が丹恒を丹恒として、唯一人の人として認めないと。
 好きな人の悲しそうな、苦しそうな、辛そうな顔は見たくない。そんな俺のエゴ。
 名前は生まれて最初に与えられる、その人である証だって本で読んだ。
 それだけ大切なものなのに、蔑ろにされたら自己肯定感だって最底辺まで落ちるよ。
「丹恒、キスしていい?」
「舌を、入れないなら」
「今は入れないよ、今は」
 反論される前に、唇を重ね合わせる。 俺の持つ熱を、丹恒に少しでも分け与えられるように。
 もともとの温度よりも冷えた指先が、少しでも俺の熱で温まればいいのにと。
「長いっ」
「キスしていいって言ったの、丹恒だよ?」
「だからって長すぎだ」
 たしかに、わざと長めにキスをした自覚はある。
「丹恒、えっちしよ」
「脈絡がない」
「いいから、いいから」
 呆れたため息を付き、手を引かれるまま共に俺の部屋へ。
 もちろん、行為の最中もたくさん名前を呼ぶ。このときばかりは丹恒も俺を求めて、名前を呼んでくれる。
 このまま溶けて、一つになってしまいたい。それくらい愛しい。
……丹恒のこと、悪く言うやつ全員滅び……禿げないかな」
「滅ぼすのはやめろ。指名手配犯になるぞ」
 ボソッと口にしたのに、本気で止めるような声色。
「本気で願えば、星核は叶えてくれるよ」
「だから」
「丹恒と一緒にいられなくなるから、やらないだけ。お前が本気で願えば、俺はやるよ」
 それがわかっているからか、渋い顔になる。
「星核は、願望機じゃない」
「似て非なるものでしょ。ま、使ったら俺は俺じゃなくなるからやらないよ。本当だってばぁ」