三毛田
2024-08-14 21:30:15
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19 09. 愛には何が足りない?

19日目 足りないものは、きっと意識

 愛に足りないもの。俺的には、ほんの少しの下心。
 何事も、下心ありきなんだから、なければおかしいとは思う。
 必ずないといけないとは言わないが、あってもおかしくはない。愛する相手に下心を抱かないほうがおかしい。
 俺はもちろん、丹恒に愛も下心も抱いている。
「で、丹恒はどう思う?」
「話に脈絡がない。マイナスだな」
 俺の問いにそう答えたところで、慌てて手で口をふさぐ。少し前までレイシオの講義を一緒に受け、彼とともに戦闘をこなしていたためか口癖が移ってしまったらしい。
 あまりにも似てない言い方と、思わず出てしまった言葉を恥ずかしがる姿が可愛くて笑う。
 と、むすっと唇を尖らせて俺の額を弾く。
「愛には、何が足りない? っていうもの。どう?」
「俺は、愛がわからない。俺に向けられていたものは、怒り、蔑み、畏怖、殺意といった悪意、負の感情ばかり。みな、過去ばかりを重視して俺を見ていない」
「うん」
「だから、お前の問いに答えを差し出せない」
「言うと思った」
 笑って、頬を撫でる。気持ちよさそうに目を細めて。
「丹恒、俺に対してどんな感情を抱いてる?」
「お前は……守る必要はないとわかってはいるが、それでも守るべき存在だ。庇護欲はもちろんだが、恋仲として好意を抱いている」
「じゃあ、もう愛を知ってるよ」
 手のひらを掴んで、握り込む。戸惑いで、瞳が揺れて。
 目があっちこっちに動く。
「きっと列車のみんなに対して抱いている親愛。それから、さっき丹恒が口にしたように俺への恋慕。どっちも、愛も好意もなければ抱かないから」
「そう、なのか?」
「そうだよ。丹恒が無意識のうちに、他の人に対して〝愛〟を抱いているんだ」
 微笑みながら見つめると、俺の視線から逃れるように目を閉じて。
「みんなへの、親愛。お前への好意という愛」
「うん」
 ボソボソと、俺の言葉を反芻する。
「なるほど。そういうものなのか」
 ゆっくりと開かれた瞼の下から現れた瞳は、慈愛に満ちていて。
 好きだって気持ちが溢れそうになって、慌てた結果丹恒にキスする。
「ん。穹、いきなりキスするなと言っている」
「色々溢れでそうだったので、つい」
「ついじゃない。キスするのなら、先に言ってくれ」
 繋いでいない方の手で、自分の唇に触れながら照れたように。
「まだ恥ずかしいんだ」
「決まっているだろ。その……初めての恋人との、こういう甘い時間はなかなか慣れないんだ」
「初めての恋人かぁ。嬉しい」
「そうか。うん。俺もだ」