鬼躯(おにく)
2024-08-13 15:47:37
760文字
Public Dytica妖怪疑似家族パロ
 

鼻につく

F崎様( https://x.com/f_saki_voyage )のDytica妖怪擬似家族パロの設定をお借りした三次創作の小話です

酉の刻。
その童児は自宅前にも拘わらず、忍び足で玄関口へ近付いていた。
そーっと引戸を開け、上がり框を一瞥。
さささと早足で生け垣まで舞い戻る。
「カゲツ!カゲツ!今丁度出掛けてて居ないぞ!」
斥候を任された雷獣の仔は、そこに待機していた小鬼の姿が消え失せたことに目を剥いた。
「あれ?」




背後から麻袋を被せられ、無理矢理抱え上げられ声も出せなかった。
周りが見えないなりに精一杯暴れるがびくともしない。
そのまま連れて行かれた先、
床に転がされて強引に裾を捲り上げられ、

「ああああああああああああああああぁ」

事件性のある絶叫が夕空に響き渡った。
「いややあ!」
「イヤやあじゃない。怪我したの隠すおまえが悪い」
「こんなんツバ付けといたら治るもん!薬は染みるでいやや!」
「はいはいはい」
容赦無しに傷口を洗う狼と、「ばかばか」とへにゃへにゃの泣き声を上げる小鬼。
「だいたい狼の鼻だまくらかせると思うてか」
「だっから言ったじゃん、素直に怪我したって言えばいいのにさぁ」
悲鳴を聞き付けて事の顛末を察したらしく、いつの間にか呆れ顔の雷獣が仁王立ちしていた。
「おい!裏切るのかおまえ!」
涙目で喚く小鬼からしれっと目を逸らす。
負った怪我を看られたくないと雷獣に狼の在宅確認を頼んだ小鬼だが、それより先に嗅ぎ付けた狼にあっさり捕まったという訳だ。
「ほい一丁上がりっと」
手当てが済み、ぱしんと叩かれまた大声を上げる。
「いてぇ!なんで叩いた!?」
「おまえの血の匂いがする度、こっちの心臓に悪いんだわ」
あの日、土砂崩れに潰され虫の息だったことを微塵も感じさせない活きの良さ。
「なんの話?」
「覚えてないならいい」
内心安堵したのを隠し、夕食の献立に思考を巡らせる。
雉肉まだあったかな。