chuahaaan
2024-08-11 23:35:29
1739文字
Public
 

forget-me-not

V.Ⅳラスティは独立傭兵レイヴンへの贈り物を探しにルビコン3の「花屋」に来た。
ラスティ✖️621なのか、621✖️ラスティなのかは定まっていない

ぶたたけ様のAC6二次創作、「名も無きルビコニアン」の紡ぐ物語の三次創作になります。
https://privatter.me/page/66115f2b05696

 ルビコン3に花はあっても「生花」はない。
 冷涼でその日の食事にも困るこの星にそんなものを育てる余裕はない。それでも「花を贈る」という文化は途絶えず、育まれてきたのが「造花」である。
 糸を編んで作られた手工芸品のレースの花は本来の“花”を模したものもあれば、現実には存在しない独創的な花を造る者もいる。
「さてどうしたものか」
 アーキバスの隊服を脱いでルビコニアン風の装いをしたV.Ⅳラスティは悩んでいた。
 とある情報筋に教えてもらった最寄の花屋の店先に並んだサンプルを眺めて5分はたっただろうか。色とりどりの花弁を振り撒く花束を並べた店主は待ちくたびれて奥の方で花作りを始めてしまっている。
 この手のことは知識として仕込まれているが、いざ使命と関係ない相手に贈る個人的なプレゼントとなると、どれを贈ったらいいか分からなくなる。
「店主、すまな」
「いらっしゃいませーっ……おやじー!客来てんじゃねーか!」
「まだ悩んでんだよ!!」
 背後からの呼びかけに振り向くと多種多様な花で埋め尽くされた帽子を被る女性がいた。髪の代わりに花が生えているように思われる思い切りの良い姿だ。
「そうかー、で、お客さん、どんな人に贈るんだい?選ぶの手伝ってやるよ」
 店主の娘はカウンターの裏から四脚のパイプ椅子を持ってきてコートの袖で拭いて座るように促す。
 星外企業へのスパイとして潜入しているラスティが再びこの店に来て花を買うなんて機会は二度とないかもしれない。次はいつあの独立傭兵レイヴンにいつ会えるのかも分からない。
 ならば今ここで決めるしかない。花作りで余った糸で編んだクッションの上に腰掛け、店主の娘のカウンセリングを受ける
「その、仕事で付き合いがある人で」
「これからいい関係になりたいってこと?」
 「いい関係」だって?ラスティはその言葉の衝撃に震えた。私は独立傭兵レイヴンとそんな関係になりたいのか?
「そうかもしれないただ、もしかしたら生きている方の花を知っているかもしれなくて」
「へー、同業じゃなさそうだし、学者さんか?」
「ああ」
 流石に侵略してきている企業と同じ、星外から来た人間だと言えるわけがない。
「確かになー、どんな糸で編んでも、樹脂を塗っても表現に限界があるんだよねー」
「やはり、そうか」
 映像資料で見た生花の瑞々しさ、輝きは目の前の花束の帽子にはないものだ。花を贈られたところで喜ばないかもしれない。ラスティは肩を落とした。
「で、でもさ、おにーさん!こいつらは枯れないんだよ」
「カレない?」
「そう、死なないんだよ。折れずに永遠に生きて咲き続けるんだ」
 そう言って帽子を取ってラスティの手に押し付ける。娘の頭と指は赤いバラの花弁を散らしたように真っ赤なケロイドで覆われていた。
「こんな時代だから、いつ会えなくなるか分からないけど、この花ならずっとそばにいられるんだよ」
「そばに……
 手元の花束を撫でると糸ごとに違う暖かな手触りが伝わる。その中に愛機スティールヘイズによく似た色の花があった。
「青い私を思わせる、私の想いを運ぶ花が欲しい」
「そう来なくっちゃ!おやじー!深い青の光沢糸の在庫出してー!ブレスレットの金具もー!」
「てめーはさっさとデザイン引け!」
「たりめーよ……じゃあおにーさん」
 店の奥に引っ込む店主を見送ると娘はニヤリと笑った。
「うちは速さが売りなんだ、今すぐ相手の人のこと、洗いざらい吐いてもらうよ」
 ラスティは恐怖した。拷問に耐える自信はあったが、この尋問官相手では全て白状してしまうのかもしれない。

***

「ご利用ありがとうございましたー」
……ありがとう、なかなかいい体験になったよ」
 目の前で包装されていくレース編みのブレスレットは小さな花の連なりというシンプルな意匠だ。青い5枚の花弁の中心は朝日のように黄色い糸が輝いている。店名が刻まれたプラスチックの板に挟み込まれた包みを受け取る。
「がんばってー」
 店を離れ、ジャケットの隠しポケットの奥深くに仕舞う。
 自分勝手ではあるが、自分なりの想いを届けたい。
 私がいなくなっても、忘れないでください。