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sasisuse07
2024-08-11 19:20:13
6142文字
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保護の対価
⚠️注意⚠️
同じ名前と顔のキャラが複数いる世界線。(例:ツヴァイ協会4課👻≠握る者👻だが同世界線に存在している)
N社でされていたことを捏造している。
⛈️がかなり弱々しい。
一応CP名をつけているが、その手の行為などは特にしていない。
過去の捏造含む。
6章ネタバレが含まれる可能性がある。
呪鎖シリーズの1.5話目ぐらいのお話。ヒースクリフがグレゴールの為に、ご飯を作り出すようになるお話です。この世界線のネリーの枠は良秀である前提になっています。
グレゴールとヒースクリフが共に住むことになって5日目の話。
安全の為N社が近くの街を徘徊している間、ヒースクリフはグレゴールの家にずっといることとなった。ヒースクリフからしても無理に外に出なくていいのは有難いし、定期的に浅い眠りから無理に起きて先輩方に引きずり回され、異端と呼ばれる人に釘を刺し続ける日々から解放されとても心穏やかであった。懸念点はグレゴールの義手を見た途端我を忘れて殺しにかかろうとする植え付けられた本能だが、その点に関してはグレゴールが家にいる間も義手のほうだけ手袋を付けることで頻度は減った
……
ように思える。もっとも我を忘れている時の記憶はヒースクリフにはないし、ふと一瞬意識が飛んで戻った時に襲いかかってくる強烈な罪悪感を感じることが少なくなっていたため、そう思っているだけである。
だが習慣というものはすぐに抜けないもので、ヒースクリフはカーテンの奥から輝きを主張するのがようやく太陽に移り変わってくる午前6時前頃、自然に目が覚めてしまった。N社にいた時、無理矢理経典の読み上げなんだとのたまい起こしてくる人間や時折聞こえてきていた怒号のせいで自然にこの時間に先に起きないといけないと体が学んでしまっているせいであった。ふかふかのベッドに包まれまだ体は寝足りないと倦怠感を訴えているというのに、頭はしゃっきり目覚めてしまい、どうにも二度寝がしづらい。
(
……
クソッ、もうあんな所じゃねえのに)
(誰もオレのことを、責めることなんてもう無くなったはずなのに)
ズキズキと行き場のない怒りと寝起きで痛む頭を手で抑え、ヒースクリフはそっとベッドから出る。ベッドの中にいて悶々と何かを考えていても二度寝できるものではないと感じ、水を取ってくるついでに少し家の中を歩くことにした。男二人が暮らすには少しだけ広い空間、グレゴールがツヴァイ協会でそこそこ稼いできている証拠とも言える。うろうろと朝日が少しづつ照らす廊下をぺたぺたと足音をさせ寝ぼけ眼を擦りながらもキッチンへと向かった。
キッチン周りはヒースクリフが来た時から幾分かマシにはなったものの、最初期は魚や肉の缶詰やインスタント食品の山、更には外で買ってきた食べものが入っていたであろう紙袋のゴミがまとめられ、来たばかりの時はそれより酷いものしか食べれない環境にいたとはいえ流石に絶句した。1人で暮らしている者は少しは料理をするのかと若干の偏見をヒースクリフは持っていたが、どうやらそうでないらしいのはグレゴールの部屋を見て学んだ。
水を飲んだついでに、ヒースクリフは置いてある缶詰のひとつを手に取りまじまじと文字を見る。成分や何処でこの中身の元がが採れたかの文を読み、少しばかり安堵を覚えた。多少読めない文があろうとも、あの恐ろしい白くどろどろした缶詰の中身が入っていないことはヒースクリフでも十分に理解できたから。水も飲んだことだしもう一度布団を被って寝ちまうか、なんてことを考え缶詰を元あった場所に戻そうとしてふと動きを止め、再度缶詰を目線の高さまで持ち上げ思考を始める。
ヒースクリフはこの家に来て何もしていない。
いや、厳密にはグレゴール自身から何もしなくてもいい、ここにいるだけで構わないと言われていたが、どうにもそれはヒースクリフにとって筆舌に尽くし難い感覚を植え付けた。グレゴールの言葉は「お前は役に立たないのだから動くな」なんて事を言ったわけでもないのにどうにもじっとしているのが性にあわないからなのか、それとも自分を保護してくれているグレゴールの手助けになりたいのか、ヒースクリフは何かしないといけないという一種の強迫観念も似た行動意欲が生まれていた。
だがヒースクリフはお世辞にも永遠に画面とにらめっこしながらキーボードを叩く事務仕事だったり、書斎の本を大人しく読んでグレゴールの帰りを待てるようなことは出来ない。それに誰にでも出来ることではなく、グレゴールには出来ずに自分が出来ることをすれば少しは恩返しができるのではないだろうか───────そう考え、ヒースクリフは1つの結論を思いつく。
それは料理だ。前述した通り、グレゴールはあまり料理をしようとする意欲がない。そんな生活では身体を壊すかもしれないし、なにより美味しいものばかりを食べる生活も心身を癒すため行うのは結構ではあるが、ちゃんと栄養バランスを考えないとパフォーマンスにも影響が出るだろう。
まだグレゴールが起きてくるまで数十分はある。その間にとっとと作っておこうと考え、今ある食料を把握するため冷蔵庫を開けた。冷蔵庫の中にはおそらくグレゴールが買ってきたわけではないだろう葉物野菜と卵、それに少しばかりの調味料が入っていた。大方ツヴァイ協会の同僚の誰かが見かねてあの人に渡したんだろうな、などと推測を立て、遠慮なく冷蔵庫の中身からいくつか拝借し、料理の準備をする。
ヒースクリフが料理を行うなど、いつぶりの話だろうか。N社にいた頃はもちろん行っていなかったし、随分幼い頃ワザリングハイツにいた時に、ヒースクリフの保母をしていたバトラーの良秀に教えてもらったっきりかもしれない。包丁の握り方すら危ういヒースクリフに時々隠す気のない舌打ちや大きな溜息をつきながらも、丁寧に1つずつやり方を教えてくれた良秀。彼女は「お前ごときがバトラー並の料理なんぞ出来りゃしねえ。基本は俺に任せりゃいいのに余計なことしおって
……
」など言葉でちくちくとヒースクリフのことを刺しながらも、ヒースクリフが見よう見まねで作った料理が出来ればどんなに不格好な見た目だろうと初めに食べてくれていた。大抵「なってない、こんなもんをご主人の野郎に出せるわけがない」などと言いつつも、それでもヒースクリフと良秀だけでその料理を完食するのが、時々ワザリングハイツのキッチンで行われていた2人だけの時間だった。
少しだけ懐かしい記憶に浸りつつ今ワザリングハイツはどうなっているだろうと考えるも、首を少し振り考えを霧散させた。今更考えたとて、あの邸宅に戻れる訳でもないのだから考えるだけ時間の無駄と言うものだ。ヒースクリフは料理の方に集中することにした。
まず取り出した食パンの耳の四辺全てを切り落とし、耳は分けて置いておく。耳を切り落としたパンに中身が若干切れかけていたバターを塗りやすいように、スプーンで練ってから全て惜しみなく塗りつける。朝からあまり油っこくヘビーなものは食べれないかとも考えたがどうせあの人は今日も任務があるのだろうし、エネルギーを朝から補充させておくのは大事だなと考えそのまま続行することにした。バターを塗ったパンの上に、葉を1枚ずつ剥がし切っておいた葉物野菜を起き、ハムも付ける。更に買っておいて明らかに使っていないだろうフライパンを取りだし、軽くホコリを流してから油をしいてから火をつける。数分待って、表面が熱くなったことを手をかざして確認したのち、出しておいた卵を片手で割り殻が入っていないことを確認すると塩コショウをあまり味が濃くならない程度に入れ、そのままフライパンに零れない程度に勢いよく豪快にぶちまけた。すぐに卵の焼けるいい匂いがキッチン全体を包み、美味しそうな匂いを嗅いでヒースクリフの腹も反射的にぐうとなった。まだ固形物をしっかり噛み締めて味わって食えるほど常に空腹だった胃は慣れていないが、少しであれば今作っているサンドイッチを貰ってもいいかもしれない。そう数十分後のことを思いつつヒースクリフは卵を炒め、スクランブルエッグを作り終えると、それをパンの上に置いてから炒めた卵の上にパンを重ねる。その後、スクランブルエッグを作っていたフライパンの上で再度油を敷いてから軽く焼き目が着くまで焼き、まな板に置いて三角になるよう対角線上でパンを切る。
どうやらヒースクリフが思うより、ヒースクリフ自身の料理の腕は鈍ってないらしい。手作りなりの不格好さはありつつも、かなり美味しそうな匂いをキッチン全体に充満させてくれる綺麗な見た目のホットサンドが出来上がった。これならグレゴールも結構喜んでくれるかもしれない
……
なんて自らの作ったホットサンドを見て考えてるヒースクリフの背後で、ふと誰かからの気配がした。
「ッ!?
……
ッ
……
!?」
「あっ、あー
……
ごめんな、寝てたらすっごいいい匂いしてきたから
……
起きちゃった」
「
……
あ、ああ
……
おはよう
…
?」
「おはよう、ヒースクリフ」
背後からの気配に反射的に飛び跳ねて驚いたヒースクリフが大きな音を立て、慌てて後ろを振り向くと半分だけドアを開けヒースクリフが料理をしているのを見ていたであろうグレゴールがそこに立っていた。グレゴールはヒースクリフのことを驚かせてしまい、申し訳なさそうに眉を下げて苦笑してキッチンへと入ってくる。ヒースクリフはバクバクと激しい音を立てる心臓を何とか押さえ込み、朝の挨拶を交わした。
「おお、朝飯作ってくれてたのか
……
。なんか久しぶりに人が作るもん食うなぁ」
「
……
アンタ、色々食生活偏ると任務に影響出るだろ。一昨日も昼飯食べんの忘れたって言って帰ってきたし
……
」
「うっ
……
それ言われちゃあ痛いな
……
まぁいいや、とりあえず朝飯にしよう」
「
……
ああ」
軽口を叩きつつ、ヒースクリフとグレゴールはテーブルに座る。ヒースクリフが持ってきたホットサンドはまだ焼きたてで酷く熱く触るのが躊躇われるが、グレゴールは義手の方の手を使い難なく手に取った。案の定躊躇うことなくすぐ口に入れ、出来たての洗礼により口内を少しやけどしていた。がヒースクリフがそれを心配するよりグレゴールは「美味い!」と大きな声を上げた。
「ヒースクリフ、お前料理上手いんだな!」
「あ、いや
……
ガキん頃に少しりょうしゅ
……
いや母親替わりの人に教えてもらっただけで
……
作ったのは本当に数十年ぶりぐらいだぞ」
「それでもヒースクリフはすごいもんだぞ。1人で暮らし出した初めの頃は多少料理してたが最近じゃ作るのが面倒くさくなって、そこらで買ったもので済ませてんだ」
「それはあのキッチン見りゃどんなバカだろうと分かるって
……
」
呆れたようにため息をつくヒースクリフに申し訳なさそうに笑いかけつつ、グレゴールはサンドイッチの1切れを差し出した。持っても熱くない程度には冷えたサンドイッチを手に取り、ヒースクリフも朝ご飯を嗜むことにした。多少端の方がしんなりしているものの未だ瑞々しい葉物野菜とそれを引き立てるようなしょっぱさを噛めば噛むほど出してくれるハム、たまにとろりとたれかけるほど半熟に焼けた卵は所々パンに味を染み込ませ、噛んだ瞬間に卵の風味を口いっぱいに届けてくれる。なるほど、グレゴールの言う通りヒースクリフの料理の腕は幼少期に散々良秀に鍛え上げられたのが幸いして、美味いものを作る技術はまだ身体が覚えていたようだ。良秀に感謝しつつ、1切れをあっという間にぱくりと食べ終える。だが流石にもう1切れ食べるほどの元気や胃の容量はあまりなく、残りはグレゴールに渡すことにした。しばらく黙々とホットサンドを食べているグレゴールの姿を観察していたが、コップに入れて置いた水を一気に飲み干すとヒースクリフはようやく口を開いた。
「あ
……
のさ、グレゴール
…
さん」
「ん?」
「
………
よければ、今日みたいにオレ
……
メシ作るよ。保護してもらってる礼には及ばねえかもだけど
……
」
「まだあんさんそんなことを気にしてんのか?」
「だ
……
だってよ」
アンタには感謝してもしきれねえから。
そう照れたように、気恥しいようにか細く呟いて俯くヒースクリフをグレゴールは2,3度瞬きをしてからじっと見つめ椅子から立ち上がると、その頭にぽんと手を乗せヒースクリフの髪をくしゃりと撫でた。ヒースクリフは肩を跳ねさせかなり驚きはしたものの、彼の手を跳ね除けようとはせずそのまま甘んじてグレゴールの撫でを大人しく受けていた。
「わ、っ な、なんだよ!?」
「いんやあ
……
そこまで考えてくれて嬉しいなって思ってよ。お前さえよければ飯作ってくれないか?」
「
……
! 分かった、オレが今日からやってやる
…
から」
そう約束をした所で、ヒースクリフの体にどっと睡魔が襲いかかってくる。胃の中に食べ物を入れたせいか、それとも信頼出来る人間に頭を優しく撫でられたせいか、あるいはどっちもかもしれない。うとうとと椅子の上で船を漕ぎ出そうとするヒースクリフの姿に気づくと、グレゴールは優しく自らの肩に体重を預けさせヒースクリフを住まわせている部屋まで連れていくことにした。
「眠いか?」
「ん
……
んん
………
」
「俺より早く起きてたみたいだからな、眠くなったんだろ」
「
……
ああ、いや多分
……
、アンタに撫でられて
……
ちょっと安心できたのも
……
あるかも
……
」
「安心?」
「もう
……
、頭に手を伸ばされた時、殴られたり掴まれることに怯えなくても
……
いいんだって」
「
…………
」
ヒースクリフが吐露する普通の会社ではまず行われないような行為の話を聞き、グレゴールは思わず黙り込む。当の本人はもう昔の話のようにぎこちなく笑い、話してはいるのだがどうにもその顔が痛々しそうにしか見えなかった。それは保護任務から来る使命感、いや仕事なぞ関係ない庇護欲なのかはどうにもグレゴールからは判別がしづらいものであったが───────ただヒースクリフを過去からも守ってやらねばならないと、そう固く決意した。
そうこうしている間に、部屋の前までつきドアを開ける。必要最低限の家具ばかりしか置いていない部屋だがグレゴールが何か与えようとする度に今はこれだけでいいと頑なにヒースクリフは拒否していたため、その意思を尊重して何も置かないようにしている。一人でいるには少し広すぎないやしないかと思える空間、自分が仕事に行っている間ヒースクリフが何を考えているかなどグレゴールには分かりはしないが、多少なりとも辛い思い出に浸ることがないように願うばかりであった。
「ほれベッド着いたぞ、二度寝しな」
「ん
…
」
「あーもう、明日からは無理しない時間に起きてくれよ。ヒースクリフが倒れちゃあ困るからな」
「
……
なるべく、気ぃつける
……
」
「ん、じゃあおやすみな。俺仕事に行ってくるから」
「行ってら
……
」
ベッドに寝かせると本格的に眠気に支配され、返事が曖昧になっていくヒースクリフに布団を被せ寝落ちるまで軽く一言二言交わした後、静かに部屋を出る。すぅすぅと微かに聞こえる深い寝息に多少なりとも来たばかりの時よりはマシになっていると、このままゆっくり心や心身を癒すことに注力していくしかない。あわよくばN社のことをすっかり忘れて欲しいが、それは求めすぎというものだろう。今はグレゴールがひとまずやれることをするしかないのだ。
今日は少し高めのお菓子でもこれからの礼に買って帰ろうか。そんなことを考えつつ、家を発つ準備をすることにした。
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