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頻子
2024-08-10 02:00:38
2053文字
Public
その他こまごました二次
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俺モブ失恋兵士(OSBN)
俺モブ兵士→アルバート×モリス
晴れてくれてよかった。
俺はまた、世界に感謝する。俺は間違いなく幸運なのだとアホみたいに信じることができる。ぼろぼろのラケットを持って、コートへと進み、そして二回戦で負けた。
でも、俺は思った。
今日は晴れてくれてよかった、と。
俺はノディオ王国の、ごく普通の下っ端兵士である。
スポーツ大会でも、優勝はおろか、上位に入賞したことすらない。
けれども俺は、スポーツ大会をとても楽しみにしている。
なぜか?
応援席には、必ずモリスちゃんがいるからだ。
やわらかで深い若葉みたいな、緑色の髪が見える。
人はたくさんいるのに、不思議とその子を見失うことはない。野郎どもの群れの中に混じる、すらっとしたすがた。周りよりも華奢なのに、どうしてあんなに目立つんだろう?
決して大きくない声なのに、モリスちゃんの声は、とてもよく聞こえる。
どうしても目が離せない。
モリスちゃんは、大きく手を振って、誰かを応援していた。
その誰かは俺ではない。
モリスちゃんは、もとから可愛いかったけど、近頃はますます美しくなっていると思う。聞けば、王子様と結婚するため、日々、修行に励んでいるのだそうだ。それを聞いた時、俺はものすごい衝撃を受けたものである。
そうか、と。あの子は間違いなく上流階級に属する人間なのだ。それなのに、間違って市民階級に生まれてきてしまったのだ
……
と。
それはすごくしっくりとくる感覚だった。
俺は神様はいると思う。正しい行いをしていれば見守ってくださると思う。それはモリスちゃんという形で遣わされていて、恩寵のおこぼれにあずかっている。
晴れてくれてよかった。モリスちゃんが雨に濡れたらかわいそうだから。暑すぎなくてよかった。野郎どもが蒸されてる中にいるのもかわいそうだし。
晴れてくれてよかった。きみのことがはっきり見えるから
……
。
俺はこの恋をそっとあきらめて、裏であの子を応援するファンに徹することにした。
なお、ノディオ王国には、そんな男がごろごろいる。
ファンクラブがあり、あの子がどこに住んでいるかとか、どういう服を着ていたかとか、どこで会ったとか、密に共有されていた。良くないのは分かってる。分かってるけど、許してほしい。いやほんとに。
俺がポストにせっせとモリスちゃんへのお手紙を入れていたらルカーヒさんがこちらを睨みつけていたが、封筒に重みがあることを知ると喜んで受け取った。
やっぱり、習い事ってずいぶんお金がかかるらしい。
***
アルバートの野郎が(不敬)良い値段のお買い物をしたくせに約束の日にいやがらなくて(不敬×2)俺は届け物をすることになったのだった。中身をそっと覗いてみたら、ルビーのネックレスだった。きれいだとか思う前に、これを失くしたらたとえ俺のせいでもなくても殺されるだろうなと思って気が気ではない。
アルバートの野郎の(不敬×3)屋敷を訪ねたが、ここにはいないと言われ、途方に暮れ、あてどなくさまよっていた俺は、「森小屋じゃないか?」とメイサさんに言われたのだった。早く言ってほしい。ネックレスの鎖が俺の首に巻きついてじゃらじゃらしめる様子を想像しながら、俺は傷がついてませんようにと祈り、言われた場所にやってきた。扉を開こうとノックすると
……
。
「モリスーーーーっ! 遅いぞっ!」
小屋から飛び出してきたアルバートの野郎は手に花束を持っていて、信じられないほど笑顔だった。
「誰だお前?」
俺がなんとか持っていた小箱を見ると、アルバート(不敬×4)は、ばしっと奪い取って鼻を鳴らした。
いや、それよりも、コイツ(不敬×5)はなんて言った? 誰の名前を呼んだ? モリ
……
。
「おいっ、お前はお呼びじゃないんだ。ぬか喜びしたじゃないか。とっとと消えろっ!」
俺は、蹴り飛ばすように叩き出されて鼻先で扉を閉められた。
すごく理不尽だ。世の中ってすごく理不尽だ。
「大丈夫
……
ですか?」
それよりも理不尽だったのは、モリスちゃんがいて、俺にそっとハンカチを、レースのハンカチを差し出したということだ。
それは今までの俺からすれば信じられないくらいのラッキーだったのだが、俺は泣いた。男なのにちょっと泣いた。モリスちゃんは慌てておろおろとするが、アルバートが「あっ!」と数段階高い声で呼んで、とっとと腕を引いて小屋の中に入っていってしまったのだった。
モリスちゃんはきっと申し訳なさそうな顔をして何度も振り返ったはずだった。
俺は完璧に悟った。
日ごろの行いの善さと、報われるかどうかは、まったく関係がないのだ、と
……
。
俺は思った。
上流階級がなんだ?
「モリスーっ! ごろごろにゃーん!」
俺はハンカチを握りしめて、見たくないものを見ないようにして、聞きたくないものを聞かないようにして、そっとその場を離れることにした。
ハンカチからは信じられないくらい良い匂いがした。
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