jwds_20240706

ブロウジョブ飲むdsさんのjwds小話
胸元オープンしすぎ中の人のお写真から、あれdsさんにも着てほしいな、と。

交友関係が広がるのはいいことだと思うのだ。人間関係を改めて構築したならば、ジュウォンの世界は広がるだろうし、それがまた彼の魅力を高めることにもなるし、生きやすくなることもあるかもしれない。逆に傾くことだってあるだろうけれど、それを経た彼は大層成熟した男へと成長していくだろう。
そんな風に、過去のパートナーとして、そして多大なる恋人の欲目で、ドンシクは思っていたのだが。もちろん本人には一切をそれらを告げることはない。だから、彼が、今日は誰某れと食事をする、是是の影響を受けた、何々を教えてもらった、と聞かされることをいっそ微笑ましいとさえ思っていた。
それらのほとんどは純粋な好意や親切心から成るもので、新たな場でなお一層警察官としての職務に邁進しているジュウォンの周囲が善き人々であることにも安心していた。
しかし、どこにでも悪意を持つ者はいるわけで。
幾度目か、ジュウォンが仕事の関係者との食事に誘われた先は、若者らしく少しだけ羽目を外したバーだった。
学生時代も四角四面におさまる真面目で優秀な優等生だったらしいジュウォンが新たな扉を開くのはいい。
ただ、ジュウォンの性格や、今まで誘い誘われた同僚たちとはいささかい毛色の違う向きのバーであることに、ドンシクは何がしかの予感を覚えた。
職務におけるソウル庁への召喚と、今回のメンバーがキャリア組のソウル庁勤めのメンバーのみで構成されていることも。
こういった面子との語らいの場に相成りました、と予定を聞いたドンシクは、翌日に休みを取っているジュウォンの誘いでソウルで会うことになっていた。だから、ドンシクはジュウォンに迎えに行っても良いかと尋ねた。
過保護かもしれないその申し出に対し、ジュウォンは早くあなたに会えるのならそれに越したことはないと可愛らしく頬を染めた。
ジュウォンと件の同僚らがそれほどに親しい間柄だとはドンシクも思っていない。
何がしかの打算や互いへの興味、はたまた純粋にジュウォンと飲んでみたいという心持ちでもいい。ジュウォンは彼らの誘いを受けたのだろうし、ドンシクがそれに対して意見を申す立場にはない。
ただ、ソウル庁内での彼の扱いは火を見るよりも明らかだし、ジュウォンの尊厳が失われるようなことがあるのであれば、ドンシクとしては避けたいと考えるのは当然だ。
疲弊して戻るかもしれないジュウォンを迎えたいと、表面上はそれほどの思いをちらとも見せずにドンシクはジュウォンがキリのいいところで切り上げ、その際には連絡をする、という内容で終話した。

ジュウォンからのメッセージを受け、ドンシクがバーに訪れた時、奥まった席にいたのはジュウォンを入れて三人だった。
背中を向けて座っているのがジュウォンであることはすぐにわかり、その向かい側にはそれこそ初対面の時のジュウォンと似たり寄ったりの髪型の青年が二人座っていた。
メッセージを受けてから、バーの階下で待つ間に、随分と時間が経っており、引き止めに合っているか、まさか酔い潰れでもしているのかと結局ドンシクは店内に入った。受付には、迎えであることを告げ、すぐに退店する旨を伝える。
店の奥にこちらに背を向けたジュウォンの後ろ姿を発見し、ドンシクは笑顔を張り付けた。
ジュウォンに連れられて幾度か行ったバーは、それなりに格式の高いホテルや隠れ家的雰囲気の店が多かった。察するに、一人でアルコールを嗜む風情の店が多かっただけに、同僚の選別したこのバーは、ジュウォンの印象とはかけ離れていた。年齢的にはこういったバーに出入りしていてもおかしくないのだが、それにしても猥雑さと賑やかさがウリのこのバーは、若い世代が多い。
退店するはずのメッセージから随分時間が経ってしまっているからとドンシクはさっさとジュウォンと同僚が腰掛けるテーブルに近づいた。
向かい合わせになった同僚のうちの一人が近づくドンシクに気づいて怪訝に眉を顰める。
予備動作も声がけもなく、ドンシクは空いていたジュウォンの隣にするりと腰掛けた。
一瞬にしてテーブル内の空気が止まる。
呆然としたままの顔の正面二人ににこりと笑いかけ、そのままの笑顔を張り付けて、ドンシクは横を向いた。
「ドンシクさん……?」
「え?だれ?」
「イ・ドンシク……?」
三者三様の言葉が漏れる。
ドンシクはジュウォンを見つめたまま、腕をついてそこに顎を乗せ、これ見よがしに小指で唇をなぞってみせた。
「迎えに来たのになかなか出てこないから。心配しましたよ、ジュウォナ」
親しげにジュウォンの名を呼んでみせる。
口を丸く開けままのジュウォンの頬は赤く、これは随分と飲んだな、と、普段のジュウォンのアルコール限度を知るドンシクは、張り付けた笑顔を益々深くする。
そうしてそのまま流した目線を正面の二人に向ける。
「こんばんは」
場違いにドンシクが挨拶する。
薄暗い灯りの中、自分達の会話に夢中になっていた三人の前に、幽玄のように突然現れた男の丁寧な挨拶に虚をつかれ、同僚二人が思わず同じ言葉を返す。
「「こ、んばんは」」
同僚との飲み会は早々に切り上げて、ドンシクとの時間を優先するかと思いきや、存外に店内から出てこないジュウォンに焦れて突入した自身の行動に、今更にドンシクは後に引けなくなった。
奇人変人の呼び名高い自身の行動に対しての後悔はないし、ジュウォンの同僚にどう思われようが心底どうでもいい。しかし、ドンシクは今更に、自分が勢い余って起こした行動に若干の大人気なさを感じ、表情には出さないが内心で恥じた。
──恋人が心配だからと。自分を優先してくれないからと、飲み会の席に乗り込むのは流石に。
今更自問しても仕方がない。
それに、ドンシクの格好は、ジャケットに、襟のない胸元がオープンなシャツを着ている。小洒落たシャツはジュウォンがドンシクに似合うからと購入し贈られたものだ。
つまりはデートと勇んでめかし込んだ自身の行動と、年上の矜持から煩悶し、取り敢えず笑顔を張り付けたまま。
言い訳も嘘も言っていない。『迎えに来たのになかなか出てこないから心配して中まで様子を見に来ただけ』だ。
「あ、あれ!?もうそんなに時間経ってましたか!?」
ジュウォンがいち早く我にかえり、手元の時計を確認する。
「すみません、話し込んでしまって……!」
「ふふ、話しが弾んでたなら何より。あ、じゃあ逆に、俺はお邪魔だったかな?」
敢えて罪悪感を煽るような台詞で返してみる。慌ててジュウォンが首を振り、遅まきながら我に返ったらしい二人組も声を上げる。
「申し訳ない、ハン警衛。迎えに来てもらったって聞いてたのにな。俺たちが引き止めてしまって……
と謝罪したのは、どうやらドンシクの顔を知るらしい一人。
もう一人は未だに呆然としながらも、同様に謝罪する。どうやら突然の闖入者に、少しだけ酔いが覚めたらしい。それはそうだろう。
慌てて身なりを整え、ジュウォンが帰り支度をし始める──が、彼の電話が鳴った。
着信を見て、それが派出所の同僚らしいと気づいたジュウォンは完全に酔いの覚めた顔で、その場に断りを入れて席を立った。
これはデートはお預けだろうかとドンシクがジュウォンの背を見送る。
「あの、」
正面の席の一人がドンシクに声をかけてきた。ドンシクは他所向けの笑顔を張り付けて、再度正面を向いた。
「すみません、ハン警衛を引き止めてしまって。迎えがきてくれたと聞いていたのに、つい話しが盛り上がってしまって」
それを聞いてドンシクはおや、と思った。キャリア組からのマウンティングや、彼の父の罪からの疎外などを心配していたのは杞憂だったようだ。存外に、正面の二人組はジュウォンとはそれなりに仲が良いように見受けられる。
「あのハン警衛から恋人の話しを聞かされたもんだから……
「ついつい色々聞いてしまいまして……
──なるほどなるほど。それはそれで面白い。
ジュウォンはどう答えたのだろうか。と、それは本人に問えばいい。
問題なのは、テーブルに置かれた、クリームのたっぷり乗った小さなグラスの方だ。
ドンシクの視線の先を辿り、同僚二人が慌てる。
「いや、これは、その!恋人がいるって聞いたから、少しだけ刺激的なアルコールの話しを、ネタで!」
「実際女の子にこんなの飲ませるなんて、冗談でも絶対に良くないし、その、」
誰に言い訳しているのか、同僚二人組の焦りは相当な者だった。若い世代間で下世話な話しになることも、ジュウォンには良い刺激になるのかもしれないが、このカクテルの説明をされて、ジュウォンがどんな反応をしたかの方が、ドンシクは興味がある。笑ってしまう口元を押さえて、ドンシクはちらりとジュウォンの様子をうかがった。未だ電話から戻ってきそうにはない。
「おまわりさんがそんな悪い遊び教え合ってるの?いけない大人ですね」
ドンシクはそう言って、伸びた髪を耳にかけてから、腕を背に回した。
躊躇うことなく口を開き、手を使わずに、カクテルの小さな飲み口を口で覆う。そのまま仰いて、クリームの乗った甘くどろりとしたアルコールを飲み込んだ。視線だけは同僚二人に向けたまま。
唇の端から溢れたリキュールが、顎から首へ滴り、開いたシャツの胸元を滑り落ちていく不快感に肌を泡立たせていたら、ジュウォンの叫び声が聞こえた。
ドンシクはそのまま手を使わずにグラスをテーブルに置いた。口端に垂れたクリームの残骸を舌で拭う。
「うーん、おじさんには甘くて胃もたれしそう」
「イ・ドンシクシ!!!」
ちょうど電話を終えたらしいジュウォンが顔を真っ赤にさせて飛んでくる。
「ドンシクさん、あなた、今、いま、な、なに……!!」
「お手本。飲んで見せてあげたんですよ、ブロウジョブ。みなさん勉強熱心ですねぇ」
ジュウォンは青くなって赤くなってしまいには地獄の使者のような真っ黒い形相でドンシクを睨みつけ、喚き立てた。そうして店を出るようドンシクの二の腕を掴んで立ち上がらせる。
「乱暴ですねぇ。店から出てこなかったのあなたなのに」
ドンシクの文句にも、頭から煙を出す勢いの怒れるジュウォンは返答しなかった。テーブルに多くの紙幣を叩きつけて、ジュウォンはドンシクの腕を引いて出口に向かう。
同僚に挨拶もせずにジュウォンは店を出ようとするから、ドンシクはにこりと笑って後ろを振り返る。呆然としたまま、顔を酔いだけでなく真っ赤に染めた同僚二人にひらりと手を振った。
「ドンシクさん!!」
「あいたた」
ジュウォンのドンシクを引く手に一層力が入る。
「あなた、なんてもの飲んで、いや、何て飲み方……!」
「おや?あれがどういうアルコールか、二人から聞いてないの?」
「聞いてます!あんな、あんな下品なの……!」
言い合いながら、バーの階段を降りる。
下まで辿り着いてから、怒り顔のまま、ジュウォンがなおも言い募ろうとするのをドンシクが先んじて手で制した。そのまま胸元のシャツを引いて、鼻に近づける。臍が丸見えだった。
「こぼしちゃったからべたべたするし、においが甘ったるくなっちゃいました。このシャツ、せっかくあなたから贈られたものなのに」
歯が砕けるのではないかと思うほどに、ジュウォンはぎりりと歯を噛み締めると、ドンシクにぶつかる勢いで唇を押し付けた。そうして離れる寸前に、ドンシクの唇の端をべろりと舐め上げる。
「洗ってあげます。僕が、全部、隅々まで」
「ふふ、顔、こわ」
──なかなか店から出てこなかったことにいじけて、店内にまで乗り込んだ振る舞いには気づかれずに済んだ。
ドンシクは再度近づいてくるジュウォンとの唇の合間、甘いリキュールの吐息で笑った。