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溶けかけ。
2024-08-09 20:52:15
737文字
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ほぼ日刊
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私はあなたに相応しい
―――本当に相応しいと思っているのは誰だろう?
「フリーナ殿、これを」
ヌヴィレットから手渡されるのは、白薔薇の花束と相場が決まっている。
「ありがとう、ヌヴィレット」
僕が何でもない顔をして受け取るのもいつも通り
――
予定調和、というやつだ。
「次の公演日も教えておこうか?」
「ああ。そうしてもらえると助かる」
スケジュール帳を取り出す僕とヌヴィレット。彼は僕が舞台に立たなくとも、関わった舞台は全部観てくれるのだ。
「この日が初日で
……
最終日がこの日」
「ふむ
……
この日なら
……
」
彼との予定をすり合わせる。お互いの手帳とにらめっこをする時間は以前の関係に少し似ている気がして、悪くない。
「本日も素晴らしい舞台をありがとう、フリーナ殿。では、また」
「こちらこそ。観に来てくれてありがとう、ヌヴィレット。またね」
手を軽く振り、笑顔を返す。扉がパタンと締まり、彼の足音が徐々に遠ざかる。
「はぁ~
……
僕、上手く
出来た
演じれた
かな
……
?」
シュヴァルマラン夫人が泡を吹いて肯定する。クラバレッタさんもジェントルマン・アッシャーも各々のやり方で肯定してくれる。
「良かった
……
」
机に突っ伏せば、鼻腔を擽るのは芳醇な薔薇の香り。それを胸いっぱいに吸い込んだ。
「ヌヴィレット
……
花言葉とか知ってるのかな
…………
」
否、彼は知らないだろう。知っていたとしても「心からの尊敬」とかそんなところだ。
「痛いなぁ
……
」
心臓には痛覚がないと聞く。ならば何故、この胸はこんなにも痛むのだろうか。
「キミの優しさが、嫌いだ
……
」
あのとき
――
神を辞めた日にさっさとその手を離してくれれば
――
そうすれば、こんな惨めな気持ちになんて、きっとならなかったのに。
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