三毛田
2024-08-08 11:36:54
1077文字
Public 1000字
 

13 03. 見様見真似の恋

13日目 だけどまだ恋にならない

 恋というものを、俺は知らない。
 アーカイブにある物語を読んで、そんなものかという知識なら少しだけ。
 なのは記憶喪失なので例外。ヴェルトは、なんとなくだけどしたことがありそう。本人は話したがらないかもだけど。
 姫子は怖くて聞けない。パムはなさそう。列車第一だし。
 なら、丹恒はどうだろうか。
「丹恒は、恋ってしたことある?」
 アーカイブの端末をいじっている手が、一瞬止まる。でも、すぐにまた動き出して。
 答えてくれないのかな? と思っていたら、隣に来て。どうやら、キリが良いところまで終わらせたかったようだ。
 真面目な丹恒らしい。
「さっきの問だが、〝ない〟だ」
「俺と同じだ」
 なんだか嬉しくて笑うと、小さく笑みを浮かべてくれる。
 少しずつだけど、俺に対して心を開いてくれているようて嬉しい。
「が」
「が?」
「これを恋と呼べるのかわからない想いなら、密かに抱いている」
「え〜。誰に誰に?」
 顔を近づけると驚いたのか、のけぞって。でも、すぐに距離を戻す。
「知りたいか」
「知りたい。知りたい!」
 なのみたいに記憶喪失のようなものだから、友人と恋バナなんてしたことない。
 だから、クールで無口なこの友人から恋に関する話題を聞けるとは思わず興奮している。
「お前だ」
 左手が優しく俺の頬を撫でる。
 浮かべられた笑みはとても柔らかく、今まで見たことがないもので。
 ああ。どうしたらいいのだろう。
 俺はきっと、この瞬間。
 彼に恋してしまったんだ。
 だって。ずっとなんともなかったはずなのに、丹恒の指が触れているところから熱くなっていって。
 胸がドキドキして、でも、ちょっとだけこのドキドキが怖い。
「それって、えっと、俺のこと、好きってこと?」
「多分そうなるな」
「俺も丹恒が好きだよ」
 思わず声が小さくなる。今までは〝好き〟って口にしても、なんともなかったのに。
 優しく笑う丹恒を見てドキドキしてから、急に恥ずかしくなっちゃった。
「穹?」
「たんこぉ、俺、おかしくなっちゃった……
「パムに診てもらうか?」
「ううん。おかしくなっちゃったけど、丹恒と一緒にいたい」
 そう告げると、嬉しそうにして。
 う〜……またドキドキして頭がぐちゃぐちゃだ。
 物語のように、すぐに伝えて恋人! みたいなのを望んでるわけじゃない。
 きっと丹恒もそうだろう。
 いつものように無表情だけど、俺が視線を向けて目が合うと優しく笑ってくれる。
 それがとても嬉しい。でも、これが〝好き〟なのかは俺にはわからないのだ。