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柄
2024-08-07 19:26:34
4679文字
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That end well !! ②
アゼ「好きな人にだけ反応する媚薬を飲ませました」
エメ「は????(キレ)」の二話目
アゼムの言葉の意味を上手く飲み込めないまま、エメトセルクは黙り込む。アゼムは小さく笑いながら空いてる手でエメトセルクが飲み干した瓶を指差した。
「ジョークグッズだって。赤と白、どちらかにだけ好きな子に触れた時だけ反応してしまう媚薬を仕込んでるらしいよ?」
らしいよ、ではない。後ろめたいこと、怒られそうなことがある時に早口になるのはアゼムの癖である。にへらと笑うその顔にこいつ、と反射的に怒りで怒鳴りつけようとして、エメトセルクはどうにか息を吐いて一度気を落ち着かせる。
「お前は、仮にも友人に媚薬を盛るな」
「親友だからだよ! 好きな人ってのは性的な意味で愛してる相手って明確に指定されてるから大丈夫! 普通に飲む分にはおいしかったでしょ? 私も味が気になってたんだけど、どうしようかなって思ってて。一人で二本飲むと確定で飲んじゃうじゃん!」
「だからといって他人を巻き込むな」
それに、とアゼムがエメトセルクのローブを掴んでいた手を離し、代わりにエメトセルクの手に触れる。ぞわりと腹の奥が熱くなる感覚を押し殺し、手を振り払うこともできずにエメトセルクは舌を噛んだ。
「私達は親友だからね」
少し掠れたような声で確認するように呟きながら、アゼムがエメトセルクの手の甲を撫でる。
「大丈夫。好きな子に触れなければただのお酒だよ」
今触れられているんだ、馬鹿。そんなことを言えるわけもなく、エメトセルクはいつも通りを心がけてゆっくりと溜息をついた。
けれど、けれども。アゼムの手がゆっくりと離れた瞬間、不意にエメトセルクは気付いてしまった。
「ほら、君が今から好きな子に会いに行くのならばそりゃあ真剣に謝るけど、そうじゃないなら大丈夫だって! 夜はもう寝るだけ! お酒美味しかった! おわり!」
「
……
おい」
「お叱りはなし! だって何も変化なんて、」
「そのワインは、どちらにその媚薬が入ってるかわからないのだろう」
ぱちん、とアゼムが瞬きをする。そうだけど、と言う彼女はきっと、エメトセルクが何に気づいたかなんて分かっちゃいない。無意識だからこそ本音が滲んでいるかもしれないことに、それがエメトセルクが気付いてしまったかもしれないことに。何一つ気付かないままなのだ。そんなアゼムを見下ろして、エメトセルクは苦く顔を歪めた。
「何故、私が飲んだ方に入ってると思ったんだ」
「えっ、」
はくり、とアゼムが口を動かす。言葉は出なくて、閉じて、すぐにまた動き出した。
「いや、わからないけどね! もちろん私が飲んだ可能性だって」
「さっき私の手を握って、何を確かめていたんだ」
ぴたり、とアゼムがまた口を閉ざす。まさか、という思いと望む思いが混ざり合って、触れてもいないのに欲が滲む。アゼムは顔を背けると、なにも、と小さな声で呟く。それが答えだった。
彼女は、確かめていたのだ。触れて、己が発情しないことを。同時に、エメトセルクに変化がないかを。
エメトセルクは座ったままのアゼムの足の横に膝をついて、アゼムの肩を掴み、反対の手でその顎を掴んだ。顔を固定させ、視線を逸らすことを許さない。怯えを含んだ微かに濡れた瞳がエメトセルクを見上げた。
「私に触れて、お前は自分は飲んでいないのだと確信を得たんだな」
「
……
そんなこと、ないから」
声は小さく力が入ってない。本当に、嘘が下手だ。エメトセルクは舌打ちをしながら少し身を屈める。落ちた髪がアゼムの頬に触れて、くすぐったそうにアゼムがぎゅ、と強く目を閉じる。この状態で目を閉じるなんて、本当に愚かだ。
ここまできたら、間違いなどない。むしろ、エメトセルクの勘違いであったとしても、アゼムが悪い。彼女は好きな人に触れたら反応するという媚薬を飲んだ状態でエメトセルクに触れたら反応すると分かっていて、何もないからこそエメトセルクが飲んだと判じたのだ。
ならば、それならば。それは、きっと。エメトセルクはじわりと滲む欲を乗せて、アゼムの唇に噛み付いた。
見開かれたアゼムの目と至近距離で合う。理解が追いついていないのならば、分からせればいい。顎を掴んでいた手を滑らせ、親指でアゼムの唇を引っ掛けて無理矢理隙間を開ける。そこから舌を捩じ込んで歯茎をなぞれば、アゼムがようやく抵抗するようにエメトセルクの胸を押した。少しだけ唇を離せば呼吸のために口が開いて、その瞬間にまた舌を捩じ込む。吸い上げた舌を絡めて溜まった唾液を掬い上げ、口蓋を舐めればじわじわとアゼムの体から力が抜けていく。ぎゅう、と目を閉じて耐えるようなその姿を目を逸らさずに見つめ続け、ようやくエメトセルクは少し離れた。
「どう、して」
「お前は知らないかもしれないが」
なるべく平坦な声を心掛けても、熱で少し上擦ってしまう。じわりじわりと滲む隠し通してきた欲が、ゆっくりと指先まで広がっていくのを感じていた。
「私は、欲を隠すのは慣れている。お前が私を親友と呼ぶから、どれだけ押し殺してきたと思っているんだ」
かちん、と固まってしまったアゼムの肩を軽く押せば簡単に倒れる。そのまま彼女の足を掴んでソファーに乗せて、その上に覆い被さったところでアゼムはようやく不明瞭な言葉にならない音を発し始めた。何度か声を漏らして、じわじわと言語に結ばれていくのをエメトセルクはきちんと待った。
「あ、えっ、と、その。君、もしかして」
「もしかして?」
「
……
今、その、
……
発情してたり
…………
やっぱなし嘘ですなんでもないごめんなさい怒らない、あ」
無言でアゼムの足に熱を持って硬くなったそれを押し付ければ、ぴたりと彼女は口を閉ざした。市民揃いの黒いローブはたっぷりと布を纏って色々なものを覆い隠してくれる。けれども、それを暴こうとしたのはアゼムなのだ。
「お前が、ずっと私を友と呼んだのだろう。誰よりも私を呼ぶくせに、簡単に触れてくるくせに。その度に私がどれだけ苦労して堪えてきたと思っている。それを、暴いたのはお前だ」
ぐい、と顔を近付けばアゼムはまたぎゅ、と目を閉じた。けれども時折薄く目を開いてまるで待ち望むかのようにエメトセルクを見るものだから、エメトセルクは滲む欲望のままにアゼムの赤い唇に吸い付いた。
触れて、押し付けて、少し唇を食んでみれば面白いようにアゼムの体が跳ねる。軽く唇を噛んで、もう一度押しつけて離れれば、潤んだ目がゆっくりと開いてエメトセルクを映した。
「で、だ」
「んぇ、あ、はい」
「なぜこんなことをした?」
瞬きをして、アゼムの顔がさらに赤く染まる。その、えっと、と繰り返し、一度視線を逸らそうとする。頬に触れて顔の向きを正面に固定すれば、うううう、と唸ってもう一度瞬きをした。
「私から、言わなきゃダメ
……
?」
「お前がやらかしたんだから誠意を見せろ。このまま一方的に食い散らかしてもいいんだぞ」
「ひっ
……
」
「何のためにこうして耐えてやってると思っている」
「もうほとんど言ってるようなもんじゃん!」
むかついたのでもう一度顔を近付ければ、わーっ!と叫んでアゼムがエメトセルクの口元を両手で押さえ込んだ。そのまま何度か深呼吸するのを見下ろして、エメトセルクは待つ。小さく息を吸い込んで、アゼムはゆっくりとエメトセルクの口元から手を離すと、ギュッと胸元で両手を握りしめた。
「
……
あ、の、エメトセルク
…………
」
「なんだ」
「その、
……
私、君のことがずっと好きでして
……
」
「そうか」
「そうかじゃない! その
…………
この度は媚薬を盛ってしまい大変申し訳ありませんでした
……
」
「告白と謝罪を同時に行うな、お前はまったく」
思わずエメトセルクは笑ってしまう。眉を下げる姿にまたじわりと滲む欲を飲み込んだ。エメトセルクはアゼムの耳元に唇を寄せると、彼女の名前を呼ぶ。それだけでアゼムは小さく喘いだ。とんでもない女だ、と耳朶を少し噛んで、赤く染まってるそこに言葉を吹き込む。
「愛してる」
「あ
…………
っ」
咄嗟に逃げようとしたのか蹴り上げかけたアゼムの足を掴んで止める。皮膚という皮膚を赤く染めて震えながら、アゼムは獣のように唸り続けていた。両手を彼女の頭の横について見下ろしながら呆れて口を開く。
「照れ隠しを暴力に走らせるな」
「う、うううう」
「で、だ」
で
……
? とアゼムが疑問を浮かべてエメトセルクを見上げた。はぁ、と息を吐く。こいつは、己のやらかしを忘れたのか。
「今お前に覆い被さってるのは、お前に薬を盛られた、たった今お前の恋人を名乗るようになった男なんだが」
「こっ、こ
……
こ
…………
!?」
「言語を話せ。お前に、二つ選択肢を用意してやる」
ごくり、とアゼムが唾を飲み込んだ。その喉の動きにすらグッときてしまうのだからどうしようもない。けれども、エメトセルクはもうずっと、アゼムの隣にいるために堪え続けてきたのだ。
「一つは責任を取って大人しく私に食い散らかされる。この場合全くもって優しくできないと思え」
「私初めてなんだよ
…………
」
「お前が初めてじゃなかったらとっくに襲って二度と外に出られなくしてやっていた」
「こわい」
声が本気じゃん、と呟くアゼムの髪を撫でれば、潤んだ目がその手の動きを追う。そのままエメトセルクが髪を掬って口付けて見せれば、ひぇ、と情けない悲鳴が漏れた。
「だが、お前にも心の準備は必要だろう。初めては優しくされたい気持ちがあるのならば、私は手を引いて今すぐ帰ろう」
「え」
ぱちり、とアゼムが瞬きをする。瞳を揺らしながらできるの、と呟いた声に、エメトセルクは苦笑して見せた。
「何度だって友人のお前に欲を抱いて、隠して堪えてきた。今更だ」
「でも、」
「これを、無かったことにされなければそれでいい」
結局、エメトセルクはどうしようもなくアゼムに惚れているのだ。何百年も抱え込んで押し殺してきた感情だ。ほんの少し伸びるぐらい、どうってことはない。
堪え続けられるほど、愛しているのだ。
それを思い知ってアゼムはくしゃりと顔を崩す。両手を伸ばしてそっとエメトセルクの頬を挟み込むと、すごいなあ、と小さく笑った。
「君、本当にめちゃくちゃ私のこと、好きなんだ。今、きっと凄く苦しいはずなのに、我慢できちゃうぐらい好きなんだね」
嬉しい、とアゼムの目尻が溶ける。引き寄せられるがままエメトセルクが顔を寄せれば、アゼムが触れるだけのキスをそっと送って、唇が触れる距離のまま言った。
「だったら。今すぐ、ちょうだい。今君が私に抱いてくれた欲を無かったことにしないで」
エメトセルクが軽く目を見開く。代わりにアゼムは目を細めて、もう一度柔らかく唇を押し付けて、離して。
「君が隠していたもの、全部見たい」
長く、エメトセルクは息を吐く。そしてアゼムの唇に噛み付くと、隙間に舌を捩じ込んだ。微かに隙間から漏れる声を聞きながらアゼムのローブを緩めれば、アゼムの手が頬から落ちてエメトセルクの胸元にしがみつく。呼吸のために唇を離して、そのまま喉元に舌を這わせ、唾液で濡れたそこに吸い付いて痕を残す。
皮膚に唇を寄せたままアゼムの名前を呼べば、息を整えながらアゼムがくつりと笑った。
「酷くして、いいよ」
本当に、とんでもない女を好きになったものだ。エメトセルクはアゼムのローブに触れると、今度こそ全てエーテルに還してしまった。
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