ひがあぎういな
2024-08-03 09:38:57
2032文字
Public アンデラ小説
 

不死をヤる気にさせたら100万円チャレンジ

【不死不運05】タイトル通りのバカやってる。短い幕間です。

【不死をヤる気にさせたら100万円チャレンジ】

「ゲームしようぜ!」
「なにソレ」

不死の男が掲げたスケッチブックには『俺をその気にさせたら100万円』とマジックででかでかと書かれていた。律儀にハートが添えられているところを見るに、その気とは“ヤる気”の事だろう。
いちいちセクハラだのなんだの怒るのも疲れるので、取り繕うことも無くあからさまにゲンナリした顔をしてしまった。

「読んで字のごとく。俺をその気にさせたらお前の勝ちだ、小遣いGETチャンスだと思ってくれていいぜ」
「それって成功してもアンタが喜ぶだけじゃん
「その気に出来ればな。自信ないならやらなきゃいい」
「うーーーん」

正直今となっては現金には惹かれないんだけど、ゲーム内容に興味がないと言えば嘘になる。私は肌に触れた相手に不幸を与える性質を買われて不死に飼われているから、抱かれるのも仕事の内だ。
相手が自分を欲しいと思ってくれるならこの生き方の後ろ暗さもいくらかマシになるだろう。

「ものは試しかな」
「マジかよ」
「でもちょっと時間ちょうだい、考えるから」
「おぉ、楽しみにしてるぜ?」

やらしいニヤニヤ顔はムカつくけど、コイツから余裕がなくなったら実に面白いだろうから今は放っておく。さぁて、ちょっと頑張ってみましょうか。


*************


「何やってんだお前」
ちょっと方向性間違えた……

ポタポタと髪から滑り落ちる水滴。頭から水をかぶった相棒は合わせる顔がないとでも言うのか、うつむいて立っていた。

「とりあえずタオルだな」
「う〜〜〜」
「ほら服も脱げ、風邪引くぞ」
「ん

自分で脱げばいいものを、両手を上げバンザイしているのでやれやれ八つ当たり的な甘え方してきてんなと呆れ半分喜び半分で服を脱がせた。濡れた服をバスタブのふちに掛け、タオルを持って戻る。コレはドライヤーも要るな〜なんて思いながらワシワシと頭を揉むように髪を拭いていると、されるがままだった相棒から堪えきれなかったような笑いが洩れた。

「なに笑ってんだよ」
「ふふ、こういうの懐かしいなって思って」
「あぁ火傷の世話してた時か?」
「そうそう、髪洗ってもらうの好きだったからさ」

両手が使えないこいつのあらゆる世話を焼いてた頃、何かにつけ揉んだりした俺も悪いが髪に触れるのすらビクついて、中々緊張が解けなかったのを思い出す。

そんなに前の事でもないはずだが、それは思い返すと確かに懐かしい記憶だった。

だってあの頃は知らなかった、こいつの匂いが甘いこと。それは俺の食欲を煽ること。欲に駆られて咬みついても、こいつは逃げずに喰われてくれること。

「それは初耳だな」
「言ってないもん」

湿った髪も濡れた肌も、水気が蒸発するのにつられてこいつの匂いごと気化しているのか、近くにいるとクラクラくるほど甘かった。

もしまた私がケガしたら、面倒見てくれる?」
「クク別にケガしなくても見てやるよ」
「んふふ」

ただただ幸せそうに笑って、一歩近寄って、寄りかかるように。
胸が当たるのも気にせずこちらに擦り寄る黒髪の、濡れ艶をタオル越しに撫でた。

「ちょっと冷えちゃった」
「お、悪ィ替えの上着持って来りゃよかったな……風子?」
「あっためて」

鎖骨の間にゴリゴリと、照れ隠しなのか額を乱暴に押し付けて言う。髪も肌に触れてしまったら不幸が来る自分の能力を一番恐れているこいつが迂闊な接触をするはずはない。

頭しか見えない俺の視界の先で、伏せられていた顔が見上げてくる。その口には赤い手袋が咥えられていて、お求めの熱が何なのか、冷たくなった手が教えてくれた。

また火傷しちまうぞ」
「寒いよりは、いいよ」


*************


「まんまとノセられちまった

事が済んで冷静になったら、自分が持ち掛けたゲームの内容を今さら思い出して枕に顔を埋めた。穴があったら入りたいいや入ったから負けたんだった。

「アタシの勝ちでいい?」
「あぁ完敗だ、持ってけドロボー」
「あ、お金はいいや」
「は?」

そもそも100万円が掛かってても、セクハラの類いを嫌がるこいつがノるのは意外だったのだ。賞金もいらないなら本当にただイチャついただけだが、どういうつもりだ

「現金持つの不安だしアンタが持ってて」
「預かっとけって事か」
「まぁそうなるのかな。それにアンタはどうせアタシに払わせないでしょ」
まぁな」

高いものはもちろん俺が買う。安いものもそんくらい気にすんなと言って出す。単独行動は危険すぎてさせられないとなると使い道がないのか。
自由に使える金くらい持たせてやるべきかと思ったのだが、自由に使える男が隣にいるならいらないよな。

「そのかわり、絶対一人にしないでよ?」
「あぁ」


おわり