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ひさね
2024-08-01 21:04:57
2289文字
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人間に擬態したがる怪物について
マコト視点。自創作の現状説明かも。
退治した怪物たちについて。
怪物とは分別のなくなった魔物の事を指す。
怪物を倒す旅をしていた。オレを入れた10人で。無事大本の原因を叩いたのを覚えている。2年程前のことだった。街の中、ささやかな凱旋をした記憶がある。晴れやかな気持ちに呼応するような快晴だった。
しかし、今は、怪物の事を含め覚えている面子は殆どいない。
「なんで皆忘れてるんだろ。あんなの忘れるほうが難しいのに」
変なの、と口を尖らせて二の腕を擦るジェスチャーをするレノに、オレは頷いた。
休日。お互いの暇が合って、何となく落ち合おうと手紙で約束して、レノと喫茶店の前で合流して、そのまま入店した。
案内された席に座り、メニュー表を眺める傍ら、言葉を交わす。ここ最近の彼との会話は、あの旅の話題で始まる。覚えている事をすり合わせるように話す。
鳥肌を収めるジェスチャーから今日は怪物の話だろう、と思った。
「人間の一部を身体に貼り付けてグロテスクだったしな」
「そう! それ! 未だに夢に出てくるんだけどあの怪物たち」
「でも誰もそこまで覚えていない。
……
ニアとハチと、恐らくシオンを除いて」
「ケント兄が覚えてないのも、ちょっと。
……
や、流石に妄想が過ぎるな。にしても、本当におかしな話!」
レノはため息をついたかと思えば、「あ、ケーキセットあるよ」と呆れた様子とは打って変わってメニューを指差した。コーヒーか紅茶を選べるようだった。
コーヒーにすると伝えれば、レノは頷いて店員を呼んだ。「ケーキセット二つ。どっちもコーヒーで、ミルクと砂糖も下さい」とつつがなく注文をする。
店員が軽く礼をしてカウンターへと消えていく。その背中を何となく眺めていた。
人間の部品を、例えば目玉や手足、ひいては内臓を体表に貼り付けた怪物を退治した旅のことを、大衆は忘れていた。仲間の大半も、記憶の欠け方に大小あれど、怪物の事は覚えていないらしかった。まるで存在ごとなかったかのような口ぶりだった。
そんな不可思議な状況が発覚してから、3週間が経とうとしていた。それだけ経つと、始めの戸惑いも案外薄れるものだった。要は慣れである。
「
……
そういえば、元凶が怪物作った理由は聞いたけどさ」
レノの言葉に、
はて
、
そうだったか
と首を傾げる。
元凶が怪物を作った理由。あの旅の記憶を頭の底から懸命に引きずり出しても、その理由とやらに引っかかるものはない。
オレが思案しているのを察したのか、レノは目を見張った。
「皆で聞いたじゃん。誰からだっけ、ええと。あれ?
誰からどんな事
、
聞いたんだっけ
? ド忘れしちゃったな。地味にイライラするやつ」
ブツブツ言いながらレノは腕を組み、眉間にシワを寄せて数秒考えたようだが、すぐに「まあいいや、その内思い出すでしょ」と切り替えたようだった。
話は本題に戻る。
「それで怪物作った理由は聞いたけど、何で怪物が人間の真似しようとしてたかは知らないなって」
「それは、確かに」
「何で内臓とか手足とか、身体から作ってこうとしたんだろ」
レノの疑問にたじろぐ。確かに、そうだった。何故、人間の身体になろうとしたのか。考えた事もなかった。
束の間の沈黙。レノがオレの目を見つめる。
「
……
人間になるメリットがあったから?」
浅い考察で浅い予測を述べる。レノはううん、と呟いて首を傾げた。
「どんなメリット? 人間、馬車に轢かれたら呆気なく死ぬけど」
「いや魔物でも大体死ぬと思うが」
「でっかいのは死なない。そういうやつもこぞって人間のパーツ持ってたでしょ」
「確かにな。大概内臓も持っていたな」
「これからケーキ食べるのに内臓の話かあ。避けて通れないけどさ」
はあ、と溜息を吐くレノは「正直な所、見慣れちゃって、感覚麻痺してるし」と呟いた。切実だ、と思った。旅を始める前には戻れない。でも今、その旅は初めから存在しなかったかのようになっている。それが飲み込めないから会っているのだろう。
オレが一人、別の所で納得する側で、レノは本題に則り推測を指折り数えては、すぐに自分で反論をしていく。
「魔法だって使うの、有利になるどころか不利になるし。人間の身体って大体物理だから。魔力が必須な器官とかないから、素人の人間が使う魔法って大抵魔物より強くないんでしょ?」
「そんな話もあったな。人間には魔力の蓄える必要性がないから、魔法を使うのが苦手だって話」
「だとしたら攻撃手段減るか、なくなるかするじゃん。そもそも魔物は大体が魔力を動力源にしてるし、なんなら身体も魔力ってことあるし。わざわざ自分から捨ててどうするんだろ」
眉間にシワを寄せながら首を四十五度近く傾げて、黙り込む。真剣に悩んでいた。
たっぷり悩んで、到頭レノは口を開いた。
「真面目に人間になりたがる理由、なくない?」
「
……
そうだな」
至極最もな、オレも同一の所に落ち着いた結論に頷いた。
「だよねぇ。ホントになんなんだろね、人間の真似したってなんにもならないのにな」
手を頭の後ろに組んで、真剣に悩んでいた張り詰めた顔とは打って変わって、白い歯を見せて破顔した。
丁度その時、店員が2人分のケーキとコーヒーを持ってきた。チョコレートケーキと、真っ黒な湯気の立つコーヒー。酸味が混じった匂い。
礼を言いながら、ミルクと砂糖も合わせて受け取る。美味しそうなケーキを前に、先程の話題に戻るほどオレ達は酔狂ではなかった。
「よくわかんないね。あはは!」
「はは」
レノが笑顔でいただきます、と呟くのにオレも倣った。
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