「丹恒の分からず屋! 頑固者!」
「むっ。穹だって、無鉄砲で向こう見ずじゃないか」
顔を突き合わせ、睨み合う。
姫子は『あらあら。ふふ』と私はわかっています。って表情を浮かべるだけ。
ヴェルトも、『ほどほどに。殴り合いにならなければそれでいい』と言って、微笑ましそうな表情。
パムに至っては、『なんじゃ。痴話喧嘩か?』と可愛く上目遣いなので両耳を揉みまくってやった。滅茶苦茶毛が舞い散った。
「丹恒とは別に付き合ってませんけど?」
「そうなのか?」
「
……好意は向けられているし言葉で伝えてもらっているけれど、俺は応えていない」
俺と丹恒の言葉に、三人とも目を丸くしている。
「だったらなおさらじゃない?」
「
……」
「
……」
丹恒と同時に拗ねた顔をしてしまう。
それを見た姫子とヴェルトは顔を見合わせ、それから困った子供を見るような表情に。
「ただいま~! あれ? どうしたの?」
買い物袋を両手に元気な声でただいまと告げるなの。キョトンと俺たちを見ていて。
「姫子、お土産! ヨウおじちゃんには、こっち」
と二人に渡していく。
「穹にはこれ! 丹恒にはこっち! 車掌さんには
……お手入れセット!」
それから俺と丹恒とパムに。
なんだか喧嘩をしていたのが馬鹿らしくなって。顔を見合わせて苦笑い。
「どうしたの?」
苦笑する俺たちを、彼女は不思議そうに見ていて。
「ううん。なののお陰で色々どうでもよくなっちゃった」
「そうだな。三月のおかげだ」
「行こう、丹恒。俺の部屋で、お土産見せ合おうよ」
「そうしよう」
丹恒の手を引いて、客室車両へ。
廊下を歩きながら、
「丹恒、ごめん。言いすぎた」
「俺の方こそ言い過ぎた。悪い」
足を止め、互いに頭を下げ合う。
「仲直りだ」
「ああ、仲直りだ」
「俺、喧嘩をしたのって初めて」
「俺もだ」
「そっか。じゃあ、同じだ」
嬉しそうにふわりと笑う。
好きが募って胸が苦しい。今にもあふれ出しそうだ。
抱きしめてキスをして。とかしたいけれど、今の俺にはそんな権利がなくて。
でも、それを許されるような関係になりたいという気持ちは今でも変わらない。
「喧嘩をすると、ちょっと胸が痛いなって思った」
「ああ」
「だから、その
……その場の勢いで思ってもいないこととか言っちゃうの駄目なんだなって」
「そうだな」
「だからね、丹恒。もしこれからも喧嘩をしたとしても、今みたいにすぐに仲直りしよう」
「ああ」
「指切り」
「指切り?」
「約束するってこと」
「わかった」
小指を絡める。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.