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稲尾
2024-07-31 18:34:48
2681文字
Public
一次創作
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【創作BL】虚栄に身を捧げ、そして 1-1【オメガバース】
※R18作品となります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
※「オメガバース」の設定に独自解釈を加えています。オメガバースそのものが苦手な方には不向きな作品です。
【あらすじ】
現代日本、20XX年。男性オメガが日本の総人口の3%しか存在しないとされている社会。
男性かつオメガ性を持つ本名不詳の青年ライは、今日も金を稼ぐために自分自身を着飾ってオークションの真似ごとで自身を売りさばこうとしていた。しかし、その日会場に現れたのは相場より高い金を何も考えずに出してくるような大学生で……。
現代日本、20XX年
――
この国における男性オメガの割合は、総人口のおよそ3%未満。珍しい存在ではあるが、この世界に必要かと言われると微妙な話だ。生殖についてはベータ同士でほぼ事足りているし、オメガ同士で比べても子供を産むことに関しては女性オメガのほうが圧倒的に安定性がある。
確かにアルファ、ベータ男性に比べて多少は子供を産みやすい体型として生まれはするが、それでも元が男性である以上やはり無理のある構造になってしまっている、というのが本当のところだ。
ここは女性であろうが男性であろうが変わらない部分ではあるが、1~3ヶ月程度に1回性交以外のことが考えられなくなる
発情期
ヒート
なんてものが存在するゆえに、オメガたちの社会的地位はかなり低い。生殖の面で安定している女性オメガであっても真っ当な仕事には就けず、誰かの庇護の元生活するか夜の仕事をするぐらいしか選択肢がない。
となると、男性オメガというのはもっと面倒だ。
外見や肉体は男性であるのに1~3ヶ月に1回は発情期で駄目になる体質。数としての割合が少ないゆえに、進まない社会・周囲の理解。オメガ女性と比べても、男性オメガというのはより社会的地位が低く、虐げられやすい存在だと言える。
(だからこうして、僕が生き続けられているのは不思議なことなんだ)
一瞬だけ閉じていた目を開く。
開いた先に待っているのは、一見豪華に見える部屋に集まった物好きなアルファの男女たちだ。どいつもこいつも、この部屋に充満させた疑似フェロモンのせいかどこか落ち着きのない様子を見せている。
耐性のないアルファなら一瞬で
発情状態
ラット
に陥ってもおかしくない量を使っているから、今だけでも冷静なフリが出来るということは彼らはかなり”強い”アルファであることが伺える。
とはいえこの状態の彼らの中心に飛び込むなど、オメガとしては完全に自殺行為だろう。けれど僕はそれを恐れない。わざわざ前口上を長くしてまで彼らの理性を奪いたいのは、すべて金のためだ。
理性が飛んだ状態でなければ、こんな
オークションもどき
ままごと
に付き合おうとも金を出そうともする奴らではない。だからこそ、身の危険を承知でこんなやり方をするしかないんだ。
「さあ、お集まりいただいた皆様」
1回だけ大きく手を叩いて、改めて注目を自身へと集める。
血走ったアルファたちの目が一斉にこちらを向いた。この瞬間は言いようのない恐怖と興奮が綯い交ぜになって、背筋がゾクゾクと震えてしまう。
適当に目についた、前列に立っている男アルファの腰を撫でる。性的興奮をわざとらしく煽るような動作に、そのアルファは腰を震わせた。
「
——
今宵も、僕を使えるのは一人だけ。その権利をもらうには何をすればいいか、回らない頭でもわかるよね」
その台詞を皮切りに、僕の値段を叫ぶ声が部屋中に響く。呼吸だけ荒いまま押し黙っていた彼らも、いざ手の届く範囲に餌が近づいてきたとなると荒ぶらずにはいられないらしい。
当然彼らの言うこと全てを聞き取れるわけもないから、一人一人の側に近づいて改めて金額を聞き直していく。
「あなたは? いくらで僕を買うつもりなのかな」
「じゅ、十万だ」
十万。オメガの身売りと考えれば遥かに高い、けれどそれ一本で一月の生活費とするには無理のある金額。この金額から始まったのならもう少し刻みつつ上げてくれるだろうから、引き続き興奮しているアルファから値段を聞く。
「あなたはどう?」
「横のそいつが十万なら、俺は十一万!」
「私は十二万出せるわよ!」
最終的に、最高額を叩きつけてきたのは小太りなアルファの男だった。二十万、と彼が言ったのを聞いた途端に、会場からは僕の値段を叫ぶ声が聞こえなくなっていた。
……
二十万。いくら男オメガが貴重とはいえど、ただ一人のオメガの売りでそこまで出すやつは珍しい。よほど手酷い扱いをされる覚悟をしておく必要があるな、と心の中で考えた。〝最高額〟の男に、僕は改めて向き直る。
「
……
それじゃあ、今日の僕の時間はすべてあなたに捧げるよ。横の部屋に
——
」
「三十万」
適度に低く、よく通る声。それがありえない値段の吊り上げ方をしたのを聞いて、部屋は一瞬だけ静まる。けれどすぐに、その声の主
——
僕に殺到するアルファたちから離れ、壁にもたれかかっていた若い男
——
に視線が集まった。
「三十万。たぶんこれ以上はいないよね」
抑揚も少ない平坦な声が部屋に響く。とても疑似フェロモンに浮かされているとは思えない冷静な声で言うものだから、まさか効き目が切れているのか? と疑ってしまう。
〝現最高額の男〟が壁から離れて僕の方へと歩み寄ってくる。けれどその途中で〝元最高額の男〟が、彼の肩を掴んだ。
「おいおい、金のまともな使い方も知らないガキがそんなに出せるもんか? 見栄張ってんじゃねえぞ、このオメガは俺のモンだ!」
「
……
〝俺のモン〟?」
〝現最高額の男〟が、小さく呟いたのを僕は聞き逃さなかった。その声には明らかな怒りが含まれている。彼は懐から封筒を取り出して
——
その封筒で〝元最高額の男〟を思いっきり叩いた。
「三十万入ってるからそこそこ痛いんじゃない?」
得意気にそう語る〝現最高額の男〟。呆気にとられていた〝元最高額の男〟の顔が、どんどん真っ赤に染まっていくのを見て、僕は「まずい」と感じる。
……
この
オークションもどき
ままごと
には、ルールというルールがない。そもそも主催者である僕が疑似フェロモンなどというものを部屋中にばら撒いて入札者から理性を奪っている時点で察されるところだが、だからこそ些細なきっかけで暴力沙汰になることも当然ある。
誰もが理性を失っているこの部屋では、一人が暴言を吐けば皆がそれに続く。同じように一人が一人を殴ればそれがすぐに連鎖する。
だからこそ
——
今の状況は非常にまずい。
〝現最高額の男〟の手を引いて、僕は部屋を飛び出す。少し離れた場所にある別の部屋に無理やり二人で飛び込んで、すぐに鍵を掛けた。当然追いかけてきたのだろう、すぐにドアを叩く音がし始める。
「黙らせてくる」
拳を握りしめてドアの鍵を開けようとする〝現最高額の男〟を僕は手で静止した。
静かにしろ、時間がある程度過ぎるまで待て、というかお前の言動のせいでこうなったんだ。
……
そういった意味を含んだ静止だ。それを汲み取ってくれていたかは定かではないが、彼は一応黙り、動かずにいた。
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