usauta777
2022-03-10 19:14:18
6899文字
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おででんむかしばなし-1- シンデレラ

おで傳
・出オチ
・クソ文章
・ヒマでヒマでもうどうしょうもない人向け

 むかしむかし、あるところにお金持ちがいました。
 奥様はひとり娘を遺して亡くなっていました。
 お金持ちはとても困っていました。
 ひとり娘は身の丈十三尺六寸、頭にお盆を乗っけたような髪型の、おでんが大好きな筋骨隆々とした豪快な娘でした。
 この時代は娘の定義があやふやだったのです。
 娘は町に出ては家の金を使い込んでは放蕩三昧、飲むわ買うわ打つわで町のお尋ね者でした。家にいても大人しくしているかというとそんなことはなく、とにかく大量のおでんを煮ては食べ煮ては食べしていました。
 お金持ちは疲れました。それでかわいい娘をふたり連れた新しい奥様を迎えることにしたのです。
 奥様は身の丈十五尺を越える見事な恰幅をしていました。娘たちもそれに引けを取らない体格です。
 お金持ちは「これで娘も静かになるだろう」と思いました。
 たぶんお金持ちはひとり娘の破天荒な姿にいささか目が曇っていたのです。
 新しい奥様はやはり自分の娘をかわいく思い、まま娘を少しも可愛がりませんでした。
 それでもまま娘はきままに大鍋でたくさんのおでんをつくっては、その大きな鍋を火にかけた残り火の隣で平気で寝ていました。
 まま母に可愛がられてきれいな姿で生活している姉妹たちと比べて灰だらけです。
 おでんが大好きで灰だらけなので、まま娘はまま母や姉達におででれらと呼ばれて馬鹿にされたりドン引きされたりしていました。
 なんせ、まま母や姉妹たちは毎日おででれらが作った大量のおでんを食べさせられるのです。
 「別のものを作れないのか」と言うのですが、おででれらは頑なにおでんしか作りません。おでん以外のものを作らせようとするとあからさまに嫌そうな顔をするのでした。
 そんなある日、お父様は珍しい市に出かけてゆくことになりました。
 そこで娘たちに「どんなお土産がいいか」と聞いてみました。
 すると最初の娘は「きれいなお洋服」と答えました。
 次の娘は「かわいい髪飾り」と答えました。
 おででれらは「大根買ってきてくれ」と答えました。
 今日のおでんにする大根が足りなかったのです。
 「家に帰ったら今日もおでんか……」とお父様は思いました。でも奥様も姉妹たちも台所に立ちませんので仕方ありません。
 お父様は市で最初の娘にはきれいなお洋服を、次の娘にはかわいい髪飾りを、そしておででれらには大根を買ってきました。
 その大根でおででれらはまた大量におでんを作りました。そしてみんなでたくさんおでんを食べました。
 おででれらはとにかくおでんが大好きでものすごい量を食べる。そんな毎日をおもしろおかしく送っていました。



 そのころ王子さまは大層退屈していました。王子さまはただこの偉そうな椅子に座っている生活が嫌で嫌で仕方なかったのです。
 家臣はみんな王子さまの言うことを聞きます。なんの不自由もありません。
 お金儲けが得意な王子さまは、政治を始めてからとにかくみんなに重宝されました。今までこの国にはあんまりお金がなかったのです。でも王子さまが王子さまになってからはお金に困ることはありませんでした。
 お金を持っていると、会う人会う人みんな王子さまにちやほやします。
 王子さまにとって、そこらの大人はみんなアホのように見えました。
 王子さまはなまじ若いうちに成功してしまったので世の中にこズレてしまったのです。
 そんな王子さまを見かねて家臣はみんな「お妃さまでもお探しなされたらどうですか」と言いました。
 立派なお妃さまがいれば、王子さまも笑顔になると思ったのです。
 そこである日、王子さまは沢山のごちそうを作って舞踏会を開くというお触れを出しました。
 王子さまはごちそうなんて大嫌いでした。どれを食べても同じ味です。
 それでもそのごちそう会は三日三晩続けることにしました。
 しかし王子さまは何も期待していませんでした。
 おででれらの家では、その話を聞いてまま母と姉妹たちが大喜びしていました。おでん以外のものが食べられるのです。
 それに、このごちそう会は王子さまがお妃様を選ぶためのものでもあるらしいのです。
 王子さまのお妃様になれば、きっとお金にはなんの苦労もありません。実際そんなことはありませんが、庶民はそう思うものなのです。
 でも、すくなくともお妃さまは毎日おでん以外のものを食べるかもしれませんね。
 まま母と姉妹は一生懸命筋トレをして、お腹を空かせ、着飾りました。
 おででれらはおでん以外のものに興味がないかと言ったら、案外そうでもありませんでした。
 ごちそうをおなかいっぱい食べられるのなら、その舞踏会だかごちそう会だかというのに行ってみたいものだと思っていました。
 しかしまま母はおででれらがそう言うと「お前は灰だらけなのだから、上等な服を持っていないでしょう」と言いました。
 お城に行くには上等な服で着飾らないといけないのだそうです。
「どうしても行きたいのなら、このわたしを倒してみせなさい」
 とまま母が言うものですから、おででれらは「まあそれならいいか」と思ってまま母を一本背負いで叩きのめしました。
 相手が十尺だろうが二十尺だろうがおででれらにはあんまり関係のないことなのでした。
 しかし、お城に来てゆく上等な服というのはどうしようもありません。おででれらは灰だらけの緋色の一張羅しかもっていませんでした。
 おででれらが「じゃあしかたねえな」と思っていると、いつもおでんを作っている大鍋が輝いて、鍋の中からおでんの精がでてきました。
「そんなにごちそうを食べたいのですねおででれら」
 おででれらは「そんなでもない」と思いましたが、おでんの精がどうにかしてくれそうなので黙っていました。
 するとおでんの精は魔法の力で金や銀で紡いだ立派な着物を大鍋の中に出しました。
 おででれらはその立派な着流しに袖を通すと意気揚々とお城に赴きました。
 ごちそう会に参加していたまま母と姉妹たちは「あんな頭のやつはおででれらしかいない」と思いましたが、あまりに立派な着流し姿なのでなにも言えませんでした。
 何か言ってもまた一本背負いで叩きのめされてはたまりません。
 おででれらは用意されていたごちそうを片っ端から胃の中に収めはじめました。
 おでんもおいしいのですが、お城のごちそうもなかなかのものです。
 踊りや音楽を楽しんでいたお城のお客様は身の丈の大きなおででれらが次々にごちそうを平らげていく様子を見て驚きました。
 王子さまは用意していたごちそうがどんどんなくなっていく様子を見て、おででれらのその食べっぷりにすっかり見惚れてしまいました。
 おででれらに王子さまが「ちょっとよろしいですか」と声をかけようとすると「今食うのに忙しい」といわれて断られました。
 まったく王子さまのことなんて眼中にありません。
 王子さまはいつでも注目されて、ちやほやされて、おべっかばかりの生活だったので、おででれらが本心しか言わないことに胸を打たれました。
 しかしそれはお城の家臣が身分をわきまえた大人の知恵を持っていて、おででれらはそういう知恵とかを持っていないただ頭が悪かっただけということなのですが。
 とにかく王子さまにはとても新鮮に感じられたのです。
 王子さまは料理長にどんどん料理を用意させて、おなかいっぱいになったおででれらをとっ捕まえてしまおうと思いました。
 するとおででれらは「さすがに食べすぎたか」と思ってお城の人に捕まる前に一目散に逃げ出しました。一応おででれらにもそういう良心めいたものがあったのです。
 王子さまはそのおででれらを一生懸命追いかけました。しかしおででれらには少しも追いつけませんでした。
 王子さまは知らないかもしれませんが、おででれらは二歳のときには二羽の兎を同時に捕まえるという駿足の持ち主だったのです。少しごちそうを食べすぎたからと言ってその足は少しも鈍ることはなかったのです。
 王子さまはおででれらを見失ってしまいました。
 するとそこへおででれらのお父様が通りかかりました。王子さまが「これこれこういう娘を探している」というと、お父様はおででれらがまた何かしでかしたに違い無いとおもって「そんな人は知りません」としらを切りました。
 王子さまは首を傾げてお城へ帰りました。
 次の日またごちそう会が行われていました。
 おででれらは肝の太い娘でしたので、昨日のことは忘れてまたおでんの精に立派な着流しを出してもらうとごちそうを食べにお城に出かけました。
 しかし、王子さまどうしてもおででれらを捕まえようとしていましたので、おででれらがごちそうに夢中になっている隙を突いて太い鎖で縛ってしまおうとしました。
 しかし、ごちそうをたらふく食べて精をつけたおででれらにとって、そんな鎖など屁のようなものでした。
 たちまち鎖を引き千切ると、お家に向かって目にも留まらぬ速さで駆けていきます。
 王子さまももちろんその後を追いかけましたが、やはり昨日と同じ場所で見失ってしまいました。
 その次の日、王子さまは一個大隊を用意して、おででれらを待ち構えていました。もちろんごちそうもたくさん用意しています。
 おででれらはもう案の定味をしめたもので、今日もごちそうをたくさん食べられるというのでワクワクしながらお城へ来ました。
 そして腕捲くりでもしそうな勢いでごちそうを食べ始めました。
 その食べること食べること。もう二日もごちそうを食べ続けているとは思えない食欲です。
 もしかしたらここ三日で一個大隊の兵站くらいはやっつけたかもしれません。王子さまはにわかに「一個大隊で足りるだろうか」と思いましたが、そこはもう仕方ありませんでした。
 満足気に帰ろうとしたおででれらに迷わず一個大隊をけしかけました。
 するとやはりおででれらは「やっぱり食べすぎたか」と思って、数百人の兵士相手に大捕物を演じてごちそう会はめちゃめちゃになりました。
 しかし王子さまには秘策があったのです。おででれらがいつも駆けてゆく城の階段。そこにとても強力な取り餅をしかけておいたのです。
 ものすごい速さで駆けていったおででれらは案の定取り餅に足を取られてゴキブリホイホイに引っかかったゴキブリみたいになりました。
 しかしおででれらは、かろうじてくっついていなかった拳で、大理石でできたお城の階段を叩き割ると、くっついた階段を背負って逃げ始めました。
 王子さまは大きな大理石を持ち上げてもなお駿足で遠ざかっていくおででれらに惚れ直してしまいました。
 しかし、もうごちそう会はおしまいです。城の家臣も「お城の食料が尽きてしまいます」と言ってもうしばらくごちそう会は開けなくなってしまいました。
 王子さまは困りました。どうしてもおででれらに会いたかったのです。



 おででれらはごちそう会でたくさんごちそうをたべられたので満足して、いつものようにおでんを大鍋いっぱいに煮ていました。
 今日も天気が良くておでん日和です。
 おででれらは鍋から箸でおでんを取っては食べ取っては食べをしながら大酒を飲み「やっぱりおでんは最高だな!」と思っていました。
 すると、高い空の向こうからそのおでんのいい匂いにつられたのかトンビがぴゅーんととんできて、恐れ知らずにもおででれらがたべようとしていた牛すじを掠め取って行きました。
 おででれらはとっさにそれを取り返そうとしましたが、トンビは素早く飛び去ってしまいました。
「おれのおでんを返せ!」
 おででれらはあっという間に遠くに飛び去り、豆粒のように見えるトンビに向かってそこらの小石を投げました。
 するとその小石は見事トンビに命中し、トンビは驚いて牛すじを落っことしてしまいました。
 牛すじは高い空から落っこちて王子さまの頭の上に落ちてきました。
 王子さまはどんなごちそうも美味しくないと思っていましたが空から落ちてきた牛すじを手にして「なんだかおいしそうだな」と思いました。
 家臣に「これなに?」と聞くと、どうやらおでんという食べ物の牛すじという具のようです。
 王子さまがそれを食べると今まで食べたことがないくらいおいしいのでした。
 それで今度は王子さまは国中に「おでんの牛すじをうまく煮れる者をさがしている」というお触れを出しました。
 するとみんな王子さまに気に入られたくて、一生懸命おでんを作って牛すじを捧げました。
 しかし、王子さまが気に入った牛すじを持ってくる人はいませんでした。



 おででれらのお姉さんたちは、王子さまが牛すじを探しているという噂でもちきりでした。
 おででれらが煮ている牛すじを持っていけば王子さまの覚えが良くなるに違いありません。
 まずは一番上のお姉さんがおででれらの煮ていた大鍋から牛すじを掠め取って王子さまに捧げました。
 王子さまがその牛すじを食べると、あのとき食べた牛すじと同じ味がします。
 王子さまは感動して身の丈十五尺、八十貫はあろうと思われる体の大きな最初のお姉さんをお妃様にしようとしました。
 これは王子さまの悲しい性で、王子さまは身体の立派な人が好みだったのです。
 しかし、そのときどこかから声が聞こえて来ました。
「ほんとうに この子がおでんを作れるのかい? おでんの作り方を聞いてみな」
 王子さまは「本当だ」と思って「こんなおいしい牛すじをどうやって作ったの?」とお姉さんに聞きました。
 でもお姉さんはおででれらの大鍋から牛すじを盗んできただけです。
 王子さまは「これは誰か違う人が作った牛すじだ」と思って、お姉さんをお家に帰しました。
 二番目のお姉さんはそれを知っておででれらにおでんの作り方を聞きました。おででれらはおでんが大好きでお人好しでしたので、そんなことを聞かれると嬉しくなって教えてしまいたくなるのです。
 そして二番目のお姉さんも大鍋から牛すじを取ると喜び勇んで王子さまに捧げました。
 やっぱりそれは王子さまがおいしいと思った牛すじで、王子さまはやはりおでんの作り方を尋ねました。すると二番目のお姉さんは、おでんの作り方をスラスラと話します。
 「今度は間違いない」と王子さまは思いました。しかし、またどこかから声が聞こえます。
「ほんとうに この子がおでんを作れるのかい? ちゃんとおでんを作らせてみな」
 王子さまは「そのとおりだ」と思って二番目のお姉さんを台所に連れて行っておでんを作らせようとしましたが、二番目のお姉さんも台所に立ったことがありません。ましてやおでんを作るなんてできませんでした。
 二番目のお姉さんが家に帰されると、おででれらは「どうやら世界で一番のおでんが求められているらしい」という噂を聞きつけました。
 おででれらはおでんが大好きでしたので、同じくおでんが好きな人がいるならばひと肌脱いでやろうと思いました。
 そんなわけで、おででれらは今度はいつも使っている大鍋を背負ってお城へと意気揚々と向かいました。
 そんなおででれらにお城は大騒ぎです。一個大隊を全滅させた輩が大鍋背負ってやってきました。
 しかし、王子さまはここで出会うのは運命だと思い、お城の大広間で大鍋を火にかけさせおででれらにおでんを作らせました。
 そのおでんのおいしいことおいしいこと。
 王子さまが大好きな牛すじの味でした。王子さまはおででれらに「どうかお妃様になってください」と言いました。おででれらはそんな面倒くさいのは嫌だったので断りました。
 毎日おでんを作っては食べ作っては食べしているだけの生活にも飽きていていたので、どこか他の土地にでも行こうかと思っていたのです。
 それを聞いた王子さまは、もう王子さまをやめてこの人についていこうと思いました。
 おででれらはそんくらいめちゃくちゃ王子さまの好みだったのです。
 「お妃様をもらえばいいのでは?」安易にと思っていた家臣たちは焦りました。まさか王子さまが王子さまをやめるほどぞっこん惚れてしまう相手がいるとは思わなかったのです。
 全員でどうにか止めようとしましたが、王子さまは言うことを聞きませんでした。
 こうして王子さまはおででれらと諸国漫遊の旅に出かけました。お城の生活と違って旅の生活は思い通りにならないことばかりでしたが、王子さまはぞっこん惚れた相手と一緒で幸せでした。おででれらはあんまりなんにも考えてませんでした。
 一方、王子さまが王子さまをやめたせいで、国は貧乏になってしまいました。
 でもおででれらが旅に出たおかげでおででれらのお父様とお母様、そして姉妹は毎日大量のおでんをたべさせられることはなくなりましたとさ。

 めでたしめでたし