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usauta777
2022-03-05 09:24:01
6194文字
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塔の上の魔法使い
スネオセ。エロがどうしても入らなくて6000にしかならなかったのでここで供養します。アホギャグむかしばなし。
むかしむかしある所に一組の夫婦がおりました。
夫婦には元気な赤ちゃんができましたが、生まれてすぐに悪い魔法使いに攫われてしまったのです。
赤ちゃんは魔法使いに育てられました。
それでも夫婦は赤ちゃんの幸せをいつまでも願っていました。
我が子が不幸になりませんように。
幸せになれますように。
しかし、大きくなった赤ちゃんは、大変な人と恋に落ちてしまったのです。
※
塔の上は何もかもあるとおせんつぇるは思っていました。
外が見える窓。
流れていく雲。
小鳥のさえずり。
胸おどる音楽。
おせんつぇるは歌を歌うのが好きでした。それから、夜、窓から見上げる星のひかり。
星々は静かに瞬いています。それを見上げているとおせんつぇるは時間も忘れるように思いました。
おせんつぇるは歌を歌いながら髪を梳かしていました。長く伸びていくおせんつぇるの髪はきれいなプラチナ色でしたが、おせんつぇるはそんなことは気にもとめていませんでした。
他の人がどんなものか、おせんつぇるにはよくわからなかったのです。
おせんつぇるが知っているのはただ一人。昼間訪ねてくる魔法使いです。
魔法使いはおせんつぇるに食べ物を渡していきます。おせんつぇるはその小麦でパンを焼き、野菜でスープを作って暮らしていました。
しかし、魔法使いもその顔を深いローブ包んでいます。
おせんつぇるはもう長いことこの魔法使いと一緒にいるはずなのに、それがどんな顔だったのか思い出すことができませんでした。
魔法使いはおせんつぇるを塔の上に閉じ込めたと言っていましたが、おせんつぇるはそれがどういうことなのかわかりませんでした。
おせんつぇるにとって、塔の上にいるのはそう悪いことでもなかったのです。
ただ、時折昔のことを思い出すのでした。
それはおせんつぇるがまだ塔の上で生活していなかった頃のことです。
青い星の瞬きを見ていると、何かを思い出しそうで思い出さない。
おせんつぇるはそれを不思議に思っていました。
※
ある夜のこと。
森の中を歩いていた王子さまはお腹を空かせていました。
王子さまは新たな国を作る放浪の旅の途中でした。
しかし、人一倍お腹が空きやすかったのです。
王子さまは蜂の巣を落としてはハチミツを食べ、森の生き物を獲っては焼いて丸かじりしていました。
最初は白い馬に乗っていたのですが、あまりにお腹が空くので馬もおいしく食べました。
基本的に動くものはなんでも食べるのが王子さまの主義です。
しかしここへ来て、結構前にキャプチャーして腐っていたアマガエルをそのまま食べてしまい、お腹を壊したにも関わらず、胃腸薬も底をつきてしまいました。キュアー画面でも治りません。
獲物をキャプチャーしたまま数日ゲームをプレイしない。たったそれだけのことなのに、キャプチャーした食べ物はほとんど腐っていたのです。
こんなことになるなんて。王子さまは考えていませんでした。
ヒデオ。なぜか王子さまはヒデオという名前が頭に浮かびました。全ての元凶はヒデオのような気もしてきます。でもヒデオが誰かはよくわかりませんでした。
お腹が痛くて記憶が混濁しているのかもしれません。
旅の最初に全部食べてしまったカロメと即席ラーメンの味が懐かしく思い出されます。
とにかく王子さまはお腹は痛いし、ペコペコでした。
普通の人ならどっちか片方くらいにしかなりませんが、王子さまのお腹は特別でした。
ウェポン画面の荷物がいつもより重く感じます。
王子さまは困ってしまいました。
やたらと残っているバグジュースは飲めないのかななどと思っていたそのとき、王子さまの野性的な嗅覚は食べ物の匂いを嗅ぎつけたのです。しかもこれは上等のものです。王子さまは匂いにつられて歩き出しました。
すると大きな塔が立っています。そこにははしご段もなく、出入り口もみあたりません。てっぺんに小さな窓があるだけでした。
しかしどうやら食べ物の匂いはそこからしているようでした。
王子さまは塔をよじ登り始めました。王子さまの前では出入り口のある無しなど関係ないことなのでした。
もちろん、普通の人はこの塔をよじ登ることなど到底できません。王子さまは特別変わった体質なのでした。
おいしいご飯のある場所にならどこでもいくのです。
小さな窓の前まで来ると王子さまはトントンと戸を叩きました。
「すまない。誰かいるのか。何か食うものはないか?」
おせんつぇるはその声に驚いて閉じていた窓を開けました。すると王子さまは「助かった」と言いながら塔の中に入ってきました。
王子さまは髭もじゃの大男でした。おせんつぇるは初めて見る他の人の顔の半分が髭なのでとても驚きました。
しかし、おせんつぇるは王子さまが困っている話を聞いて温かいスープとパン、それからお腹のお薬を渡してあげました。
王子さまはそれを受け取るとフード画面でスープとパンを食べ、キュアー画面で胃腸薬を使いました。
「最高にウマい!」
おせんつぇるは王子さまのその様子を見て特に何とも思いませんでした。
自分以外を知らないおせんつぇるは、他の人はそういうものかもしれないと思ったのです。
王子さまはお腹が落ち着いて「おや?」と思いました。画面の右上に「R1」の表示がでています。
王子さまは初めておせんつぇるの顔をまともに見ました。今までお腹のことばかり考えていて気づかなかったのです。
おせんつぇるはプラチナ色の長いブロンドと、長いまつ毛に縁取られたアイスブルーの瞳、そして高い鼻に薔薇色の唇をしていました。
はやい話、王子さま好みの顔をしていたのです。
「いきなり押しかけてすまなかった。だが、パンとスープの味は見事だった。いいセンスだ」
「いい
……
センス
……
」
おせんつぇるは王子さまの目を見つめ返しました。それはまるでいつも窓から見上げている青いお星さまのような色でした。
それに、おせんつぇるはその言葉をどこかで聞いたことがあるような気がしたのです。
ふたりはそうして見つめ合うとたちまち恋に落ちてしまったのです。
※
それから夜な夜な王子さまはおせんつぇるに逢いに来ました。
おせんつぇるは、王子さまの名前がジョンということを教えてもらいました。
おせんつぇるも、自分の名前をアダムスカと名乗りました。おせんつぇるは魔法使いがアダムスカにつけた名前です。
「ジョン」。シンプルな名前です。でもおせんつぇるはそれがとても素敵だと思いました。
王子さまの低い声で話しかけられると、優しい青い瞳で見つめられると、大きな手で触れられると、おせんつぇるは胸がどきどきしてたまりません。
王子さまは塔の外のことを何も知らないおせんつぇるに少しづつ色々教えてくれました。
外の世界にはもっとたくさん、いろんなものがあること。いいもの、わるいもの。いいけど、わるいこと。
「いいけど、悪いこと?」
おせんつぇるは不思議に思いました。
王子さまはおせんつぇるの腰を抱き寄せると胸元に手を当てました。
「ドキドキしてるな」
「ドキドキ
……
します
……
」
おせんつぇるが素直にそう言うと、王子さまはおせんつぇるの薔薇色唇にそっとその唇を合わせました。
「いいけど、悪いことだ」
「
……
ったしかに
………
いいかもしれないけど、でも、これが、悪いことなのですか?」
おせんつぇるは顔を真っ赤にして言いました。
「魔法使いはお前を誰にも知られたくなくてここに閉じ込めたんだろう? なら、俺はもうお前のことをどんどん知りはじめている。これは悪いことだ」
「魔法使いにとっては、でしょう」
「ああ
……
」
「なぁ
……
ジョン、もう一回さっきの
……
」
「もう一回?」
「もっとたくさんしたい
……
」
「そうか
……
」
王子さまはおせんつぇるの顎先をとって抱きしめました。王子さまの唇は触れるだけでなく、幾度も薔薇色の唇を優しく食んで、おせんつぇるは体の奥が熱くなると思いました。
王子さまが幾度も唇を吸うので、おせんつぇるは荒く息をつきながら言いました。
「ジョン、体が、おかしい
……
」
「どこが?」
「はぁ
……
わからない。全部、ぜんぶ
…
熱い」
おせんつぇるがやっとのことでそう言うと、王子さまは鼻息荒くおせんつぇるをベッドに押し倒しました。
木のベッドはふたりの体を受け止めてギシギシと音を立てました。
王子さまの節くれだった手がおせんつぇるのシャツを脱がせて肌を撫でました。その肌は淡く、王子さまは悪いことをしていると思いました。
でも止めるつもりはありませんでした。
おせんつぇるの長い髪はシーツの上に投げ出され、長い間日の光に照らされなかった白い肌はみずみずしく王子さまを誘惑しました。
王子さまはおせんつぇるを優しく抱きしめました。
※
魔法使いは怒っていました。おせんつぇるの様子が明らかにおかしいのです。
小鳥と歌い、無邪気に過ごしていたおせんつぇるは今までとどこか違って、時折頬を薔薇色に染めながらため息ばかりついているのです。
それにおせんつぇるはこの頃お腹が大きくなってきていました。
王子さまとの間に赤ん坊がてきたのです。魔法使いは烈火の如く怒りました。
魔法使いは王様の手先でした。
王様は新しく国を作って、より良い世界にしようとしていたのです。魔法使いはそんな王様のためなら何でもすると思っていました。
そのためにはおせんつぇるは邪魔だったのです。
だから塔の上に閉じ込めておいたのです。
魔法使いは、嫌がるおせんつぇるを縄で縛り、夜、王子さまが塔の上に登ってくるのを待っていました。
王子さまがいつものように塔の中に入ると、そこには深いローブに顔を隠した魔法使いと、縛られたおせんつぇるがいました。
魔法使いは言いました。
「俺の大事なものを土足で踏み荒らしたのはお前だったか」
老人の声に王子さまは目を釣り上げました。
「アダムスカを返せ」
その言葉に魔法使いは怒りました。
「返せだと? それはこちらのセリフだ」
魔法使いは目にも留まらぬ速さでガンホルダーからリボルバーを抜くと、王子さまの目を狙って撃とうとしました。
しかし王子さまも負けてはいません。素早い武器切り替えでM1911に持ち替えたかと思うと、魔法使いの頭を狙って撃ち抜きました。
「ぐうっ!!」
一瞬はやく、魔法使いの放った弾が王子さまの右目を掠りました。
王子さまの放った弾は目深に被っていた魔法使いのローブを捲りました。
魔法使いは、プラチナブロンドに白髪の混じったアイスブルーの瞳の老人でした。
おせんつぇるは王子さまに駆け寄りました。王子さまの目からは血が出ています。おせんつぇるはどうすればいいのかわからなくて魔法使いの顔を見ました。
すると、魔法使いは悲しそうな顔をしました。
おせんつぇるは魔法使いがなんでそんな顔をするのかわかりませんでした。
魔法使いは王子さまを塔の上から投げ捨てようとしました。おせんつぇるは必死にそれを止めようとしました。
すると足を滑らせて王子さまとおせんつぇるは塔の上から真っ逆さまに落ちて行ってしまいました。
※
魔法使いは、生まれてすぐに悪い魔法使いに攫われて、両親と引き離され、魔法使いとして育てられました。
それでも魔法使いはある人に恋してしまったのです。
その人は王様の器を持った人でした。
この王様の願いを叶えたい。
魔法使いは毎日王様のために働きました。でも、魔法使いの王様への気持ちは邪魔なものだったのです。
魔法使いは誰にも知られないように、王様への気持ちをおせんつぇるとして塔の上に閉じ込めました。
この塔は、大事な大事な魔法使いの真心です。そしておせんつぇるは魔法使いの大切な初恋そのものでした。
なのにどこからどう迷い込んだのか、王子さまに見つかってしまったのです。
それは若い頃、国を作るために放浪していたの王様の姿でした。
魔法使いは諦めたのです。
自分の本心を隠していても、いままで辛いことしかありませんでした。
それでも若い王様は、魔法使いのほんとうの気持ちをみつけ出してしまったのです。
※
塔から落ちた王子さまは腕の中にいるおせんつぇるを見ました。
幸いケガはなさそうです。声をかけるとおせんつぇるは気がついて王子さまの首に抱きつきました。
王子さまの強靭な体がクッションになってふたりとも無事だったのです。
王子さまは目がくらむほどの高い崖からブチ落ちても、何百メートルという滝の上からダイブしても生き残れるくらい頑丈なのです。
塔の上など鼻くそのようなものでした。かすり傷もありません。
ただ、魔法使いに撃たれた目だけは痛々しい傷になっていました。
それでも、王子さまはお腹の大きなおせんつぇるが無事だったことがなにより嬉しいことでした。
「アダムスカ、ふたりで国を作ろう」
「国
……
?」
「ああ! たくさん子を産んでくれ」
王子さまはそこらで草を食んでいた馬をとっ捕まえて、その上におせんつぇるを乗せました。
そうしてふたりで新たな国を作る旅に出たのです。
※
一方、王様の所に戻った魔法使いは、困惑していました。
年老いた王様は、同じく年老いた魔法使いをまるで伴侶のように扱うのです。
魔法使いは困りました。魔法使いが閉じ込めておいた初恋は、若い王子さまと一緒にどこかに行ってしまったのです。
そこで魔法使いは気づきました。
タイムパラドックスです。
魔法使いの恋心は若い頃の王様と旅路に出たのです。それで、未来の姿と言ってもいい王様が様変わりしてしまったのではないでしょうか。
しかし、年老いてもなお精悍な顔立ちをした王様に抱きしめられると、魔法使いはあの頃の淡い気持ちを思い出すようでした。
王様は今まで二つの瞳でしたが、魔法使いが王子さまの目を撃ってしまったせいか、右目に眼帯をしていました。
でも残ったひとつの青い目はやさしく魔法使いを見つめるのでした。
それはまるで若い頃、初めてふたりが出会ったときのように。
「アダム
……
」
王様は魔法使いの名前を呼びました。そしてその頬を撫でながら、魔法使いのもう皺のある唇にその唇を押しあてました。魔法使いもそれに答えて王様の首に腕を回しました。
「ジョン
……
」
それは考えていたよりずっと悪いことではありませんでした。
魔法使いは、今までどうしてこんな簡単なことができなかったんだろうと思いました。
それから、王様と魔法使いはその余生をふたり寄り添って生きました。
王子さまとおせんつぇるもきっとどこかで幸せに暮らしているのでしょう。
そう魔法使いは思いました。
魔法使いのお父さんとお母さんもそれを空の上から見守っているのでしょう。
こうして悪い魔法使いに攫われた赤ちゃんはやっと幸せを掴んだのでした。
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