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べるどくん
2022-06-16 23:50:11
976文字
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降谷(無自覚)
自分が少しずれている、と感じはじめたのは小学校にあがってすぐの頃だった。
両親から授かった教育や学校で習った倫理を間違いだと思ったことはなく、反発したこともない。それはスーツに袖を通すようになった現在もだが、とにかく幼少期から道理にそぐわないものが許しがたかった。うまく言葉にすることができず手が先に出てしまう、よくいえば腕白な、悪しざまにいうなら乱暴な子供だったと思う。
小学生のとき、教室で飼っていた金魚にいたずらをした同級生の頭を殴りつけた。その後は自分も怒られた。
中学生のとき、テストでカンニングをした生徒をその場で槍玉に挙げ説教。その後は自分も注意された。
高校生のとき、部活で八百長を求められたので実力で捻じ伏せたあと、余罪も調べ上げ紙面にまとめて校長に提出した。その後は小言を言われた。
――
これら全ての行いを、まったく悔いていない訳ではない。怒られず、注意を受けず、小言も言われないような、もう少しスマートなやり方があっただろう。けれども自分は正しいことをしたという自負があり、やり方以外に悔いる部分はない。
世は正しくあらねばならず、自分はその世を肯定しており、守りたかったのだ。
そんな自分が、警察官という職を選んだのは必然だった。常に正しいことを求める自分が最も評価され、最も肯定される居場所にいる。にも、関わらず。
(最近、妙に焦る)
ぬるくなったコーヒーを一気に胃に流し込む。空になった紙コップの隣には、未だ並々と注がれた黒い液体が、風見裕也の横顔をゆらと映していた。
「出来上がりましたよ、降谷さん」
「ありがとう。夜更けにすまなかった、助かったよ」
「いただいたコーヒー代くらいは働けましたかね」
疲れた表情で謙遜する風見は、まとめた資料を僕に渡したあと、ようやくコーヒーを手に取った。作業班として連絡を取り始めたこの男の評価が、僕はなぜだか気になって仕方がない。
昼夜問わず無理を強くのに、彼はいつだって応えてくれる。どこまで応えてくれるだろう。なにをしたら僕は否定されるのだろう。探りながらの毎日は、どこか、駆け引きのような
――
僕の愛する正しい世界は、いつだって僕を肯定する。
けれど君はどうだ。僕のことを、君は。
(どうして国よりなにより、君に肯定されたがっているんだ、僕は)
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