さちこ/Sharia
2024-07-28 11:40:23
1235文字
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心中大嵐

蒼天後のはなし

自分の心の狭さに気づいてしまった。
心臓のずっとずっと奥がズキズキと痛む。頭のてっぺんはホワホワしてて、お腹のずっと奥はキュンキュンと鳴いている。
ギュッと噤んだ口の中で、わたしは大いに叫んだ。

(わたしの弓、人たらしにも程がある!!!!)

だって、だって、だって!
いろんな土地でいろんな人と交流するのはまだわかるけど、絶対に気に入られて帰ってくるんだもん!
そりゃあ、アルフィノは一回ぽっきり折れて立ち直ってから素直でいい子で諦めの悪い最高の相棒ですけど? あの子の唯一の矢はこのわたしであって、ぽっと出の誰かに取られていいものじゃ───────

(いけない、いけない……)

ぶんぶんと頭を振り、雑念を飛ばす。
そもそもアルフィノが矢を替えることなどあり得ないのだ。これはわたしが勝手に暴走した結果であって……
エスティニアンの時だって慕ってはいたけれど、わたしから離れなかったのだから。大丈夫、大丈夫……

「ンなわけあるか──────────ッ!!!!!!」

衝動で近くにいた大型モンスターを蹴り飛ばす。討伐対象だからヨシ!
大声に驚いたのか、周囲の小さい獣がぴーっと逃げ、鳥がバサバサと飛び立っていった。

捨てられちゃったらどうしよう。わたしより魅力的な子だったらそっちにいっちゃうかも……!?
そんなの嫌だ嫌だ嫌だ〜っ!!

心の中のわたしが大暴れしている。駄々を捏ねて、デシデシと心の柔らかいところを踏みつけ変形させている。
理性ではわかっているのだ。わたしに彼の矢であり続けるという決定権などないことを。
それでもわたしはあの子の側に居続けたくて。

(あれ、どうしてこんなに隣に居たいんだっけ)

それは、あの子が支えてなくちゃ折れちゃいそうだからで。
あれ?でもあの子はもう一人で立てるはず。

(じゃあどうして、ヤ・シュトラやタタルちゃんがあの子の隣にいるだけで、こんなに心が痛いんだ?)

……わからない。
心臓のずっとずっと奥がズキズキと痛む。頭のてっぺんはホワホワしてて、お腹のずっと奥はキュンキュンと鳴いている。
一際痛い鼓動が全身に響いている。
苦しい。辛い。しんどい。

(そこにいるのは、わたしであるべきで)

わたしには決定権などないのに。そんなこと誰が決めた?
アルフィノの隣に居るのが至極色のヴィナ・ヴィエラだと、一体誰が決めたのだろう。
心臓がうるさくて、顔が熱くて。

(あの暖かで優しい光を独占するのは、わるいことではないか)

そう自分に言い聞かせるように心の中で呟いて、最後の討伐対象を射抜いた。
後ろから小さな足音が駆けてくる。

「シャリア!」

振り返れば、キラキラ輝く銀髪が揺れている。
優しげに細められた青い瞳は、今日も蒼天の輝きを宿していて。

「終わったよ、アルフィノ」

柔らかくて透き通った声に、わたしは今日も返事をした。

やっぱり、心臓はずうっとうるさくて……
本当、嫌になる。