バラ肉
2024-07-25 20:51:56
4824文字
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ないしょのはなし(ニンブロ)

ニンジャのあみあみ部分を「スケベ」だと言ってしまったブロの悲劇。ギャグです。ニンジャが優しくないけど、ブロに参ってます👍

ザ・ニンジャはその名の通り忍者超人である。

どんな時も冷静沈着、冷酷無比。例え自らの命を賭しても任務を全うするのが彼のモットー。誰よりもストイックで、しかし内に秘めた闘志は青白く燃える男――それが世間一般のニンジャのイメージであり、彼自身も己をそう自認していた。

無論、間違っても、

「そういや、前から気になってたんだけど……ニンジャのインナーって、なんつーんだ? どう言う機能なの?地味にすけべだよな」

などと、そんな戯言を言われる筋合いは微塵もないのだ。
なので、反射的に睨んだ目に相手を射殺さんばかりの殺意がこもっていても仕方ない。

……は?」

まるで地の底を這うような低い声に、言った本人であるブロッケンJr.は思わずギクッと肩を揺らした。彼にしてみれば、何気ない会話の一コマとしてのつもりだったのだろう。こんな筈じゃなかった、と思ったよりも数倍悪い反応に、焦りの色が浮かぶ。

「ちょ、そんなに睨むなよ! それに、言い出しっぺはオレじゃなくて前に酔っ払ったバッファローマンだっての! オレは飽くまで聞いてただけ。あとついでに同意してたのはアシュラマンだけだからな!」

妙に早口になる訂正と一緒に、ブンブン!と音が立つほど顔と両手を左右に振る姿は必死の一言だ。
強張った顔色を見るに、本人がどれほど安易に言葉を吐いたか安易に想像がつくというもの。

……相変わらず、短慮にも程がある)

だからか、それら全てを分かった上で尚、ニンジャは追求の手を緩めなかった。

「誰の言(げん)であろうと、今このときに拙者を愚弄したのはお主で違いない。そうだろう」

そのまま、ずいっとブロッケンの顔に顔を寄せる。間近に映る表情には一切の情がなかった。まるで悪魔騎士時代を思い出させるプレッシャーに、ブロッケンは無意識に口元を引き攣らせる。

「いやその。あー、えっと、でもっ……まあ似合ってるんだから良いじゃねぇか」

どうにか頭を捻って言い繕おうとするも、何を言えば正解なのか答えは出なかったのだろう。最終的に出てきたのは見当外れな言い訳でしかない。

(ここに来て、フォローの言葉がそれか……!)

故に、ニンジャは呆れるを通り越して頭が痛くなった。
もしこれが他の正義超人なら「仕方ないな」で済ますのかもしれない。
『まったくブロッケンは』
苦笑しながら頭を小突いて終わり。ブロッケン以上にはちゃめちゃなキン肉マンに鍛えられた彼等なら、それでチャラにしてくれるに違いない。ーーが、残念ながら今ここに居るのは、人の良さとは真反対の元・悪魔超人である。
いくら理由が大したことなくても、自分が貶められた事実を簡単に許すほど、ザ・ニンジャという男は甘くなかった。

「そもそも、これは装飾品として着ているわけではないのだ。忍者時代に使用していた鎖帷子を軽量化したもので、飽くまでも身を守るために着ているに過ぎぬ。……でなれけば、こんな重くてジャラジャラしたものを、お主たちの言うように好き好んで着るわけがない!」

滔々と語るつもりが、最後は戦いのために過酷な状況を耐えている現実に熱がこもったのか。
バッと襟元を広げて見せるニンジャに対し、目線の変わらないブロッケンは間近に見える鎖帷子についつい目を奪われる。

「へえー。網目のシャツかと思ってたけど、本当に防護用なんだな、それ」

反省しなければいけない立場だというのに、好奇心には勝てないらしく。
ツンツンと指でつつくと
「おおっ、本当だ! すごく、かたい……
と興奮気味に上目遣いで報告する姿に、ニンジャは「ウッ……!」と唸って視線を逸らした。あたかも、要らぬ妄想を掻き立てる態度に、頬が熱くなったのを誤魔化すように。

……小憎らしい奴め)

まさか自分の仕草が男の欲をくすぐるなど、露ほど思っていないだろう。むしろ、日本の伝統文化にキャッキャッととはしゃぐ無邪気さは一種の罪だ。
若さとはまた別の、本人の持って生まれた真っ直ぐさは、闇の中を生きてきたニンジャにはひどく眩しく、温かく。
これほど愛憎がごちゃ混ぜになることも滅多にない。

(ああ、全く……焦がれずにはいられない)

どうしようもない思いが腹の中で渦を巻く。
そんな苛立ちに、ニンジャは無性に彼にいっぱい食わしたくなった。
自分を貶めてくれた礼として、どう料理してやろうか。
何が効果的か探るべく、触れそうな距離にいるブロッケンの顔を見つめた男は――数秒後、にやりと口角を上げた。

……なあブロッケン。拙者のことをどうこう言ってはおるがーーお主の方こそ、とやかく言える立場ではなかろう」

「は? なんでだよ」

訝しげな目と目が合うのを合図に、彼はそっとヘッドギア越しの耳へ唇を近付ける。そして、詰襟に輝くクロスを弾きながら、囁くように告げる。



「素肌に軍服、というのも……

人によっては十分やましく見えるぞ?」



「っなーー!?」

レスリングパンツ姿で戦う父と違い、ブロッケンJr.はリング上でも軍服を着用している。しかも、すぐ脱ぐ割に首元まできっちりと留めるところまでがデフォルトである。それはきっと、まだ年若い彼が舐められないように、少しでも箔をつけるのが理由に違いない。

とは言え、そのすぐ下が生肌なのはいかがなものか。

特に、最近では自分たちのキャプテン同様に胸元を見せるスタイルもするので、見るものによっては目のやり場に困ってしまう。

厳つい軍服から覗く、白く滑らかな肌。

それはニンジャの衣装同様、見るものによっては中々にエロチックに映ってもおかしくはない。
にも関わらず、己のこととなると話は違うのか。

「ばっ! オレのだって変な意味は無いぞ! 親父がそうしとけってうるさかったから仕方ねぇーの! ……というか今はオレの話は関係ないだろ」
だからこの話題は終わり!

強引に話を切る態度に、ニンジャはつい、ふんっと鼻を鳴らした。

(関係ないもなにも、元々はお主が振った話のくせに……

都合が悪くなると本題から目を逸らそうとするとは、全くとんだ甘ったれである。これなら、アイドル超人最年少のジェロニモの方がもっと建設的な会話が出来るはずだ。

(本当に世話が焼ける)

ニンジャは、不意に彼の親代わりをしているラーメンマンのことを思い出し、なんとも頭が下がる思いだった。
同時に、やはりこの男には一度灸を据える必要があるーーそう思った瞬間、思い立ったが吉日ではないが、ニンジャはぐちぐちと呟くブロッケンの胸元を掴むと、そのまま勢いをつけて後ろへと彼の体を押し倒していた。

「うわっ!?」

そして、ドンッ!と仰向けに倒れた体を労わる代わりに跨ると、両足でしっかりその胴体を挟み込み素早く腿に力を入れる。

「ぐっ、ぁ゛あっ!」

途端、締め上げられる苦しさに呻き声が上がった。
技巧派であることと忍び装束のせいで、超人の中では比較的非力に思われがちなニンジャだが、じつのところ全くそんな事はない。むしろ無駄な肉を削ぎ落とされた体はまるで鋼のように固い筋肉に覆われているのだ。
似た体格をしているとはいえ、基本的には運動神経と機転で勝負しているブロッケンでは、力だけの勝負となると比べものにならなかった。

「ちょっ! ニンジャ、退けって!」

案の定、いくら身をよじろうとニンジャの体はビクともしない。そもそも逃す気もないのだ。眼下で無様に蠢く男の姿を見る目は勝者の余裕に満ちていた。力を弱める代わりに酷薄な笑みが浮かぶ。

「逃げようとしても無駄だぞ?」

「っ!」

まるで獲物を舌先で転がす蛇のような湿った眼差しに、背筋が粟立つ。
お遊びではない。言外に感じる空気にブロッケンは知らずのうちに額に脂汗を滲ませていた。

「ニンジャ、おまえどういうつもりだ!」
とはいえ、ブロッケンとて甘んじて拘束されるわけにはいかない。必死に抵抗を見せる。

……いちいち喚くな。悪ガキめ」

しかしニンジャの態度はどこまでも冷たかった。
普段の達観した態度とは違う、その本質でもある悪魔超人の顔を覗かせる男に慈悲はなく。

「ッァ……

ブロッケンは堪らず息を呑んだ。勿論、その動揺した隙をニンジャが見逃すわけもない。
体から一瞬力が抜けたタイミングで、男は両手で軍服の襟首を掴む。と、ビリビリィッ!! 一気に、両側へと服を乱暴に開かせるではないか。

「え、な……っ!?」

飛び散ったボタンがコロコロと床を転がる。
呆然とそれを目で追うブロッケンを尻目に、ニンジャは目の前に曝け出された真っ白な胸に目を細めた。
多少は小さな傷はあるものの、吸い付くような肌は基本的には滑らかで艶やかだ。また、両側についた乳首は男にしてはややふっくらしており、こうしてじっくり見ると服のコントラストと合わせて酷く淫靡に見えてくる。

「こんなはしたない体をして、更に際立たせるような格好をしているくせに………

人のことを気にするより、自分を顧みる方が先だろうに。
ニンジャは皆まで言わず、誘われるようにブロッケンの胸元に手を這わした。

「ひやっ……つめた」

体温の低い手のひらが冷たかったのだろう。ぶるりと身震いする仕草は幼く、しかし鍔越しに見える瞳はやや濡れていて。

……やはり、仕置きが必要だな」

呟きながらブロッケンの胸元に顔を寄せると、ニンジャはそのまま大きく口を開きーー

ガブッ!

「っ゛〜〜!!!」

緊張に立ち上がっていた乳首に思い切り歯を立てたのである。

「い゛ッ、に、ニンジャ! ああ゛! は、はなッんん゛!!」

ギリギリギリッ

引きちぎらんばかりに噛み付く前歯に容赦はなく、ブロッケンはその痛みに慌ててニンジャの両肩を押し返した。無論、握力200kgのブロッケンの手で掴まれた肩はミシミシと音を立てるが、やはり痛みから本気は出ないのだろう。眉を顰めつつも、乳首を締め付ける力は弱まる気配はない。



……ッはあ」

ようやくニンジャが顔を離したのは、時間として数分程度だ。しかし、ブロッケンは乳首の痛みにすっかり目尻を濡らしていた。

「いきなり、な゛にするんだよぉ゛……

スンッと鼻を啜る音からして、相当痛かったのだろう。乳首なんて鍛えようもなければ、ましてや本来は攻撃対象ですらないのだ。きっと彼にしてみれば腕を引きちぎられるのと同等の痛みだったに違いない。

「うう゛……まだヒリヒリしやがる」

実際、歯形がくっきり付いた挙句、更にうっすら血の滲んだ乳首は見るからに痛々しい。綺麗なスモーキーピンクの乳頭が充血したせいで赤みを増している。
恐る恐る、状態を確かめようと指を伸ばすも、ほんの少し触れただけでチリッと痛む感覚に彼は思い切り顔を顰めた。

(これじゃあ、服が擦れただけでも痛いじゃねえか!)

自分の軍服と胸を交互に見比べて、苦虫を噛んだように眉間に皺が寄る。

「かかかッ! これで当分、素肌に軍服を切るのは難しいな」

そしてドヤ顔で笑いかけるニンジャに、ブロッケンはこれが彼からの仕返しだと気付き、恨めしげに奥歯を噛んだ。
頭の中に、かつてラーメンマンから言われた言葉がよみがえる。

『もっと考えてから行動しないと、お前はいつか痛い目を見るぞ』

中国四千年の歴史からの忠告は、やはりきちんと聞くべきであった。
甘く見ていた自分への手痛いしっぺ返しに、今更後悔しても遅いのだ。



***



翌日、ニヤニヤ顔のニンジャがブロッケンにこっそりとニップルをあげたのは本人達だけの秘密だろう。



また、それを嫌々ながらも装着している姿を隠し撮りするアタルがいたこともーー。