haru_haru0704
2024-07-24 19:04:16
1766文字
Public
 

汚い大人

カカロ×忌炎 全年齢
※マフィア×闇医者パロ

とある風評を耳にした。
──ゴーストハウンドのカカロは、まだ酒も飲めない年齢の少年に守られている腰抜けだ。

*
カカロはプライドが高い方ではない。自分について屈辱的な噂が流れたとしても、特に何とも思わないタチだ。
しかし裏社会で生きるためには、そのような噂を放置するのは御法度。
敵にも味方にも、ナメられれば死ぬ。
メンツというのは、この世界では何よりも重要なものだ。
だから、彼は忌炎のところへ向かった。
今回流れた風評の内容と、無関係ではないだろうと推測したからだ。

*
「で、何があった」
忌炎に尋ねる。彼は落ち着かない様子で視線を彷徨わせた後、話し始めた。
「・・・変な男が、お前について知っていることを教えろと言ってきた。だから追い返した」
その返答は、気に入らないものだった。
俺のことを知っているような人間を、追い返しただと?ひょろっちいガキ風情がか?
「もっと具体的に言え。何をされて、何をした?」
「何って・・・その・・・刃物で脅されたから、こっちもメスを構えて・・・それで、絶対に話さないと譲らなかったら、諦めて帰っていった・・・」
刃物で脅されて、メスを構えた?一体何を言っているんだ、このガキは。
俺について大した情報なんか持っていないくせに、わざわざ危ない橋を渡ったのか。
ふつ、と腹の底から怒りが湧き上がる。
「忌炎」
ぎゅっと拳を握る。
そして、忌炎の顔を殴った。
「っ・・・!?い、たっ・・・!」
手加減はした。多少、頬が腫れるくらいで済むだろう。
「なぜ余計なことをした。お前はただの闇医者だ、構成員でも何でもない。もし暴力沙汰になったら、お前は勝てないんだ。だから相手の要求を聞いて、大人しくしておけばよかった。違うか?」
痛そうに頬を押さえている忌炎に向かって、捲し立てる。
すると、忌炎はくしゃりと顔を歪めた。
「お、俺・・・お前のために、頑張ったのに・・・」
じわりと涙が溜まって、ぽろぽろとこぼれていく。
いつものように反抗的な態度を取ると思っていた俺は、呆気に取られた。
そして、後悔した。
最初から、きちんと会話をすればよかった。
「・・・泣くな、忌炎・・・殴ってすまなかった」
まさか、『お前のために』なんて言われるとは思っていなかった。
てっきり、俺は嫌われていると思っていたのに。
「っ、ひぐ・・・っ!」
忌炎はしゃくり上げながら泣いている。
俺が傷つけたから、泣いているのだ。
そう考えると、罪悪感で胸が痛んだ。
「悪かった、本当に・・・お前のことが、その、心配で」
「うそだ・・・っ」
「嘘じゃない。お前がもし死んだらと思うと、恐ろしくて仕方ない。こんな風に、特定の人間に心を割くなんて・・・俺は、どうかしている」
ああ、本当にどうかしている。
こんな甘ったるい感情を持っていれば、今後確実に命取りになるというのに。
それでも、止められない。
「忌炎。ここを畳んで、俺のところに来いと言ったら、怒るか?俺の目が届くところにいてほしい」
そう言うと、忌炎はきょとんとした顔になった。
「お前の、ところに・・・?」
「俺専属の医者としてな。お前のための家も用意するし、ボディーガードもつける。それから極力、お前が不自由を感じないように努力するつもりだ。・・・どうだろうか」
「・・・・・・」
忌炎は黙り込み、じっと考え込んでいる。
ひとまず涙は止まったようで、よかった。
「すぐに答えを出さなくてもいいんだぞ」
「・・・いや、行く。行きたい」
それは意外な答えだった。
自分から話を切り出しておきながら、忌炎が簡単に頷くとは思っていなかったのだ。
「俺・・・昔はお前のことが嫌いだった。普通に犯罪者だし、強引で嫌な奴だと思ってたから・・・でも、今は違う。お前がしょっちゅうここに来るのも、お金をたくさん置いていくのも、俺に怒るのも、全部お前なりの優しさだって、気づいたから」
「忌炎・・・」
思わず忌炎を抱きしめる。
この強がりな子供を、守ってやりたい。この薄汚い世界に汚されないよう、大切にしまっておきたい。
そんなことを思った。
自分自身が、薄汚い大人の筆頭であることには目を瞑りながら。

***
数日後。
カカロは忌炎を脅した男を見つけ出した。そして、殺した。