「おやおや。貴女とはチベット以来でしょうか、マドモアゼル。
おっと、私を睨むのはやめていただきたい。
ところで、かのシゲルソン氏はここにはおられないのですかな?
……は。いる?」
(カリオストロ伯爵 マイルーム会話11)
「ミスタ・シゲルソン!
おっと、偽名でしたな。
真名シャーロック・ホームズ。勿論存じ上げておりますよ。」
(カリオストロ伯爵 マイルーム会話12)
これについての情報の整理、考察、妄言です。
点と点を結んで星座を捻り出すのが趣味なだけの考察厨の戯れ言なので真に受けないでネ!!
情報整理
まず、2017年刊行のカルデアエースに収録されていた『英霊伝承 ~エレナ・ブラヴァツキー~』から重要な情報をピックアップします。
(ホームズの幕間でも触れられているお話だが、こちらが原作)
・西暦1891年6月23日。世間では死んだとされていたエレナとホームズ(シゲルソン)は、ヒマラヤ山脈の麓の村で偶然再会を果たし、同じ目的のために協力してヒマラヤの山嶺を進んでいた。
・二人の目的は、ヒマラヤ周辺地域で口伝でのみ伝えられる、『光纏う、翼ある魔獣』。
麓の村の老人曰く「現世と隠世の間を羽ばたくらしい」「見れる奴と見れない奴がいるらしい」。
シゲルソンは新種の動植物だろうと考えていたが、エレナはインドの神々にまつわる神秘であってほしいと思っていた。
・エレナは登山中、インドで出会ったある少年の思い出を語った。
その少年の名はナイドゥ。彼女が世話になったインド人一家の末っ子。
人懐っこく、いつもにこにこと笑っていて、
磨き抜いた黒曜石のようにきらめく美しい瞳をしていた。
「いつか、エレナさまが見るようにして世界を見てみたいです。ぼくにも、マハトマの声が届けばいいのにな」
・そうして発見した洞穴の中で、二人はキメラに襲われる。明らかに魔術師が造り出した合成獣であったため、神秘の隠蔽のためにエレナを始末せんとする時計塔の工作員の仕業だと思われた。
・黒装束に身を包んだ刺客たちを、シゲルソンは次々と撃退していく。
エレナは隠形の魔術で身を隠し、シゲルソンの奮闘と、逃げ去っていく刺客たちの姿を陰から見ていた。
或いは、彼らは正規の時計塔の刺客ではないのかもしれない。
それならこの練度の低さも頷ける。
法政科の陰謀でもどこかの科の暴走でもなく、個人の暴走の可能性もある。
・息をひそめて身を隠していたエレナは、洞穴の中を羽ばたく光る蝶?を見る。
それに気を取られてうっかり隠形を解いてしまった彼女は7人目の最後の刺客に見つかってしまう。
その刺客は体格からすると男性、二十代か三十代か。
誰も殺したくないと思っていたエレナだったが、このまま何もしないわけにはいかないと覚悟を決め、仕方なく迎撃することに。
・が、覆面の隙間から覗く
黒曜石のような美しい瞳を見て、エレナは目の前の刺客の正体に思い至ってしまった。
抵抗する意思を喪失した彼女は、されるがままにナイフで胸を刺されてしまう。
・刺客は身体強化と精神鎮静の魔術(某暗殺者集団が用いた
薬物みたいな)を使っていたらしい。
かつて無垢な少年であった彼はその才能を見事に開花させて、如何なる経緯によってか時計塔に身を寄せ、このようにして神秘の隠蔽を実行するための工作員として認められるまでに至ったのだろうか。いいや、違うかもしれない。聖堂教会や、社会の裏側に潜む他の数多の結社にだってエレナ・ブラヴァツキーは嫌われているのか?
「イレーナ!」
誰の声? ああ、シゲルソン。駄目。そんなに怒らないで。
ナイドゥを殺さないで。
それから、最後くらいはちゃんとエレナと呼んで頂戴な。
・『
秘密教義』第5巻の遺稿について、聴取を受けたアニー・ベサントは「そのような原稿は目にしたこともありません」と語ったという。
…………
7年前、私はこの雑誌を入手はしたものの、エレナの英霊伝承については正直流し読みでした。
ホームズの幕間を読んで、素直に時計塔の陰謀によって粛清されたものと思い込んでいました。
カリオストロが時計塔にタレコミでもしたのか? 時計塔と仲悪そうなのに?
エレナを刺した刺客の正体がカリオストロだったらどうしよう、それはさすがに最悪の想定だな
……と。
その後、埃をかぶっていたこの本を発掘して読み直し、この男が私の最悪の想定を遥かに超える邪悪だった可能性にぶちあたって背筋が凍りました。
まさか
……全てを知っていて、ナイドゥを利用したのか?
仮にそうだとしたら
…………なんという
………………。
そういえばカリオストロ、柳生さんの「外道が、ここにもいるか」のボイスの対象なんですよね。
少なくともおじいちゃんからしたら外道かあ~~~~。
考察:カリオストロはいつ二人と出会ったか?
エレナに関しては、元から顔見知りだったんじゃないかと思います。
「チベット以来」という言い方は、それ以前にもどこかで会っていたときの言い回しでしょう。
ただ、ホームズに関してはこの時が初見だった可能性が高い。
シゲルソンの偽名で呼ぶということは、彼がホームズと知り合ったのはいわゆる大空白時代のことのはず。
ライヘンバッハの滝に落ちてからワトソンの前に再び姿を現すまでの空白の三年間、1891年~1894年の間になります。
(ちなみにこの間、シゲルソンの偽名でチベットを旅していたというのはちゃんと原作要素らしい)
かつてインドに滞在していたエレナと、偽名を使いチベットを旅していたホームズ、別々にカリオストロと会った可能性は?
その可能性はありますが、だとしても彼はこの日二人が共にいたことを知っていたはずです。
でなければ、エレナに「かのシゲルソン氏は~~」とは尋ねないでしょう。
古い知己だったエレナとホームズはあの日、偶然か必然かの再会を果たし、共にヒマラヤの山嶺を歩いた。
そこに居合わせなければ、エレナとシゲルソンの間に交流があったとは知る由もない。
登山中の二人が第三者と出会う描写は一切ありませんでした。
そして、命を終えようとするエレナをホームズが看取る直前で、このお話は終わっています。
その後に何があったかはまだ誰にもわかりません。
考察:『光纏う、翼ある魔獣』について
光り輝くもの、翼あるものだということで翼を持った魔獣と伝えられていたけれど、その正体は『光り輝く蝶』だったということでしょうか。
ちょうどこれを書くために読み直してて思い至ったのですが、
「現世と隠世の間を羽ばたくもの」「見れる者と見れない者がいる」
これってつまり、死の近い者だけが見ることのできるモノだったということではないでしょうか。
だとすれば、エレナは最期にこれを見たけれど、ホームズには見えていなかったのか。
この小説の中には、エレナを『自由な蝶』に例える文が何度か出現します。
そして、ホームズは自身の幕間にて、彼女の最期を「誇りと輝きに満ちた」と語っていました。
エレナが見た光は彼女を看取りに現れた光り輝く蝶だったけれど、
ホームズが見た光は最期に微笑んだイレーナその人だったのかもしれませんね。
考察以下の妄言:なぜエレナは狙われたか?
仮に、カリオストロが黒幕だったとして。
初めはその目的がよくわかりませんでしたが、当時の世界情勢からなんとなくの憶測はできる気がしてきました。
英領インド帝国の時代。
支配下に置かれたインド人たちの英国への反発が燻る中において、エレナ・ブラヴァツキーは現地インド人たちから熱い支持を受けました。
エレナの興した神智学はインドの古代アーリア宗教をベースにし、英国が押しつけようとするキリスト教を否定するものだったからです。
そこで、エレナの評判を貶めればどうなる?
彼女は自分たちの味方と信じて協力していたインド人たちの心に、彼女への不信の種を蒔けば、果たしてどうなるか。
彼女を殺しに来たのは神秘の隠蔽を実行する魔術師などではなく、かつては無邪気に彼女を慕っていたはずのインド人の青年だった。
カリオストロにエレナへの恨みなどこれっぽっちもなかったことでしょう。
彼が求めていたものはただ一つ、混沌だけ。
支配者に対する民衆の叛逆心を煽れれば、誰を犠牲にしようが関係ない。そういう愉快犯なのだと思います。
考察以下の妄言:カリオストロは何をした?
カリオストロがこの件に関わっていたとしても、殺害を直接指示したかまでは怪しいと思っています。
少なくともこの襲撃事件に関しては、彼以外の誰か、時計塔でも聖堂教会でもない別の魔術結社がバックにいたと考えます。
彼には魔術は扱えませんので。
エレナはインドで歓迎され、バラモンたちから強力な後援を受けましたが、その栄光は長くは続きませんでした。
SPRが発表したある報告書によって、エレナ・ブラヴァツキーは人心を惑わす詐欺師だと糾弾され、彼女が積み上げてきた信用は一度地に堕とされたからです。
彼女はこの騒動をきっかけにインドを離れ、その後は英国にて執筆活動することになります。
関係者の告発とSPRの調査により、彼女の起こした神秘的現象はトリックだったとされた
……というのが史実ですが、型月エレナは本物の先天的超能力者なので、小手先のトリックに頼るとは考えにくい。
彼女の編み出した神智学についてあれこれ言うならともかく、彼女の生まれ持った神秘をインチキと貶めるには、そうだという証拠の偽造が要る気がします。
仮にカリオストロが何かをしていたとしたら、ここじゃないかと勘ぐっています。
王妃に直接は手を出さず、その評判に消えない泥を塗りたくった首飾り事件を思うと
……ね。
考察以下の妄言:カリオストロはいつ斃れたか?
1795年に獄死したとされるカリオストロが、1891年にまだ活動していたとなると、当然の疑問が浮かびます。
彼はいつ本当の死を迎えたのでしょうか?
個人的には、この事件の少し後に倒されていたのではないかと思っています。
イド終盤の巌窟王の生前回想で、カリオストロは『韃靼山嶺に坐した欺瞞の王子』と称されました。
この韃靼山嶺がヒマラヤ山脈のことだとすれば、巌窟王は最終的にヒマラヤまでカリオストロを追ってきたことになります。
巌窟王は復讐を阻むものたちを全て焼いたとエデは語っていました。
カリオストロもマイルームで巌窟王相手に「かつてのように私を焼けるか」と挑発していますので、実は倒されていなかったという可能性は低いように思います。
何より、巌窟王のカリオストロに対する態度は『終ぞ倒せなかった相手』へのそれではない。あれは一度終わったはずの因縁でしょう。
あともう一つ。
仮にカリオストロがこの後も長く活動していたとしたら、インド独立の歴史はもっと凄惨なものになっていた気がします。
特に、この後に登場するガンジーの非暴力・非服従運動の台頭など、彼が存命していたら許していなかったのではないでしょうか。
暴力に頼らない革命など、カリオストロが求める混沌とは程遠いですから。
妄言、或いは希望:探偵シャーロック・ホームズ
エレナは無念にもホームズの目の前で殺害されてしまいました。
言うなれば、これはエレナ・ブラヴァツキー殺人事件です。
ならば、探偵のすべきことは決まっています。
この事件を解決してほしい。後ろで嘲笑う誰かを引きずり出してほしい。
あと、彼にはもう一つやっててほしいことがあります。
それはナイドゥを守ることです。
ホームズはしっかり峰打ちで済ませましたが、あのままあの子を放っておくのはまずい。
あの子の背後に誰かがいたとして、用済みになった駒を消しに来ないわけはないんですよ。
どうか、ナイドゥを殺さないでと願ったエレナの最後の想いに応えていてほしい。
そういえば、ここからホームズ経由で巌窟王へ繋がっていった可能性もあるんじゃないかと思っています。
新宿でカルデアのマスターがホームズと再会したとき、彼は巌窟王に変装していました。
当時はあまり気に留めてなかったんですが、冷静に考えたらなんでホームズは巌窟王のこと知ってたんでしょうね
……?
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