澄香
2018-10-16 19:23:08
690文字
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ある日の新人冒険者

スラム育ちの少女。

 その日二人目の新人は、ありふれた娘だった。
 実にありふれていて、それがかえってよく目立った。
 部屋着の延長のような萌黄色の服も、胸当てのつもりだろう赤い布切れも。
 発育はいいが村というより貧民街から出てきたような駆け出しの姿だった。

 その胸元に不埒な目線を向ける男が数名。
 そんな不埒者へ軽蔑の目を向ける者が男女含め相当数。
 悪漢退治でナイトの賛辞を狙う者が数名。

 しかし大多数を占めるのは、新人の生存日数を対象とした賭けである。
 同じ弓使いでも一人目の、黒山鹿の危険手当で腹を満たしている奴とは違う。
 着の身着のまま出てきたような新人は、長生きするかすぐ死ぬか結果がすぐに出るのだ。

 毎度の事に受付嬢は溜息一つ吐いて、お決まりの台詞の代わりにこう言った。
「いい靴ね」
「生き残りたきゃ足は大事だって」
 少し自慢げな声で、髪より艶のいい革靴の爪先を鳴らす。
 よく磨かれたレザーブーツの、鉄底がいい音を立てた。
「戦闘経験の方は?」
「にひ、ネズミの群れで死にかけたわー……って、文字聞かないの文字?」
「羽ペン握って何を今さら」

 そのやりとりを見たいくつかのテーブルがざわつく。
 本当に、ありふれていたのだ。
 誰かが指導したかのように。
 服は片袖を除いて露出はなく、それも靴につぎ込んだと言えば納得で。
 新人がやりがちな自己主張などどこにもない「正しい」駆け出しの姿だった。

 これでは賭けにならない。
 下手したらあの狩人より生き残るかもな。
 だったらあいつと比べるのはどうだ。

 にわかに沸くギルドの門が、また開く。