haru_haru0704
2024-07-23 18:43:24
995文字
Public
 

小鳥1羽分の穴を埋めるのは

カカロ×忌炎 全年齢
※マフィア×闇医者パロ

「大した怪我じゃないんだが」と前置きしながら見せられた怪我は、本当に大した怪我ではなかった。手の甲が少し擦り剝けているだけだ。
この程度の怪我でしょっちゅう訪れ、毎回相場の5倍ほどの金を置いていくこの男は、金銭感覚が狂っているに違いない。
普段であれば嫌味の1つや2つ言ってから治療を始めるのだが、今日はそんな気分にはなれなかった。さっさと治療して、早く出ていってもらいたい。
「消毒する。手をそこに置いて」
台の上に手を置くように指示すれば、カカロは素直に従った。
小さな綿に消毒液を吹きかけ、それをピンセットで摘まんで、患部にポンポンと当てる。
カカロは相変わらず、俺の顔をじっと見ていた。この男は、いつもこうだ。
「・・・今日は元気がないな。何かあったのか?」
そう尋ねられ、ギクリとする。
「別に何も・・・」
咄嗟に否定しようとした。しかし、怪我をしていない方の手で頭を優しく撫でられ、言葉が詰まる。
頭を撫でられたのなんて、一体何年ぶりだろう。
カカロは優しい顔で俺を見ている。話してもいいし、話さなくてもいいという素振りだ。
いつもはもっと強引なやり方をするくせに。
強引に聞き出そうとするなら、こちらだって頑なな態度を取れるのに。
「・・・飼っていた鳥が、死んだんだ。病気で・・・」
言葉にしてしまうと、それはとても陳腐な事柄のように感じた。
時折、人の死だって見届ける職に就いているのに。
カカロはこんな自分に、何と言うだろうか。鳥くらいで何を、と言うのだろうか。
「そうか・・・それは残念だったな。人であれ動物であれ、死別というのは胸が痛むものだ」
「・・・っ」
思いがけない返答だった。
いたわるように頬や肩を撫でられる。その手のひらは、あたたかい。
「悲しいだろう。悔しいだろう。無理に抑えなくてもいい。泣いて喚いてもいいんだぞ」
カカロの言うとおりだった。
あの子が死んでしまって、悲しかった。病気を治してやれなかったことが、悔しかった。
今日一日、ずっと涙をこらえていたけれど、本当は。
「・・・ふ、うぅ・・・っ」
ぽろりと涙がこぼれる。
カカロは何も言わず、俺を優しく抱きしめた。そして、ぽんぽんと背中を叩いてくれた。

***
俺が泣き止むと、カカロは「またな」と言い残して去っていった。
いつもだったら清々するのに、今日はなんだか少しだけ、寂しかった。