出口
2024-07-23 16:14:44
6107文字
Public 夏虎
 

「悠仁が記憶喪失になった話」

書きかけ。
呪専パロ。
後半セリフのみになってるけど、そのうちちゃんと書きたい。


見るなり顔を歪められるだろうことは、会う前から分かってた。任務先から戻った足で医務室の俺を訪ねて来たのは3年上の五条先輩。訪ねて来たっていうか、覗きに来たっていうか、冷やかしに来た?
俺が高専で呪術師を目指せるようになったのは、呪術界御三家 五条家の跡目であり特級術師であるところの五条悟先輩が俺の身柄を預かってくれたって形になっているからだし、俺が任務でケガをしたってなれば管理責任者として一応確認に来るのは当然のことなのだろうけど。
その頃にはもう家入先輩の反転術式で傷を治してもらっていた俺はピンシャンしてたけど、それでも制服のズタボロさだけ見ても相当食らってたのバレバレだった。

「ダッサ!!」
「悟」

しかも第一声がそれで、追うような声に咎められている。
五条先輩と一緒に医務室へ入ってきた黒髪の人も高専生なのだろう。いくらかカスタマイズされてはいるものの、彼の着ているのも高専の制服だ。大人っぽい人だし、五条先輩のことを名前で呼ぶ人は珍しい。呪術高専は4年までだっていうから、五条先輩と同じ4年生なのかな? それでも五条先輩は東京校の学生以外からは何かと敬遠されがちだと聞くから、とても親しい間柄なのだと思う。

――ちょっと見過ぎていただろうか? 俺の視線を見返すよう、彼が真っすぐに俺を見た。そしてその口が開きかけた時、
「オマエ、ケガだけじゃなく呪い食らっただろ?」
五条先輩の言葉に、彼がそちらを振り向いた。
「えっ? マジで!?」
声を上げたのは俺で、思わず家入先輩の顔を見たら、
「自覚なかったの?」
彼女は既に見極めていたらしく、驚くように俺へ尋ねる。
「し、知らんかった……
「ボケボケし過ぎだろ、テメーは」
被せ気味に呆れた声を漏らす五条先輩に、
「悟」
また彼の声が咎めるよう続いた。

ていうか――呪いの方も気にはなってるけどさ、俺はまだその人の名前も知らない。家入先輩も当然のように知った仲っぽいけど、誰か紹介してくれても良くね? あ、いや、俺の方から自己紹介すべきだよな、姉妹校といえども俺のが後輩なんだろうし。

「虎杖、平気かい?」
しかし名乗る前に名を呼ばれ、驚く。
「え……っと、――ッす!!」
言葉が出てこないまま『今のとこ大事ない』ってことだけ伝えたつもりだったけど、彼は大きく瞬いたあと、俺の頬に伸ばした手で何かを拭うよう指先をこすり付けて来た。
「血がついていたよ」
微笑みを浮かべる彼だけど、初対面の相手の血を素手で触ることに躊躇がないとか、ちょっと距離感ヤバい人だなって面白い。大人っぽく少しクールな見た目にそぐわず、意外と人懐っこい性格なのかも知れない。
「イチャついてんじゃねーぞ、傑」
五条先輩に揶揄われ、やっと彼の名が『傑』さんなのだと知れる。彼は五条先輩の言葉など気にした素振りもなく、
「君こそもっと後輩を気遣ったらどうだ?」
だけどチラリとだけ冷たい視線を投げて言った。
「美味しいとこ譲ってやってんだろ?」
それに対して五条先輩も気にした様子はないようだ。家入先輩もいつものことっぽく慣れた感じだし、それどころかこっちには興味を無くしたように処置記録を書くためペンを走らせ始めている。

「それにしても呪いって――
「あの、傑さんって――

傑さんが何か言い始めるのと、俺が口を開いたのはほぼ同時だった。
「え――?」
しかし言葉を切った傑さんに見返され、隣に立つ五条先輩には何故か吹き出された。
「虎杖?」
傑さんからどこか戸惑うようにされて、
「いつから下で呼ばせるようになったんだよ? このムッツリ」
笑いながら言う五条先輩の言ってる意味も分からなかったけど、
「ごめん! 俺アンタの上の名前分かんないし、五条先輩のマネしただけだから気にしないで! ――先輩は笑いすぎぃ!!」
幾らアンタらは仲良くても、俺は初対面なんだから失礼すぎんだろ!!
「俺、1年の虎杖悠仁ッす!! まだ高専来て2ヶ月ちょっとで右も左も分かってねーけど、よろしくオナシャス!!」
ビシーッ! とキメて頭下げた俺に――え? 切れ長に細い目を猫みたく丸くして固まってる傑さんと、気づけばシンと静まり返ってた医務室。笑ってたはずの五条先輩まで静かになって、口だけあんぐり開けていた。
カタンと響いた音にビクッて震えたのは俺。クリップボードの上で走らせていたはずの、家入先輩のペンが床の上へ落ちて転がった音だった。

「え? アレッ?」
俺なんかまずいこと言った!? フツーに挨拶しただけだよね!? って、もっかい傑さんを見て――瞬き忘れたように俺を見る視線から逃げるよう、五条先輩に目線をやったら、
「ヤッバ……
って呟いた口元押さえてた。
「つまり……そういう呪いってこと、かな?」
やっと言葉を発してくれた傑さんは、家入先輩に尋ねたらしい。そーいえば、俺って呪われてたんだったな?
「悠仁が傑のことだけ忘れてるってことかよ?」
そうして、やっと俺にも分かるように説明してくれたのは意外にも五条先輩だった。

「エッ? 俺、傑さんと会ったことあったんだ!? 俺、人の顔覚えんの割と得意なんだけど……ごめん!!」
幾ら呪いが影響していると言われても、両手を合わせて詫びる俺に、
「悠仁、それ追い打ちだからやめたげて」
五条先輩が言うから、思わず口を押える。
「分かってる、虎杖は悪くないよ」
傑さんの声はどこか弱くて、動揺してる? っての分かりやすくてますます気まずかった。俺と傑さん、実は結構仲良かったりしたんかな? 傑さんって、俺のツレには居たことないタイプだったから意外だったんだけど。

「会ったことあったも何も……
「悟……

「夏油の妄想じゃなけれれば、君と彼は恋人同士だったはずなんだが」
「~~硝子」

シレッととんでもないこと言った家入先輩に、俺はビックリして振り向いた。
「どこからが本当?」
「私はコイツらと違って嘘なんか言わないよ」
家入先輩の言葉に五条先輩を見たら、五条先輩も変な笑いかみ殺してた。嘘じゃなかったら、俺と傑さん……夏油先輩? は同性なのにお付き合いしていたってことになる。
「ほ、本当? なの?」
本人に訊くのが一番だろうと率直に尋ねた俺に、
「私から告白し付き合い始めてから、今日でひと月になるよ」
やはり俺を真っすぐに見つめて答えた夏油先輩の言葉が嘘や冗談ではないこと、その顔を見れば誰にだって明白だった。





「またよりにもよって厄介な呪いを貰ったな」
呆れたような伏黒の言葉に、俺は居たたまれなさを抱えつつ何も言えない。伏黒はどこまで知ってるんだろうか? ……その、夏油先輩と俺のこと。知られていたならそれはそれで説明の必要がなく助かるが、俺の恋人が男だってこと自体知らなかったなら驚くだろう。しかも俺には分からない状態といえ、2人とも同じ学校に在籍する先輩と同期だ。
「任務中に夏油先輩のことばっか考えてたってことだろ? 浮かれてねーで真面目にやれ」
更に辛辣に言われたその言葉で、あ、知ってたんだ? っての察したら――何となく顔が熱くなった。
「知ってたんだ? ――俺と夏油先輩のこと」
「知ってるも何も……どんだけ惚気聞かされたと思ってんだ」
面倒くさそうに言われるのって、そーとーだったんだろうか? 先輩から告られたって言ったから、俺の方の気持ちってどこまではっきりしてたのかも分かんないって思ってた。

「その……さ、」
「何だよ?」
「俺って夏油先輩のこと好きだったの?」
……それ、俺に訊くのかよ」

いや、だって他の人に訊けねーじゃん! うかつに!

「今は、あの人の顔見ても何とも思わないのか?」
「う~ん……、さっき初めてあったばっかの人って感じで、正直良く分かんねえ」
「完全に忘れてんだな。それで、恋人だって言われてどう思うんだよ?」
「俺、覚えてる限り女の子しか好きじゃないんだけど、先輩が男だからって嫌とか気持ち悪いとかそーいうのはない。ないけど分からん。実感なさ過ぎて……

「俺に訊くより、夏油先輩と話すべきなんじゃないのか?」
「先輩、任務行っちゃったんだよな。帰りは遅くなるって言うし。だからメッセ遡ったり情報探ってンだけど、メッセはあんまやりとりしてねーってか、あっさりしてんだよな。俺と伏黒のやりとりと大差ない感じ」
「へえ?」

「あとさ、伏黒知ってたら教えて欲しいんだけど」
「何だよ?」
「俺と夏油先輩って、そーいうのどーゆう……ってか……
「何言ってんだか分かんねえ」

「ぶっちゃけどこまで行ってんのかな!?」
「俺に訊くな!」

「ゴメンって……
半泣きな俺に、伏黒は
「でも、オマエが夏油先輩のに惚れてたのは間違いないと思う」


悠「え? マジで!? そのココロは!?」

伏「オマエと先輩が付き合い始めてすぐだったか、外部の呪術師の男が――まあ、五条先輩より外面がいいだけで、夏油先輩も『特級だからって高専生のクセに生意気だ』とか色々言われてる人だから、ある意味あっちは自業自得なんだけど……その呪術師がオマエらのことを野次ったんだよ……結構口汚かった。で、ああ見えてキレやすい夏油先輩より更にキレやすい五条先輩、よりも更に先に虎杖――気が付いたらオマエの脚がその呪術師の頭をフルスイングしてた」

悠「エエッ!? 俺っ!? 縦蹴り!? 横蹴り!?」
伏「そこ気になんのか? ……横だったな。サルみたいに跳んで振り抜いてた」
悠「マジかー!! 何言ったのその人?」
伏「忘れてんなら、胸糞なことなんか忘れたままのがいいだろ」

伏「原因はどうあれ先に手を上げた訳だから、オマエはそのあと夜蛾先生に説教くらってたけど。あの時からだな、俺らがオマエたちの関係を認めたのは」
悠「それまではやっぱ、ちょっと……みたいな空気だったん?」
伏「いや、同性だからどうとかそういうのはねーよ、元々俺ら呪術師自体マイノリティなもんだし、呪術師に比べりゃゲイなんてマジョリティどころかメジャーだろ」
悠「た……しかに? そーなのか?」
伏「見える奴ですらクラスに独り居るか居ないかだが、LGBT……Qもあるのか? なんだ? Qって……みたいのはそれよりゃ多いだろ」

伏「そもそもその程度のことで引いたりするようなメンタルしてたら呪術師なんてしてられるか。五条先輩の言葉じゃねえけど、呪術師なんてヤツは大抵イカレてんだよ」

悠「んじゃ、何で俺たち『認められてなかった』ん?」
伏「オマエ達ってより、夏油先輩だよ。後輩に手ぇ出したのかってドン引きされた」
悠「ええ~っ!? 夏油先輩って人望ないんだな!?」
伏「家入先輩にクズって言われるくらいだからな。あんまソッチ方面には信用ないんだろ。誠実な付き合いとか出来るタイプに思われてない」

悠「たしかに――夏油先輩ってモテそうな雰囲気だけどさあ……
伏「夏油先輩からの一方的なアレならともかく、虎杖の方も先輩に惚れてんなら俺らがどうこう言う話でもないだろ? そういうことだ」
悠「なるほど……んっ? 俺らって、他に誰が居んの? 付き合いたてで外部の呪術師の人も知ってたとか……なんでっ!?」
伏「夏油先輩のこと知ってる人ならみんな知ってるだろ。この業界は世界が狭いんだよ」
悠「えっ!? じゃあ、高専のみんなも補助監督さんたちもッ!?」
伏「京都校や一部の窓の人たちにも知れ渡ってる。あの人、五条先輩とつるんでるだけあって顔は知られてるからな」
悠「ま、まじでぇ~~!?」
伏「今だから言えるが、釘崎なんてヤバかったぞ。金槌掴んで刺し違えそうな顔してたの慌てて止めた」
悠「釘崎がッ!?」
伏「アイツ、虎杖のこと出来の悪い弟みたく思ってるとこあるからな」
悠「出来悪いは余計じゃね!? 酷くね!? えっ、でもそーなの!? おねーちゃん!?」
伏「手を出されてたって訳じゃなかったから事は収拾したが」

悠「あっ……出されてなかったんだ?」
伏「ん?」
悠「だから、俺と夏油先輩の関係。どこまでいってんのかってやつ」
伏「あ! ……ああ、その辺は意外と慎重みたいだなあの人も」
悠「そっ、そっかー」





家「10日前だっけ? 虎杖と初えっちしたの」
夏「硝子、なんで君が覚えてるんだ」
五「オマエがあんまり浮かれてるもんだからカマかけたら、あからさまに取り乱してバレたんだろ。あんな面白いもの忘れられっか」
夏「うるさい」
五「さっさと2回目3回目して、身体に覚えさせときゃ忘れられることも無かっただろーに」
夏「私の恋人をアバズレみたいに言うな」
家「アバズレって死語じゃない?」

五「意気消沈するのも分かるよ? こつこつレベル上げしてようやくボスキャラ倒せるようになったと思ったらセーブデータ真っ白に消えて……まあ、リセットボタン押したくもなるよな」
夏「……何が言いたいんだ?」
五「らしくねーじゃん、傑ちゃん。このまま悠仁のこと諦めんの?」
夏「諦める訳ないだろう。とはいえあの反応だぞ? すぐににじり寄って怖がられたらどうするんだ」
五「あー……そっか、嫌われたくないの安定だ」
家「ほんと、らしくないのウケるよね」

五「で、どーすんの? 明日の任務。悠仁と付き合って1ヶ月記念に、遠方任務にかこつけて外泊許可までとってんだろ? 始めてのお泊りで2回目えっち楽しむ企画ご破算になっちゃった訳だけど、行くの? 俺が任務変わってやろっか?」
夏「~~ッッ!!」
五「分かる! 分かるよ~!! オマエ明日の任務めちゃくちゃ楽しみにしてたもんな~。あのウキウキにやにやフェイスを悠仁に見せてやりたかった」
家「キモかった」
夏「キモっ!? 硝子!?」

夏「私はただ虎杖とゆっくり過ごせる時間が欲しかっただけで――
五「全室離れの露天風呂付き宿でしっぽりレイトチェックアウトなんてやらしープラン、エロ目的しかねーだろ!!」
家「デキたての高校生が泊まるプランじゃないんだよね、愛人連れのオッサン」
夏「うぐぅ……ッ!!」
家「悠仁関係のことで図星刺されると、何も言えなくなるのほんとウケる~」
五「夜蛾センどんな気分で外泊許可申請受理したんだろーな」
家「心を無にしてたんじゃないかな」





えっちはしてないって思ってた悠仁と、2回目えっちしたかったけど記憶ない相手どうこう出来ないって思ってる傑(嫌われたくない)
諦めて帰ろうとするけど、ゲリラ豪雨で電車止まって結局帰れないので、予定していた宿に泊まることに

悠「なんか……なんつーか、エロいね。この部屋」
夏「――えっ!?」
悠「あ、いやゴメン。深い意味はなくて……でも離れでこのライティングの雰囲気とかエロくね?」
夏「深い意味ないならそういうこと言うんじゃないよ、心にしまっときな」
悠「サーセン」