あつき
2024-07-23 00:48:21
14842文字
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同居人に恋をした吸血鬼のチート的解決法

ドちゃんの片思いドラロナです。
かなり恋に否定的なドちゃんです。
ハッピーエンド大好きマンなので、最後はめでたしめでたしです。

序盤に出てくる某アニメは、書き始めたときはまだ放送されていたのです……。(原作履修済み)
今回書きたかったネタとマッチした為、つい入れてしまいました。

頭が誤作動を起こしているんだ。
最初に考えたのはそんなことだった。
恋と友愛の違いはなんだろうと栓無いことを考える。ロナルドには、何年も同居しただけあって一族に接するくらいの情は芽生えていた。いや、その実もっと近しい、ジョンにも向けるような愛しさもあったことは否定しない。だがしかし、ドラルクから見たら青二才のうえ中身は五歳児、種族も違う上に同性の相手への感情が、恋心に発展するなど露ほども思っていなかった。
性欲と恋心は必ずしもイコールではないが、ひとつの指標にはなるだろう。彼とそういった行為が出来るのかと考えれば、全く問題なくて頭を抱える。むしろその唇を奪い、押し倒し身体中にキスを落とし、筋肉質で均整の取れた肌をくまなく触って、自身の体を重ねたいと具体的な衝動さえある。
現実はせいぜい奪えて唇くらいか。しかしそれは今の生活を自らの手でぶち壊す愚かな行為であり、ロナルドから蔑みの眼差しを向けられる事を考えただけで塵になれた。絶対にそんなことは出来ないし、したくない。ドラルクの好みはあくまでうなじの綺麗な美女であり、実際に関係を持ってきた相手もその枠から大きく外れることはなかったように思う。それなのに現在恋する相手は真逆なこと甚だしく、規格外なその男はドラルクの枠を容易く蹴破り、棺桶に入っている間ですらあのマヌケ面も、騒ぎ立てる声も、時折みせる幼い仕草も頭から離れない。
そもそも旺盛な方ではないが、行為自体はすれば楽しいし気持ちいい。だけど、特定の相手である必要は全くなかったし、冷たいようだが吸血に付随する要素でしかなく、ここまでひとりの人間に対して劣情を抱いたのは初めてだった。いつの間にかレンタルしていた『退治人くんは絶対負けない!!vo.3』を見終わって正気に戻った時には自分で自分に引いたし、同胞(具体的にはピンクの芋虫)に見つかったら終わりだと全速力で返却に行った。
ドラルクには分かっていた、恋はするものではなく落ちるもの。奈落の底に落ちて、這い上がってこれる兆しが全く見えなかった。恋とは本来楽しいものであると思うが、苦しいばかりで微塵も楽しさを味わえていなかった。享楽主義者のドラルクに、今の状況は耐えられなかった。月日がたっても想いは全く萎むことなく、むしろどんどん大きくなって破裂寸前で限界だった。
ヌーチューブ配信中にミスを連発しまくったり、シーニャにきせかえ人形にされても動じなかったり、何でも無い日に数十人分の様々な中華料理を作ってロナルドに「食いきれるか!!」と殺されたりした。その日は吸対やギルドの面々を呼んで、小規模なパーティーの様な騒ぎとなった。ドラルクの中華料理にニンニクは入っていないが、対抗したターチャンがニンニクマシマシの品を提供してくれてドラルクは匂いで悶え苦しみ、ロナルドに「アホ」と呆れられた。
挙動がおかしい日が続き、訝しんだロナルドに「ドラ公、最近おかしいぞ」と言われたことも何度もあったが、得意のよく回る舌で一蹴した。一度は本気で問い詰められて、「何を隠してやがる」と鬼気迫る顔で詰め寄られた。
「実は君のお気に入りの青のセーター、乾燥に間違えてかけて五歳児サイズまで縮んじゃった」
「はぁーー!?てめーなんて事しやがる!!……あれ、でも昨日洗濯物を取り込んだ時は普通にあったぞ」
「あれは私が編み直した複製の一品」
「えっお前編み物まで出来んの!?しかも完璧に同じ色と編み目だったぞ!!」
本気で信じて、少し見直す顔をしたロナルドがちょろすぎて心配になる。
「うそぴょん!乾燥にかけるギリギリで気付いたわ。いつも縮む衣類は分けろといってるのに、ゴリラは一向に学習しないからな。いつか本当に間違えても私のせいじゃないからな!?」
「ちくしょー!!それはすみませんでした!!」
「謝りながら殴るな!!」
そんなやり取りで有耶無耶にした。
今まで何とか逃げおおせたが、いつまでも誤魔化し続けられるとは思わなかった。

ここで、取るべき選択肢はひとつ。
御真祖様の召喚だ。

スマホから躊躇いなくコールを鳴らす。
「御祖父様、性欲を無くす薬下さい!!」
祖父にそんなものを頼むなど正気の沙汰ではなかったが、実際に気が狂いそうだったので余裕などなかった。
「ドラルク、後宮に潜入する?」
「しません。ちょんぎる方向ではなく、薬をください。不能になりたい訳ではなく、性欲だけ無くしたいのです。とりあえず一ヶ月くらい」
流行りのアニメも履修済みの祖父が、恐ろしいことをさらっと入れてくるので戦々恐々とする。ドラ美にはなりたくない。だいたいちょんぎっても性欲は残るらしいので、そんな地獄はごめんだった。
「OK。じゃあ送るから、毎日一粒飲んでね」
あっさり了承を得て、超特急で送って貰った薬を毎日服用し、これで心晴れやかな日々が戻ると思っていた。
結論として、苦しさは変わらなかった。薬によってリビドーは無くなりそこの苦しさは軽減したが、胸を重苦しく締め付ける痛みも、彼を囲って自分だけの物にしたいという薄暗い浅ましさも、この先の未来が欲しいという切望も、何一つ消えてはくれなかった。むしろ余計な感情がひとつ消えたことで、浮き彫りになってしまった。ずっと認めたくなかった、この燻った想い。
彼を間違いなく好きだという、恋心を。
劣情に支配された醜い感情のままで良かった。それさえ消してしまえばおしまいだと思っていたのに、恋や愛などと綺麗な名前を付けたくなかった。そんな情欲に溺れる青春の時期など、とうの昔に通りすぎたというのに、今更こんな感情に振り回されているなんてロナルドを若僧だの青二才だのと笑えなくなるではないか。
こんな飼い殺すことしか出来ない気持ちをどうしろというのか。自嘲してみたって、乾いた笑いが出るだけで何の解決にもならない。
あっさり諦めるなど、自分らしくもない。しかし策を弄するのは勝算がある、もしくは確信している時だけだ。立場を置き換えてみるとよく分かる。もし自分がロナルドへの恋慕などない状態で、彼から告白されたと想像する。戸惑うだろうし気まずく、振った相手と同居出来るほど肝は座っていないし、引き際や分はわきまえているつもりだ。ほどなく同居解消となるだろう。
そこまで考えて、鉛を飲み込んだように喉の奥が苦しくなり、決して良くない感情が暴れそうになる。この気持ちが叶わぬなら、せめて少しでも長く側に居たい。踊るように流れるこの愉快な日々を、まだ手放したくない。
吸血鬼の隣で無防備に眠る、カーテンから漏れる月明かりにも負けない美しい銀髪にそっと指を絡めて、恋い焦がれる気持ちを押し殺した。

二度目のコールを鳴らしたのは、一度目からそう時間は掛からなかった。
「御祖父様、度々すみません。恋心を、無くす薬を下さい」
無茶な孫の要求も毎度あっさりと叶えてくれるチートな吸血鬼の御真祖様だが、その時は、回答に幾ばくか間があったような気がした。
「あるけど、ちょっと待ってね」
そう言い残し通話は途切れた。何だろうと不思議に思っていると、事務所の窓から蝙蝠の大群が押し寄せて来た。徐々に人型を取り戻す巨躯は、ドラルクの祖父で間違いなかった。
「お、御祖父様!!わざわざ直接来られなくとも大丈夫でしたのに」
一度目の薬の時は宅配便で送って貰ったのに、今日は何故直々に来訪したのか理由が分からなかった。狼狽えるドラルクを気にすることなく、まるでまだ先ほどの通話が途切れていないように話を始めた。
「さっきの、これなんだけど」
綺麗な小瓶に幾つもの錠剤が詰まっている。乳白色をした粒が中身を占めているのに、底に沈む一粒だけ、燃えるような赤い色をしていた。
「一粒飲めば、恋の気持ちは無くなる。でも、完全じゃない。きっかけがあれば戻る」
淡々と、いつもの穏やかな低い声で語る。
「さらに一粒飲めば、また忘れる。でもその繰り返し。効き目は少しずつ、短くなる」
そこに居るだけで空気が重厚になる存在の喉から説明が続く。
「赤の粒は、最後に飲んで。これを飲めば、恋心は完全に覆われる。私の力をもってしても、元には戻せない」
「完全に……御祖父様でも戻せない……
それを望んでいる。一番最初に赤の薬を飲めばそれで解決ではないか。なのに、単調な説明とは裏腹に祖父の言葉がとても重く感じ、そうしようとは思えなかった。唾がせり上がり、自然と嚥下する。
「赤の薬は、最終手段。薬を飲み終える前に、その気持ちと折り合いがつくことを祈る」
孫の要求に何か思うところがあるのか、しかし何も聞かずに薬の小瓶をドラルクの手に乗せてくれる。
「ありがとうございます。納得いく結果になるよう、善処します」
小瓶を両手できゅっと握って胸元に引き寄せ、帰り行く蝙蝠の大群を見送った。

**

御真祖印の薬はよく効き、一粒飲んだだけでロナルドと出会った頃のような純粋な楽しさと騒がしさが戻ってきた。いつも通りロナルドの退治にひっついて醜態を笑ったり、料理にセロリを混ぜても気付かないくらい美味しい一品を提供出来て満足したり、脱稿ロナルドの奇行に付き合わされたりする、そんな何気なかった日常こそ、自分が求めていた日々だと実感した。
いつかはこの奇妙な同居関係も終わるであろうことは頭では理解していたが、それはまだ先の話だと、その時は何の根拠もなく信じて疑っていなかった。このまま何十年でも愉快で変わらぬ日々を過ごしたい、せめてあと数年でもなんて、安寧を取り戻したドラルクは思ったが、そんな幸せな時ほど一寸先の闇に足をすくわれるものである。

いつも通り、ロナルドが退治から帰宅した時のことだった。なぜか退治衣装ではなく、真新しい洋服で帰ってきた。ジャケットにシャツ、テーパードパンツと、ややかっちりした服装だった。
「君、デートでもしてきたの?」
「んな訳ねえだろ。仕事帰りだぞ」
顔を赤くして明らかに動揺するロナルドに、これは何かあったなと牙を見せてニヤニヤと笑う。良いネタが取れたらカメ谷か半田あたりに売り込めるとワクワクする。
「今日はダイオウイカ並みのでっかいタコの下等吸血鬼が出て、まあすぐ仕留めたんだけどさ」
「イカなのかタコなのかややこしくなるからもうちょっと分かりやすい例えなかったのかね。タコって、腕の人、たこ焼きにして食べようとしなかった?」
「皆で全力で止めてちゃんとVRCに引き渡したわ」
半分冗談だったのに、マジで食べようとしてたとは。なんか可哀想だから、今度タコパに呼んであげよう。ロシアンルーレット付きで、ロナルドにも振る舞おうと邪悪なことを画策する。
「仕留める直前に墨を吐いてきて、近くにいたお姉さんに当たりそうだったから俺が受け止めたんだけど、その人が汚れた服を弁償したいって」
「なるほど、それで退治衣装じゃないんだな」
「汚れるなんてしょっちゅうだし、その人のせいじゃないから断って、ギルドでシャワーとマスターの服を借りようとしたんだけど。そしたらその人がわざわざ服を買ってギルドに来てくれて。衣装もクリーニングに出すからって押しきられちゃって」
全くもって押しに弱い。チョロい。
「それで?そのお姉さんに壺は売られてない?」
「だれが良いカモだ!!あ、でも連絡先交換した。クリーニング終わったら返すからって。え?俺、騙されてないよね?」
「冗談だ。ただの善意だろ」
善意だけではなく、好意を寄せられている可能性は大いにあるが、黙っておく。ロナルドの先程の動揺っぷりを思い出す。満更でもなかったんじゃないだろうか。
「もしかして、可愛い子だったんじゃないの?」
「? 確かに綺麗な人だったけど。良い人だよな。お礼のメッセージ来てたから返事しようかとは思ってるけど」
僅かに頬を染めてそこを掻く仕草は、まるでこれから恋が始まるようで、そこにはいつもの五歳児のようなロナルドは居なくて。
ズキン、と心臓が痛んだ。気付いた時には、ロナルドへの恋心は頭をもたげて再びドラルクの心を苛んでいた。
自ら好奇心で話を聞き出したくせに、顔も知らない相手への嫉妬心が渦巻く。やばい、このままでは、早く薬を飲まないと。
……ドラ公?」
いつものからかう言葉が飛んでこなくて、ロナルドは違和感に気付いている。早く誤魔化さなければと思うが、押し寄せる感情の波が邪魔して声にならない。
年頃の男女なら、数回会えばそれほど間を置かず恋仲になってもなんら不思議ではない。ドラルクの考えていた数年など、あまりにも浅はかな予測だった。ロナルドに恋人が出来たら、今の同居の生活など送れない。ロナルドに懸想していなくてもそう思うのに、今の状態では尚更だ。
「おい、なんか体調でも悪いのかよ」
いつも顔色の悪いドラルクが、更に血の気を引かせていたからだろう。焦った様子で検討違いをしてくれたので、それに乗っかることにする。
「ああ、今日は24時間耐久クソゲーレースの為のデモとして、ロナルド君が帰って来るまでずっとプレイしていたせいかな。ちょっと休んだら良くなると思うから大丈夫さ。君はお風呂でも入ってきなよ」
「ずっとゲームしてるお前でもやりすぎると気分悪くなるのか?ていうかそんなクソなデモすんなよ」
少々懐疑的な目を向けてきたが、取り敢えず納得したらしい。彼がお風呂に入っている隙に、白の錠剤を噛み砕いて嚥下した。心臓の痛みは引き、普段の落ち着きを取り戻せたが、キッチンで深いため息をついた。心配するジョンを撫でながら、大丈夫だよと、自分にも言い聞かせるように呟いた。

**

最初の一粒は一ヶ月以上効き目が続いたが、御真祖様の言う通り二粒目からはどんどん効き目が短くなっていった。効果が二週間、一週間、ついには三日と持続しなくなり、その度に深夜のキッチンで薬を飲み込んで、小瓶の中身はみるみる少なくなっていった。
毎日飲まないと効果が保てなくなった頃には、ジョンを寝かしつけてから薬を飲むのが習慣となり、とうとう赤の薬を残すのみとなった。もう後がなかったが、飲まないという選択肢はドラルクにはなかった。
それなのにいつもの深夜のキッチンで飲むのを逡巡しているのは、こんなに苦しいだけの恋に未練があるということなのか、自分でもよく分からなくなっていた。
昔の歌に、恋心に別れを告げて許しを請う歌があったが、生憎ドラルクはそんな殊勝な考えは持ち合わせていなかった。この恋はただただ疎ましいものでしかなく、もう二度と日の目を見ることが無い方がいいのだ。これで終わりだ、せいせいするはずだと、自分に言い含めるように最後の一粒に手を伸ばした。
指でつまみ上げた、その時だ。
暗闇できしむソファの音がした。衣擦れの音も聞こえ、ゆっくりと立ち上がってこちらに迷いなく歩を進めてくる銀髪の青年。普段はこんな深夜に目を覚ましたことはない。暗闇でもドラルクにははっきりと表情が見えるのに、その顔から感情は読み取れなかった。異様な空気の中、ロナルドは口を開いた。
「ドラ公……
「どうしたロナルド君、こんな夜中に。悪い夢でもみたのかね。五歳児らしく寝かしつけが必要か?」
軽口を叩いても拳は飛んでこず、返事の変わりに薬を摘まんでいた右手首を掴まれた。長年同居しているだけあって加減を理解しているのか、力強いのに砂にならないギリギリの力で握りこまれる。
「これ、何だよ。お前、どっか悪いのか」
「ああちょっとね。最近疲れやすくて、御祖父様に貰った栄養サプリだ」
「最近毎日飲んでるだろ。何でこんな夜中にこそこそ隠れるように飲んでんだよ。お前、もう何ヵ月も様子がおかしいぞ。それと何か関係があるんじゃないか」
……君、夜中起きてたの?」
寝ている筈と油断しきっていたとはいえ、服薬のことを気付かれていたのも、ロナルドにしては鋭い指摘も予想外にドラルクを動揺させた。
「一度目を覚ました時に気付いてから、毎日お前の様子が気になって寝れなかった。いつ声をかけようと思ってたんだけど、今日のドラ公はそれを飲むのを躊躇っているように見えたから」
元々ロナルドの心配は伝わっていたが、そこまで気に掛けられているとは思っておらず、葛藤も見破られて空恐ろしかった。ドラルクの心の内、この秘めて隠し通せるとさっきまで確信していた、冷めない熱まで見透かされているようで。
「教えろ。本当は、何の薬だ」
その瞳は静謐な青さを湛えているというのに、ひどくぎらついてドラルクに嘘を許さぬ力強さを持っていた。
絶対に言うつもりのなかった、ロナルドの墓場まで持っていこうと思っていた気持ちは、あっさり口からこぼれ出ていた。
「君への、恋心を殺す薬さ」
ロナルドはドラルクの言葉をすぐには飲み込めなかったらしい。その見開かれた目以外は、時が止まったように動かない。蒼穹の色をした瞳を見つめ返し、ああ、綺麗だなぁなんて、他人事のように場違いなことを考える。
普段はドラルクのことを遠慮せずバカスカ殺すくせに、心配して寝れなかったなど、どこまでお人好しなのか。その底無しのお人好しが、ずっと心配だったのだろう。ロナルドは強靭な体を持っているが、心は脆いことをドラルクはよく知っている。その心が誰かに損なわれることのないよう、近くで守りたかった。最弱の吸血鬼であるドラルクがそんなことを言えば、きっとロナルドは鼻で笑うだろう。でも本気だった。はったりは得意だし、立ち回りも上手い方だ。いざとなれば他力本願だ虎の威を借る狐だと後ろ指を指されようとも、築き上げた人脈でも竜の一族の後ろ楯でも何でも使って、優しい彼が理不尽に搾取されることがないよう、全力で守りたかった。この想いが叶うならドラルクが大切にして、君は皆から愛されているから、自分を犠牲にしてまで他人に尽くさないで欲しいと伝えたかった。ガチガチに縛られた心を、そんなに肩肘を張らなくていいんだと、時間を掛けて解きほぐしたかった。
でも、その役目はきっと自分ではない。
「ずっと好きだった。恋い焦がれていた。君を、ロナルド君を愛している。でも、私たち二人の間には不要の感情だろう?だから、無くす為にこの薬を貰った」
愛している、という言葉に反応して一瞬びくりと体が跳ねて赤くなった顔は、意味を理解してかすっと青ざめた。薄く開いた唇が震え、揺れ動く青の瞳は狼狽を滲ませている。
その表情が、反応が、血の気のない色が、返事を物語っていた。
全く期待していなかったといえば嘘になる。勝率などないとこの恋を吐き捨てようとしたのに、そのくせ未練がましく最後まで、少しはロナルドはこの想いに応えてくれるのではと、一縷の望みを捨て切れていなかったのだ。馬鹿馬鹿しいほど滑稽だ。この期に及んで何にすがっていたのだと、消えてなくなりたかった。でも大丈夫だ。自身の瞳と同じ色をした小さな薬が、ドラルクを支えてくれた。
「これが最後の一粒だ。これを飲めば、御真祖様でも戻せないらしい。だから、安心して」
掴まれて動かせない右手の指で摘まんだ錠剤を、左手で摘み直す。ロナルドが、喉奥から掠れた声でやめろ、と叫んだ気がしたが、そんな筈はないので幻聴だろう。今度こそ躊躇わず口に押し込み、静かな暗闇に錠剤を噛み砕く音が響いた。そのままゴクンと喉を鳴らして胃に納めると、先程までの煩い感情が一気に冷え込んだ。すっと一気に冷めた心につられ、体温もいつもより更に低くなったように錯覚する。冷静な頭で、目の前の呆然とただ立っている男に声を掛ける。
「これで、迷惑は掛けないから。この後の身の振り方は、少し考える時間をくれ」
掴まれていた手を「離して」と淡々と言うと、ロナルドはビクッとして握る力を緩めた。ドラルクは緩んだ手を押しやり、時計を見た。そろそろ夜が明ける時間が近づいている。ロナルドの横を通るのは簡単だった。うつむき反応しなくなった彼に、何の感情も沸き上がらなかった。
そのまま棺に戻り、静かに目を閉じた。薄れゆく意識の端で、ソファベッドがきしむ音がした。流石にまだ起きるには早いので、彼も寝直すのだろうなと思った。こんなに近くに居るのに、ロナルドが今、何を考えているかなど理解しようもなく、棺桶との隔たりは薄いのに絶対に踏み込めない線引きのようだった。その日の夢見は、思った通り良くなかった。

**

お互いあの夜の事には触れず、仮初めの日々を平穏に過ごした。ロナルドは若干ぎこちない動きを見せる時もあったが、ドラルクがいつもの調子でからかい煽ればいつも通り拳を振るうので、以前とあまり変わらない日々だった。ドラルクはご飯も普通に作ったし、食卓を囲む時も二人が変わらず過ごせたのはジョンのお陰だろう。このまま、何事もなかったように過ごすことも出来た。
それでも、けじめをつけるつもりだった。落ち着くまでしばらくはルーマニアに帰ろうと、手回しは済ませた。祖父の祈りに応えることが出来なかった罪悪感はあるが、顛末を報告してもやはり何も言わず受け入れてくれた。きっと誰への恋心だったかも、あの祖父にはお見通しだったのだろう。かつて祖父が言った、『人間の友人を大事に』という言葉を思い出す。友人としての関係を貫けなかったことに不甲斐なさを感じるが、時が経ち彼が許せばまた友人に戻れるだろうか。彼の最も近くの特等席には座れなくても、良き友人として距離を誤らないように、その時の関係を大事にして見守ることは出来るだろうか。

ジョンにも申し訳ないことをした。ジョンはロナルドのことも家族のように思っていた。きっと今の生活を変えるのは辛いはずだ。しかし、言わなければならなかった。正直に話し、この事務所を出て行くことを告げ、謝った。 優しくいつでもドラルクを慕ってくれるジョンは『ドラルク様の隣がヌンの幸せ。だから、泣かないで』とはらはらと涙を流しながら言った。泣かないでと言われ、ドラルクは知らずに自身の目からこぼれ落ちる雫に気が付いた。恋心は確かに無くなったが、この事務所で過ごした日々と情は消えていない。ドラルクの吸血鬼生からしたら新横浜で過ごした数年は僅かな短い時間だというのに、ぎゅっと濃縮されたような日々を思いだせば色濃い寂しさが心を捉えて離さない。自分もジョンが居れば大丈夫だから、泣かないで欲しいと小さい丸を掻き抱く。これからの時間は、健気な丸を幸せにすることだけに生きようと決めて、ひとりと一玉で気が済むまで泣き暮れた。

**

長年同居してきたのだ、早く出た方が良いと言っても、生活の基盤が整い過ぎていた。ロナ戦のことや生活のこともあるし、家事の大半をドラルクが担ってきたのだから、急々に出ていかれては困ることもあるだろう。具体的に出ていく日付と、今後の仕事をどうするか話し合おうと決めた。
重い話になるかも知れないので、ロナルドが仕事で居ないうちに、金魚鉢に移してキンデメには事務所側に居てもらうことにした。
「お主、どうするつもりだ」
あの日の夜は、話の内容に配慮する余裕などなかった。金魚の睡眠は短い上に寝ていたとしても物音に敏感ですぐに起きてしまう。当然、キンデメにも会話を聞かれていたのだろう。全くもってプライベートなどない生活スペースだと、ドラルクは苦笑いする。
「ここを出ていこうかと。キンデメさん、あの五歳児のお世話頼めますか?寂しがりなので、側にいて貰えると助かります」
「待て、ちゃんとあやつの口から返事は聞いたのか」
はっきり口で言われなくとも分かり切ったことだ。あの日から何も言わないロナルドの態度も如実に返事を語っている。
「ちゃんと話し合った方がいいのでは」
「今夜、話しますよ。結果は変わらないと思いますがね」
普段寡黙な金魚は、それ以上は語らなかった。

「キンデメなんで事務所にいんの?」
帰って来て開口一番、ロナルドはその事について触れてきた。
「それなんだけど、ご飯食べ終わったら話したいことがある」
ドラルクがそう言うと、何か察したらしく表情を曇らせて押し黙った。
明日出ていくかも知れないので、これが最後のご飯でも良いように唐揚げを作った。やはり、最後は好物を作ってやりたかった。ジョンと一緒にいつもの様に食べるが、心なしか箸の進みが遅いように見えた。
食べ終えたら、ジョンにはデザートを持たせてお散歩をお願いした。これ以上、話し合いを聞かせて悲しい思いをさせたくなかった。手早く食卓の食器をシンクに片付け、二人で向かい合って座る。
「ロナルド君、出ていける段取りがついた。いつが都合がいいかな」
ダイニングテーブルを挟んで向かい合ったロナルドは、まるで予期していなかった様に眉を寄せてドラルクを見た。
「何で出ていくんだよ。突然すぎんだろ」
「突然じゃないだろう。ゴリラの記憶にはこの前の夜の会話は刻まれていないのかね」
軽口を叩いても、今日は拳は飛んでこない。
「身の振り方って、そういう意味だったのかよ」
「まあ、そうだな。他に無いだろう。それで今後の話だけど、仕事で必要があれば出向くし連絡してくれ。ご飯も君のことだから三色レトルトで済ますんじゃないかと心配だ。君さえ良ければたまに作りおきを持っていこう。キンデメさんとメビヤツは、困ったときは君の話を聞いてくれるだろう。死のゲームとジョンは連れていくけど、寂しい時はジョンをお泊まりに派遣してもいいし」
……あの薬飲んだから、もう俺のこと好きじゃないから出ていくのか」
ロナルドの言葉の意図がいまいち汲み取れなかった。
「逆に君は、振った相手と同居して気まずくないのか」
「は?なんだよそれ」
ロナルドは苛立ったように、ドラルクを睨んだ。
「俺まだ、何にも返事してないだろ。お前が俺の気持ちに、気付かせたのに……責任取れよ!!」
ポロッと、青の瞳から涙が溢れた。ドラルクは予想外の涙にその瞳から目が離せない。普段からよくおポンチ吸血鬼ないしはシンヨコギャラリーの面々に泣かされているロナルドだが、悪戯以外で溢れた涙は居心地が悪くてしょうがなかった。更に言葉の意味も相まって、混乱して情報が上手く整理出来なかった。
……え?ちょっと待ってそれって……ブエー!!突然の暴力!!」
ロナルドは怒りに任せて拳を突き出すと、勢いよく立ち上がり、ダイニングチェアが後ろに押されて床を擦る音が響く。砂から戻りつつあるドラルクの隣に立つと、胸元を掴んで引っ張り上げた。怒りと涙を滲ませた双眸が間近に迫る。
「ジョンはもちろんだけど、お前もいないとどうしようもないだろ!!お前は告白してくれたのに、俺の返事は聞かない気なのかよ。ふざけんな!!お前が聞きたくなくても言ってやるよ」
そこでロナルドは奥歯をギリッと噛みしめ、怒りからか興奮のせいなのか顔は真っ赤で、額には汗を滲ませていた。深く息を吸うとドラルクを真っ直ぐ見つめて口を開いた。
「ドラルク、お前が好きだ。あの薬のせいで俺のこと今は好きじゃないなら、また俺を好きになるまで何年でも口説いてやるよ。だから、出て行くな。ここに居ろよ」
絶対あり得ないと思っていたロナルドからの告白だった。本来なら喉から手が出るほど欲しかった言葉だ。なのに、何で今なのか。何もかも、今更だと言うのに。
……っ!あの時黙っていたくせに、その後も何も言わなかったくせに。あの日から何日経ってると思ってるんだ」
目頭が熱くなって泣きそうだった。でも目の前の男の前では、文字通り死んでも泣きたくなかった。
あの日かなぐり捨てた気持ちは戻って来ることはない。だから突き放したかったのに、胸の奥が疼くように熱を持った気がした。
「お前が性急過ぎるんだわ!数日、いや数週間考える時間くらい寄越せや!!同居のクソザコ砂吸血鬼から突然告白されるなんて思わないだろ!?なのに、勝手に結論だして言い逃げかコラァ!!」
そう言って、掴んでいた胸もとをぐっと持ち上げてドラルクを投げ飛ばした。落ちた先のソファで砂になったドラルクは、とても先程告白がなされたとは思えない空気に「ふざけんなよ暴力ゴリラ!!」と怒りにまかせて叫び返した。
人型を取り戻しながらソファの背に手を掛けて起き上がると、肩で息をして、まだ潤んだ目のままのロナルドが居た。あれだけ捲し立ててなお、言葉が溢れるように言い募る。
「お前が好きだって言ってくれて、考えた。そしたら気付いたんだよ。当たり前の様に、お前はずっとここに居ると思ってたことに。十年、二十年、三十年先だってお前とバカやってる未来なら容易に想像つくんだよ。でもお前がいない未来なんて、ぽっかりと穴が空いて、目の前が真っ暗になって考えられねえよ。お前のせいだぞ。どうにかしろよ。側に居ろよ。俺をひとりにすんなよ」
言い終えると、堰を切ったようにポロポロと更に泣き出す。そんなだから、目が離せず放っておけないのだと胸が苦しくなる。怒ったり、泣いたり、赤面したりと目まぐるしく変わるその表情をもっと見ていたい。欲しかった、渇望した、その未来を彼も思い描いているのなら。これからも一緒に歩めるのだろうか。
じわりじわりと熱を上げていく胸の奥は、間違えようもなく覚えがある感覚だった。ずっと焦がれていた、ロナルドへの気持ちは、確かにそこにあった。
厄介なこの男は、いつだってドラルクの枠を破って心の柔らかいところに無遠慮に入り込んでくる。そしてそれが嫌ではなく、どうしようもなく欲しいのだと、諦観の念で受け入れるしかない。
ロナルドは鼻をすすりながらで格好はついていないのに、紡がれた言葉は全てドラルクが欲しかったものだ。
こちらはとっくに、いやきっと最初から、目の前の銀髪の青年が忘れられなくなっていた。ソファから降りて、俯くロナルドに駆け寄り、頬を優しく掴んで持ち上げた。
「ああ、君のせいだな。ロナルド君、好きだよ。どうしようもないほどに、君に惹かれている。私だって、君との未来が欲しいんだ」
何で恋心が戻ってきたかなんて、今はどうでも良いくらいに嬉しかった。
「もう撤回したって遅いからな。君が後でやっぱり親愛の情でしたとか言っても、私は出ていかないし恋人として君を見てるんだからな」
ロナルドはきょとんとして涙を止めると、数度瞬きをして、美しい瞳から残った涙が溢れ落ちた。
「あの薬、効果が切れたのか?」
「君の愛の言葉の前では、何年どころか数分も持たずあっさり陥落してしまったよ。ああもう!ロナルド君のせいで性癖めきゃめきゃだぞ。責任とりたまえ!」
「はあ?こっちもだわ!!今度Y談おじさんのビーム浴びてみろ。黒いエプロンにグッと来るとか、おろした前髪から覗く赤い瞳とか、手袋と袖の隙間がえっちだとか言っちまうからな!?」
「ぶっ……!ちょっとまって、君、私のそんなところ見てたの?やめて?今度から料理作りづらくなっちゃうだろ」
「おめーのせいだわ責任とれ」
ドラルクが我慢できず笑い出せば、ロナルドはバーカバーカ、ざまあみろと罵って笑い出すので、おまえこそバーカと笑いながら言い返す。二人でひとしきり笑い転げた後、笑いで濡れた目元を拭いながら、ひとつの懸念を思い出す。
「いやでもさ、ロナルド君、服をくれた彼女とはどうなったんだい」
「ああ、クリーニングの受け取りで一度会って、その時また会いたいって言われた。でも断った」
……おっぱい大きくなかったの?」
「俺をおっぱいだけで判断する最低な人間にすんじゃねえ!!……まだあの時、お前の様子がおかしいままだったじゃん。心配で、ひとりにしたくなかった」
呆れてロナルドを見つめる。常々思っていたが、そんなことをさらりと言うから、ドラルクはきっと好きになってしまったのだ。とんだ無自覚お人好しだ。
「あの時の服も、その人に返した」
「えぇ……それはちょっと。だから君はモテないんだよ」
一度袖を通した男物の服を返されてもどうしようも無いだろう。いっそ要らないのであれば、こっそり捨てた方が優しさだったかも知れない。
「だって、なんかあの服をドラ公に洗濯してもらうのは違う気がした。クリーニングに出してからあの人に返したよ」
彼女にはうちの子が最低で申し訳ないと思いつつ、ドラルクは嬉しかった。物に罪はないが、あの服を見ると嫉妬してしまいそうだったので内心胸を撫で下ろした。
「俺も聞きたいことあるんだけど、まだ薬あったろ。あれは何の薬だよ」
それも気付かれているとは、本当に鈍い所はとことん鈍いのに、肝心なところは怖いくらいに敏い。
「君に欲情しなくなる薬」
「はっ?はぁ!?なっなんでそんなもの!!」
正直に告げれば、案の定顔を真っ赤にしている。
「好きでもない相手に、そんな感情むけられても困るだろ。だから抑えるために貰ったのさ」
……ならもう必要ねえだろ」
「えっ?それどういう意味で言ってる?もう我慢しなくて良いってこと?」
聞き捨てならない台詞を言われたので、言質取ったりと携帯の録画を回して距離を詰めると、予測通り拳が飛んできた。
「その感情は嫌じゃねえって意味だ!!行動に移すかはまた別の話だわ!!」
どっちみち自分でもうんざりしたあの衝動は、願いが叶ったことでだいぶ落ち着いていた。人型を取り戻しながらロナルドの肩に手を置き上機嫌にドラルクは笑う。
「でも本当に要らんのかね?これを飲んで過ごせば、しばらくはピュアっピュアなお付き合いが出来るかもしれんぞ?純真ルド君は好きそうだろ?」
ニコニコ笑うドラルクを見て、真っ赤になり過ぎて顔から出た熱で目玉焼きでも焼けそうなロナルドに提案する。
……悪くないけど、そこは薬に頼らなくても恋人の為に我慢する紳士をみせろや」
ぐうの音も出ない正論だ。
「分かってるとも。君が手に入るのなら、お互いの気持ちが揃うまでいつまでも待つさ」
ドラルクは、何ヵ月ぶりかに心晴れ渡る気持ちだった。もう怖いものなどないと、幸せを噛みしめていたその時。
ドラルクのスマホが鳴った。
「ヘロードラルク。帰省歓迎のパーティーを開こうと思うのだけど、特製巨大スゴロクDXロングバージョンと特製打ち上げ花火競争どっちがいい?どっちもかな」
――怖いものあったわ。
「御祖父様、待って下さい。すみませんが、帰省は無しになりまして」
温厚な、というより唯我独尊の祖父から叱られた記憶はあまりない。しかし今回は色々むちゃなお願いをし過ぎて、更に突然帰省を辞めるなど、どんな言葉が返って来るか恐ろしく思いながら返事を待った。
……良かったね、ドラルク」
「えっ」
「恋心、戻った?ひとつ言わなかったことがある。私の力では戻せないけど、愛する人から心からの愛を受け取れば、戻る」
「おっ御祖父様ーーー!?」
「ポール君と、仲良くね」
「ヴァーーーー!!」
他に余計な音などない静かな夜だ。ロナルドにも会話は筒抜けで、青くなったり赤くなったりしていた。
「場所を変更して、新横浜でお祝いのパーティー開くね」
「はい!?」
突然黒い影が部屋を覆ったと思えば、当たり前の様にそこにはドラルクの祖父は居て、「広いとこ、いこう」と二人はシンヨコの夜に飛び出していた。
「ちくしょーー!!お前と居るとこんなんばっかだな!!」
「うるさい!!こっちだって被害者だわ!!私と同居を続ける気なら諦めろ!!」
その後は御真祖様が集めた、見知った面々で溢れた広い会場で、飲めや歌えやの大騒ぎとなった。
特製巨大スゴロクDXロング(人間にも安心安全)バージョンと特製打ち上げ花火競争もつつがなく執り行われ、所により阿鼻叫喚となった。恒例の五次会まで進み、うっかり朝日が登るまで居たドラルクは塵になり、御真祖様特製の日光遮断バッグに入れられてロナルドに抱えられ、シンヨコを走り抜ける姿が目撃されたとかしないとか。
後日、大規模なパーティーもとい飲み会が、楽しかったが結局なんのお祝いだったのかとギルドで話題になった。
「ドラルクのじいさん主催だったよな?」
「ドラルクなら知ってるんじゃないか?」
「おい、ロナルドも知ってるか?」
ギャラリーに問い詰められた二人は顔をひきつらせ、「「忘れろ下さい」」と珍しくハモった。
その場はドラルクが誤魔化したが、嘘が下手なロナルドによって数日後には新横浜中に二人の仲は知れ渡ることになったのだった。


おしまい