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あつき
2024-07-23 00:40:07
8248文字
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話し合いは延長戦でお願いします
付き合ってるドラロナのロ君が、恋人らしくなりたくてドちゃんの思いを確かめたい話。
ドちゃんとロ君が、後半は真面目な?Y談ばかりしてる話。二人はずっとバカな会話をしていて欲しい。
ドラルクと恋仲になってからニヶ月近く経つ頃、ロナルドは悩んでいた。
日常はさして変わらず、変化はごくささやかなもの。事務所の生活スペースで寛いでいる時、折を見てドラルクの方から抱き締めてきたり、軽いキスをされたり、愛の言葉を囁かれたり。
しかしいずれも恥ずかしさが勝って拳が出てしまう。それでも付き合いたての頃からしたら減った。十回に十回が、十回に七回くらいに頑張って減らした。
ドラルクも最初の方こそ「おい殺すなよ」と憤慨した様子だったが、途中から楽しくなってきたらしく、「おっ、今週は三回も君に殺されずに触れていられたぞ。二十五回は死んでるけど」と記録を付けられて腹立ってまた殺した。
死んだ回数のうち、数回はロナルドじゃなくてメビヤツのビームも入っている。事務所で仕事中にふざけるから。抱き締められて密着してるのに、器用にドラルクにだけビームを当てるメビヤツは可愛い。
じゃなくて、本題に戻ると、本当はロナルドも殺したくないし、恋人らしいこともしたいのだ。
*
*
二人が両想いになった日、すったもんだで既に体の関係があるというややこしい状況だった。
ドラルクには納得が行かない初夜だったらしく、やり直しを希望された。それをロナルドも受け入れ、首を縦に振ったところだった。
唇にキスをした流れのまま、ソファに押し倒された。額に、目尻に、頬にもキスを落とされて、嬉しいけど戸惑いがあった。冷たい手がするりと服の隙間に滑り込んできて、首筋にもキスをされてゾクゾクした。嫌だった訳ではない。でもその日は、認めてしまえばちょっと怖かったのだと思う。
「ド、ドラルク、ちょっと待って」
「どうした?嫌だった?」
気遣わしげな表情で顔を上げ、こちらを見る。
「嫌じゃない。だけど、もっかい最後までするのはもう少し時間が欲しい。キスだけじゃなくて、一から恋人として始めたいんだ。
……
デートとかしたり」
ドラルクは数度瞬きをすると、ぶっと吹き出した。そのままふふふっと笑い出す。
「お、おかしいかよ!分かってるよ自分でも変なこと言ってるのは」
「いや、笑ってごめん。本当に可愛いな君は。順番めちゃくちゃだ。いいよ。あの夜は一旦忘れて、一から始めようではないか。君が望むなら、たくさんデートしよ」
ニコニコ笑って体を起こすと、さっそくデートプラン練ろルド君、と上機嫌に話し出す。
ロナルドはほっとした。結果として拒否した形になりドラルクを傷付けたのでないかと心配したが、楽しそうに行き先を考えている様子はそうは見えない。
そして安堵した理由はもうひとつあった。やり直しを先延ばし出来たことだ。
「急かす訳じゃないけど、どのくらい待ったら良いか聞いても良い?」
安心して油断したところに、そう聞かれてどきりとした。どのくらいが普通なんだ?あんま待たせたら悪いかな、なんて考える。
「いっ、一ヶ月
……
?」
咄嗟に言ったが、長いのか短いのかよく分からない。
「おや、そんな短くて大丈夫かね。純情ルド君だから一年とか言い出すかと思ったぞ」
「うるせえ。馬鹿にすんな」
「一ヶ月の間に何回デート行けるかなぁ」
ワーカーホリックのロナルドでは沢山は行けないだろうと思っても、自然と楽しみで心が浮かれた。
結果として分かってはいたが、ほとんどまともなデートにはならなかった。忙しい仕事の合間に折角時間を作って出掛けても、行く先々で当然のようにおポンチ吸血鬼ないしは下等吸血鬼と遭遇するし、依頼の電話も掛かってくる。同居しているので会えない日がないのは幸いだか、やはり二人きりでゆっくりした時間が欲しいのが本音だった。
一度だけ、まともなデートと呼んで差し支えない日があった。ドラルクに案内されて着いた先は劇場で、吸血鬼と人間の恋愛を描いた舞台だった。舞台は観たことないと伝えると「君も物書きなら、見ていて損はないぞ」と連れて来られた。
最初は眠くなんねえかなとかなり失礼なことを考えていたが、杞憂に終わる楽しさだった。華やかで、映画とは違った間近で観る生の演技に心が震えた。
「教養にもなるし、仕事のアイデアにも繋がるから良いだろう?」と得意気なドラルクにまた観たいと言えば、何度でも来ようじゃないかと手を繋がれた。
自然に頬が緩んで良い雰囲気だったが、数分後には下等吸血鬼の大群に襲われてドラルクは何回も死に、ロナルドは仕事となった。観劇中に呼び出されなかっただけましとしよう。
デートと並んでの課題が、ふれ合いである。こちらも恥ずかしさによってまともに機能せず、仮の期限である一ヶ月はあっという間に過ぎた。その頃から内心いつ夜のお誘いをされるか、ロナルドは気が気ではなかった。そんなロナルドの心を知ってか知らずか、ドラルクはその事に特に言及せず、態度も変えることはなかった。シンヨコの町を駆けずり回る日々は忙しなく過ぎ、交際からニヶ月が経とうとしていた。
毎夜お誘いがなくてほっとすると同時に襲う感情が、自分は求められてないのではという矛盾した気持ちである。今日も今日とてドラルクがしてくれるのは、子供にするようなハグとキス。それ以上刺激が強ければロナルドが殺してしまうので当然なのだか、何か焦りにも似た感情が止められなかった。
ドラルクの言うやり直しとは、ロナルドが恋人らしいことを求めていたので、その気持ちを慮って言ってくれた優しさなのかも知れない。ドラルク自身は、そこまでロナルドの体を求めてはないのではないか。
悔しいような悲しいような、複雑な気持ちになって悶々とする。ドラルクに意識して貰うにはどうしたら良いだろうかと、行動を起こすことにした。
お風呂上がりに、裸で出たらどうなるだろう?恋人の裸、普通は見たいものでは
……
?全裸はアホみたいで恥ずかしくて無理なので、スウェットの下は履いて上半身は何も着ずに出てみることにした。
脱衣所の扉を開けてリビングへ向かうと、ちょうどダイニングテーブルにサラダを用意していたドラルクと目が合う。ぎょっと一瞬目を見開いたかと思うと、眉を寄せて近寄ってきた。
「上の服はどうした、野生に帰るには早いぞゴリルド!風邪引くからさっさと着ろ。あーー髪もちゃんと拭けてないじゃないか。床にポタポタ落ちてるぞ。自分で拭きなさいよ」
当然殺したし、床もちゃんと拭いた。ドラルクはゆっくりと再生すると「もう仕方ないなぁ」と、洗面所に手を繋いでロナルドを連れていき、ドライヤーを取り出して髪を乾かしてくれた。「元が良いんだからもっと手入れしなよ」と、なんか良く分からない良い香りの物を髪に付けられて、優しくブローされる。長い指がくすぐったい。これは結果オーライだった。
あくる日。
次に考えたのは、キスのこと。いつもドラルクからしてくれるが、自分からはしたことがないということに気がついた。入念に歯を磨いてから、キッチンを片付けていたドラルクに近づいた。
「何?さっき食べたのにお腹空いたわけないよね?ロナルド君、最近仕事続きで寝不足なんだから早く寝なよ」
話し掛けても俯いて固まって動かないロナルドに、訝しげにドラルクが顔を覗き込もうとした時だった。
ガチッ
「あいっ、たぁ!!」
「いっって!!」
二人同時に声を上げた。ロナルドが勢いよくぶつかりすぎて、お互いの歯がかち合った。
いつも拳ならば風圧で痛みが来る前に死ぬドラルクが、珍しく痛みが来てから死んだらしく、かなり不機嫌な表情で再生した。
一度口を開いたが、言葉を飲み込んだらしく、口を閉じて額を押さえてしばし黙り込んだ。そして再び口を開けたけた時には、若干ぎこちない笑顔を作りロナルドに向けた。
「ロナルド君、もしかしてキスしてくれようとした?君からは初めてだね。嬉しいな。でも、次はゆっくり、落ち着いて、ね?」
ドラルクの対応はかなり寛大な方だったと思われる。しかしロナルドは、ドラルクが押し黙った時に『なにしてくれるんじゃこの馬鹿造、キスもまともに出来んのか?野生に戻って出直してこい』という心の声がはっきりと聞こえた気がして、あれ、俺にも読心術出来るかもと思って殺した。
そして今度は心の声でなく「おい、ふざけんなよゴリラ!!」とドラルクは叫んだ。
更にその翌日。
就寝前に近づいてきて俯くロナルドに、ドラルクは内心、私天才だから分かっちゃった、と賢明に黙っていた。
もう三晩も続けて挙動がおかしいので、また何か抱え込んでるんだろう、さてどうするかとロナルドの次の動きを待っている間に思案する。
「あの
……
ぎゅってしていいか」
事前に聞けただけで百点満点だ。
「いいよ」
ドラルクは手を広げて待つ。刹那、砂の山が出来上った。当然、ロナルドの力が強すぎるからである。
「ロナルド君、野生の力を抑えて。私繊細なの」
「うっせぇ!おまえが貧弱過ぎんだよ!!」
力を調整して、再びチャレンジ。結果、ロナルドが両手で輪っかを作り、その中にドラルクが入ってるだけの様な奇妙な構図が出来た。
「やだ、私、野生のゴリラに捕まっちゃった。昔こんな抱っこ型のビニール人形があったな」
「なんだそれ知らんわ殺す」
目の前の砂の山を前に、もうずっと空回りしているロナルドは段々悲しくなってきた。良い雰囲気どころか逆に口悪く罵ってしまうし、こんなはずではなかったのにと、うつむき口を引き結んで押し黙る。
それをみたドラルクは「ああもう」とロナルドの柔らかい銀髪をくしゃくしゃと撫でる。
「あのね、君、ジョン相手なら当然加減して抱っこ出来るでしょ。私相手に緊張しすぎ」
言われて顔を上げる。そうか、俺は緊張していたのか。当たり前のことを指摘されて気付く。
ドラルクは正面から優しくロナルドを抱き締めると、背中をぽんぽんと、優しく叩いた。
「焦らなくていいから。同じようにぎゅってして?」
おずおずと手を伸ばして抱き締めれば、もう砂の山は出来ることなく、少し冷たい温度が胸に心地く広がった。
「良くできました」
優しい声色で囁くドラルクに、子供扱いすんなと思うものの、今は殺す気にはなれなかった。
「で、ロナルド君まだ隠してることあるでしょ。ちゃんと言いなよ」
だからなんでこいつはそんなに鋭いんだよ。心の内を読まれた悔しさはあるが、聞かれたら素直に伝えられそうな気がした。
ちら、と辺りを見回すロナルドの視線にドラルクはすぐ気がついた。ああ、と納得すると、冷蔵庫から何かを取り出して持ってきた。気を利かせてヘッドホンを付けてゲームをしていた賢きマジロに声をかける。
「愛しのジョン~いつもすまないが、これを持ってお散歩お願い出来るかい?」
「ヌー♡」
可愛い丸は、二つ返事でヌッヌヌヌ~と出掛けて行った。その間にロナルドも素早くキンデメの水槽を移動する。「ぐぶぶ、おぬしら、ちゃんと話し合えよ」と言われ「おう」と短く返す。
「
……
取り敢えず座ったら?」
ドラルクはソファに腰掛け、ロナルドにも隣に来るように促す。素直に座れば、ドラルクは優しく聞いた。
「ここ数日、積極的になろうとしてくれてた?何か不安にさせるようなことでもあった?」
的確に指摘され、気まずいが話しやすくなった。
「
……
次は一ヶ月後って言ったのに、何もなかったからさ。もしかして、そこまで俺とはしたくないのかなって」
「あ~~、お誘い、思いはしたんだけどさ、ロナルド君、自分でも分かってるだろうけど無理でしょ。ちょっと私が触っただけでも飛び上がるし」
言いながらちょっと吹き出すドラルクに、ロナルドは思い出した。このニヶ月、ロナルドがあからさまに反応するのを見て楽しくなったらしい享楽主義の吸血鬼は、キスやハグだけではなく、つうっと背中を指でなぞってみたり、ふっと息を耳にかけてきたり、首筋にこんにゃくをくっ付けてきたり。
――
全力で遊んでんじゃねえ腹立ってきたあとでやっぱり殺すわ。
まさか恋人に心の中で殺害予告をされているとは思いもよらないであろうドラルクはまだ笑っている。
「君、本当に催眠よく効いていたんだねぇ。おじい様の薬はよく効き過ぎて怖いくらいだ。本来はこんなにうぶなのに、よくあんなこと出来たもんだ」
「一ヶ月過ぎた頃からドキドキしてた俺の純情を返しやがれ」
「ごめんごめん」と謝ると、ドラルクは笑うのを辞めて真面目に話し出す。
「無理だと思ってたけど、積極的に来てくれたって事は、したいの?ロナルド君」
「う
……
実は、ちょっと怖い」
今度は茶化すことなく、ドラルクはただ頷いて聞いていた。
「したくない訳じゃない。でも、怖い。あの時は薬の力で無我夢中だったけど、正直気持ちいいのかそうじゃないのかも分からない感覚で。ただ必死で、おまえのことを考えてたから。キスやハグも、最初は照れて殺してしまっていたけど、後でそれだけじゃないって気付いた。その先に進むのが、怖いんだって」
恋人とキスやハグを繰り返せば、そのさきに進むのは自然の流れで、無意識にその流れを断っていた。
ぽつぽつと、自分の思いを言語化していく。
「おまえが誘ってこないことに、最初はほっとしたんだ。なのに、今度は不安になってきた。おまえは本当は俺が好きじゃないのかもって。そんなわけねえって否定してみたら、今度は体の関係どころかキスのひとつも満足に出来ないなら、愛想を尽かされるかもって」
ドラルクは顎に手を当てて考え、ロナルドの言葉を咀嚼した。
「ふむ、まとめると、君はまだ怖くてしたくないけど、私に嫌われるかも知れないと思って頑張ってしようとしたと。あと私から誘われないことで愛情に不安を感じたということだね」
「冷静にまとめんな。その通りです」
「うむ。まずひとつ、私は君が好きだ。好きだし、傷付けたくない。だからこそ君の気持ちを優先して誘わなかった。でも、正直に言えば、君を見て欲情しないかと言われれば嘘になる」
「マ゛ッ!?」
「おい引くなよ。恋人と暮らしているんだ。何も意識しない方が無理があるだろ。でも、だからといってこの感情を君の同意なく押し付ける気もないし、体の関係がないからといって嫌いになることもない。あとは、信頼して貰うしかない」
「お、おう
……
分かった」
引くどころか、ロナルドは嬉しかった。好きな人に、必要とされているのだと。でもそれは言えなかった。したくはないのに、相手に求められるのは嬉しいなんて随分都合が良い考えだから。
「あとひとつ確認だけど、この前、本当は痛かったりしない?それがトラウマになってるとか」
ロナルドはかぶりを振る。
「痛くはなかった。ただ、変な感じ。あの感覚に、また身を浸すのが怖い」
「そうか、痛くなかったならよかったけど
……
」
「
……
おまえはどうなんだよ?」
「
……
は?」
「おまえはあの時、気持ちよくなれたのかよ」
「い、いきなり何をいいだすんだ」
「ずっと気になってたんだよ。あの日、無理して頑張ってくれたんだろうなって」
「
……
君に欲情してるって言ったろ。あの日も最後までしてるんだ。分かるだろ」
ドラルクが珍しく狼狽えている。ロナルドも最初は純粋に心配していた。しかし杞憂だと分かると、少し意地悪を言いたくなった。
「ちゃんと言葉にしないと、伝わらないぜ?」
ニヤリとロナルドは悪戯っ子のように笑う。ドラルクはぐっと言葉に詰まる。こいつ、分かってるくせに。
「
…………
気持ちよかったです。でもどちらかというと、君のその無駄に綺麗な顔と体で、素直に迫られたことによる可愛さでイきました」
「はぁぁ!?何言ってんだ変態おじさん!!」
今度はロナルドが顔を真っ赤にして狼狽える。
「君が言い出したんだろ。純粋な悪口やめろ」
「俺の顔と体が目当てなんだな!?」
「おい続けるな。そしてそうじゃないだろ」
「じゃあ他に俺のどこが好きなのか言ってみろよ!?」
ドラルクは方眉を上げ、はぁ?と一瞬固まったが、すぐに目を細めると、牙を見せて笑い、とんっ、とロナルドの胸を細い指で押した。
「アホで間抜けで突然押し掛けた吸血鬼の同居を許すくらいお人好しで、私の作ったご飯を美味しそうに食べてイタズラにも面白く反応する、おポンチ吸血鬼どもをその拳一振で倒せる力があるのに銃の腕も間違いない、享楽主義の私にも読ませる文章が書けて、照れた顔も笑った顔も可愛くて私の事を大好きなところかな」
「はぁ!?今の悪口入ってただろ!!」
まさかそんなに捲し立てられると思っていなかったロナルドは一瞬気後れしたが、すぐに体勢を立て直す。
顔が赤いロナルドを見て、ドラルクは更に煽るように言う。
「それで?ロナルド君は?」
「は?」
「私にだけ好きなところを言わせるなんて、ずるいんじゃないか?君は私のどこが好きなのさ?」
ぐうっとロナルドが参る番だ。でもすぐに、負けじとニヤリと笑ってみせる。
「クソザコですぐ死ぬくせに口だけは一丁前、自信家で頭の回転が早くて指示も的確、それで何度もピンチを切り抜けてきた、それ以上に邪魔してるけどな!!料理が上手くて裁縫も出来る器用な指、ジョンを見る優しい目、くだらねえイタズラばかりするくせに時折見せる優しさにぐっとくるんだよ、おまえだって俺のこと大好きだろが」
「耳真っ赤だよ」
「うるせえおまえもだよ!!」
「うっそ!!」
砂になる吸血鬼を見下ろしふふんと得意気になる。
「俺の勝ちだな」
「だから引き分けと言えんのか君は」
正直ロナルドは飯が旨いくらいしか言えないだろうと踏んで、それをからかってやろうと思っていたのに。あんなにポンポン言葉が出てくるとは予想外だった。負けてやってもいいかな、くらいには嬉しかった。悔しいから絶対に言わないけど。
そして、本題からだいぶ逸れたことに気が付く。
「ロナルド君、話を戻すけどさ、私はセックスって挿入がイコールとは思わないんだよね」
「は?いきなり何だよ」
「君が怖いなら挿入にこだわらなくても、触り合うだけでも、愛撫だけでも、肌を合わせるだけでも、お互いが満足できればそれでいいと思うんだ。要は、愛の確認作業だから」
「急に真面目になるじゃん」
「真面目な話をしているんだよ。考えようは色々ある。君が望むなら私が抱かれる側という手もある」
「無理だろ。入れるまでに何億回死ぬ気だよ。何年掛かるんだよ。俺はそんなに待てねぇ」
ドラルクは苦笑いする。怖いけど待てないって。
「そうか
……
触るだけでも
……
いいのか」
ロナルドは目から鱗のように呟く。逡巡したあと、決意したようにドラルクに向き合う。両手をきゅっと握られた。
「じゃあさ、それでいいなら今日
……
ダメか?俺、ずっとおまえに触れたかったんだ」
真剣な眼差しで、頬を染めてそう言われ、ドラルクは死んだ。
「おい!!何で死んでんだよ!!嫌なのかよ!?」
「嫌じゃないです。可愛すぎ死です」
「訳わかんねえし、語呂悪過ぎなんだわ!!」
再生して、今度はドラルクから、ロナルドの手を握る。
「じゃあ、まずはキスから?あとおまえじゃなくて名前呼んで?」
「
……
ドラルク、好きだ」
「ふふっ、私も愛してるよ」
ロナルドから寄せた唇は、歯がぶつかることなく、当然ドラルクは砂になることもなかった。
*
*
次の日の朝、ドラルクが棺桶で眠りについてから、ロナルドはパソコンで調べものをしていた。
明け方、後で食べてねと、マカロンをもらった。昨夜ジョンにも渡したそうだ。そういえば、以前告白された日に皿に山盛りにされていたのもマカロンだった。市販の物にくらべ、パサつきもなくクリームが多めでとても美味しいけど、ロナルドやジョンの好みはどちらかといえばプリンやアイスなど、馴染みのあるおやつに軍配があがる。
なんでマカロン?と聞いたら、ドラルクはこれをあげるのは、今のところ君かジョンだけだな、と笑いながら言うのだ。
「あいつ
……
愛してるが言えるならこれも直接言えよ」
パソコンの検索結果を、むくれて頬を赤くしながら見つめる。
マカロンに込められた意味は、
――
あなたは特別な人
机に突っ伏し寝不足の頭でうとうとしながら、あいつ早く起きないかなと、まだ寝たばかりの吸血鬼に思いを馳せるのだった。
おわり
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