奴田原 ミズキ
2024-07-22 12:29:30
1187文字
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耽溺

ビマヨダワンドロ(の筈だったもの)
お題「魔性」をお借りしました。
直接的な描写はないけどおせ…中です

神性を伴った魔力はヒトの身には毒となることもあるらしい。
二人分の体重を支えるベッドの上。スプリングの悲鳴を聞きながら、ぼんやりとそんなことを思い出す。
欲のまま揺さぶった身体は己の下でくたりと四肢を広げ、焦点の合わなくなった瞳をゆらゆらと彷徨わせている。本人は納得していないようだが、魔性属性の身体に神性の魔力は相性が良かった。だが毒とまではいかないが、身体に影響は少なからずある。例えるなら強い酒を飲んだ後のような、ふわふわとした酩酊感。最初こそぎゃあぎゃあと文句と罵倒と拳が飛んで来るが、魔力を流し込んでしまえば途端に抵抗をなくし、後は此方のペースのまま。好きなだけ花の蜜のような甘い魔力を堪能する事が出来てしまう。閨事の後に恥だなんだと喚くかと思ったが、記憶ごと理性を吹っ飛ばしてしまうようできょとんと目をまん丸にして首を傾げる姿に思わず笑いそうになったものだ。
だから、行為にのめり込むようになるまでそう時間はかからなかった。
欲望のままに相手の身体を作り変えるのはすごく心地が良い。恥もプライドも手放して求められ、己が頭の中を埋め尽くし、快楽に蕩けたその顔は他の何にも形容することの出来ない甘美なものだった。
もっと、作り変えてやりたい。俺の好む色に。俺の好む味に。もっと、もっと、
この男が欲しい。

ふと、視線が混じり合った。
宝石のような瞳が鏡のように己が身を写し出す。その相貌は飢えた獣のように喉を鳴らして、今にも噛み付きそうな程で。
「あ、」
両の腕が首の後ろに周り、ぐいと引き寄せられる。次いで唇に熱が灯る。触れ合った先から溶け合うような快感にぐらりと目眩がして、差し込まれた厚い舌に己のそれを絡ませ滲む魔力を必死に啜った。
甘い、蜜の味。どれだけ神性の魔力を注ぎ込んでも、この男は甘い味がした。
喉を通り、体内へと落ちていく。取り込めば取り込む程腹が減って仕方がない。唇を離し、喉元に齧り付く。歯が肉へ喰い込み朱が滲む。舐めたその血液すら甘く思えた。
耳元でくつくつと喉を鳴らす音がする。見上げると、魔性のヒトは口元に弧を描いていた。
「そんなに、わし様が欲しいか。狼腹め」
視線を反らせない。流れた汗が頬を伝い、ぽたりと落ちる。そんな細やかな刺激にすら身体を震わせるのに、この場を制しているのは間違いなくこの男だった。
「もう、わし様なしではその腹を満たすことが出来ぬなぁ?」
おろかなビーマセーナ。おれのことを、あいしてしまったものだから。
そう言ってヒトは微笑んだ。これ以上踏み込んではいけないと理性が叫ぶが、肉体は欲望を選んで止まらない。
(いや、そもそも)
もう既に、戻れない所まで溺れ堕ちてしまっているのは俺の方かもしれない、なんて。
あまりにも遅すぎる自覚に自嘲めいた笑みを浮かべて、かつえた喉を潤すように唇へと喰らいついた。