おざなりに振り下ろしたシャベルは積み上げられた土の山に深く刺さった。風が吹いて雲が流れ、バカみたいに丸くて大きい月が空に浮かぶ。オレは鈍く光を反射するシャベルから手を離し、はぁと息を吐き出した。
「添? 疲れたか? どこか怪我した?」
「ああいや、全然大丈夫です。練牙さんこそ疲れてません? まだ時間あるし、ちょっと休憩しましょうよ」
適当に浮かべた笑みで声のした方を向くと、汚れた軍手で顔を拭ったらしく頬に土をつけた練牙さんがオレを見上げていた。穴はずいぶん深くなっている。やっぱり二人だと早いなぁ。
一生懸命にシャベルを振って地面を掘り返していた練牙さんはオレの提案に一度地面を見下ろし、うんと頷きオレと同じように地面にシャベルを突き立てた。手を伸ばし差し出せば練牙さんはパッと笑みを浮かべてその手を掴む。
「ありがとな、添」
「……いーえ。……あー、今更ですけど、練牙さんはもう帰ってもいいですよ。明日もお仕事ですよね」
「ん? 最後まで一緒にいるよ。オレなんかじゃあんまり役に立たないかもしれないけど、一人でやるよりは早いだろ?」
「……まあ、はい」
穴から出てきた練牙さんはオレの隣に並んで、なんでもないことのように笑って言った。ああ、狂ってんなぁ、って。自分のことは棚に上げて頭の中だけでそう思う。だって練牙さんのすぐ目の前には真っ黒いビニール袋に包まれた死体が転がっているのに、この人、全然気にしないでいつも通り笑ってんだよ。
人の立ち入らない山の奥は街灯なんてもん存在しなくて、光源は月明かりだけ。練牙さんの笑顔を見るにはちょっと暗過ぎるね。オレとは違って、アンタは月よりも太陽が似合うのに。
死体の横でちょっと休んで、またオレたちは穴を掘り進めた。深くなった穴の中の土は固くてシャベルはなかなか突き刺さらない。軍手の中で豆が潰れてオレは舌を打った。こっから先はオレがやるしかないな。練牙さんの手に怪我をさせるわけにはいかない。ここまでやらせておいて怪我の心配なんて笑っちゃうけど、練牙さんにはオレと違ってちゃんとしたオシゴトもあるもんね。
オレ、こんなんだけどさ、巻き込んだ責任は取るよ。最後に辿り着くのが地獄でも、オレはきっと笑えるから。
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