nina_40enaga
2024-07-21 09:12:29
10853文字
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ルーモスソレムが届かない



 「卒業するまではこれ以上しないよ」
 アルバスがスコーピウスにそう宣言されたのは、初めて口と口をくっつけてキスをしたその日だった。頬や額には何度かしたことがあったが、口にしたのは当然初めてだった。スコーピウスの口にした“好き”の種類が自分のそれと同じだということがはっきりわかって、その幸福にぼんやりしていた矢先の出来事だった。これ以上、の意味を遅れて理解する。在学中、口と口をくっつける以上の恋人らしい触れ合いは、どうやらお預けになるらしい。べつに構わないと思った。スコーピウスはアルバスの手を取って指を絡めて、再び唇を重ねた。触れられたところから甘く溶けて、何にも例えられない幸福で全身が喜びに震えた。

 しかしその約束はほんの三日後に反故になった。キスをすることにすっかり溺れた二人は部屋に入るなりろくに会話もせず口と口をくっつけて、飽きることなく何度も何度もキスをしていた。スコーピウスの舌がアルバスの唇をつついた。アルバスはなんの躊躇いもなく口を開いた。ぬるりと舌を挿入される。誤魔化しようのない行為に進もうとしている、と頭の片隅で警鐘が鳴ったが、それを気にするには、あまりにもここ三日間キスばかりしすぎていた。とろりと蕩けた頭ではなんの判断もつかない。入ってきた舌を受け入れ、口の中を舐められる感覚にぞくぞくした。優しく上顎を舐められ、スコーピウスに縋り付くように背中に手を回すと、どうやら何かのスイッチを押したらしい。気づいたら優しくベッドに押し倒されて、再び口付けられた。いつものふわふわのスコーピウスの唇の感触に安心していると、舌が入ってくる。今度は絡め合わせて、それから舌の表面をすりすりと舐められる。ぎゅっと目を瞑って口の中の感覚に集中していると、とろとろと唾液を流し込まれる。それを溢さないように必死に飲み込んだ。
「かわいい……
 口を解放され、声が聞こえてくる。スコーピウスはアルバスの上に乗ったままうっとりとそう呟いた。ぞくぞくと興奮が背中を上ってくる。
「ごめんね、舌入れるつもりなかったんだけど」
「ううん、平気」
 どうやってもう一回をねだればいいのかわからなくて、両手を伸ばすとハグされた。抱きしめられたいわけじゃないのに。でも嬉しくて、すりすりと頭を擦り付ける。


「君が成人するまでは、セックスはしない」
 ふたりの間の約束はだんだん姿を変え、この形に落ち着いた。この約束だけは守っていたが、今夜もスコーピウスの長い指が、アルバスの穴の中に四本入っている。
「君のここ、すっごくかわいい♡」
「ん、んぁ♡」
「ねえ、もっとほしい?」
 スコーピウスはとろとろに優しい顔でアルバスを虐めた。シャツもズボンも脱いでくれないのに、アルバスだけは一糸纏わぬ姿にされていた。
「ほし、んん……挿れて」
「もちろん」
 ぐう、と奥まで指を挿れられると、歓迎するように穴がぐずぐずに蕩ける。アルバスは目を閉じて、スコーピウスとセックスをしている想像をした。
「アルバス、前も触ってほしい?」
「んん……
 目を閉じたまま首を振る。次の誕生日までに、後ろだけでも達せるようになりたいと密かに練習していた。最高のコンディションで彼に抱いてもらいたいからだ。彼の性器の形を頭に思い描く。あまりに卑猥な妄想に、自分の卑しさが嫌になりそうだったがあと少しだった。スコーピウスに挿れてもらっているのが、指ではなかったら。興奮したスコーピウスの性器で、触られるだけできもちよくてたまらない秘密の場所をごりごりと押し潰すように何度も突き上げてもらえたら、と妄想していると、まるでアルバスの気持ちを汲み取ったように指の動きが激しくなった。ぐちゃぐちゃと水音が鳴る。出し入れするだけではなく、広げるように指を開くから、穴が限界まで広がって、奥の奥まで彼に見られている気がする。顔から火が出るほど恥ずかしくて、気持ちいい。
「かわいいね」
 言葉とともに、再びぐいっと奥まで押し込まれる。その瞬間、ぱたた、と精液が飛んだ。くたりと力が抜けたアルバスの身体を、スコーピウスが抱きしめてくれる。
「スコーピウス、セックスしたい」
 ばかみたいになってしまった頭はろくに働いていなくて、口から気持ちが溢れるのを止めることはできなかった。
「うん、僕もしたくてたまらないよ」
 スコーピウスの熱が腰のあたりに押し付けられていた。しかしアルバスがどんなに誘惑しても、それ以上をしてもらえないことを知っている。
「シャワー浴びてくる」
 そう言うと、少しは引き留めてほしいのにスコーピウスはあっさりアルバスを手放してくれる。その優しさが寂しくて、胸がつきりと痛む。

 誕生日はほんの数ヶ月後だ。しかし数ヶ月先が絶望するほど遠い。こんなに誕生日が楽しみだったのは生まれて初めてだった。父は成人する年なのだし何か意味のあるものを渡したい、と張り切っていたが父が言う“意味のあるもの”ほど信用できない言葉もないからほとんど気にしていなかった。親戚からも、まあそれなりに豪華なプレゼントを色々もらえるのだと思う。ジェームズが祝われていたときのことを思えば、たぶん。しかしそんなことは本当に瑣末なことだった。スコーピウスの性器を受け入れることしか考えられなくなっていた。だめだと言われるとより魅力的に思えてしまう。彼と本当の意味で繋がることができたらいったいどれだけ気持ちいいんだろう。それに、スコーピウスのことを夢中にさせることもできるかもしれない。今のところ行為はほとんどひとりよがりだった。スコーピウスが必死になってアルバスの身体を求めるところを想像しては、もう上がりきってすっかり下がらなくなった口角を押さえる。
 今日は彼とは別の授業が多い日で、朝に一緒に上級魔法薬学を受けたきり会えなかった。学年が上がるにつれてそんな日も増えている。しかし明日は休みだ。かなり高確率でスコーピウスに身体を触ってもらえる。もしかしたらまだしたことがないことをしてもらえるかもしれない。挿れるのはだめでも、それに近いこととか。穴の入口だけでもいいから、彼の性器を押し付けられて虐めてもらえたら、とアルバスはここ最近想像を逞しくしていた。きっと挿れてほしくてねだって泣いてしまう。その姿を彼に見られることを想像すると、奇妙に心がねじれて、心臓がにわかに早鐘を打つ。アルバスが気づかないようにしている衝動だった。こんなことを考えるのはやめたいが、スコーピウスに定期的に身体に触れられるようになってから、ずっと頭がぼんやりしている。妄想で頭をいっぱいにさせながら延々と続くスリザリン寮へ続く階段を降りていた。そのときだった。
 ずる、と身体がずり落ちる。ホグワーツの階段にはいくつか気まぐれな段があり、見た目には見えているのに実際には段差が存在していなくて、必ず一つ飛ばしで登り降りしなくてはならないところがいくつか存在している。しかし上級生にもなってひっかかることはない。何も考えなくても身体に染み付いているから無意識に飛ばせるようになっているはずなのに。あまりにも考え事に夢中になってすっかり気を抜いていた。とにかく上に上がろうとポケットにしまった杖に手を伸ばした時、ぐっと下に引っ張られる感覚があった。同時に、足にロープのような弾力のある紐が巻きついたことに気がつく。じたばたともがいているうちに、気づけば胸元まで階段に埋まってしまっていた。助けを呼ばなくては、と思ったが寮のそばで大きな声を出すことに躊躇いがあった。その一瞬の隙をついて、紐がさらに下へ引っ張られる。
「助けて!」
 やっと声が出たときには暗闇に閉じ込められていた。アルバスの声は虚しく響いて、闇に飲み込まれる。ホグワーツには、例え上級生でも、先生達でも、校長でさえ知らない部屋がいくつもあると聞いたことがある。ここもそういう場所の一つだろうか。とにかく暗すぎて何もわからないし、紐は脚だけではなく腹部にも侵略を進めていた。とにかく杖を手に取らなければ何も解決できない。そう思って伸ばしかけた手を無慈悲にも絡め取られてしまう。足が床につく気配もなく宙吊りのままで、この空間がどこまで続いているのかもわからない。そのとき、アルバスの身体に巻きついている紐が、ロープと呼ぶにはいやに太く、また弾力があるということに気がついてしまった。それはまるで生きているみたいだった。大蛇に身体を絞められているみたいだ、といやな想像が頭に浮かぶ。そもそも紐が意思を持ってアルバスに巻きついてくるはずはないのだ。蛇はもがけばもがくほどきつくアルバスの身体を絞め上げた。身体が恐怖でがくがくと震え出す。
「や、やめてよ。離して。離せ!」
 今更大きな声を出しても何もかもが遅かった。スリザリン寮に僕がいないことに気づくのは誰だろう、とアルバスは考える。気づきそうなのはたったの一人だけだ。スコーピウスがアルバスの不在に気づき、寮監に助けを求めに行ってくれるのは何時間後だろう。教師達が捜索を開始して、階段の中に閉じ込められているアルバスに気がつくのはさらに数時間後だろうか。蛇はアルバスを丸呑みして、お腹の中でゆっくり消化しはじめる頃合いだろうか。そう考えてアルバスは気分が悪くなった。吐きそうだ。そんなにお腹を締め付けたら、本当に。
「う、ぐっ……
 これ以上締め付けられたら嘔吐しそうだと思ったその瞬間、締め付けが緩くなる。その隙を突いて逃げようと再びもがくと、蛇は再びアルバスを拘束した。杖を掴もうと伸ばした手も再び拘束される。
「あ、んっ」
 先ほどとは角度が変わった。太ももの際どいところからお尻の穴の上を通ってぎっちりと拘束される。いつもスコーピウスに虐めてもらっている場所だ、と今この場にはまったく不似合いなことが思い浮かぶ。するすると蛇はアルバスの身体の上を這う。お腹の締め付けは緩くなったが、代わりに胸元を締め付けられてしまった。
「んぐ、んんっ」
 もがけばもがくほど強く締め付けられる。苦しくて息が止まりそうだ。もし蛇が首に巻きついてしまったら、と考えると恐怖で再び体が震え出す。そのとき、蛇の姿が暗闇にぼんやり浮かんできた。どうやらこの空間はまったくの暗闇というわけではなく、わずかにどこかから光が漏れているらしい。アルバスの目はようやくこの暗さに順応したようだった。蛇だと思っていたそれは、蛇でも、ロープでもなかった。どうやら植物のようだ。植物の蔓、と気づけば確かにそのような感触だった。蛇に食べられてしまうという結末は避けられたようだ、と安心する。
 アルバスが安心していると、蔓は再び動き出した。しゅるしゅるとどこまでも自在に伸縮することができるらしい。そんな植物、薬草学の授業で習っただろうか。習ったような気もするが、よく覚えていない。何しろ植物は種類が多いのだ。教科書に書かれていたことを必死に辿っていると、再び思考を邪魔される。蔓がアルバスの穴の上を何度も行ったり来たりするのだ。
「や、やだ……
 スコーピウスの手つきとは何も似ていないのに、スコーピウスに触ってもらうときのことをなぜか思い出してしまう。そんなことはしたくないのに、つい蔓に腰を押し付けてしまった。すると蔓はまるでアルバスの期待に応えるように、スラックス越しにすりすりと、ついに性器を刺激してくれる。そのもどかしい刺激にあっという間に夢中になった。何しろ、階段を降りている時からすでに抱かれることで頭がいっぱいだったのだ。このアブノーマルな状況に、まったく興奮している場合ではないのに、アルバスの性器は頭を擡げていた。太く立派な蔓に布越しに刺激され、うっとりと目を蕩けさせる。夢中になって腰を振った。暗闇で、誰にも見られていないこともアルバスを安心させた。気持ちいい。でももっと気持ちよくなりたい。足りない。と頭がぼんやりしてくる。スコーピウスの性器を頭の中で妄想する。何度も何度も想像したからすぐに脳裏に浮かんだ。熱くて硬いもので気持ちいいところを擦ってほしい。アルバスの身体に夢中になって、余すところなく触ってほしい。そんな秘めた妄想が頭の中で都合よく展開する。
そのとき、シャツとスラックスの間、ベルトで締めた細い隙間に、細い蔓が忍び込んでくる。細い蔓とは言え直接の刺激に、アルバスの性器は涎を垂らして侵入を歓迎してしまった。
「ん、くっ♡」
 蔓が性器にぴったり絡みつく。蔓に支えられているアルバスの身体は上手く力が入らず、不自然に脚を開かされて固定されていた。蔓はスコーピウスの温かくて柔らかい手のひらとは違って、アルバスの弱いところを優しく扱いてはくれない。ただきゅっと細い蔓が表面を這うだけの曖昧な刺激がもどかしかった。
「ん、あ、はぁっ♡」
 これまでも、スコーピウスがいつもより強く乳首を捻り上げたり、激しく指を抜き差ししてくれた時アルバスは感じてしまって仕方がなかった。曖昧な刺激に焦らされて、もぞもぞと身を捩る。そのとき、シャツの上からアルバスの上半身を拘束する蔓がすりすりと乳首を刺激してきた。しかし布越しの刺激では到底物足りない。もっと決定的な刺激がほしい。頭の中ではそれしか考えられなくなっていた。
 そのとき、片手の拘束が解かれているのに気がついた。懐から杖を出して、切断呪文で蔓を切って、クッション呪文をかけて、下に降りる。もしくは浮遊呪文で体を浮かせて上に登る。やるべきことはこんなに明らかだったのに、アルバスの片手は杖ではなくベルトのバックルに向かっていた。日常動作とは言え片手ではだいぶやりづらくて、興奮で手が滑ってしまって焦らされる。それでもなんとかバックルを外すことに成功した。もたもたと下着ごとスラックスを降ろし、触ってほしくてたまらない場所を露出する。すると望んだ通りのことが起きた。表面を這っていた細い蔓とは比べ物にならない太い蔓がアルバスの性器に近づき、押し潰すように刺激したり、巻きついたりした。快感を超えて痛いと思っても手加減はしてくれない。そのコントロールできない何かに一番の急所を許してしまっていることに気がつき、身体を震わせてももう遅かった。恐怖も痛みも快感に変わってしまうみたいだった。感じたことのない快感に震えていると、シャツの裾からも蔓が入り込んでくる。そして、いつもスコーピウスに可愛がられている乳首に到達した。アルバスの乳首は、スコーピウスに触られるようになってからだんだんと形を変えた。今やふっくらと丸く大きく育っている。立派に育った丸い乳首をぐいぐいと押しつぶされる。アルバスは咄嗟に目を閉じた。スコーピウスの手つきとはまるで違うのに、彼の指で気持ちいいところを容赦なく虐められていると妄想するとたまらなかった。それをずっと望んでいたのだ、とはっきり自覚する。これ以上硬くなりようがないほど硬く勃起して先走りをだらだらと溢してしまっている性器がひたすら答えだった。
「あ♡ あっ?!」
 快感に夢中になって腰を揺らしていると、蔓が尻に伸びてきた。そして蔓が穴の周りを這う。何かの間違いで入り込んでしまったら、と思うと恐ろしかった。逃げようと腰を引くのに、気づいたら再び両腕を拘束されていて、できることは僅かだった。アルバスの後孔はスコーピウスの指しか今のところ受け入れたことがなかった。自分で自分の指を挿れるのさえまだ怖くて、スコーピウスに「かわいい」「だいすき」「挿れさせて」ととろとろの甘い声で口説かれながらでないと異物を受け入れることができなかった。蔓は穴の周りをしゅるしゅると這っている。さすがに入ってくることはないだろうか。そう思っているとぎゅっと性器を締め付けられる。予想外の刺激に腰がびくりと揺れる。
「あ♡ だめっ♡ だめ♡ やだ♡」
 蔓の先端がアルバスの穴の入り口にぴったりと当たる。逃げるように腰を前に突き出すが、全身をほとんど拘束されているアルバスが逃げられる範囲は残酷なほどごく僅かだった。蔓はまったく容赦なく、アルバスの後孔に侵入した。蔓はなぜか柔らかく湿っていて、スコーピウスの指よりは太いが普段四本の指を受け入れているアルバスには難なく受け止められる太さだった。アルバスの感情が嫌だと思っていても、身体は勝手に開かれ、侵入者をまるで歓迎するように柔らかく収縮してしまう。せめてスコーピウスの指が到達したことがあるところまでにしてほしい、という願いも虚しく、知らないところまで入ってくる。
「ぐっ、や、やだ」
 自分の声が震えていることを自覚する。スコーピウス以外を受け入れてしまったことが耐えられないのに、身体はまるで喜んでいるみたいに、侵入してきた蔓に甘えるように収縮を繰り返していることを到底認めたくはなかった。蔓は容赦なく奥へ奥へと侵入した。そこはスコーピウスの性器でいつかめちゃくちゃに突いてほしかったのに。毎日夢に見るほどそうされたかったのに。蔓はアルバスの望みを汲み取ったわけではないだろうが、ゆっくりと抜き差しが始まった。まるで植物とセックスしているみたいだ。ぎゅっと押し込まれて、苦しくてたまらないのに勃起した性器は萎えるそぶりもない。咥え込めるならなんでもよかったのだろうか。スコーピウスがいつも丹念にかわいがってくれるこの身体が、そんな身体だとは思ってなかった。大好きな人にちょっと意地悪されるのがたまらなく好きなだけで、誰でも良いなんて思ったことは一度もないのに。涙がつーっ、と一筋流れる。流れた涙をぬぐう手段もなくて、ただ気持ちいいところを強制的に刺激され続ける。蔓はますます激しくアルバスの中を抜き差しした。指より太く性器より細い蔓には、なんの意思もなく、ただ抜き差ししているだけなのに、まるで奉仕するように絡みついてしまうのが嫌だった。
「やだ♡ あ♡ あっ」
 この状況から解放されたくて、暴れれば暴れるほど蔓が強く腕や脚を拘束し、穴の抜き差しは速まった。スコーピウスが見つけてくれたアルバスの秘密の場所を容赦なくごりごりと刺激される。こんな状況で達してしまうのだけはいやだ、と擦り切れかけた理性が叫んでいるのに、それさえ虚しくアルバスは吐精した。
 ぐったりと身体の力が抜けた。途端に、先ほどまでぐいぐいとアルバスの身体を絞めあげていたのがうそのように、植物の蔓は一本ずつ緩んでいき、身体を解放した。そのままごろりと床の上に転がされる。ずっと宙吊りにされていたからどこに床があるのかも把握していなかったが、案外地上は近かったので落下して怪我をするのは避けられた。ここで気絶してしまいたいほど身体は重かったが、そんな危険を冒すわけにはいかない。解放されたのだって気まぐれに違いないのだから今すぐここを後にした方がいい。アルバスはやっと懐に手を突っ込み、杖を引っ張り出した。

 それからどうやってスリザリン寮に戻ったのか、詳しくは覚えていない。灯りをともして上へ登る階段を見つけ、がむしゃらに登り続けて、いくつか鍵開けの呪文を試して、知らない廊下を何度か通り過ぎて、知っている教室の前に辿り着いた時には涙がでるほど嬉しかった。寮の部屋まで辿り着くと、安心、などという言葉で到底表現しきれない感情になる。すっかり消灯時間は過ぎているが、同室のスコーピウスは起きているだろうか、と中を覗き込んだ。
「アルバス! 君のこと探してたんだ」
 ぎゅっ、と抱きしめられる。スコーピウスはアルバスの身に起きたことなんか知り得ないはずなのに、それは端的にアルバスが最もほしいものだった。
「スコーピウス」
「君がいなくて、僕ほんとに探しちゃった。一体どこに行ってたの?」
「お願いがあるんだ」
 ぺらぺらと喋りだしたスコーピウスを遮る。彼の両肩に手を置いた。
「なに?」
「今すぐ僕とセックスして」
「え、な、なんて言ったの?」
「お願い。君にしか頼めない。君じゃなきゃいやだ」
 そのとき、アルバスの様子が、普通ではないとスコーピウスは気づいたようだった。目を細めて、アルバスの体を抱き寄せる。
「誰かに酷いことされた?」
 スコーピウスの声がいつもより低く響く。甘くて高くて少しだけ掠れた彼の声が好きだ。ちょっと低い今の声も好きだ。今すぐ彼に慰めてほしい。そのためだったらなんでもできる、と思った。
「誰かじゃなくて、何か。僕は君に全部あげたかった。でももう僕が君にあげられるものは何もない。だけど、お願い」
 まるで自分の口ではないみたいに素直な言葉ばかりが溢れていく。
「君に抱かれたい。誕生日まで待ったら気がおかしくなる。実際のところ、もうおかしくなりそうなんだ。お願い」
 そう言ってスコーピウスの腰に自分の腰を押し付け、すりすり、と何度も擦り付ける。いつもだったらできないことがほんとうにできてしまうみたいだった。
「アルバス」
「これ以上余計なこと言わないで」
 涙が溢れそうだった。とてもまともな状態ではない、理にかなったことが何も言えないアルバスの願いを、何もかも叶えることに決めた。スコーピウスは泣きそうなアルバスの顎に人差し指を当てて、優しく上を向かせて口付けた。うっすらと口が開いている。舌を押し込みながら、酷い目にあってきたばかりのアルバスの身体を優しく抱きしめた。





 いつもぴったりと閉じているはずのアルバスの穴は柔らかく解れていた。スコーピウスはそれを見ても意外なほど動揺しなかった。彼のまともではない様子から何があったのかは全てではなくてもなんとなくわかったし、重要なことはアルバスが深く傷つき苦しんだ末スコーピウスを頼ってくれたことだった。抱かれたい、と口にするアルバスは夢に見たほど可愛かった。そんなことを考えている場合ではないのに。
「ここに挿れていい?」
 こくこくと頷いたから、アルバスの穴から指を引き抜く。アルバスはスコーピウスの背中に手を回してぎゅっとしがみついていた。
「かわいい。大好き。ハグしたままする?」
「うん」
 くらくらするほどかわいい。なるべくくっついたまましたいという彼の希望を汲んで、スコーピウスは片腕でアルバスを抱きしめたまま下着ごと寝巻きのズボンを下ろした。性器を擦って勃たせながら、かたかたと震え出しそうなアルバスを見下ろす。かわいくて目眩がしそうだ。
「挿れるね。痛かったらがまんしないで、教えて」
「うん」
 アルバスの脚が彼自身の意思で開かれる。穴の入り口にぴったりと性器を当てた。ずっとこうしたかった。卒業まで待つつもりだったのにできなくて、彼が成人するのさえ待てなかった。でもきっとこれが最善択だった。ぐっと力を込めて侵入する。アルバスにとっては多分初めてではなくて、スコーピウスにとってはまるきり初めての行為だった。
「あ♡ あっ♡ んん」
「はぁ♡ アルバスかわいい♡」
 脚を大きく開いて、穴を限界まで開かされて性器を受け止めているアルバスの姿をずっと見ていたかったのに、アルバスの腕がねだるように伸びてくる。そっちもかなり魅力的だ、と思いながらねだられるまま抱きしめた。ぴったりくっついて、今なら一つに溶け合えてしまえる。
「だいすき♡」
「ぼくも、すき♡」
 緑の瞳が蕩けて、スコーピウスのことが好きでたまらないと言っていた。今この瞬間大切なものなんか他に何もないと確信して、スコーピウスは宝物みたいに大事なアルバスを抱きしめて、ゆらゆらと甘やかすように腰を揺らした。そのまま、彼が好きで好きで堪らない場所を刺激する。
「アルバス、気持ちいい?」
「うん♡ あ♡ あっ」
 彼に喜んでほしくて、ぐりぐりと押し付けたり、とんとん、と優しくノックしたりする。気持ちよくて、だめになりそうな理性をの手綱をしっかり握り直して、彼の顔を見つめる。強く押し付けられる方が、彼は好みのようだった。
「すこー、ぴうっ♡ もっと」
 かわいい、で頭がすぐにいっぱいになってしまって他のことを考えるのが本当に難しい。ちゅっちゅっと何度も顔中にキスするとくすぐったそうにくすくす笑う。かわいい。
「おねがっ、もっと奥、ほしっ」
 ねだるように腰を脚で引き寄せられる。そんなに奥まで侵入するつもりはなかったのに、ねだられるまま奥へ押し込んでしまうとやっと安心したようにアルバスは目を細めた。
「やだった、すごく。君じゃないものが入ってくるのが」
「うん」
「でも、君の方がきもちいい。よかった」
「アルバス、自分がいまどんな顔してるか、知ってる?」
 泣き笑いのアルバスは、スコーピウスの指摘に不思議そうな顔をする。慎重に言葉を選ばなくてはいけないのに、大好きな人と身体を繋げながらそうするのは、かなり至難の業だった。
「たぶんね、セックスしてるときに相手のこと以外を考えるのは、良くない」
 口を開いた彼が、ごめん、というつもりだったのかわからない。アルバスがこれ以上苦しそうな顔をする前に、唇を重ねてしまったから。そのまま彼が望んだ一番奥を、抱きしめたまま何度も突いた。彼の身体が震えているのに気づかない振りをして、体温をなるべく多く分けてあげられるように抱きしめたまま、彼の奥に吐精した。

 ごめん、とだいすき、と大丈夫? のどれを言うべきか迷っていた。きっとどれを言っても間違いではないのだろう。
「大好き」
「うん、僕も」
 ふにゃふにゃと柔らかく頬が緩む。思わず手を伸ばして包み込んだ。どうやら正解を選べたらしい、と思う。
「君が言いたくないなら、何があったのかは言わなくていい」
「変な植物に襲われて君の指よりずっと太い蔓に犯された。でも今君が入ってきてくれたのより手前までだ。だから、大丈夫」
 何が大丈夫なのか本当によくわからなかったが彼は安心した顔で目を閉じてしまった。信じられないことに、もう会話は終わりにするつもりらしい。
「アルバス、今僕がどれだけ心配してるかわかる?」
「んー……
「寝るの?」
「うん」
 彼を果てしなく甘やかしたい気持ちと、今すぐしっかり問いたださなくてはいけないというまっとうな意見でスコーピウスの心は二つに割れた。しかしアルバスが甘えるようにスコーピウスの肩口に頭をすりすり、と擦り付けてきた瞬間ふたたび心は一つになった。
「おやすみ、アルバス」
 まるくてかわいいおでこにキスをする。彼の身に起きたことを思うと今夜は到底眠れそうにもないが、腕の中の体温は心地よくて、今確かにここに存在していた。