ガラシャ
2024-02-23 17:07:08
5141文字
Public libido
 

Devilishness 2‐1

モブ×和也です。夏の話なので、とんでもなく季節外れですが、楽しんでいただければ…。
和也の通り名を弁天様からサロメさまに変えてみました。令和の世において悪女扱いされる和也って…。
…読み返したら、弁天さまのままだった

 ――毎年、夏になるとバカンスと称して、サイファではエッジの実家である黒崎家が所有する別荘に泊まり込むことが恒例となっていた。
 黒崎家は資産家だ。資産家らしく一等地に建てられた別荘は途轍もなく広かった。サイファのメンバーが勢ぞろいしてもまだ余裕があるほどに。
それでも、各々乗り合わせた車で別荘に辿り着くと、途端にむさ苦しくなった。
 自身のBMWで別荘にやってきた甲斐は、ふと視線を上げた先に自分を捕らえて離さない存在を見つけ、視線が外せなくなった。
 胸元がやや開いた5分丈の白いTシャツとその下の黒いタンクトップ、膝丈のパンツの姿は和也にしては珍しかった。
「ようやくついた」
 その和也の顔はやや疲れが見えた。和也のつぶやきを聞き留め、自身の車の中から荷物を手にしているエッジが笑いながら問いかけてくる。
「ドライブデートも楽しかったろ?」
「朝からいろいろ連れまわされて、俺は疲れた」
「だってよ。一日お前とデートできるなんて滅多にないんだからさ。イロイロ楽しまないとな」
「まったく、お前は
 和也は仕方ないというように溜息を吐く。
 エッジが隣にいれば、和也に近づくことさえできない。誰も近寄らせず、ふたりだけの世界になってしまう。
 妬ましさを感じてしまうのは今の甲斐にとっては仕方のないことなのだろう。
「甲斐、何みてんだよ。ああ、エッジと和也か」
 氷室が声をかけてくる。
「エッジの奴、ちょっと前までは和也と連絡取れないってブチ切れていやがったのに、すっかりご機嫌が直ったな」
 東堂もやってきて同じように和也を見やる。和也と連絡が取れなかった時のエッジの不機嫌ぶりはちょっとした語り草だ。女も仲間も寄せ付けず、スマホを手にしたままずっと睨んでいるのだ。一週間ほどそんな夜が続き、久しぶりに和也がアモーラルに訪れ、和也の隣には和也の異母兄である森島明人がいたにもかかわらず和也に詰め寄ったのだ。
『和也っ。お前、どこにいたんだ!』
 怒号交じりで和也の肩を掴み上げるエッジに、サイファのメンバーはじめ、常連たちがざわついたのだった。
 ――あまりにも直視していたせいだろうか、和也がふとこちらに視線を向ける。しかし、一瞬、瞠目した後すぐに視線が逸らされた。
「おいおい、すっかり嫌われてるじゃねえか」
「当然だろ。あんだけ犯しまくったんだから。俺たちに笑顔なんて向けるわけねえだろ?」
 東堂も重ねるように言った。
 アモーラルで催淫剤を飲まされ、連れ去られそうになっていた和也を部屋に連れ帰り、3人がかりで犯したのはつい1か月前のことだ。和也が望まぬ性交は、和也自身を深く傷つけたことは明白だった。
「結局あの後、まだ和也とヤってたんだろ?カレシの名前は聞き出せたのか?」
「聞き出せなかった。
 ――あいつ、最後まで首振ってたぜ」
 氷室と東堂が帰った後も甲斐は和也を離さなかった。惚れた相手を簡単に帰せるはずもなかった。
 ましてや和也には男がいるのだ。電話越しの会話から察するに、事情があって今は海外にいるようだが、またすぐに和也の元へ帰ってくるのだろう。
 そして和也はその男に当然のように抱かれるのだ。甲斐に見せたことのない顔もみせているのだろう。
 自分には許されていない和也とのその関係性に、甲斐は嫉妬した。男の名を聞き出そうと躍起になったのだ。
 甲斐が散々責め立てても、甘く嬲って懐柔しようとしても和也は頑なに首を振った。よほど知られたくないのだろう。
 最後は甲斐もあきらめて、和也を腕に抱いたまま就寝したのだが、翌朝には和也は消えていた。
 その日から今日まで和也に会うことはなかったのだ。
 未練がましいと言われても仕方がない。以前からあった仄かな想いが、和也を抱いたことではっきりとした恋情に代わってしまったのだから
 冷めることのない熱情はあの日から甲斐を支配している。
 自分に日線を向けることのない和也に苦々しく思いながらも、視線をはずことができなかったのだった。

 ――割り当てられた部屋に荷物を置いたサイファのメンバーは、各々自由に行動し始める。
 甲斐はテラスで氷室と東堂とともに飲んでいた。プライベートビーチにはまだ日が照っており、浜辺で遊んでいるメンバーもいる。
 豪華なリビングには何人かが酒盛りを始めていた。
 和也の周りは、エッジや竜一、聡志といった幹部連中で固められている。エッジはアモーラルと同じく、和也を隣に座らせている。上機嫌にグラスを煽りながら、和也に話しかけている。
「和也、そろそろポテトサラダ食べたいな」
「そのためにわざわざスーパー寄ったもんな、お前
 和也があきれたようにいうと、エッジも快活に笑う。
「わかったよ。直ぐ作ってやるって」
「お、よろしくな」
 豪華なシステムキッチンで和也が手際よく野菜を切っていく様子がみられる。時より、キッチンにやってくるメンバーと会話を交わしながらも手をとめない。
 家事は慣れていると言っていたが、本当に手際がいい。
 出来上がって物をもって、エッジの前におくと、エッジが早速箸をつける。
「やっぱりうめえな。お前の作るポテトサラダ。マジで俺好みのアレンジだし。――和也、そろそろ一緒に住もうぜ。んでそのまま、嫁に来いよ。毎日うまい飯食わせてくれよ」
「はいはい」
「本気にしてねえな、お前。ま、その前にお前のじいさんと兄貴の了解を得なけりゃいけないから、すっげえハードルは高いけど」
 いつも通りのやり取りが交わされている。あれほど鋭利な男が和也に対してはとことん甘い。サイファ以外の者たちからも『骨抜きにされている』と言われるほどだ。
 ――エッジのマンションに和也がよく出入りしていることは周知の事実だ。和也の相手はエッジかと思われたが、だとしたら秘密にすることはない。サイファ内でもアモーラルでも二人の親密ぶりは知られていていた。
「和也、こっちにもなんか食べるもん作ってくれよ」
 東堂が和也に声をかける。一瞬びくりと震え、和也は顔を向ける。そこにいるのが甲斐たちと分かりながらも、無視はできない。和也はそういう性格だ。
自分たちでしろよ」
 和也の声は幾分か固い。幹部たちはその声に不思議そうな顔をしているが、その理由はこの場にいるものは誰も知らない。和也と、三人を除いて
「そんなこと言うなって。俺たちだって弁天様も施しが欲しいんだから。――なあエッジ、いいよな?」
 東堂が問いかけたのはエッジであった。和也を隣に座らせて、グラスを煽りながら様子を見ていたエッジはあっさりと応じる。
「いいぜ」
「享っ」
 和也はエッジの名を強く呼ぶ。エッジの本名を呼べるのは、サイファでも、おそらく麻原でもいない。和也だけに許された特権だった。
その和也の肩を抱いて、エッジは諭すように言った。
「たまにはサービスしてやれって。労ってやるのも、女神さまのお役目だぜ」
 エッジに促され和也は渋々といった感じで、キッチンに赴く。冷蔵庫から何かを取り出し、また手際よく調理をする。
 そして出来たものをもってキッチンからテラスにやってくるのだが、その顔はこわばっていた。
ほら」
 和也が素っ気なくテーブルの上に置く。白い皿の上に載っていたのは、ガーリックシュリンプだった。本当ならば、甲斐と氷室、東堂のことなど避けたかっただろうにやはり和也は律儀だ。
 それを狙ってわざと料理を作るように仕向けたのだ。
 ローテーブルになるため、やや上肢を屈ませることになり、甲斐の目は自然と引き寄せられる。
 シャツから除く胸元に甲斐の目はくぎ付けになる。肌は相変わらず白く滑らかだった。あの肌に触れて、狂おしく交わった記憶がまだ生々しく蘇ってくるほどに
 そして微かに見える乳首が、紅く色づいていた。
 和也は乳首への刺激には非常に弱く、指で突起を摘まんだり甘噛みして吸ってやると、身を捩って啼泣していた。
「じゃあ」
 すぐに立ち去ろうとする和也の手首を掴み、強く引く。
――っ、何すんだよ!」
 甲斐の膝の上に腰を落とすことになり、和也は抵抗する。逃げようとするしなやかな腰を腕で包んでしまう。
「和也。もうちょっとここにいろよ」
「ふざけんなよ!なんで、お前らのところにっ。やだっ、やめろ!」
 甲斐に腰を押さえつけられたまま、氷室の手が伸びてきて、和也のシャツをたくし上げる。
「和也ぁ、乳首前より紅くなってんじゃねえか」
 揶揄する言葉に、和也は氷室を睨みつける。
 たくし上げられたシャツの下からは、以前と同じようにキスマークがいくつも残っているしなやかな体が現れる。
「俺たちとやったことカレシはなんか言ってたか?」
 東堂が訪ねると和也は押し黙った。唇を噛みしめ、顔をそらせる。
「だんまりかよ。面白くねえ。まあ、どうせ独占欲の強いカレシに散々、かわいがられたんだろ?それとも、俺たちにやられたこと素直に言って、お清めセックスでもねだったのか?」
 和也の顔が青ざめる。一悶着あったのは確かなのだろう。
「ナニされたんだ?言ってみろよ」
「お前がどうやっておねだりしたのか見てやるよ」
 氷室と東堂はにやにやと笑っている。
 いつも澄ませた顔をする和也の顔を歪めたいアモーラルの一部の常連は、そんな歪んだ思いを持っている者たちがいる。氷室と東堂は彼らと何ら遜色がなかった。
「もういいだろ」
 和也を貶める発言をとめたのは、和也を腕に抱いたままの甲斐だった。和也の強張りをしり、背をそっと撫でる。
――それより和也、今晩、いいよな?」
 甲斐はハーフパンツの上から和也の尻の間に手を彷徨わせる。ためらいもなく、孔の上を探ると、やや強く指を押し付ける。
「んっ」
 思わず上がってしまう声に、男たちの顔がにやける。気を良くした甲斐は、さらに強く指を押し付ける。和也の体を知り尽くした手つきに和也は悲鳴を上げた。
「ひっ、や、やめっ」
「おーい和也」
 和也が身を捩じって甲斐の肩を押し返している時、和也を呼ぶ声が聞こえてきた。リビングからはこのテラスはやや死角にあたる。
 和也はエッジの声に手が止まった甲斐を押しのけ距離を取った。
 その直後、テラスにエッジが顔をのぞかせる。
「どうした?お前、顔が赤いぜ」
「ちょっと外が暑かったから」
「そっか。無理すんなよ。あ、そういえば、客がきてる」
「客?」
 和也が眉を上げると、その人物がやってきた。すらりとした体格と整った顔立ちは、和也の異母兄である森島明人だった。
「和也」
「異母兄さん。どうしてここに?」
 和也は明人に近づく。
「異母弟が世話になってるんだから、顔を出しておこうと思ってなというのは建前で、じいさんと冴子さんがお前が行きの車で一緒ではないと知って拗ねてしまってな。少し顔を見せてやってくれ」
「わかりました」
 和也は異母兄の後についてテラスを出ていく。
「エッジ、和也はここに泊まらないのか?」
 その姿を見送った甲斐はエッジに尋ねる。
「家族旅行だとよ。森島のじいさんがお気に入りの孫二人つれて。愛人付きだけどな。
 ――和也にとっちゃあ、3人とも大事な家族だからな。」
 和也の経歴は詳しくは知らないが、両親は既に亡くなっているらしい。今現在の保護者は祖父であるらしいが、なぜか祖父の愛人に預けられているという。複雑な生い立ちだとわかるが、それにしても和也はそれを苦にしている様子はない。
 甲斐たちが知らない和也の複雑な心情もエッジは知っているのだろう。和也がアモーラルに訪れることができるのもエッジがいるからだ。エッジは森島明人のお眼鏡にかなった男といえる。
 10分ほどして戻ってきた和也はその手に酒やつまみを持っていた。
 それをみたサイファのメンバーから驚きの声が上がる。
「これ、うちのおじいさんから
「うわ。これ高級ブランデーじゃねえか」
「またすげえ肉も、和也、やっぱりお前のじいさんって大物なんだな」
まあな」
 和也は複雑そうに言いよどむ。和也の祖父は極道で有名だった男だ。金も権力も、ついでに色事も忘れない。同じ男としてうらやましい限りだ。
 海で遊んでいた者達も別荘に戻ってきて、BBQの用意をし始めた。和也もキッチンに入り、サラダなどを作っている。
 甲斐はビール缶に口をつけながら、遠くから眺めていることしかできなかった。



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甲斐×和也が昔っから好きでしてね