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ガラシャ
2024-01-13 21:01:45
5441文字
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渇愛原作軸
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SALOME 2-2
全て話を10歳差想定で書き直したいくらいに、悶えている…。新装版ってキャラの年齢にそって書いている印象でしたね。享とも2・3歳差って書かれてあるしね!
「さあ、ついたよ」
――
森島明人の運転でたどり着いたのは、はやり桂ライフビルディングだった。高層ビルが乱立している中で、13階という桂ビルはひっそりとたたずんでいるが、なんだか異様な存在感がある。
地下駐車場で車を止め、エレベーターにのる。カードをスライドさせると、すぐに⑬の文字が光で浮かび上がる。
(うそだ
…
こんなの
…
)
この場所に訪れることはないだろうと思っていた。和也自身、近づくつもりはなかったし、玲二も恐らく連れてくるつもりはないだろう。
思わぬところで因縁の場所に来てしまい、和也は微かに恐怖する。
「ここが私のプライベートルームだ」
明人の先導で、最上階の一室に案内される。入ってすぐの部屋はリモートワークができるように大きな液晶画面と、客人のためのソファ、デスクとチェアがある。
「少しここでまっていて」
執務室から続く扉に消えた明人は、手に何かをもってやってきた。
「クリーニングに出す間、これを。私のものですまないが」
ゲストルームを案内され、和也は着替える。ここまできたら、もう流されるままだということは気づかない振りをする。
着心地がいい
…
。ちらりとロゴを見ると、有名ブランドのものだった。スウェットも履き心地が良い。明人の私物であることは間違いない。和也が着るにしてはゆったりとしていて裾があまってしまう。
高級スーツに身を包んだ姿はスマートなのに、和也よりは背も高いし体格も良い。運動しても食べる量を増やしても、筋肉も脂肪も付きにくい和也にとってはうらやましい限りだ。
脱いだスーツを片手にリビングルームに戻ると、明人が電話をしているところだった。
「では。急で済まないが、代わりに頼む」
通話を終えた明人はスマホをデスクに置き、和也に近づいてきた。
「預かるよ」
「すいません。あ
…
」
その時、手に持っていたスマホが震えた。表示を見ると玲二だ。
「でてくれて構わないよ」
「すいません。失礼して」
一応は遠慮して、部屋の隅に足を進める。ちらりと明人を振り返るが、明人はコンシェルジュらしき男にスーツを渡すところだった。
和也は画面をタップして耳に当てる。
「
…
もしもし?」
『和也、お前今どこにいる?』
今は17時だ
…
そろそろ、玲二は出かける支度を終えたころだろう。明確な帰宅な時間は玲二に伝えていなかったが、今日はバイトもなく、本来ならば今頃は家にいる。
「まだ出先」
嘘ではない。どこにいるかを言わないだけで。そうか、と玲二がつぶやく。普段ならば、出勤前の時間に玲二が電話をかけてくることなどない。
「何かあったのか?」
だからつい和也も問い返してしまう。
『急遽、仕事で泊まりになった』
以前とは違い、玲二は毎晩高見家に帰ってくるようになった。高見家というよりも、和也の居る場所というべきなのかもしれないが。
「どこいくんだ?」
『どうやら都内じゃないらしい。さっき連絡があったばかりだから、詳細は出勤してからだけどな』
「そっか」
別に和也としては一晩二晩、玲二が家に戻らないからといって心配も、ましてや誰のところにいるのかという嫉妬もない。肉体関係があるからといって、自惚れているつもりはない。
『最近、物騒なんだから、しっかりと戸締りしろよ。あと、リビングで夜更かししてそのままソファで寝るんじゃねえぞ。今日は運んでやれねえんだから。ちゃんとベッドで寝るんだ。いいな?』
最後は言い聞かせるような言い方だ。ソファでうたた寝している姿は度々玲二に目撃されているので、何も言い返せない。でもそれは、玲二だけが知っている和也の姿のはずで、それを他人に知られるのは気まずい。
『じゃあな。明日の昼には帰る』
自分の言いたいことを言って満足したのか、玲二はさっさと通話を終える。小さなため息をつく和也に、くすりと笑い声が聞こえた。
はっとふりむくと、デスクに戻った明人が和也を見つめていた。
「なかなか過保護だね、レイジも。まあ、君以外の人間を気にかけることなど、あの男はないだろうが」
「
…
家族、ですから」
家族として当然の事だろう。和也だって家族として玲二を気にかけているのと同時に、玲二だって
…
和也としてはそう思いたい。
「本当にそうかな?彼が君以外のものに執着がないのは、君自身が一番よく分かっているだろうに。
――
未だに君は、あくまで家族の範囲でとどめたいんだね」
「
……
」
明人には、玲二が和也に向ける執着の有様をしられている。だから今更
…
とは思わなくもないが、知人とも言えない男とそんな会話をするつもりはなかった。
微かに睨みつける和也に、明人は更に笑みを浮かべる。正確な明人の年齢は聞いていないが、和也とはおそらく10歳以上年齢が違う。
「まあ、この話はこれぐらいにしよう。
――
少しクリーニングに時間がかかるようだから、その間、寛いでくれて構わないよ」
和也の唇がこれ以上は何も話さないと噛みしめられるのをみて、明人も退いた。自分のパソコンを起動させている。
会社訪問からずっと明人に一挙一動を見られる気がして気が抜けなかった。今だって気配を探っているだろうが、視線が外れたことで和也はようやく息継ぎができるような気がした。
和也は興味知ったことをノートにメモしていたが、ふと本棚をみると、読みたかった本があるのに気づいた。
「本棚を見てもいいですか?」
「ああ。構わないよ」
ビジネスに関する本が並べられている。和也でも知っている経営者や有名企業の本が並んでいる。
「付き合いでご本人からいただくことが多いのだが、なんせゆっくり読書をする時間も少ないのでね。読み切れていないんだ」
「そうなんですか」
和也でも知っている著名人との交友関係が垣間見える。
「もし気に入ったのがあったら貰って行ってくれて構わないよ」
「いや、流石にいただくわけには」
著者たちは明人に読んでほしくて贈ったに決まっている。それなのに、事も無げに言う。それが明人の本性なのか、ドライだ。
「ここに仕舞われたままで日の目をみないよりは、将来有望な若者の肥やしになった方がいいからね。遠慮はしなくてもいい」
「はあ
…
」
和也は手に取って読み始める。最近、ゆっくり読書する時間もなかったし、どうせこの場から逃れられないのだから、何とかやり過ごすしかない。
しばらくすると、コーヒーがコンシェルジュによって運ばれてきた。同時に、クッキーなどが乗った皿もおかれる。
「こちらも貰い物でね。甘い食べ物は嗜まないものだから、助けてもらえると嬉しい」
「なら遠慮なく
…
」
一つ取り、口にする。甘さは控えめだが、バターの風味がおいしい。高級なものであるのは間違いなさそうだ。
腹がすいていたのかつい摘まんでしまう。ブラックのコーヒーにもよくあっていた。読書をしながらゆっくりと過ごす。なかなか贅沢な時間を過ごしている。
甘いものを食べたせいか和也の気も緩んでくる。読んでいる本も面白く、ついつい集中して読み進めていく。
そしてそれは、低い美声によって唐突に終わった。
「そろそろおしまいにしようか」
「え
…
あ?」
和也がはっと腕時計を見ると、18時前になっていた。窓から見える空も夕暮れとなっていた。それに気づかないぐらい、集中していたらしい。
「すいません。こんな時間までお邪魔してしまって
…
帰ります」
「どうして?家に帰っても、ひとりだろう?それにクリーニングが終わるのも明日になると、先ほど連絡があった」
和也は眉をひそめた。裸で帰るわけにはいかないが、だからってこれ以上ここにいるのも
…
。
「泊っていけばいい。ゲストルームもあるから、遠慮することはない」
「
……
」
それはあまりにも図々しいのではないだろうか。明人と和也の関係は、そんなに親しいものではない。
それならば、せめて同じ階にあるはずの玲二のセカンドハウスの方がましだ。あとで散々詰め寄られるだろうが、ここにいるよりかは
…
。
「まあ、とりあえず食事をしよう」
30を超えた明人にとっては、和也を扱うなど造作もないことだろう。すべての退路を断たせて、和也が断れないように仕掛けてくる。
そのやり口が玲二と似ていて、和也は微かに胸が疼いたが、目の前の年上の美貌の男はそれも分かっているのだろう。
美々とした笑みを浮かべながら、「さあ、別室にいこう」と和也を促すのだった。
――
森島明人のお抱えシェフが作ったフレンチは、すこぶるおいしかった。家では基本的に和食をつくるし、友人たちと食事に行くとしても学生らしく居酒屋チェーン店が多い。本格的なフレンチはあまり経験がない。
おいしい食事に表情も緩んでくる。素直な反応を見せる和也に明人が笑った。
「普段、家では家事をしているのは君だろう?得意料理とかはあるのかな?」
「あ、適当に、なんでも。小学生のころからしていたので
…
」
最初はチャーハンや炒め物といった簡単なものだったが、焦がしても母が「おいしい」と笑って食べてくれたので、母の喜ぶ顔が見たくて、料理の腕は上がっていった。
「それはすごいな。なんでもか」
「森島さんは?その、料理とか
…
」
目の前の年上の男に話すのは所帯染みている気がする。いや、そもそもこんな話題を振る意味はあるのか
…
和也は口にしたものの、なんだか間違った質問をした気がして、気まずさを感じる。
和也の表情にそれを読み取ったのか明人が笑った。
「残念ながら、全くそちらの才能はないようでね。冷蔵庫なんて、飲み物ぐらいしかはいっていない」
まあそうだろうな
…
とは思う。自身の膨大な資産があり、美形とくれば、身の回りのことをする者たちも事欠けないだろう。そもそも、和也とは全く生い立ちが違う。
和也が家事全般できるのは、母子家庭で少しでも母の負担を減らしたかったからだ。
自然と料理もするようになり、母親が残業の時などは自分が料理を担当していた。
高見家に移り住んでからはそこに義父が加わることになったが、リビングで無関心な顔をしていた玲二が内心どう思っていたかは知らない。
義父は和也を可愛がってくれた。初めて出会った頃から、再婚相手の息子という目ではなく、愛おしいものを見るような眼をしていた。随分と可愛がってもらった自覚はある。部活の試合だってよく見に来てくれたし、進路の相談にも乗ってくれた。
実子である玲二と同様に
…
いや、玲二の代わりに和也を相手にしていた感じもある。実父が話しかけても何を与えても玲二はいつも素っ気なく、何にも関心を寄せなかった。
父がいなかった和也は、実の父と子の距離の難しさを感じていた。
「すいません。変な話題だして
…
」
――
やはり、なんだかこの年上の美貌の男にするには余りも稚拙だったような気がして、和也は素直に謝る。すると、男は驚いたように一瞬眉を顰め、すぐさま微笑を向けてきた。
「何を言うんだい。話題を振ったのはこちらだ。
――
俺としては君のことを知れて、とても嬉しいのだが」
美貌の男にやわらかく微笑まれて、こんなセリフを言われたのならば、男も女も簡単に堕ちてしまうのではないか。
だが、和也にとっては、どこか懐かしさを感じてしまう。
その理由は分かっている。義父に似ていると目の前の年上の男に思ったことがあるのだ。
包み込んでくれるような
…
義父が亡くなってからは誰にも感じたことのない安心感があった。義父を思い出させているから、気を許すまいとしていた和也の気持ちも緩んでいるのかもしれない。
食事が終わると、同じ部屋のソファに誘われる。執務室のソファに比べてもさらにゆったりとしたソファだ。
大きな液晶のテレビもある。
「どうせなら、映画でもみようか?ミステリーは好きかな?」
随分とリラックスしている様子だった。食事前には、明人自身もスーツを脱いでいたため、堅苦しい雰囲気は既になかった。
幾分か寛いだ空気の中で二人きりで本格的なフレンチを食べていたのだ。
「お仕事はいいのですか?」
おそらくだが、明人は多忙な日々を送っている。こうして和也の相手をしている暇はないのではないだろうか。
「今日はもう仕事はないんだよ。
――
それに、何もかも自分がしていては、後進も育たないしね」
明人はそう言って、動画配信サイトのボタンを押す。
映画が始まると、開き直りもあり、和也も座り心地の良いソファに身を埋める。
まもなく、コンシェルジュによってシャンパンやおしゃれなつまみも用意される。
映画は面白いのだが、連日バイトが忙しい中での就職活動もしていたため、疲れていたのかもしれない。
身を沈めたソファが心地よく、眠気に誘われる。
「和也君?」
明人の声が近い。なぜ、近づいてくるのだろう?と疑問に思いながらも、和也はすっと寝入った。
∞∞∞
新年の創作としては、籠の中の狂愛の新婚旅行編を書いています。
ドスケベが書きたくて
…
。
玲二と和也の高見家での様子って、誰も知らないのが本当のところだろうな
…
とは思います。
ただの同居人ではないし、だからといって同棲カップルの甘さはないだろうし
…
。
その様子を窺い知れるのて、レアな気がします。
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