もしも、本当の兄弟として育ったら…②

今年最後の更新となります。

「なあ、高志。あいつの欲しいもんってわかる?」
 ――ファーストフードのバイト中、暇つぶしに立ち寄ったという従兄弟の久住高志に和也は問いかける。
 高志が注文したものを席に持っていきがてらのため、そんなに長く話すわけにはいかないのだが、ふと思い立ったのだった。
「あ?なんだそれ」
 高志は不審げに見上げる。
「あいつさ、何かほしいものあるみたいで。俺が『本気になったところがみてみたい』っていったら『学年一位とったら、欲しいものがある』っていって」
「なるほどね。だからあいつ、最近真面目にしてるのか」
「そうなんだよ、人が変わったみたいに」
 約束をした翌日から、玲二は勉強机に向かっていることが多くなった。とっても、やはり自室ではなく和也の部屋でしているのだが。
「で、とったのかよ?一位?」
「うん。まあ、2位とはぎりぎりの差だったけど」
「マジでか」
 あの万年さぼり魔である玲二がと思わなくもないが、元々頭脳は明晰だ。本当に単に手を抜いているだけで。
「あいつが欲しがるものなんてお前関係に決まってるだろ?なんか、あいつが欲しがりそうなものもってるのか?」
「いやそれが。あいつ、欲しい物は勝手に取っていくから、結局、共有になってるし。今更、新しく何かが欲しいとか思いつかなくて
「あいつらしいな」
 従兄弟として当然高見兄弟とは生まれたころからの付き合いである。数か月違いで生まれた和也とは幼い頃はワンセットにされたし、2年後に生まれた玲二は姉がいる高志にとっては弟のようなものだ。この二人の距離の近さが思春期になっても変わらないことに驚いていた。
 いや、一応反抗期はあったのだ。玲二が和也をみて謎の舌打ちをしたり、睨みつけるように見ていたりだが絶対に和也から離れることはなかった。それどころか、和也に近づく者は親であっても睨みつけていた。あれが反抗期とも言えなくもない。
 ブラコンにしては行き過ぎている和也への執着は、未成年ということもありみな侮っているが、このまま膨らんでしまい弾けては仕舞わないかと高志はひそかに心配していた。
「あいつのそういうとこホント困るんだよな。バイト代で買えるものだったらいいんだけどさ」
 和也は本気で悩んでいるようだ。頑張った弟に、褒美をやりたいと本気で思っているようだ。
 なんだか和也がこうして悩むのを玲二は計算していた気がする。自分の事だけを見て欲しいと、幼いころから玲二の視線は和也に向けられていた。
「無茶ぶりでないことを祈ってるよ」
「他人事だと思って
 和也ははあとため息をついて、バイトに戻っていく。その背を眺めながら、高志はコーヒーを飲み干した。

 ――和也がバックヤードでゴミの仕分けをしていると、バイトの先輩である女子大生が話しかけてきた。
「高見くん、弟君来てるよ」
「え、玲二が?」
「うん。『兄はいますか?』って。マネージャーも今休憩中だし、注文したものもって行ってあげなよ」
「ありがとうございます」
 和也がバイトをし始めたころから、玲二もこの店の常連となっている。そのため、バイト仲間たちからは玲二が来れば教えてくれるのだ。
 ランチ時間をとっくに過ぎていたため、店内も客もまばらだ。
 ――和也が朝、家を出たときはまだ玲二はベッドで眠っていた。例のごとく、和也の部屋のベッドである。一応声は掛けたが、『んー』といって広くなったベッドに大の字で眠っていた。同じ時間に寝たはずなのに、まだまだ寝足りないといった感じだ。寝る子は育つを体現しているようだ。
 中学生とは思えぬほど、存在感がある。家ではまだ上下そろいのジャージなどを着ているので年相応な気もしていたが、こうして街の中で見れば大学生くらいにみえる。
 玲二が注文したらしいポテトとコーラを持っていく。
 和也が持っていくと、玲二は手に参考書を持っていた。和也は眉を上げる。この前の約束はとっくに終わったはずなのに、まだ続けているのだろうか。
 こんなド派手な容姿で片手に参考書とはなかなかの違和感だ。
「どうしたんだ、玲二?」
「今晩、親父とお袋いない」
「ん?なんだ、親戚になんかあったのか?」
「デートだってよ。夕食は適当に食えって」
 そういって玲二は5000円札を見せる。両親が夕食代として渡したようだ。
 両親の仲睦まじさは思春期の男児二人がいてもかわらない。子育ても一段落し、和也が中学生になったあたりからふたりで出かけることが増えた。流石に和也も玲二も親についていく年ではないし、仲睦まじいことはいいことではある。
 ふたりの世界に夢中になって子育てを疎かにする両親ではない。和也と玲二、それぞれの接し方も分け隔てなく、仲の良い家族だと胸を張って言える。
「そっか。じゃあ、どっか食べに行くか?あ、そういえば高志も暇みたいだし、三人で
「あ?なんで、高志を呼ぶんだよ」
 途端に玲二は不機嫌になる。凄まじい目力で和也をねめつけてくる。
「ほら、人数が多い方が
「俺とお前だけでいい」
「あ、うん
 玲二は他人には無関心だ。親にさえも素っ気ない。だが和也を前にすると違う。
――じゃあ、何食べたい?」
「キムチ餃子。チーズ入り。お前の作ったやつ」
「ん。じゃあ、あと1時間でバイト終わるから、スーパーによってから帰るな」
「俺も一緒に行く。勉強しながら待ってる」
わかった」
 バックヤードに戻った和也は、黙々と仕事を片付けた。
 時間になり着替えを済ませると、裏口近くのベンチに玲二が座っていた。駅前ということもあり人通りは多い。その中でも、一番注目を集めていた。そんな視線をものともしない玲二はスマホを操作している手をとめ、悠々と組んでいた足を解き立ち上がった。
 立ち上がった玲二は和也に近づいてくる。
「スーパーに行くか」
 ふたりが連れ立つとやはり注目を集める。正直なところを言えば、玲二と連れ立って歩くのは苦手だ。あまりにも違いすぎるから。端正な顔立ちも稀有な存在感もあからさまに嘲笑されたことだってあるのだ。
とても中学生に見えない玲二と連れ立つと、和也の方が年下に思われることさえある。
 駅前の喧騒を抜け、自宅近くのスーパーが見えたときは何だかホッとした。
 近所のスーパーでは高見兄弟は日常の一部だ。顔見知りの店員も、近所に住むパートのおばちゃんもちらっと視線を向けただけで、あとは自分の仕事に戻る。
 そんな中、材料をカゴにいれていく。セルフレジで会計を済ませ、スーパーを出ると、歩いて10分ほどの自宅に戻った。
「腹減ったろ?すぐに作るから」
 和也はさっそくキッチンに立ち、夕食の準備を始める。米を研ぎセットすると、スープや副菜をつくっていく。副菜のナムルは両親も好きだから多めに作っておく。
 最後に、餃子の具をつくっていく。豚ひき肉に細かく刻んだキムチ、チーズも入れる。味付けはシンプルだ。
 皮で丁寧に包むと、フライパンに置きポットのお湯を注ぎ入れ、ふたをする。そのまま蒸し焼きにして再びふたを開けると、最後に焼き目をつけていく。
 しっかりと焼き目をつけると火を止めて、皿にひっくり返す。
「玲二、できた!」
 リビングのソファで寝そべっていた玲二が起き上がる。
 それぞれがいつもの指定席に座るが、隣の席同士になってしまう。二人きりなのに、それもなんだかおかしく、和也は立ち上がると母の席に座った。
 玲二は片眉を上げるが、何も言わず食べ始める。
「どうだ?おいしい?」
「普通」
「普通ってなんだ普通って」
 自分が作れと言いながらもこうである。まあ、本当に食べない時は、一切手を付けないので、バクバク食っているのでおいしいのだろう。
 ――こうして、玲二に餃子を作ってやるのも、あと数回のことかもしれないし少しは大目に見てやろう。和也が家から出て行っても、玲二が食べたくなったら母に強請るだろう。
 高校卒業後は、海外の大学に進むと、先日の進路希望で担任に告げた。両親も寂しいと言いながらも応援してくれている。後は玲二を説得するだけだ。タイミングを見計らっているところである。
 大皿にもったキムチチーズ餃子は2/3は玲二の腹に収まった。
「そういえば、今日バスケの国際試合あるんだろ?」
 よくそんなに食べられるなと玲二を見ていたが、玲二が何気なく口にした。
「あ、忘れてた」
 和也は残っていた白飯を食べ終えると、急いで片付け始める。
 ――中学・高校とバスケ部に所属している。地区大会で優勝を目指すとかそんな熱血な部活ではないが、あくまで緩やかで仲間でわいわいしているのが楽しいといった感じだ。
 洗い物を終えると、炭酸飲料のペットボトルを冷蔵庫から取り出して、リビングのソファに近寄る。玲二とはやや距離を取って、ソファに背を預ける形で座り込む。
 だが、玲二がのっそりと立ち上がると、和也の背を足の間に挟み込む形でソファにどっかりと座った。
「暑苦しいんだけど」
「俺は暑苦しくない」
「ソウデスヨネ
 和也は目の前の試合に集中することで、気にしないことにした。
 試合は日本の優勢で進んでいった。手に汗握るシーンも多くなり、玲二の足に挟まれながらも前のめりになる。それも肩を掴まれて玲二に元の位置に戻されてしまう。
 そんなことを何度か繰り返し、ついでに飲んでいた炭酸飲料水も途中でとられてしまい、半分飲み干されてしまう。
 だが和也は腹がたたなかった。なんせ日本が勝ったのだ。明日は日曜で休みだが、月曜日はこの話題で部活が盛り上がるだろう。
 和也が喜びを噛みしめていると、外の駐車場で車が止まる音がする。両親だ。和也は玲二の膝に腕をおいて立ち上がろうとすると、肩を押し戻される。え?と和也が見上げると、玲二の顔が見下ろしていた。
「え、なに?」
 和也が問いかけても、玲二は答えない。その代わり、顔が近づいてくる。近くなる顔に、和也は咄嗟に顔を背けようとするが、首ごと顎を掴まれて固定されてしまう。
 そして、口付けられた。和也は瞠目する。玲二も目を閉じず、和也の目をのぞき込んでいる。
 和也の半開きになってきた口に舌を差し込み、そっと舌をなぞってきた。
「ん
 和也が首を嫌がろうとすると、舌を絡め強く吸い上げてくる。深くきつく、熱く絡んでくる。
「んんん
 息苦しさに視界が歪んでいく。玲二の肩を押し返そうとしても、和也よりも逞しい弟はびくともしない。それどころか離すまいと、和也の手首にも長い指が掴んでくる。
 名残惜し気にちゅっと音を立てて、唇が離される。和也は戸惑いながらも問いかける。
なん、で?」
「なんでって。お前が言ったんだろ。俺が本気になるとこみてみたいって。
 ――わかってるよな和也。お前が、叩きつけたんだ」
 大きく喘ぐ和也の唇を玲二は親指でなぞる。柔らかな感触を楽しむように、ゆっくりと。
「今回はこれで許してやる。けど次、俺が学年一位とったら、先に進むからな」
 美貌の弟の宣言に、和也は絶句する。玲二が欲しいものが何かわかってしまったいや、分からされてしまった。
 玲二が欲しいのは
 ――その時、リビングの扉が開く。
「和也、玲二、ただいま。お土産買ってきたわよ」
 母・由美子の明るい声がリビングに響く。すっと玲二が退いていき、母に応じる。
「土産って何?」
「チーズケーキよ」
「和也が好きなものだろ」
「玲二がそういうと思って、ちゃんとお父さんがゼリーも買ったよ」
 和也は呆然と弟と両親の姿を見る。
 先ほどまでのアレは何だったんだ?
 両親と何もなかったかのように会話を交わしている玲二が和也は信じられなかった。
 ――兄弟として超えてはいけない一線があるはずなのに物心つく前から常に隣にいて、片割れともいえる玲二が見知らぬ男に見え、和也は思わず凝視してしまった。



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今年も大変お世話になりました!

今年はまさかの新装版発売+縛恋発売決定信じれは叶うものですね!
あんなに美麗な玲二と和也が見れるなんてねがっつりエッチな絵だったし、よかったね!!
あの夜も明人×和也加筆でもう、本当に
来年も頑張って書くね☆