ガラシャ
2023-10-07 22:21:55
5285文字
Public libido
 

libido 7-2

「玲二って和也から離れてどれだけの時間なら耐えられるんだろう?」ってずっと思いながら、「原作通りの半年が限界かな?」ってことで、なんかいつも半年を区切りにしてます…。


 ――和也の部屋はアパートの2階の一番奥の角部屋だった。階段をのぼりながら、カバンの鍵を探る。指先にあたる感覚に、ふと安堵し、顔を上げた途端、和也の体は固まった。
 和也のアパートの前に、誰かがいる。和也が不審げに目をすがめると、男が振り向いた。
 圧倒的な存在感を持つ、美貌の男だった。
「ようやく帰ってきやがったか」
 聞きなれた声にふと懐かしさが蘇る。だがこんなところに、この男がいるはずはない
「れい、じ?」
 和也の部屋の前にいたのは、高見玲二だったのだ。
 信じられなかった。なぜ、この男がここにいるのか。
 玲二が和也の部屋の前で煙草を吸っている。男振りが映える全身ブラックのスーツを着こなしながら。髪も切ったのだろう、襟足が短くなっていた。
 この古ぼけたアパートとは明らかに場違いだ。東京にいるはずの玲二がなぜここにいるのか、信じられなかった。
「ひでえ野郎だな。俺に黙って、いなくなるなんて。しかも合鍵突き返すのも、他人経由なんだもんな」
「なんで?」
 声を振るわせて和也は問いかける。
「なんで?――決まってんだろ、お前を迎えに来たんだよ」
 言いながら玲二は手に持っていた煙草を落とし、革靴の裏でもみ消した。
「感謝しろよ、お前。俺が自分から進んで迎えに来るのは、お前くらいなんだぜ?」
 玲二は半年もの間、離れていたことを感じさせないように和也に話しかけていた。
「せっかく、一緒に住むって約束もしてたのに、どうしたんだお前。俺に監禁されるとでも思ったのか?」
 玲二の言葉は耳に届いているはずなのに、何も心に残らない。ただ驚いてしまい、心が受け付けていないのかもしれない。
「か、かえ
 『帰れ』と玲二に言いかけた所で、別の話題を玲二が出す。
――お前が姿を消してからな、麻原中が大騒ぎだ。お前の兄貴とサイファがなりふり構わずお前を探すせいで、麻原中にお前がいないことが広まったんだぜ。
 ――サイファの弁天がいなくなったって広まってから、男も女も目白押しでエッジに恩を売ろうとして、お前の情報が飛び交ってる。情報に踊られてサイファの連中が躍起になってお前を探して、その隙を狙って他のチームがサイファを襲撃し、また別のやつらはサイファが身動きができない間にお前を探し出して自分のチームに引き入れようと画策して動いている。
 ――滅茶苦茶だぜ、今の麻原は」
 齎される麻原の現状に、しかし和也は興味がない。自分一人いなくなったくらいで、そんなことが起こるはずがないではないか。
 だが玲二は和也に嘘は言わない。もたらされた情報は真実なのだろう。
「森島本家でも揉めてるそうだ。本家の誰かがお前に入れ知恵したんじゃないかって、お前のじいさんが怒り狂っていて、大変らしい」
 だが和也の表情は動かなかった。元より孤独感を感じていた森島本家のことなど、和也は気に留めていなかったのだ。祖父の怒りが気になるが、祖父はいなくなった孫を単に案じているのだろう。
 和也の頑なな心は変わらない。それを感じ取り、玲二は恐らく和也が一番心を動かすであろう情報を齎す。
――ああ、そういや高倉別荘の女将も心労で倒れたそうだぜ」
「冴子さんが!?」
「そりゃあ、我が子同然の存在が突然行方を眩ましたんじゃなあ」
 瞬時に和也は青ざめる。育ての親である冴子がそんなことになっているとは
 何度も連絡はあったが、一切出なかったのだ。冴子は祖父の愛人だ。情報が漏れてしまうのを防ぎたかった。だがそれが、冴子を苦しめていたのだ。
「お前の兄貴だって、自分の情報網と金をつかって、NYにお前が滞在してたこと掴んでた」
「異母兄さんが、そんなことを
 異母兄弟といっても、世間一般のような兄弟仲ではない。あの美貌の裏に鋼の精神をもっている異母兄がそこまでして自分を探すとは思わなかった。自分に向けられるのは、凶悪だった父の血を分けた和也への感傷だと思っていたが
「まあ、けど、お前の居場所を一番先に知ったのは俺だけどな」
 玲二は意味深に和也に視線を流す。
「どういう、ことだ?」
 聞いてはいけない気がした。だが、玲二が和也を探し出せた理由がそこにあるのだとしら、今後のことを考えて、知らないわけにはいかなかった。
「アプリだよ、アプリ。前に、一緒に入れただろ?あれな、招待した側が相手のGPS機能を勝手に操作できるんだせ」
 和也ははっと鞄に入っているスマホを探り出した。玲二との予定を合わせるため東京にいるときからそのアプリでスケジュール管理をおこなっていたのだ。
 この街にきてからも、日常的に使っていた。玲二の予定とは共有できない設定にしていたから大丈夫だと思っていたのに、意味がなかったのだ。
 GPS機能が勝手にonできるということは、玲二は最初から和也の居場所を掴んでいたということになる。
それならば納得できる。東京を出てから、様々な人から連絡があったのに、玲二からは一切なかった。
 それを、玲二から離れた自分に興味を失ったのだと思っていた。が、違う最初から居場所を知っていたのだから、連絡する必要がなかったのだ。
「お前がわざとらしく媚びを売るようになってきたから、可笑しいと思ってたんだ。保険のために、アプリを入れといてよかったぜ」
 アプリを二人でインストールしたのは、高見家に初めて訪れた日の翌日のことだ。玲二の執着をとめるため、また関係を終わらせるために向き合うと決め、促されるままスケジュールを共有することになった。
 和也は急いで、アプリをアンインストールしようとする。だが、幾ら操作しても、アプリは消えない。
「無駄だ。そのアプリは、俺のスマホから操作しないと消えないようになってる」
 玲二は告げると、腕時計で時間を確かめる。男らしい太さのある手首に明らかに高級品とわかるそれは、酷く似合っていた。
 それだけで、この半年間で、玲二がさらに華々しいステージを上ったのだと知る。
「さあ、東京に帰るぜ。荷物まとめろよ。今からなら、羽田行きのフライトも間に合う」
玲二の整然とした声に、和也は唇をかみしめた。
「いやだ
 そして、和也は玲二を睨みつけ、言葉を絞り出していく。
「嫌だ、東京には戻らない。戻りたくない!」
 和也は叫ぶ。
「俺がいなくても、お前にとって何の不都合もないはずだろ!?なのになんだよ、何で迎えに来るんだよ!」
 ――バン!――
 和也の叫びを遮るように、玲二が左手の拳でアパートの扉を叩いた。夜のアパートに大きくひびき、和也はびくりと震える。
「いい加減、聞き分けのねえこといってんじゃねえ」
 低い声は、凍てついていた。
「あの日も、高倉別荘にいるって嘘ついて、こそこそ準備してたんだもんな、お前」
 あの日とは、東京を離れた日のことだろう。確かに玲二には嘘をついていた。忙しそうだから、高倉別荘に戻って手伝いをしている、と。
「嘘つくの得意だもんな、お前。しれっとした顔で周りを騙しやがる」
「騙してなんかないっ。俺は俺なりに考えて
「お前なりに考えて、俺たちが必要ないから東京から離れたんだろ?騙してなんかないってならなんで俺を『捨てて』、ここでひとりで生きてるんだ?」
 和也は咄嗟に二の句を続けられなかった。
「『捨てて』なんかだって、そういう関係じゃなかっただろ?」
 まるで将来を誓った恋人同士のようなそういう関係ではなかったはずだ。東京を離れる寸前まで確かに恋人ごっこのような甘さはあったが、和也は年明けからは徐々に高見家に行くことを控えていた。
 やはり、玲二は追いかけっこの関係が新鮮だったのだろう。ただ平凡に生きている和也をこんな地方都市まで追いかけるくらいには誰かを遠ざけたことはあっても、誰かに遠ざけられたこともないのだ。
 だから、こんな不毛な関係を引き摺っている。
「『捨てた』だろうが。この俺を。一切のためらいもなく『捨てた』だろ?」
……
 和也は呆然とした。玲二にとっては、和也が玲二を『捨てた』ことになっているのだ。覆すことのできない事実に玲二にとってはなってしまったのだろう。
――結局、お前の見掛けに騙されて、他の奴らも、この俺も、振り回されたわけだ」
お前と出会った頃には、会社の内々定をもらってたんだ。もう、どうしようも
 玲二が初めて高倉別荘に訪れた二日前に、出版社からの内々定をもらっていたのだ。
「言い出すタイミングはいくらでもあっただろうがっ。それでも敢えて言わず、あわよくば俺から離れようと思ってたんだろ?
 ――面白かっただろ?お前に身も心も縛られる俺を、せせら笑ってたんだろ?なあ?」
「違う!俺はそんなこと思ったことない!」
 一度たりとも、玲二をせせら笑ったことなどない。玲二の執着が恐ろしかったのは確かだが、和也は元々決めていたのだ。
 何があっても、東京から離れ、自分ひとりで生きていくと。
「お前には、幾らでも世話してくれる奴がいるだろ?俺がいなくなったって、誰かが
 和也の代わりはいくらでもいるはずだ。玲二を思い、玲二に尽くす人間はいくらでも
 和也は進んで玲二の世話をあれやこれやとしていたわけではない。そうせざるを得ない状況だっただけだ。玲二の目にどう映っていたかわからないが、お小言を口にする和也を玲二とて鬱陶しそうにしていたではないか。
 和也でなければいけない理由は、ないはずだ。
「そんな奴、俺がいつ欲しいって言った?
 ――俺が欲しいのはお前だけだ、和也。お前以外は、いらない。あれだけ抱いても、分かってなかったんだな、お前」
 くつくつと喉で笑う。本当におかしそうに笑っている。和也を嘲るのではなく、自分自身に嘲るようなそんな笑いだった。
 暫く笑っていた玲二だが、和也の視線を合わせた瞬間、双眸は冷たく鋭いものになった。
「いいか、和也。俺はお前から離れない、絶対に。わからないってなら、わからせてやる」
 玲二は一歩一歩近づいてきた。肉食獣もどきのしなやかさで、和也に向かって。
 和也は動けなかった。その腕に囚われてしまったら、またあの日々が戻ってくるそう思いながらも、視線を逸らすことができなかった。
 玲二の上背にあった掌が和也の手首を掴む。もう、逃れられなかった。





∞∞∞


玲二が迎えに来ました。ガッテム。
アプリは以前このプライベッターでSSを書いたことがあると思うのですが、この手段しか思いつかなくて




↓最近ちょっと思いついた、渇愛分析?です。麻美ちゃんのこと書いてます。





最近何となくなんだけど、渇愛キャラの中で本質的な部分が似ているのは玲二と麻美ちゃんじゃないかということに思い足りまして
麻美ちゃんは玲二に恋をして身を滅ぼして
玲二は和也に執着して身も心も縛られていく

玲二はダークヒーローの扱いだけど、麻美ちゃんもその部分に惹かれたんだろうね和也が優しすぎて足りないんじゃなくて、麻美ちゃんのが抑制されたものをぶち破りたかったんだろうな~なんて。
玲二は親に期待せずに捨てた。麻美ちゃんは親に支配されたまま。
パターナリズム満載のお家ですものね。父親が強くてそれに従うしかないそう考えると、麻美ちゃんの抑制された思いは幼い頃からくすぶっていて、玲二という存在のよって触発されただけ。こう考えると、本当に恋だったのかという疑問もわいてくるけど
類は友を呼ぶ。
和也が優しくて足りないってのも、パターナリズム拗らせてるな~と思いますね。パターナリズムに慣れているから、それが当然で支配されることに気付かない。それが当たり前だから、麻美ちゃんを一人の女性として向き合っていた和也は物足りない。だから、支配的な玲二にどうしても惹かれたのかも。やっぱり恋のかな。これ

まあでも、新装版が出るまでに20年以上なので、読む側も思春期を終え、就職し、結婚出産もするわけで
麻美ちゃんがこれからどうやって子ども育てるの!?って、違う目線で見るようになってしまって
声高に女性の自立を自分が言いたくなるので、ここでやめておきます。

渇愛と縛恋の違いは、和也が玲二と向き合って、玲二自身が変わっていくんですよね。
玲二が幼少期に愛着形成に問題があったと考えるなら、和也が玲二を育てなおしてるんですよね~。
和也の方が上手というか愛が深い。
だから、縛恋の先はどうなるんだろうとも思います。
玲二の独占欲と執着は変わらないけど、それでも大人の男として成長をみせるのかな~と。
良かったね玲二。和也と出会えて。


長くなったすみません。
わたくしは、専門家ではありませんので
福祉業界に長年勤めておりますが、心理士とかでもないので!!
間違った分析ならすみません