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ガラシャ
2023-04-09 20:20:35
3985文字
Public
呪縛&その他
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【呪縛】sweet poison ①
吉原作品で渇愛の次に好きなのが呪縛です。浩二くんも大好きでして…浩二くんと和也が一緒の空間にいれば、とんでもない癒しだよね☆という俺得な妄想を詰め込みました。渇愛キャラは①のみ出演です。
――
やわらかな朝の光に目を覚ました中原浩二は、腰の上に置かれた男らしく太さのある腕をやや乱暴に退かすと、起き上がる。
10畳ほどの寝室はキングサイズのベッドの他には、家主の気質なのか物をおいていない。壁一面の大きなクローゼットにはそれなりに服はあるが、それでも半分も満たしていなかった。
浩二はちらりと隣に眠る男を見下ろすが、男の瞼が開くことはない。
立ち上がると数歩足を進め、クローゼットを開ける。そこには、このマンションの家主である男の服の隙間に浩二の服が埋もれている。
乱雑に入れられた服に悪態をつく。
「また適当に入れやがって」
形をそろえてしまいなおすと、カーキーのボトムズと白のカットソーを取り出す。寝間着代わりのTシャツとスウェットを脱ぐと、素早く着込んだ。
寝室を出た浩二は洗面台で顔を洗い、そのままキッチンへつながる扉を開く。家事の導線が考えられているのは、このマンションの利点だった。
昨晩寝る前にタイマーをしていた炊飯器が炊き上がるにはまだ時間がある。その間に小松菜と揚げの味噌汁と、卵焼きを作り、作り置きをしておいた金平ごぼうとほうれん草のひたしを器に盛った。
ちょうどタイミング良く、リビングの扉が開き沢田省吾がテーブルに近づいてくる。
無言で席に座る沢田の前に、朝食を用意する。寝起きの不機嫌さはそのままに、沢田は箸を持ち、勢いよく食べ始める。暫く食べると腹も落ち着いたようで、沢田が顔を上げる。
「今日の予定は?」
ふたりの間に朝の挨拶はない。その代わりに、沢田が浩二の予定を聞くのだ。
味噌汁を啜っている浩二は今日のスケジュールを思い出す。
「3限まで講義で、そのあとはバイト」
まだ1年生ということもあり、必須科目が多い。沢田も同じ大学に通っているが、沢田が経済学部、浩二が文学部で学部が違うこともあり大学内で会うことは稀だった。
「俺は夜に用事がある」
「なら今日は」
実家に帰るといいかけたところで、沢田がそれをかぶせるように言った。
「日が変わる前には帰ってくる。だからここで待ってろ」
「
……
そろそろ、着替えも取りにいかないと」
今は季節の変わり目だ。朝夕に薄手のカーディガンを羽織りたい時もある。
「明日一緒に行けばいいだろ?重い荷物わざわざ持って電車に乗るくらいなら、俺の車で行った方がいいだろ」
「そう、だけど
…
」
このマンションは沢田のものだ。高校時代、沢田はアパートに暮らしていたが、大学入学と同時にこの高級マンションの一室を父親からもらい受けたらしい。
居候のようにこのマンションで暮らしているが、そんな自由ができるのは現在、浩二の父が単身赴任をしているからだ。
未成年の息子を一人で日本に残すのは
…
と父は悩んだらしいが、浩二が後押ししたこともあり、海外に旅立つことになったのだ。
浩二としては一人実家で住み続けるつもりだったのだが、どこで聞きつけたのか沢田にこのマンションに連れてこられ、一緒に住むことを強要されたのだ。
実家に電車で約1時間
…
大学を挟んで反対方向になるため、大学の講義がない週末に帰ることが多く、なぜか沢田もついてくるのだ。沢田が運転する車に乗ってふたりで実家に戻る。沢田は何をするわけでもないが、浩二が家事を終えるのをまっているのだ。
朝食を食べ終わった沢田は、自分の支度のためにリビングを出ていった。片づけを始めた浩二は、あまりにも近い距離にため息をつくのだった。
「お疲れ様です」
――
大学の講義を終え、バイト先であるカフェの扉を開ける。まだ開店前なのでロールカーテンがされているが、中はコーヒーの良い匂いが溢れていた。
「あれ?和也さん?」
バイト仲間である高見和也が開店準備を始めているはずなのだが、姿が見えない。不可思議に思いながらも休憩室に入ると、そこには二人の男がいた。
「あ、中原っ」
ひとりは和也だ。その和也は、慌てたように目の前の人物の肩を押し返した。その人物を見て、浩二は驚く。
「やあ、中原君。久しぶりだね」
「オーナーっ。お久しぶりです」
和也の前に立っていたのは、このカフェのオーナーである森島明人だった。今日は本業がオフなのか、いつものスーツ姿ではなくジャケットとスラックスのいでたちだった。
「どうだい、このカフェにはなれたかな?」
低く耳障りの良い声に問いかけられ、浩二も肩の力を抜く。
「はい、すっかり。和也さんがちゃんと色々教えてくれたり、フォローしてくれますから」
「ほう、そうか。和也は面倒見も良いのだな」
名が出たことで、再び視線を向けた森島から和也は視線を逸らす。
「開店準備しないと
…
」
森島からすり抜け、浩二とすれ違う。逃げ去るような、和也らしくないその行動に驚いた浩二であったが、森島の表情は穏やかだった。
「おや、逃げられてしまったか」
残念というよりは、満足そうな表情で笑う。いつもは余裕のある大人の男という感じなのに、今の明人はいたずらっ子のようだ。とびっきり面白いおもちゃを手に入れたような、そんな表情だった。
そんな表情をさせることができるのは和也だけではないだろうか。
「ここで暫く事務をしていこうと思うのだが、いいだろうか?」
「もちろんです。ここはオーナーの店なんですから」
このカフェでは夜の仕事をしている常連が多い。仕事が始まる前にここで一息つき、夜の街に繰り出していくのだ。
自身も高級クラブを経営するオーナーが自分の趣味を兼ねたコーヒーショップをオープンさせたのは、半年ほど前だという。
オーナーと和也の関係は詳しくは知らないが、『浅からぬ縁』ということだ。たまにオーナーが訪れ、和也と話し込んでいるところは見たことがある。和也は遠慮がちな様子だが、森島が和也に執着しているように見える。
(和也さんって、あんなに聡いのに意外と天然だしなあ)
詮索する気はないが、森島が訪れた時の和也はどこか落ち着かない様子なのだ。ミスをしたりはしないが、その行動をさりげなく視線でおっているのを浩二も知っている。
デスクでパソコンを広げた森島に背を向け、ロッカーからエプロンを取り出して店舗に向かう。
カウンターでは和也が開店準備を始めていた。それを手伝うために、浩二も手を動かし始めるのだった。
――
22時に閉店となり、片づけを終えた和也と浩二はセキュリティーをかけて、駅に向かっていた。浩二と同じく和也もが大学後にバイトに来たとのことで、電車で帰るようだ。
「今日の賄いのキッシュうまかったよ。またレシピ教えてくれな」
浩二は父の代わりに家事全般をしていたが、和也も家事を一手に担っているとのことだった。いくら男子が料理をする時代とは言っても、周りにそんな存在はおらず、和也とこうした話ができるのはうれしかった。
「俺も和也さんの作るナポリタンとコールスロー好きですよ。また作ってくださいね」
「もちろん」
あのまま事務所で仕事をしていた森島も食べ、『やはり軽食もだしてこうか』と言ったほどだった。
和也とはなぜか気が合う。このバイトは実は沢田の伝手なのだが、待遇もよく、またバイト仲間である和也とも友好な関係を築くことができ満足だった。
恐らく兄が生きていればこんな感じだったのだろう。そう思えるくらいには、浩二は和也を慕っていた。
「和也さんって大学卒業したらどうするんですか?もしかして、どっか内定してるとか?」
「いや、それがまだ何も。このまま院に進むつもりなんだけど
…
。
――
実は、オーナーにカフェを任せたいって」
「もしかして、今日オーナーが来てたのはその話ですか?」
「そうなんだ。まあ、前々から言われてはいたんだけど。雇われ店長ってやつ」
「いい話じゃないですか?実質、和也さんが全部してるんだし」
「まあ、そうなんだけど
…
」
和也は言いよどむ。店を任されるのは大変かもしれないが、条件としては悪くはないはずだ。何となくだが、和也がサラリーマンをしているイメージがない。無論、賢いし、人当たりもよいので勤められないという意味ではない。
何というか和也は、人を癒す立場が似合うのだ。
「和也」
駅までの道を半分過ぎたところで、和也は呼び止められた。振り返った和也は驚いたように声を上げる。
「玲二。お前、仕事は?」
「早く終わったから、迎えにきた」
その男はいかにも夜の男と言った派手ないでたちであった。一目で高級と分かるスーツを着込み、男らしく太さのある手首には高級腕時計が鎮座している。かなりの美形で、体格も日本人離れしている。雰囲気も顔立ちも似ていないが、この男は和也の弟なのだ。たまに、珈琲を飲みにカフェに来ることもある。
――
一見すれば、好青年という雰囲気のある和也なのに、和也の周りの男たちは随分と派手な者たちが多い。
常連の中にも、和也目当てで訪れる者たちもいるくらいだ。
「じゃあ、中原ここで」
「はい、また明後日に」
基本的に和也のスケジュールで店は開けられている。明日は和也も休みなので、浩二も休みなのだ。
駅に再び向かい始めた浩二だが、そっと振り返る。すると和也の肩を抱き寄せる玲二の姿があった。愛車である高級国産車の助手席のドアを自ら空けると、和也を先導する。
その際、二人の距離が縮まり、影が重なって見えた。
仕事終わりに迎えに来るくらいなのだから仲が良い兄弟だとは思うのだが、どうも距離が近いように感じてしまう。
まるで自分と沢田のような
…
なぜか、そんな考えが浮かび、慌てて浩二は目をそらした。
∞∞∞∞
渇愛の方は原作とはちょっと違う関係性で書いてみました。
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