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ガラシャ
2022-11-01 20:35:43
3350文字
Public
libido
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燦愛 上
かっこいい黒崎さんを目指しました…!
ナチュラルに一番距離が近いのは享×和也だと思うので、それが表現できていればいいな~。
前作、モブ×和也とシチュ的には同じです。
「退屈だな
…
」
――
黒崎享は、独り言ちる。
一流品を身に纏った老若男女が、華やかなクラシックの生演奏が流れ煌びやかな装飾がなされた会場で、グラスを片手に噂話に花を咲かせる。
目の前の光景など見慣れたものだ。それこそ幼いころから、自分はこの中に身を置いてきた。それが自分に与えられた当然の地位なのだと理解している。
「どうしたの?」
「いや、何も」
腕に絡みつく女を見下ろしながら、享は微かに笑った。その微笑に、今日のエスコート相手である女は気分を良くし、ますます腕に縋り付く。
赤いドレスからのぞく豊満な胸に享はパーティー後の夜を計算するが、不意に面倒くさくなった。上辺だけのおしゃべりに付き合い一夜だけの関係を結ぶ。何の気負いもなくできることなのに、最近はそれも食種が湧かなくなってきた。
それよりも、もっと興味を引かれる存在が、すぐ傍にいるからだった。
(隣にいるのが和也だったらなあ
…
なんてな)
初めて出会ったのは、まだ和也が高校を卒業したばかりのころだ。
あの頃はまだ享に警戒心を持っていたが、その和也から離れられなくなってしまったのは享だった。その後徐々に和也との仲を深め親友と言えるほどになり、今では日々その存在が大きくなっている。友情という感情以上に、慕わしさを感じてしまっている。
森島明人の異母弟であり、自身が背負う宿命を自覚していない無垢なる存在だった。
和也が相手ならば、どんな安酒でも旨く感じるし、話のネタは尽きない。
(この前の居酒屋は飯が旨かったら、あいつ喜んでたよな)
和也は幼いころ育った環境もあり、家事全般ができ、料理を作るのも得意だ。居酒屋で旨いツマミや洒落た料理がでると、すぐに真似したくなるようで、享のマンションで飲むときは旨いツマミを作るのだ。
しかも、自分でアレンジを加えており、享好みの味になっている。愛情のこもった手料理を褒めると本当に嬉しそうな顔をする。
あの柔らかく温かな声に名を呼ばれるだけで気分は良くなるし、和也が笑顔を見せるとそれだけで享の気分が高潮する。
和也の歓心を得るためなら、サイファの力、そして享自身の力を駆使して、全てを捧げるだろう。
(もっと欲張っちまえばいいのにな、ここにいる人間たちみたいに)
人は欲望があるからこそ生きていける。幼いころから欲塗れの世界で生きてきた享にとって、和也という人間は不思議だった。
和也は実に欲というものがない。異母兄である明人にも散々言われているらしいが、自ら欲することをしない人間だった。幼いころからの環境によるものも大きいのだろうが、それにしても和也は醜い感情が薄い人間だった。
だからこそ享は、和也に尽くしたくなるのだろう。何も欲しがらない和也に対して、時に苦笑いされるほどの大きな報酬をもって
…
。
頭の中では和也への想いで溢れかえっているが、表情には出さない。
ゴムで一つに括った髪がややほつれ、何気なく前髪をかき上げると、周りの女性たちの視線が集まってくる。
女は享と言う最高のパートナーを自慢したいのか、同世代の女性たちと話している。享自身にも熱い視線が他の女性から注がれているが、意に返さなかった。
その時、スマホが振動した。スマホに入ったメッセージを見た途端、享は縋り付いてくる女の体を押し返した。
「どうしたの?」
女は驚いている。
「悪いが、俺はこれで失礼する。急用ができたんだ」
「えっ、ちょっと待ってよ!」
女の声を無視し、享は人の間を縫い足早に会場を出る。心なしかその表情は余裕がなくなっていた。
――
黒崎享がアモーラルに辿り着くと、黒服たちが待ち構えていたように、微かに表情を緩ませた。
「悪いな、わざわざ知らせをもらって」
「いえ、門番として当然のことですので」
トラブルの種となるものを遠ざける。だた今回に関しては、種があまりにも大きすぎ、加えて門番である彼らが判断を仰ぐべき人間が、海外に出張中だったのだ。
そこで白羽の矢が立ったのが、サイファのエッジこと黒崎享だったのだ。
「どうぞ」
黒服たちに開かれた扉をくぐるが、不可思議にアモーラルの中は静まり返っていた。誰も彼もが、ある方向に顔を向け、その動向を探っていた。
「いい加減、俺たちに従えよ」
「やめろって
…
!はなせっ」
「おい、誰かこいつの肩、掴んでろ」
輪の中心で言い争うような声が聞こえる。そして和也の必死な声が耳に届く。
「和也っ」
人の波をかき分けた先に、和也がいた。
「享
…
!」
「何だよ、エッジの登場かよ」
和也の腕を掴んでいるのは、アモーラルの常連や古参といった男たちだ。昔から知っている仲ではあるが、癖があるという点では、エッジとさほど遜色はないだろう。
「悪いけどさあ、エッジ。一晩、和也をかしてくれよ。」
和也の腕を引き、抱き寄せようとしているのは、昔から和也にちょっかいを掛けている男であった。
「俺たちもたまにはさ、女神さまのお情けが欲しいわけよ。悪いようにはしねえよ。ちょびっと意識ぶっ飛ばしてもらって、その間に、可愛がるからさあ」
この男が首謀者で、後は悪ノリに付き合っているのだろう。だが、和也が嫌がる声を聴いて、興奮しているのも確かだった。
和也はそういった癖のある男たちを無意識に引き寄せる。だからこそエッジもサイファの連中も和也をアモーラルでは一人で行動させないようにしていた。
今日はサイファがいない。そんな時に一人で訪れた和也に声をかけたのは、当然と言えば当然なのかもしれない。
和也はふるふると首を振っている。当然だろう。普段の常連連中の悪ノリを見ていれば、何が行われるか、分かったものではない。リンチは勿論、その体に何をされるか分からない。
和也が助けを求めるようにエッジを見ている。
エッジはゆっくりとため息を吐き、冷たい目で男たちを見据えた。
「いいけどよ。俺の情人に手、出すんだから、その後の報復は覚悟してんだろうな?」
うっそりと笑う。サイファのエッジらしい、鋭いオーラを纏いながら。
「俺は嫉妬深いからな。そいつの体に触れたやつの顔を一生忘れねえぜ。しつこく追いまわして、アモーラルだけじゃなく、この麻原からも消してやる。それでもいいってんなら、いいぜ、和也を好きにしろよ」
恫喝に近い声色に、恐れをなしたのか他の連中は和也から手を離す。
だが男は和也から手を離さなかった。真正面からエッジと向き合い、和也を離すまいとしている。
「ヤバいっすよ。エッジのあの目、マジですって!」
腕っぷしの強さでは、エッジに叶うものなどいない。無論、非道さも。敵とみなせば完膚なきまで叩き潰すのがサイファのエッジだった。
数々のエッジの逸話を知っている男は舌打ちする。
「ちっ」
和也の腕を掴む掌の力が弛んだのを見て、エッジは和也の手首を掴み、自分に引き寄せる。引き寄せられた和也はエッジの肩口に額をつける。
「
…
悪い、助かった」
申し訳なさそうにいう和也の後頭部を掴み、エッジは艶やかな髪をかき混ぜる。周りの空気が張り詰めたものから弛んだものになるが、まだエッジは気を緩ませはいなかった。男に殺気を向けたままだった。
「じゃあ、帰ろうぜ」
和也を抱き寄せたまま、エッジは人を搔き分けていく。男が自分を恨みがましく睨んでいるのをエッジは感じていた。
(和也に気があるのは知ってたけど、これからは更に注意しなけりゃな)
和也がアモーラルのオーナーの異母弟であることを常連はもちろん知っている。和也に手を出すにしても、かなりのリスクが伴うと誰もが知っている筈なのに、そういった男が後を絶たない。その澄ました顔を歪ませてみたいという、嗜虐心を持った男もいるのだ。
和也の持って生まれた性質によるものだ。
(厄介だぜ、まったく
…
)
肩を抱いたままの和也の顔を覗き込むと、安堵した顔でエッジの腕に収まっているのだった。
∞∞∞
タイトルの燦愛はまぶしい愛とか輝かしい愛みたいな意味です。
下は18禁です。
苦節20年にして、ようやくこの二人の絡みが書けます。
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