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ガラシャ
2022-06-09 21:33:46
3740文字
Public
libido
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libido 5-1
久住家のパーティーにふたりで出席☆
――
1月末、都内の有名ホテルで執り行われた祝賀会は盛大な物だった。国の助成を受け、新しく脳外科専門の治療センターを竣工しただけあって、広い会場に集まった人々もゆうに300人は超えていた。
「こんな、盛大な物だって聞いてなかったんだけど
…
」
和也は思わず呟く。玲二の迎えでホテルに向かったのは良いが、まさか都内でも高級と呼ばれるホテルに連れてこられるとは思わなかった。
こんな盛大な物だったら、玲二もスーツも新調するはずだ。まさか、自分のものまで見繕われるとは思っていなかったが。
――
年が明けて4日目、高倉別荘の周辺がようやく雪解けし、玲二の運転する車で東京に戻った和也は、そのまま高級メンズスーツ専門店に連れていかれ、一式そろえられたのだ。
和也はネイビーのスリーピーススーツと白のシャツ、ネクタイは光沢のある柔らかいシャンパンピンク、玲二はダークグレイのスリーピースに黒いシャツ、光沢のあるシルバーの派手な柄のネクタイの出で立ちであった。
「和也、来てくれたのか」
受付をすませ、会場に入ったふたりに近づいてきたのは高志であった。こちらはベージュのスリーピースに細いグレイのストライプシャツ、ネクタイは明るいオレンジだった。
「なんだ、お前も来たのか、玲二」
「あいかわらず従弟に対して随分な言い方だな、高志」
相変わらずふたりの声色は冷たい。和也の対しては各々が親し気に喋ってくるので、余計にそう感じてしまう。
玲二と和也が会場に入った途端、当然の如く注目が集まっていたが、さらに注目を集めている。
周りがひそひそと囁き合っている。並外れた体格の良さと、端正な顔立ちの男二人がいるのだから、当然といえば当然だが。
視線の熱さに和也はふたりから離れたくなるのだが、腰に添えられている玲二の手がそれを許さない。
「和也くん、いらっしゃい」
その時、かけられた声に和也は振り向く。医療法人の副理事も務める久住可奈子だ。シャンパンゴールドの色留袖で江戸紫色の帯が彼女に良く似合っていた。
「今日はお招きいただいて、ありがとうございます。すいません、これ
…
」
「あら、紅茶!しかも、私の好きな店の新作じゃない。ありがとう、とてもうれしいわ。ごめんなさいね、気を遣わせて」
「いえ、こちらこそ。こんなに盛大なものだとは思わなくて、お花も何も差し上げず」
本来ならば、受付近くに並べられた花々のように、花を送るのがよいのだろう。
「そんな、いいのよ。今日はこちらが、遊びにいらっしゃいと誘ったのだから。お食事もお酒も、たくさん用意したから、いっぱい食べて飲んでいらっしゃいね」
「はい、ありがとうございます」
「あとからお父さんと娘も紹介するわ。ふたりとも、和也くんに会いたがっていたから」
お父さんとは病院長であり、高志の父親のことだ。娘とは高志の姉のことだった。
どうやら高志の口振りでは、将来病院を継ぐ意思があるのは姉の方らしい。
高志が未だ学生ということもあるが、今日のパーティでは担うべき役割はないらしい。玲二と和也と一緒に、酒を飲んでいる。
「随分、手広くやってんだな」
久住病院といえば、都内でも有名だが、ここまで手広いとは思わなかった。そもそもの久住家の歴史や、その経過、現在においての地域での役割と連携がスライドで紹介されている。
「急性期病棟だけだったら、儲けを重視しなきゃいけない側面があるが、うちが受け止めた患者を、症状が良くなったら地域にうまく分散して、この地域の医療体制を充実させる。その地域のことや高齢化社会を考えると、かかりつけ医は勿論だが、老健や療養型病棟もうまく活用していかないと」
高志はこういう地域医療の視点を持っていることが多い。
「イニシアチブを上手くとりながら、周りを巻き込んでいかなきゃな」
父母の影響も多分にあるのだろうが、自分の与えられる役割というのを、常に考えて行動しているように思うのだ。
「高志はいつも、自分の役割を考えてるんだな」
素直に言葉にすると、高志が呆れたように肩をすくめる。
「それはお前も一緒だろ?自分のことだけじゃなくて、周りのことも、ついでにこんなどうしようもない玲二のことも考えながら行動してる。それは誰にでもできる事じゃない。
――
ま、お前はもっと見返りを求めてもいいと思うけどな」
玲二は無言で、和也の隣でシャンパンを飲んでいた。
不思議な二人だと、高志は思っていた。見事なコントラストで、そこにいるだけで、人の目を引きつける。
会場に入った途端、一気に人目を浚ったのは玲二だけでなく、和也もだということに気付いているだろうか。
玲二が選んだであろう和也のスーツは良く似合っていた。白い肌に、ネイビーの色は映えていたし、上品なシャンパンピンクのネクタイは見事な差し色となっている。さらに、スリーピースのスーツがスタイルの良さを引き立てていた。
髪も普段とは違い、ジェルを使ったのか整えられている。額がでるように前髪が分けられ、毛先がゆるくウェーブしてる。
おそらくこれも玲二によるものなのだろう。
「そういや、プロジェクターの件、どうなったんだよ?」
高志は話題を変える。何のことかわからず、和也が不思議そうに返す。
「プロジェクター?」
「ああ、何か玲二が、家でお前と映画がみたいからって、カタログ見てたんだよ」
今度は玲二を見上げ、和也が小さく首をかしげる。
「お前、映画見るの好きだろ?折角だから家でもいいのでみたいよな?」
「いや、確かに好きだけど
…
。あれ?高見の家の話だよな?」
確かに英語の勉強もできることもあり、和也は映画を見ることが多い。最近は、動画サイトでの配信があるのでそちらで見ることが多いが、往年の名作というか、自分が生まれる前の映画も見ることがあった。
「だから家につけるんだ。いつでもお前が見れるように」
こともなげに言う。
「玲二、高見の家に住む話はまだ何も」
「いい加減、引っ越してこい。正月から、何も進んでねえじゃねえか」
玲二は苛立たしげだ。
「そりゃあ、お前と一緒に住むことになったら、あれやこれやさせられて、和也が休む暇がなくなるからだろ?
――
まあそれは置いといて、結構、いい値段してたよな、300万超えてたし」
「300万って
…
!」
「お前がいくら稼いでるからって、いきなりそんな値段は出せねえだろっていったら、示談金をもらったから、懐は潤ってるんだと」
「示談金?何かあったのか?」
和也はその言葉に眉を顰める。
「ああ。ダークマターの客だった女が、逆恨みして、半グレみたいなやつらに金を渡して俺を襲わせようとしたんだ。まあ、返り討ちにしてやったけどな」
「その時に、腕にナイフが掠めて3針縫ったんだと。んで、示談金が300万なんだと」
「怪我したって、そんなの俺知らない。いつのことだよ?異母兄さんは知ってるのか?」
真摯な顔で玲二を見上げる。ダークマターの客とのトラブルなら、異母兄も恐らく知っているのだろう。
「そりゃあ、示談金をもらったのはオーナー経由だからな。でも、もうとっくに終わったことだ。お前が気にすることじゃない」
「
……
」
「まあまあ、和也。怪我って言っても、切っ先が掠めたくらいで、重症ってわけじゃないんだし。まあたまには、痛い思いしないと、こいつも自分の血が何色だったか忘れちまうだろうし。
――
それより、飯食おうぜ」
余計な一言を言って、高志が話を終わらそうとする。和也は憮然とするが、玲二も酒を煽っているし、これ以上何も和也に知らせる気はないらしい。
和也はため息をついて、高志が促すまま、テーブルの上を見る。
料理は豪華であった。軽食が中心であるが、なかなか手が込んでいておいしい。普段はあまり嗜まないロゼシャンパンも飲みやすく、ついつい飲んでしまうと、程よく酔いも回ってきた。
今日担うべき役割はないと言いながらも、高志は病院長で理事長である父に連れられて、あいさつ回りをしている。
大変だな
…
と思いながら、見つめていると、隣に立っていた玲二の手がするりと腰を撫でた。
腰骨をなぞるような、意図的な動きに、和也はびくりと震える。右手で持ったグラスの中の淡い色のシャンパンが微かに揺れた。
その和也の耳元に玲二は低く囁いた。
「和也、部屋をとってある」
その意味を和也は正しく理解する。
「さあ、行こうぜ」
祝賀会は未だ途中であるが、他の客たちも歓談し、程よい賑わいだった。
だた、並外れた美貌と体格を持つ玲二と、その玲二が腰に手を添えてエスコートしている和也が通り過ぎると、視線が奪われ、引き寄せられている。
無数の視線を受けながらも、ふたりは会場を後にした。
※※
地域医療云々に関しては、すいません知識不足です。
さやか嬢との一件に関しては、あの示談金どうしたのかな~って思ってて(笑)玲二のことだから和也には言わないだろうし、和也とのイベント代にするか、貯金するか、投資とかするか
…
。
スーツに関しては完璧に趣味です。
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