ガラシャ
2022-06-09 00:17:06
3820文字
Public libido
 

libido 4-1

あけましておめでとうございます!お約束通り、2023年の元旦に更新します。
libido第4章です。しばらくは穏やかな二人の関係が続きます。


 ――年末から降り注いだ雪は、例年になく関東地方に降り積もり人々を足止めした。
――はい、ではまた。機会がございましたら、よろしくお願いいたします」
「やっぱりキャンセルでしたか?」
 電話を置いた篠宮冴子に和也は問いかける。
「それはそうよ。この雪じゃあねえ」
 冴子はそういって本館の大きなガラス窓を見上げた。高倉別荘を含む地域は例年、雪は降り積もる。見事な景色に冬に好んで訪れる客もいるくらいだ。
 山々の雪化粧は美しいが、こうも量が多いと
「今日のお泊りは高見様だけね。和也くん、お正月に申し訳ないんだけど、引き続きお部屋係をお願いしても良いかしら?」
「はい、もちろんです」
 元旦に客がいない高倉別荘は初めてだ。本来ならば正月も忙しいが、臨時休業ということで従業員たちも家で待機となっている。
「お食事はどうしようかしら?夕食は厨房にお願いするとして、昼間は
「俺が作りましょうか?あいつ、好き嫌いが多いから」
 そこまで言ってから和也は気付いた。これでは玲二と随分親しい仲に聞こえてしまう。
 玲二が高倉別荘に泊まる時は、和也は深夜まで部屋に戻らない。それを咎められたことはなく、詮索されたことはなかった。
「そう。なら、お願いしようかしら」
「はい。俺たちの昼食も作りますね」
 和也は本館の厨房に入り、冷蔵庫を開ける。メインはお正月らしく雑煮を作ろうと食材を取り出す。具沢山にすれば、朝食として事足りるだろう。餅は、年末に鏡餅を作った際に、小分けでも成形していた。
 秋に一夜を過ごして以降、高見家に週に一回に頻度で訪れている。
 玲二が言った通り、自宅には戻ることが増えたようだ。あれ程、閑散としていた家の中が、訪れるたびに物が増えている。玲二の部屋にも服が散乱していることがあり、ついつい片づけてしまっている。
 和也をハウスキーパーか何かと勘違いしているのではないだろうか。和也が訪れるとソファにどっかりと座り、あれやこれやと、掃除や洗濯、食事の準備までさせようとする。
『こんなにいろいろさせるんなら、いい加減、バイト代とるぞ?』
 いつだったか、和也が言うことに対して、
『いいぜ、幾ら欲しい?どうせなら、住み込みでここにいろよ。光熱水費、食費もタダだぜ?バイト代もしっかり出すし』
 と、玲二に真顔で返されてしまい閉口したことがある。
 玲二という男はどうやら生来ものぐさらしい。家事能力のない男といえば、異母兄の明人も、エッジこと黒崎享も同様であるが、少なくとも彼らはまだ自分のことは自分でする。だが玲二は、和也がいると本当に動かない。
 和也からすれば、自分ことは自分でするようにという苦言だったのだが、同居させられる口実に使われてしまいそうだった。
 ――高見家に出入りするようになって、もうひとつの出会いがあった。高志の母であり、玲二の伯母である久住可奈子だ。親代わりである冴子と同世代の可奈子は、和也と出会ったとき、なぜか懐かしそうな眼をしていた。
 息子である高志から和也のことは聞き及んでいるようで、礼を言われてしまった。
『どうしようもない子だけど、ただ一人の甥ですものね』
 和也の淹れた茶をすすりながら切々と心情を語られてしまい、思わず同情してしまった。
何度か出会ううちに、和也を気に入ったようで、久住家にも遊びに来るように誘われている。
 ――その玲二はダークマターが冬期休暇になったその日から、高倉別荘に滞在し、すっかり我が家のように寛いでいた。
 部屋に訪れた和也は、一応ノックをして居間に入る。足を踏み入れると、起きたばかりであろう玲二が、煙草を吸いながらテレビをザッピングしていた。
 すでに11時を過ぎていた。
「玲二、雑煮作ったんだけど、食うか?」
「食う」
 玲二が答えたのをみて、和也は先に布団を片付け、食事の準備をする。
「正月なんて、何も見るものがないな」
 ついにはつまらなさそうにテレビを消した。
 朝食兼昼食に箸に付けて食べだした玲二をみながら、部屋の掃除をこなしていく。一通り熟した和也が居間に戻ると、玲二も食事を終えたようだった。
「来いよ。正月くらい、ゆっくりしようぜ」
 意図的な声色に、和也はたじろぐ。玲二の側にいる時点でゆっくりできた覚えはこの数か月ないのだが。和也は首を振った。
「ダメだ。やることがいっぱいある。他に客がいないから、今のうちにも掃除できるところは掃除したいし」
 玲二は呆れている。『律儀なことだな』とため息を吐くと、縁側のソファに移動し、煙草を吸い始めた。

 ――和也は本館に戻り、自分と冴子の雑煮も用意し、離れに持って行った。冴子も離れの掃除をしていたようで、シンク下を除いていた。
「冴子さん、一緒に食べませんか?」
「ええ、そうね。ふふ、久しぶりね、こうやって食べるの」
 離れの居間でふたりで食事を取る。冴子とこうやって食事を取るのは久しぶりだ。昔は、学校に通う和也に合わせて冴子も食事を取っていたが、近頃はそれぞれが忙しい間を縫って食べるということが増えていた。
 ゆっくりと雑煮を食べると、和也は露天風呂の掃除をすると冴子に告げた。冴子も手伝うと言っていたが、雪が降っているうえに、年末はほぼ休みがなかった冴子を慮って断った。
 普段はかけ流しの露天風呂であるため、基本的にこってりと掃除はできない。
 露天風呂にやってきた和也は、ダウンジャケットはそのままに、長靴に履き替える。湯を抜いてしまい、ブラシで石畳を擦り始めた。ごしごしとブラシで床を擦っていくと次第に寒さも感じなくなっていく。
「よし、これでいいか」
 満足し、水で浴槽内を流していく。汚れが完全に流れていくのを見て取り、和也は湯のコックをひねった。
 湯気を立てて、湯が嵩を増していく。その時、脱衣場に誰かが入ってくる音がした。
 心配した冴子が見に来たのだろうと思い、ふっと顔を上げると、そこにいたのは玲二だった。部屋にいる時と変わらず浴衣姿だ。その上にダウンジャケットを羽織っていた。
「玲二、どうしたんだ?」
 何か用があったのだろうか。和也が近寄ると、玲二は視線を合わせる。
「女将が露天風呂も貸し切り状態だから、愉しめってさ」
「そうか。今、湯を溜めてるから、ちょっとまってろ。あ、入りながら酒でも飲むか?」
 湯の方の顔を向けると、玲二が和也の手を掴んだ。いきなり分厚い手に包まれ、思わず、和也は玲二を見上げる。玲二はふっと笑うと、掴んだ掌をやわやわと撫でる。
「お前も一緒に入ろうぜ」
「いやでも、客と一緒というわけには
「女将が、お前がちっとも休まないから、露天風呂にでもゆっくり浸からせてくれってさ」
「冴子さんが?」
「自分もゆっくりするし、夜までは何もしなくていいってよ」
「そうか。じゃあ、俺もはいろうかな」
 高倉別荘で10年以上暮らしているが、この露天風呂に入るのも久しぶりだ。引き取られたころ、祖父と一緒に入ったことがあるが、それ以来ではないだろうか。
 脱衣場で作務衣を脱ぎ、玲二の後についていく。掃除をしている間汗をかいてしまっており、冷たい風に思わず身震いする。
 全身にかけ湯をし、湯につかってしまう。
「きもちいい
 うっとりと呟く。元々風呂は好きなのだ。だが忙しさに託けて、こんなにゆっくりと手足を伸ばしたのは久しぶりかもしれない。
 湯を掌で撫ぜ感触を楽しんでいると、その手を取られ玲二に抱き寄せられた。
 そのままキスをされ、口内を弄られた。いつものように激しい口付けに、和也は鼻に掛かる甘い声を上げる。
「抱かせろよ、和也。俺、たまってんだ」
 そういって玲二は耳朶を噛む。思わず、首を竦める和也を腕に抱いたまま、玲二は囁く。
「12月入ってからろくに会えないうえに、ようやく仕事納めして高倉別荘にきても、お前忙しいって、俺の相手もしないだろ」
「く、口でなら、抜いて
「あれっぽっちで、満足すると思ったのか?」
 確かに12月に入ってから、玲二とそういう機会を持ったのは2回だけだ。玲二はダークマターの仕事でパーティが立て続けにあり忙しかったし、和也も大学が休みのため、高倉別荘で過ごしていることが多かった。必然的にすれ違いとなっていた。
 高倉別荘にきてからも、年末に向けて忙しなくしていたため、身体を重ねることはなかった。どうしても和也を部屋に連れ込もうとする玲二に付き合って、仕方なく、一度だけ、玲二のモノを口で愛撫したことはあったが、それも短時間のことだ。
湯、汚したら後が大変だから
「だから?」
 絞り出したような和也の声に、玲二は甘く返す。
「ベッドでしたい
 玲二に初めて抱かれてから、半年になろうとしていた。最初は痛みと嫌悪ばかりだったが、徐々に慣らされてしまい、後孔で感じるようになってしまっている。
 自分の身体が快感を覚えるようになったのか、或いは玲二が快感を芽吹かせていったのか。戸惑いの中、玲二との関係が続いていた。
 そんなことはどうでもよくなるほど、玲二と抱き合うと体が蕩けてしまう。
「仕方ねえなあ」
 玲二は和也の誘いに満足そうに、くつくつと喉で笑った。


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お風呂でエッチはしないらしい(笑)。