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こつぶ
2022-02-23 17:42:22
3471文字
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いとしのこねこ
2022/2/22スーパー猫の日記念。
くろアゲハの生島×音遥SSです
■中坊時代&一部未来
■少しだけ喧嘩描写あり
■誤字脱字あり
大丈夫な方はどうぞ~
寒風が吹き荒ぶ校舎の裏。
地面を踏みなぞる音がざりざりと何度も響き、荒ぶって喚く声と人の腕や足が空を切る音も同時に聞こえた。
「くっ
……
の、ヤロ
……
っ!」
「っ
……
がぁっ!」
激しい攻防の後、生島の拳が音遥の腹を直撃した。
攻撃された腹を抱えたまま膝から崩れ落ち地面へと力なく座り込む。
本日のタイマン勝者が決まった瞬間であった。
「へへ、悪ぃな~音遥。今回は俺の勝ち!」
「ウッセー! わざわざ宣言すんな! クソが!」
騒いでいたのは中学に入学してから紆余曲折ありコンビとしてつるんでいる生島巽と辻音遥。
同世代の近隣校に大した実力者がいないため組んでからの喧嘩は毎回連戦連勝。
今となってはこの極悪コンビに挑もうとするような中学生は松戸市内には存在していない。
大変に平和なことだが血の気の多い二人にとっては酷く暇をもて余すことになった。
普段気が合わないながらもそれなりに仲が良い二人だが、自身の溢れる力量を発散するべくたまにこうして何気ない事を理由に喧嘩へと発展させている。
遊びの一環として始まったそれには勝者だけが許された特権が付与される。
所謂罰ゲームのように敗者が勝者の言うことを何かひとつ聞くという単純明快なものだったが、お互いプライドが高いので屈辱を与えられてはたまらないとばかりに必死になる。
この条件付きの喧嘩が本気を出すいいスパイスとなっていた。
「で? 俺りゃ何させられんだヨ?」
口元に着いた血を指で拭いて渋々といった風体で音遥が立ち上がる。
「んー
……
裸で校内一周?」
「ざけんなコロスぞ」
「
……
じゃあコンビニ店員にレジで勃起チ○コ見せつけるとかはどーヨ? ボクのこれも温めてください♡ってか♡」
「死んでもやらねー! つか、さっきからやらせようとしてんのただの変質者じゃねーか。 よくそんなのばっかり思い付くよな。変態かテメーは」
「なっ!? 誰が変態だ! オメー負けたクセに贅沢すぎんぞコラ!」
「アァ?! テメーがヤバい発想しかしねーのが悪ぃんだろーが!」
「ってもなぁ~
……
」
このルールで何度も喧嘩をやりあってきたためにそろそろ罰ゲームネタも尽きてきていた。
今までは一日パシらせたり昼食を奢らせたり、近隣校の不良グループに喧嘩をふっかけてくる役回りをしたりなどしてきたが、一度やらせた罰は面白味や緊張感がないので与えないというのも最初に決めた内の一つだ。
自分が前に負けた時は容赦なく寒空の下で乾布摩擦をやらせたくせに、と生島はぶつぶつ文句を呟きながら周りを見渡す。
そこへ野良の猫がふにゃあ、と鳴きながら横を通りすぎていった。
「あー
……
しばらく猫の真似しかできねーってのはどうだ?」
猫を見て思い付いたようにそう言った生島を音遥は理解できないといった表情で迎える。
「ハァ? 何だそりゃ。意味わかんねー」
「だから猫になるんだよ。ニャーニャーしか言えねーやつな♡ そーだな
……
あとはド○キあたりで頭に着ける猫耳でも買うか?」
「アァ?! ふざけんな、誰がそんなん
……
」
ニヤニヤとふざけた様子で冗談めかしている生島を見て音遥が激昂する。
これ以上は付き合いきれないとばかりに背を向けて帰ろうとし始めた。
「これでも譲歩してやってんだぜ~負けたのはそっちだろ」
「うぅっ
……
!」
喧嘩に負けたという事実にさらに追い討ちをかけるような台詞をかけられ音遥が唸る。
振り向いて悔しそうな表情を浮かべ、しばらく目を伏せて困ったように悩み始めた。
普段反抗的で余裕ぶる癖のある音遥が戸惑うのが珍しく段々からかうのが楽しくなってきた生島だったが、音遥の性格上この冗談半分の適当な罰もなんだかんだ理由をつけてやろうとしないだろうと早々に諦め、また別の課題を考えることに決めた。
「ンなマジになるなって~冗談
……
」
そう言いかけた瞬間、いきなり肩を押されて壁際に追い込まれた。
「いっってぇ
……
っ! 」
背の痛みに何事かと一瞬驚いたが、すぐ目の前に真剣な顔をした音遥が少し頬を染めている。
そのあまりの珍しさに思わず息を飲んだ。
「
……
一回しかやらねーからな!」
背丈の違いがある二人は向かい合うと自然と音遥が上目遣いで見つめる事になる。
照れが強まったのか先程よりさらに頬が染まった面差しが距離を詰めてくる。
間近でよく見ると意外と睫毛が長く瞳も大きい。
唇も小ぶりで顎も首も細く、まだ幼さが残るそれは一見女性のような輪郭を形作っている。
今まで特に意識したことなく過ごしていた相手がかわいい顔立ちをしている事に改めて気付かされた。
校舎裏の人気のない静けさが余計に空気を妙に強張らせていく。
「
……
にゃあ」
身構えていた所に音遥が放った一言が聞こえて生島は思わず目を見開いて固まった。
震えが背筋を走って、まるでヤバいものを見た時のような感覚が全身に広がる。
掴まれた肩からじわじわと熱くなっていくのを感じた。
「チッ
……
これでいいんだろ」
「え、あ、お、おう
……
」
言質を取ると音遥は居心地悪そうにパっと離れて遠ざかる。
冗談で言った罰ゲームなのに律儀にこなそうとする素直さと先程の照れた表情が頭から離れない。
体験したことのない動悸が生島の胸を打ち始めていた。
これは一体何の動揺なのか。
確認したくて今度は生島から音遥へ詰め寄る。
「なーなー、もう一回言ってみてくれヨ」
「はぁ? もうやらねーつったろ」
「いいじゃねーか。な、もう一回」
「しつけーな! やらねーったらやらねー! それに男がこんなん何回も言ってんの見て何が楽しンだ? バカかヨ」
「あー
……
まぁ、それもそうだな。はは
……
」
音遥が呆れたような態度で睨み付けてくる。
通常の反応に戻ったのを見て生島も冷静さをようやく取り戻し始めた。
乾いた笑いが喉をひきつらせる。
さっきのはただ慣れてないものを思いがけず見たから動揺しただけ。
相手も罰のルールに従っただけで特別な意味など持ち合わせていない。
まさか自分が男にそんな感情を持つはずがないと生島はわずかに芽生えたそれを心の奥底に封印することにした。
「そろそろ帰ろーぜ。寒ぃし」
「おう」
気もそぞろに生島がぼんやりしながら帰り道を一緒に歩いているとふいに音遥が立ち止まる。
「どーした? 音遥?」
「おい巽。次に俺が勝ったらあの店にパーツ盗みに入るの手伝えヨ」
指差す方向に目を向けると街の隅にひっそりと存在しているような車の輸入販売店舗が見える。
「あそこかァ? なんかいいモンなさそうだぜ?」
「バーカ。ああいう所のほうがいいの隠し持ってんだよ。セキュリティも甘そうだぜありゃぁ」
「へー。なるほどな~」
ようやくお互い悪ガキの顔に戻り視線を合わせてニっと笑う。
それはいずれ訪れる運命の出会いの始まりだったが、二人はまだ知らずにいた。
あれから10年───
(そういやそんな事もあったな
……
)
生島は古い記憶を辿りながら自分の股間に顔を寄せてる猫耳姿をした恋人を見つめる。
仕事から帰宅したら今日は猫の日だからと言ってノリノリでコスプレをして迎えてくれた。
ドのつく某量販店で買ったのだというチープなアイテムも似合っていれば十分興奮材料の一つとなる。
それ自体はとてもかわいいし文句はないのだけれど、あの頃の青い思い出が呼び起こされてなんとも言えない気持ちになっていた。
「なンだよ、嬉しくねーの?」
「いや、まあ嬉しいけどよぉ
……
」
「じゃあ存分に楽しんどけ。こういうの好きな変態のくせに遠慮すんなヨ」
「だから俺は変態じゃねえっての
……
」
「へー? ココ、こんなにしてんのに?」
「
……
うぅっ!」
反応した股間を手でぐっと刺激されて思わず呻いた。
それを見てオモチャの尻尾を揺らしながら鈴のついた首輪までした男が舌を出し満足そうに意地悪く笑う。
付き合いたての頃はまだ純な反応も多少あったが慣れてからはこういった行為に調子よく乗ってくれるようになった。
恥じらいがなくなったのが嫌な訳ではなく、むしろこうして楽しげにしているのを見るのは育て上げた喜びを感じる。
拾ったら最後まで面倒を見るのが飼い主としての責任だと言わんばかりに撫でて愛で始める。
すっかり自分好みに成長を遂げた猫が再び
にゃあ、と鳴いた。
end
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