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アスナショウコ
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【創作|馬子軸】外伝 黎の撃鉄
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【SS】ロジェールマーニュとキスイズファイア
ずっと ダサいTシャツ(シャルが押し付けたやつ)とレーサー時代のジャージ、黒縁メガネとかいうどこからどう見たって一大貴族家の当主とは思えない格好で深夜にバカ広キッチンに侵入してそこでカップ麺食ってるロジェと、それを目撃して共犯になる元会社員フィニア という二人が見たい どこ
現実にしてやる
だいぶ前に書いてそのままにしていたSSを発掘したので載せます。
時計を見れば深夜一時を指そうかというところだった。私__フィニア・バスカヴィルは映画のエンドロールをぼーっと眺めながら、腹の虫がぐうと鳴くのを聞いた。
この時間帯まで起きているとどうもお腹が空く。『猟犬』なんて厄介なものと繋がっているせいかしら、と思いつつ、私はハイドノーブル邸の大きなキッチンへこそこそと脚を運んだ。
煌々と明かりがついているキッチンには黒い人影があった。アスコットからロンドンに移って以降、屋敷の内装が随分時代を逆回しにしたこともあって(本邸をほぼ居抜きで使っているのでしょうがない面もある)、まだ間取りの全てを把握できているわけではないから辿り着くのも一苦労だ。
そっと扉を開けて中を覗き込む。スコッチが何かしているのだろうと思っていたが、予想外の人物がそこにいて、私は思わず「え!?」とわりかし喧しい声が口から出ていた。黒い馬耳がひょいと私の方へ向く。
漆のような長髪は相変わらずだが、驚くべきはその服装だ。彼はとんでもなくラフな格好をしていた。上は何か日本語が書かれたTシャツ、下はおそらくレーサー時代に使っていたものだろう__どこからどう見たってジャージだ。無造作にポケットに突っ込まれた手、普段はかけていない黒縁メガネ、そして髪を束ねているのは洗濯バサミ。洗濯、バサミ
……
。
「ごめんね、フィニア。お湯が沸いたらすぐに出ていくから、ちょっと待って」
「い、いえ! お構いなく、私もその
……
」 答えるよりも先に腹の虫が返事をした。恥ずかしい気持ちになりつつも、彼__ロジェールマーニュはそっと袋麺を掲げ、
「食べる? ラーメン」
「いいのですか」
「勿論。というか、バレたらキャッツに絞られるから、共犯が欲しいかな」
「ふふ。共犯ですか? じゃあもっと悪いことしちゃいましょう。二人でやれば恐るるに足りません」
私は業務用冷蔵庫から卵を二つ、ベーコンも取り出した。ベーコンエッグをしよう。日本製の麺類は具材を入れなくても美味しいが、彼もまたジャンキー成分を欲していたようで、即決で「いいね」と指を鳴らした。
確かに__以前から少し思ってはいたのだ。彼は貴族家、それも『黒の一族』ハイドノーブル家の当主としてはかなり俗っぽい一面がある、と。会社員だった私はなんとも思わないが、生まれた時から貴族だった奥様__メイビーキャッツ様は思うところがあるのかもしれない。
とはいえ、様々な困難や事象、その責任のすべてを背負う彼は私たちが思っている以上のプレッシャーに晒されている。こうして息抜きもしなければやっていられないだろう。
「いい感じ」 小ぶりの手持ち鍋の中で二人前の麺が泳いでいる。彼はその辺からザルを取って軽く麺の湯切りをした。
「手慣れていらっしゃいますね」
「学生だった頃は、よくこうやってこっそり夜中にみんなで食べてたから。映画とか見ながらね」 懐かしむように黒縁メガネの奥で、群青色の瞳が細まった。「みんな元気にしてるといいな」
「連絡は取り合っていらっしゃらないのですか?」
私は言った後に失言だったことに気づく。
この家がどういう家か自分でもよく分かっているのに。だが彼は殆ど表情を動かさずに「まあね」と答えた。
「連絡してもいいんだけど、根掘り葉掘り聞かれそうでしょう? 答えられないし質問を躱すのも面倒臭い」 そして今までに見たことがないほど嫌そうな顔で、「特にスノーは絶対に聞いてくる。『はぁ!? 何でだよ! 言えよ!』って押せ押せで言わそうとしてくる。
……
って、スノーをフィニアが知るわけないか。あー
……
スノーは一個上の先輩で、ルームメイトだったんだ」
「あの写真に写っていらっしゃる__白毛の方ですか」
「ん、ああ。そうだよ」
器へと移され、湯気と共に食欲をそそる匂いが立ち上る。横で香ばしい音を奏でるベーコンエッグは皿ではなく麺の上に乗せられた。
「おいしそう
……
」
私はフォークを持ってきて器の前に置いた。彼は手に箸を持っている。私はもう腹と背中が合体しそうなほどに胃が悲鳴を上げていたので、本来ならば有り得ない行為なのだがフォークをラーメンへ突っ込んだ。
無礼講で構わないだろうと勝手に思うが、横で黄身を崩して麺を箸で掴み、音を立ててずるずると吸い込んでいる彼を見て、今だけは己の職分を完全に脱ぎ捨てていると確信が持てた。
「日清最強」 彼はぼそりとそう言ってベーコンを口へ運び、一緒に半熟化した目玉焼きをその大きな口へ突っ込んだ。「あ゛~~~~
……
日本に帰りたい」
「だ、旦那様
……
」 あまりにも〝素〟をさらけ出しているので、私は思わず諫めるような口調になってしまう。
「流石に冗談だよ。こういうのがその辺のスーパーで買えないでしょう。イギリスは」
「それは__そうですね。ところでおかわりはありますか」
私は欲望のまま従者にあるまじき一言をひねり出した。彼は不敵な微笑みを口元に浮かべ、残っていた袋麺を全て開けた。
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