おさんぽきつねのひぜんくんは、おさんぽきつねのむっちゃんのことが大好きです。むっちゃんはいつもにこにこ優しくて、おさんぽに行くとひぜんくんが好きなものをいつもおみやげに持ってきてくれます。ひぜんくんの嬉しいことをいっぱいしてくれるむっちゃんに、ひぜんくんもお返しをしてあげたい、そう思います。でも困ったことに、むっちゃんが好きなものをひぜんくんはひとつしか知りません。いったい何をあげたら、むっちゃんは喜んでくれるのでしょう。悩みながら、ひぜんくんはおさんぽに出かけました。
お天気のいいおさんぽは気持ちよくて、きれいなお花やおいしい木の実がいっぱいあります。でも、それはこの間もむっちゃんが持ってきてくれました。ひぜんくんがすてきだなと思うものは、大体もうむっちゃんが見つけてきてくれたものなのです。どうせなら、なにか違うすてきなものをあげたいです。ひぜんくんは一生懸命探しましたが、なかなかいいものは見つかりません。そうこうしているうちに、もう戻りの時間になってしまいました。ちょっぴりしょんぼりしながらひぜんくんが帰り道を歩いていると、道端でたんぽぽにてんとう虫がとまっているのを見つけました。つやつやで赤くてきれいで、とってもすてきです。これならきっと、むっちゃんも喜んでくれるでしょう。ひぜんくんはてんとう虫がとまっているたんぽぽをそっとつむと、うきうきしながら歩き出しました。てんとう虫はじっとしていて、もしかしたら眠っているのかもしれません。起こしてしまわないようにゆっくりと、ひぜんくんは慎重に進みます。
もうすぐ本丸のところまで来ると、入り口のところにむっちゃんがいるのが見えました。むっちゃんもひぜんくんを見つけて、ぶんぶん大きく手を振ってきます。そんな様子に嬉しくなって見とれていたら、ひぜんくんはうっかりちょっとつまずいてしまいました。転びはしませんでしたが大きく揺れてしまって、てんとう虫はびっくりしたのか飛び立ってしまいました。ひぜんくんの手の中には、たんぽぽだけが残っています。ひぜんくんががっくりうつむいてしまうと、むっちゃんがあわてて駆けつけてきました。だいじょうぶか、とむっちゃんはおろおろ心配そうで、喜ばせたかったはずなのにこれではいけません。なかなかむっちゃんのようにはできない、とひぜんくんはまたしょんぼりしました。
ひぜんくんは手に持っているたんぽぽを、むっちゃんに渡しました。ひとつだけの珍しくもないたんぽぽじゃどうしようもないですが、仕方ありません。けれど、たんぽぽを渡されたむっちゃんは飛び上がって喜びました。ふかふかのしっぽをぶんぶん振り回す様子に、ひぜんくんはびっくりしました。たんぽぽがそんなに好きなのでしょうか。
むっちゃんはにこにこしながら、たんぽぽをひぜんくんの髪にさしてきました。そして、似合うかわいい、と大はしゃぎです。どうやらこれは、たんぽぽが好きなわけではなさそうです。でも、喜ばせられたならまあいいか、とひぜんくんもふわふわしっぽをこっそり振りました。
今日もむっちゃんが好きなものはひぜんくんだということしかわかりませんでした。また今度こそ、むっちゃんの好きなものを見つけられるようにがんばりましょう。
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