遠藤晃
2024-07-17 16:42:16
1003文字
Public
 

おさんぽきつねのむっちゃんとひぜんくん(小話)

ここから始まったおさんぽきつねちゃんの話(むつひぜ)

 おさんぽきつねのむっちゃんは、おさんぽきつねのひぜんくんのことが大好きです。今日もおさんぽ中に、ひぜんくんへのプレゼントを探します。おいしそうな木の実やきれいなお花をいっぱい採ることができました。きっと喜んでもらえるでしょう。うきうきしながらむっちゃんは帰り道をたどりました。
 けれど道すがら、おかあさんとはぐれて泣いている女の子に花冠を作ってあげたり、歩きすぎて疲れて動けなくなってしまっている他本丸のおさんぽさんに木の実を分けてあげたりしたので、いっぱい集めたお花と木の実はすっかり減ってしまいました。残っているのは小さなお花と木の実がひとつずつです。これだけではあんまり喜んでもらえないかも、とむっちゃんはちょっとだけしょんぼりしましたが、困っている子のためだったのだからいいのです。むっちゃんは元気よく歩きました。
 本丸に着くと、ひぜんくんが入り口のところにいました。もしかしてむっちゃんを待っていてくれたのでしょうか。むっちゃんは嬉しくなってひぜんくんに走り寄りました。ただいまを言いながら、お花と木の実をひぜんくんに渡します。ひぜんくんはぴょこん、と耳を動かしました。喜んでくれている合図です。それからふたりでとことこ中庭まで歩きました。縁側に並んで座ると、気持ちのいい風が吹いています。ひぜんくんは木の実を割ると、はんぶんむっちゃんにくれました。ひとつしかないのに、優しいです。そして、お花をむっちゃんの髪にそっとさしてきました。ひぜんくんに飾ればいいのに、と思いましたが、それじゃ自分で見えない、この方がよく見えていい、とひぜんくんは言います。なるほど、そうかもしれません。
 ひぜんくんはむっちゃんのことをじっと見つめてきます。髪にさした花を見ているのだとわかっていますが、それでも嬉しくてむっちゃんはふかふかしっぽを振りました。するとひぜんくんはうるさかったのか、自分のしっぽをぽすんとむっちゃんのしっぽに重ねておさえてきました。おとなしくしなければ、と思うのですが、ひぜんくんのふわふわあたたかいしっぽが触れてきているのが嬉しくて、どうしてもむっちゃんのしっぽは踊ってしまいます。きっとしばらくこのままでしょう。並んで食べる木の実もとても甘くておいしくて、今日はとてもいい日です。今度おさんぽに行ったときも、ひぜんくんが好きそうな素敵なものをいっぱい探してきましょう。