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東経
2023-10-20 01:19:20
2059文字
Public
新ゲ
同じ場所
「さむ
…
」
思わず竜馬の口から漏れる程に潜り込んだベッドの中はひんやりとしている。
暫くすれば自身の体温で暖かくなるが、それまでが少し辛い。
もう少しすれば冬が襲来し、また雪かきに追われるのだろう。
実家の道場に住んでいた頃も寒さに堪えていたが、どちらかというと暖房設備がないゆえに辛かったほうが正しい。
冷暖房完備の早乙女研究所では文字通り真正面から冬に立ち向かわないといけない。
そんなことをぼやぼやと思っているうちに、眠気はいつも通りに訪れてゆっくりと竜馬の意識を引っ張りだす。
「
…
ぁ」
とあることを思い出し、ずりずりと身体をベッド端に寄せる。
「(来るかどうかは聞いてねえが、まあいいか
…
)」
そんなことを思いつつ再び瞼を落とした。
部屋のロック解除音で意識が少しだけ浮上する。
来訪者は誰なのか竜馬には理解っているので特になにか行動することはない。
気を使ってか、元々なのか足音させず竜馬の寝ているベッドまで近づき、そのまま当たり前のようにベッドに入る。
きぎぎ
…
とベッドの軋む音。
身体に触れる冷たい手足。
腹の上に置かれる少し重たい腕。
背中に感じる自分とは違う別の体温。
「──
…
」
もう慣れてしまったそれらを感じつつもう一度竜馬は眠りに落ちる。
■□■□■
いつからだったか、隼人は竜馬の部屋で寝るようになった。
何切っ掛けだったのかもう竜馬には思い出せない。
時々同衾以上のことをすることもあるが割合で言えば同衾だけのほうが多い。
最初は狭いだの鬱陶しいだの思っていたものの慣れてしまえば気にならなくなった。
最近は気温が下がりつつあるせいか入ってくる隼人の手足が冷たいのが嫌ぐらいだろうか。
隼人も竜馬を丁度いい湯たんぽか何かと思っているようで、冷えた手を竜馬の服の中に突っ込んでくるときもある。
そんなことはあれど"ふたりでひとつのベッドで寝る"ということは続いている。
今日も何事もなく終わろうとしていた。
いつものようにベッドに入り、後からくるであろう隼人の場所を空けて竜馬は眠りに就こうとしていた。
薄暗い天井を見つめているとふと気がついたことがあった。
ベッドの大きさの関係上ふたりで寝るには横向きでないと少し厳しい。
幸い竜馬はうつ伏せだろうが仰向けだろうが大体の体勢でも寝れる。
だがいつも"隼人に背を向けた状態で寝ている"のだ。
これもなにか意図したわけではなく同衾し始めたときがその体勢だっただけだ。
「(逆向いてたらどうするんだろうな)」
ただ、試してみたい。反応が見てみたい。
子どものような好奇心がふつふつと湧き上がり、早速実行してみることにした。
といっても隼人が竜馬の部屋に来る時間は決まっていない。
日によっては来ないときもある。
薄目で部屋のドアを見ていたが開かないまま、いつの間にか眠ってしまった。
意識の遠くでロック解除音が聞こえた。
「(やっときた
…
)」
意識ではそう思っていても身体はまだ動いてくれない。
いつも通りにベッドに負荷が掛かって、冷たい手が伸びてきて。
「
…
─!?」
思わず声が出そうになった。
いつもなら身体が触れるか触れないぐらい寝て、腕だけを竜馬の腹に置いている。
だが今晩は文字通り抱きすくめているのだ。
竜馬の額が丁度隼人の胸板に当たる。
静謐の夜。間近で隼人の一定の鼓動が伝わってくる。
背中に回された手がしっかりと身体を掴んでいる。
いつもそうしていたのかもれない。気がついてなかっただけだ。
だが、知ってしまった今。もうすんなりとは寝れない。
今までかつて無い程に竜馬の心臓は早鐘を打っている。
ここまで近いと隼人にもこの音を聞かれているかもしれない。
そう思うと余計に心臓は跳ね回る。
当の隼人は"いつも通り"に就寝しようとしていた。
今機会を逃せば今晩の安眠はない。
「
…
は、やと」
絞り出した声は竜馬自身でも驚くほどにか細かった。
「ん、起こしたか」
「体勢、変えて、いいか
…
」
「ああ」
あっさりと解放される。
あっけなさを感じる余裕もなく、竜馬はいつもの体勢に戻した。
そして隼人もいつも通りに腕を竜馬の腹の上に置いた。
「
………
」
心なしか隼人の位置が普段より近いような気がする。
だがこの距離では未だ跳ねる心音は聞こえないだろうと、そう思いながら眠りに意識を向けた。
「
…
─」
いつも通りに部屋に来てみれば竜馬が逆を向いて寝ていた。
偶然かもしれないが、なにか企んでいるのかもしれない。
少しだけ考えたが、眠気が思考を邪魔をしてくる。
考えるのは馬鹿らしく思えたのもあるし寒かったのもあるので、温もり求めて抱きしめたら予想外の反応だった。
明らかいつもより早い竜馬の鼓動。
惜しむらくは竜馬の表情が見れなかったのが残念だった。
腹の上に置いた腕には竜馬のまだ早い鼓動が伝わっていた。
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