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東経
2023-07-25 21:44:51
3977文字
Public
新ゲ
嚮
ED後捏造
永劫ともいえるゲッターと神と流竜馬の三つ巴の戦闘。
それは予期せずに終わりを迎えた。
いや、終わったというのは語弊がある。
中断してしまったというのが正しいだろう。
戦いの最中、突如発生源不明の光が一帯に広がった。
当初はどちらかの攻撃かと身構えた竜馬だったが、その光が収まったときに目の前にあったのは懐かしさ感じる地球の青空だった。
帰還した竜馬を迎えた仲間たちは竜馬の知る姿からは少し変わっていた。
かつて平安時代に飛ばされた時と同様に時間のズレが生じていたのだ。
しかし、姿が変われどそれ以外はなにも変わっていない。
その事実に少し竜馬の心の内にあったものが軽くなった気がした。
早乙女研究所が無くなった上に既に戸籍があやふやになっている竜馬にまともな場所を用意することは困難。
一先ず臨時ということで隼人の住居に転がり込むことになった。
そこで以外だったのはなし崩しに出てきたこの案に隼人が否定もせずに受け入れたことだった。
個人スペースに入られることを嫌っていたはずだが、月日はそれすらも変えたのか、それとも。
案内されたのは変哲もないマンションの一室。
こんな平凡なところに平凡からかけ離れた男が住んでいるのがすこし面白く感じてしまう竜馬。
部屋の中は生活必要最低限のものと何かしらの機材の山。
そこらへんは研究所にいたころと変わってはいないようだ。
お互い話すことは山積みだったが激流のような眠気に襲われる。
「
……
お前な」
持ち帰ったものを片付けて隼人がリビングに戻ったときには、近くにあったクッションを枕にして竜馬は静かに寝息を立てていた。
隼人が側に寄っても目覚める気配はない。
竜馬が人前でガス欠を起こした様に眠りこけるのを見るのは初めてかもしれなかった。
ここに来るまでのことを考えると当たり前かもしれない。
このまま放置してやろうかという考えは引っ込んでしまった。
元々資料保管庫に使ってる部屋に簡易ベッドを置いているのでそこに運んでやろうと竜馬を抱えあげる。
「
……
」
抱きかかえて最初に感じたのは"軽さ"
かつて研究所で共に生活していた際になにかの切っ掛けで竜馬を抱え上げたことがあったが、過去の竜馬はもっと重たかった。
当人の体格や筋肉量を考えれば妥当な重さだった。
しかし今隼人の腕の中の竜馬は間違いなく軽くなっている。
見た目に大きく変化はない。例えるならば"摩耗"という言葉が当てはまるだろう。
その次に気がついたのは見えたのは竜馬の左頬。
薄っすらとだか目に向かって伸びる複数の線のような痕があった。
確証こそないがそれがなんの"痕"なのかは隼人にとって容易に想像がついた。
ため息じみた重たい息を吐いて、隼人は思ったよりも軽くなった竜馬を抱えて部屋へと消えた。
■□■□
竜馬が眼を覚ますと見らぬ天井が出迎えてくれた。
眠りから覚めたばかりの頭でもここが隼人の部屋だとは理解していた。
しかし、家主の隼人は部屋には居らず、更に部屋のドアが開かなくなっていた。
「ったく、なんてことしやがる」
もの言わず立ち塞がるドアを前に竜馬はにたりと笑う。
なんで閉じ込められているのかは昨日のことを考えれば、なんとなく理由を察することができていた。
ただ、説明もなしに閉じ込められるということが気に入らなかった。
先程一発殴ったがドアは文字通りびくともしない。
「ッ!!」
今度は、と蹴りを入れるも殴った時と変わらず。
建物自体も変哲もないマンション、部屋の構造も特に変わった所はないように見えたがこの頑丈さは異常だ。
変な闘争心に火がついた竜馬はドア向かいの壁際まで下がった。
助走距離は十分とは言えないが先程の立ち蹴りよりかは威力は上がるだろう。
──ドゴン!!
竜馬の両足がドアに叩きつけられ、重い音と共に部屋が揺れた。
しかしドアに対しては手応えはない。
「おいおい
…
なにでできてんだよこのドア」
かつて早乙女研究所に拉致されたときも部屋に閉じ込められたが、難なく蹴破った。
それよりも頑丈にできていることが少しおかしい。
もとより何かしらを保管してる部屋の様だ。
そこそこの広さを埋めるように大量に積まれた金属製の箱。
その中で置かれた簡易ベッドが異質だ。
別に出たいわけではないので諦めても良かったが、それだと隼人に負けたような気もして癪に触る。
もう一発と上段蹴りを見舞ってやろうと足を振り上げた、その時。
竜馬の耳に目の前のドアの錠が開く音が聞こえた。
「あ
…
!」
「──!」
開いたドアの先の隼人と竜馬の眼があった。
いくら運動神経に優れた竜馬とて、もう動きを止めることはできない。
が、目の前にいるのは一般人ではなく神隼人だ。
撓るように飛んだ竜馬の左足を難なく隼人は片手で受け止めた。
「
…
随分な出迎えだな」
「こんなことされちゃあな」
「
……
お前」
首だけ動かしてドアについた打撃痕をみて眉間に皺を寄せた。
竜馬ならドア破壊を試みる可能性は
…
と思っていたが本当にやっていたとは。
「こんな頑丈なもの作ってどうすんだよ」
「ここには研究成果のバックアップが置いてあるんだ。過剰にしてもいいだろう」
「そんなところに俺を放り込むなっての」
そこで会話はここで途切れる。
竜馬の視線は隼人の左手に向く。
未だに竜馬の右足は隼人に掴まれたまま。
いい加減離せ、と言葉に出す前に視界が上を向いた。
足払いと理解した時は隼人に抱き抱えられていた。
そのままベッドに雑に放り投げられる。
あまり柔らかくないマットの上で身体が跳ね、スプリングが鳴いた。
ふと思い返せば昨晩も意識が途切れたのはリビングだった。
昨晩もこんな感じで運ばれたのだろうか。
「もうちょい丁重に扱えっての」
寝転んだままの竜馬は文句をひとつ零して、隼人を見やる。
竜馬が蹴破ろうとしていたドアの内部を見ていた。やはり竜馬の蹴りで壊れたのかもしれない。
竜馬のいない内にこちらは数年が経過している。
隼人のその表情にもそれが現れていた。
「
……
そんなに俺がいなくなるのが嫌か?」
「──ッ」
溢れるような竜馬の言葉に隼人は無言で振り向いた。
少なくとも竜馬の知る隼人では見ることのない表情をしていた。
「お前さ、昔より隠し事下手くそになったな」
「なんだと」
「顔にまるっきり書いてあるんだよ」
少しからかうような竜馬の笑みに隼人は更に眉間の皺を深くする。
「
…
お前は──」
早足で竜馬の寝転ぶベッドに近づいてそのまま乗った。
男性二人分の重さにベッドのスプリングは悲鳴を上げる。
そのまま竜馬に覆いかぶさるような体勢をとった。
天井の明かりが遮られ、影が濃く差しこんだ隼人の表情は息苦しさがあった。
「また、居なくなるんだろう。俺の前から」
「今はただの一時休戦だ。アレは俺が倒さなきゃらねえ」
それは竜馬は"よく"理解していた。
"まだ終わってはいない"と。
そう思うと今回の一時期帰還はありがたいことだった。
また再び孤独に戦う運命にあっても、心が折れることはないとそう思わせてくれる。
「"俺"か。"俺たち"ではなく」
「
…
ああ」
薄っすらと笑みすら浮かべて竜馬はそう答える。
ゲッターは真の力を発揮するにはパイロット三人の力を必要とする。
それはゲッターに関わるようになって痛感した絶対条件。
それは解ってはいる。それでも竜馬はそれを拒否している。
隼人や弁慶、ミチルとも別れるのは辛い。
だが、彼らが死ぬことのほうがもっと怖い。
だから戦う。その先の解答を出すために。
「
……
」
竜馬を見下ろす隼人の脳裏には過去が蘇っていた。
先程竜馬が隼人に「顔にまるっきり書いてあるんだよ」と言った。
それは竜馬も言えることだ。三人で戦っていたときもわかりやすいタイプではあった。
だが今はもっと読み取りやすい。
帰還の報を聞いて直ぐに駆けつけ、数年ぶりに顔を合わせた時の竜馬の表情はあの日とよく似ていた。
炉心を換装したゲッターのテスト後。
些末なトラブルだったはずだが、明らかに竜馬の様子がおかしいのはひと目で解った。
竜馬だけがあの時に"なにかがあった"と確信した隼人は竜馬を探した。
自室にも居らずドッグにも居ない。
ようやく見つけたのはシャワールーム。
脱衣所ので出入り口で待つもずっと床タイルを叩く水音がずっと続いている。
腕時計で確認するとここに隼人が来てから二十分が経過しようとしていた。
流石に中の確認をすべきかと思った矢先、水音が止まり、シャワールームのドアが開く音がした。
「随分と長風呂だな」
「──、色々あったんでな」
出迎えた隼人を見て一瞬竜馬の表情が引きつった。
だが直ぐにそれは直ぐにかき消される。
何をしていたまでかはわからない。
だがシャワーを浴びていたにも関わらず竜馬の表情は青ざめていた。
─今の竜馬はその時の表情とよく似ていた。
表情の奥底に別の感情を押し込めてる。そんな表情だ。
「
…
!」
隼人の片手が竜馬の喉に触れ、そのまま軽く押された。
少しだけ息苦しさを感じつつも竜馬は何も言わない。
「安心しろ。今度はちゃんと首輪を付けておく」
「犬じゃねえよ」
「もし、また勝手に行った場合は地獄の果まで追いかけるからな」
隼人の言葉に少し目を丸くして隼人を見つめる竜馬。
竜馬の首にあった隼人の手が動き左頬を覆った。
「──そんときは、諦めて待っておいてやるよ」
そう言った竜馬の笑顔は。
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