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溶けかけ。
2024-07-15 18:22:51
2096文字
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ほぼ日刊
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雨のち晴れ、時々小雨。
テレビ見てたら某おつかい番組がやるらしいので便乗してみました。
おつかいに行く双子ちゃんとはらはらしてお家で待ってるヌヴィフリ夫婦というイメージです。
「ヌヴィレット。心配なのはわかるけど、少し落ち着きなよ」
部屋の中をそわそわと落ち着きなく歩き回るヌヴィレットにフリーナは自身の隣をぽんぽんと叩いて座るように促す。
「しかし
……
」
「僕らの仕事は信じて待つこと。あの子たちの仕事は無事に買い物を終えて帰ってくること
……
つまりは役割分担だよ。それともキミは父親の職務を放棄する気かい?」
フリーナの言葉にヌヴィレットは少し考える素振りを見せたあと、彼女の横に腰を下ろした。
「君はいつも痛いところをついてくるな」
「元上司だからね。キミの扱いはばっちりさ!」
フリーナがヌヴィレットを抱きしめる。
「心配なのは僕も一緒だよ。けれど雛鳥が巣立つのと同じようにあの子たちもいつか大人になる
……
それを僕が見届けられるのかは分からないけどね」
ヌヴィレットが弾かれたように顔を上げる。
穏やかで、それでいて困ったような、寂しげな表情を浮かべるフリーナは心情を悟られまいと誤魔化すようにヌヴィレットの頭を掻き抱いた。柔らかな服越しに聞こえる心音が妙に生々しかった。
「だから、少しでも残したいんだ。あの子たちが道に迷ったとき、夜道を照らす星が一つでも多くあるように
……
なんて、僕の独りよがりなんだけど」
心情を吐露した彼女は「暗い話をしてしまったね」と痛々しい笑みを浮かべて、窓の外に顔を向けた。ガラスの向こう側には今にも泣き出しそうな曇天が迫ってきていた。
「はやくかえらなきゃ
……
」
「おうちあそこ!」
幼い姉弟が手を繋いで走るたび、お揃いの青い長靴がぱしゃぱしゃと水しぶきを上げた。
「わあ
……
!」
「きゃっ
……
!」
ばしゃん、と今日一番の水しぶきが上がる。運悪く水たまりに転んだ二人の体は上から下まですっかり濡れ鼠のようになってしまった。
「ふ
……
ふえ
……
」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ
……
なかないで
……
」
今にも泣き出しそうな弟の手を握り、母親ががいつもしているように頭を撫でる姉。しかし効果は薄かった。
「うああああん!!」
「ないちゃだめなんだよ
……
ないちゃ
……
ひっく
……
うわあああん!」
わあわあと泣き声を上げる我が子の声は家の中で待っていた二人の元にはっきりと届いた。
「駄目だよ、ヌヴィレット」
「だが
……
」
「
……
あの二人なら心配いらないから」
今にも飛び出しそうなヌヴィレットをフリーナが制止する。君は心配ではないのか、と苛立ちながら振り返ればフリーナも何かに堪えるような、辛そうな顔をして首を振った。
「あの子たちなら大丈夫
……
だから信じよう?」
「
………………
君がそう言うのなら」
「おうちかえろ
……
」
姉の言葉に弟も頷く。
「うん
……
おうち、かえる
……
」
「おてて、つなご
……
」
しばらく泣いた二人は立ち上がるとまた手を繋いだ。
「ころばないようにゆっくりね」
「ゆっくり
……
」
幼い姉弟はそろそろと慎重に歩き出す。その様子を家から見ていた二人はほっと息を吐き出した。
「もういいだろう
……
?」
「ああ
……
盛大に迎えよう。小さな勇者たちの凱旋を」
家の扉が開き元気な「ただいま!」の声が聞こえる。二人は競うように玄関へと向かう。
「おかいものできた!」
「ちゃんとかえた
……
!」
ずぶ濡れの二人が誇らしげに胸を張る。
小さな功労者を労わろうと抱き上げた途端、二人は堰を切ったように泣き出した。
「うん
……
頑張ったね、ありがとう」
「
……
偉いぞ」
「キミ、もう少し気の利いたこと言えないのかい?」
「そうは言ってもだな
……
」
子どもたちに感化されたフリーナはすっかり鼻声で泣き笑いの笑みを浮かべていた。
「ぱぱ、ないてる?」
「ままもないてる」
「ふふっ
……
!ヌヴィレット。キミもすっかり感化されているじゃないか!」
窓の外ではしとしとと暖かな雨が降っていた。それを見た子どもたちが「みんなおそろい」「おそろいだね」と楽しそうに笑った。
「今日は頑張った二人を労わないとね!キミたちの好きなものをたっぷり用意するとしよう!」
「すーぷ
……
?」
「勿論あるとも!」
「けーきは!?」
「ふふん、今日はホールケーキだよ!好きな大きさに切って食べるといい!」
「やったあ!」
「わあ
……
!」
フリーナとヌヴィレットの腕の中でぴょんぴょんと身動ぐ子どもたちは先程の泣き顔はどこへやら、すっかり笑顔を咲かせている。
「ヌヴィレット!今日は忙しくなるよ!
……
っと、その前にお風呂だね」
気がつけば、ヌヴィレットとフリーナもずぶ濡れだ。それがなんだか可笑しくて二人は顔を見合わせた。
「ふふっ
……
キミ、びしょ濡れじゃないか」
「ふっ
……
そう言うキミもな
……
」
ヌヴィレットが口角を僅かに上げる。それを見た子どもたちが「ぱぱわらった!」「わらったね!」と嬉しそうに笑った。
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