夜明 奈央
2024-07-14 19:34:14
1999文字
Public 中太SS
 

中太 密会は人の来ない場所で

ゆるさんおたおめ!のつもりで書かせていただいたこちらの三次創作
※落書きのつもりはないけどこことついった以外に載せる気もないので落書きカテゴリにしてます

 しばらく振りに太宰と顔を合わせた。いつも通り軽口を叩き合いながら互いに目配せを交わし、足早に廊下を進む。はっきりと言葉にはしなかったが、向かう先は太宰の執務室だ。気も漫ろであるのはお互いに明白であったが、軽口の応酬はやめない。莫迦話でもしていなければ、この場で人目も憚らずにその唇に貪りついてしまいそうだったから。
 途中、人気のないエリアに通りがかって、ここならキスくらい、と頭を過ぎる。いやいや流石に、とその考えを振り払おうとしたところで、近くの資料室に連れ込まれた。そこは滅多に人が来ない部屋で、当然のように空調はついていない。扉を開けただけでむわりとした熱気が肌に纏わりつく。しかしそんなことは、外気以上に昂ってしまった俺たちには関係がなかった。
 かちゃん、と扉が閉まる音が響くより、唇が触れ合う方が早かった。ずっと触れたかったその感触に触れてしまえば、もう止まることはできない。舌を絡め合って、もっと、もっと深くと貪り合う。息が苦しくなって、離れては角度を変えてまた合わせた。そのうちに下半身がむくむくと反応し始めて、堪らず太宰の股に擦り付ける。はあ、とどちらともなく熱い息が溢れた。太宰の股に陰部を擦りつけながら、シャツの下に手を伸ばす。
「ねえ、これ以上はここじゃ」
 太宰が俺の手首を弱々しく握る。抵抗は形ばかりで、簡単に振り払うことができる。
「手前だって今更ここで止まれねぇだろ」
「せめて、奥に」
 太宰に導かれて、逸る気持ちを抑えて部屋の奥へと向かった。これなら扉を開けても、棚の影になってすぐには見えない。文句を言ったのは後で自分は反対したのだと俺に責任を擦りつけるためだと思ったが、思っていた以上に乗り気らしい。まだ満足に触れてもいないのに、太宰の息は上がっている。それだけ興奮しているということだろう。それは俺も同じだったから気分がいい。喉の奥から迫り上がってくるような興奮を唾と一緒にごくりと飲み下した。
 それを嘲笑うように、太宰が俺のシャツのボタンを外し始めた。全部外すと、素肌を抱きしめて熱い息を吐く。服越しに太宰の早鐘を打つ鼓動の音が伝わってくる。自分の心臓が、釣られたみたいにスピードを上げる。首筋に吸い付くと、太宰の喉が小さく震えた。
 あまりの暑さにジャケットを脱ぎ捨てる。誤魔化すのを諦めるくらいに息が荒れる。太宰のベルトを外そうとするが、手が思うように動かせず、上手くいかない。
 試行錯誤しているうちに廊下を歩く足音が響いて、ぴたりと動きを止めた。太宰と顔を見合わせて、外の気配に意識を集中する。
 この資料室に用のある人間は少ない。が、ゼロでもない。元々人気のない場所だから、ここに用はなくとも不審な物音がすれば様子を見に来るかもしれない。じっと息を潜め、足音が通り過ぎるのを待つ。太宰に触れた手がじりじりと焼けるように感じた。
 近づいてきた足音は、無情にも部屋の前で止まった。カチャリと小さな金属音がして、淀んだ部屋の空気に廊下の冷気が流れ込む。
 扉が開かれたのだ。途端、太宰に突き飛ばされた。視線だけで抗議を示すが、すぐに太宰の手が俺のシャツのボタンを留め始める。シャツの前ボタンが全開になった俺の姿を見られれば、どんな言い訳をしたところで意味をなさないだろう。しかしその手付きはもたもたと覚束ず、ボタンひとつ嵌めるだけに四苦八苦している。とても普段の器用さは感じられない。
「誰かいるのか?」
 侵入者が気配に気づいたのだろう。声を掛けられて、びくりと飛び上がった。死角は多いが、狭い部屋だ。逃げたところで不審がられるだけだろう。どうにかこうにか見られる程度に服の乱れを整えたところで、棚の向こう側から侵入者が顔を出した。見たことのない男だった。
「やあ、お勤めご苦労様」
「だ、太宰幹部! お疲れ様です」
 太宰は何気ない風を装って声を掛けた。そいつもまさか幹部がいるとは予想していなかったであろう。慌てたように直角に腰を折り曲げた。顔を上げた男の視線が、俺たちの首元をさっと走っていく。
 急なことだったため、完全に乱れを直せたわけではない。いつもきっちりと一分の隙もなく着込んでいる太宰のシャツのボタンは留めきれていないし、ネクタイだって緩んでいる。紅潮した頬も、薄らと湿った包帯も、何もなかったとはとても思えないものだろう。俺だってたぶん、似たようなものだ。
「こんなところまで資料探しなんて大変だね」
「いえ、こちらこそお邪魔して申し訳ございません! 自分は急ぎではありませんので」
「ああ、気にしなくていいよ。私たちはもう出ていくからね。がんばって」
 太宰はひらひらと手を振って部屋の外へ足を向けた。促されて、男に目礼だけしてその後を着いていく。不躾な視線が背後を追ってくるのが鬱陶しくて、扉を勢いよく閉めた。


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