俺の名はブンブン。と言っても親が付けてくれたとか、そういうわけではない。たまにやって来るニンゲンのハンターとかいう奴がそう呼んでくるから、便宜的にそう名乗っている。
と言っても、俺以外にもブンブンという名前の奴はたくさんいる。なぜか分からないが、ハンターという奴は俺や俺の仲間達をブンブンとかブンちゃんとかブンブジナとかいろんな呼び方で呼ぶからだ。どういう区別で呼んでいるのかはさっぱり分からん。
今日も今日とてねぐらと決めた木の下から少し這い出て寝転びながら、あったかい日差しで腹をあたためていると、どこからかワンコロの鳴き声が聞こえてきた。
ワンコロとはハンターとつるんでその辺を走り回ってるワン公である。ワンコロの奴、ハンターを背中に乗せてあまつさえ武器までぶん回したりしているから、見た目のわりにとても器用だし力持ちだ。俺ならあんな重そうな奴を背中に乗せたらその場でぺしゃんこになるね。
ワンコロがいるということは、必然的にハンターもいるということだ。あいつら普段は俺達のこと気にせずに素通りするくせに、急に近付いてきたと思ったら蹴り飛ばしたり武器で吹っ飛ばしてきたりするから油断ならん。せっかくいい天気だからぬくぬく昼寝しようとしてたのに……はあ……。
見つかる前に木のウロに隠れることにした。俺は争いを厭う心優しきオスなのだ。
「あ、ブンブンみーっけ」
……ひと足遅かった。
見つかってしまった俺は、白い頭のハンターが持つ長い棒切れとデカい虫に高々とぶっ飛ばされた。
わあ、おそら、きれい。
青い空、白い雲、きらきらの太陽。うーん、これ、落ちるとき結構痛いやつ。
────ドズン。
うまいこと草むらの上に落ちて事なきを得た。ちょっと草むらがぺしゃんこになってるけど。ごめんな、全部あのハンターが悪いんだ。
何がしたかったのかは分からないが、追撃が無かったのは喜ばしいことだ。ハンターは俺をぶっ飛ばしたあと、地に落ちた俺には目もくれず、ワンコロに乗ったままどこかに走り去っていった。
頼むからそのまま帰ってくれ。
今度こそねぐらに引きこもろうと、俺はすごすごと目当ての木に足を向けた。
◇
なんと今日はちょっとしたご馳走がある。釣りをしていたハンターが残していった魚だ。
突如やって来たデカグマ(ハンターはアオだかアシラだかなんだか呼んでいた)のせいで、ハンターは釣りを中断せざるを得なかったらしい。
浅瀬で新鮮な魚がぴちぴちと跳ねている。普段は深いところにいて手が出せない金色の魚もいるじゃないか。やったあ。
ハンターとデカグマがいない今の内にいただきま
「すみません、それは納品に必要なので返して貰いますね」
……音も無く横からかっさらわれた。
え、今の今までいなかったよな? どこから現れた?
「あちらの崖のところから操虫棍で降りてきました。驚かせちゃいましたね。お詫びと言ってはなんですが、こちらの魚をどうぞ」
ハンターが手にしていたのは、たまにこいつらが食べている香ばしい匂いがする魚だった。美味そうに食べてるから気になってたんだよな。ほ、ほんとに食べていいの?
「まだ有りますし、遠慮する必要ないですよ」
やったー! いただきまーす!
こいつハンターのくせに良い奴じゃん。白いのと違ってこの黒いのは話の分かる奴!
……話の分かる……。
「姉さんに何かされたんですか? あとであんまり酷いことしないように言っておきますね。それでは私はこれにて」
にこにこした黒くてでかい奴は、もう一匹魚を置いてワンコロに乗って去って行った。
……あいつ、俺と会話してた……? 気のせい……?
と、とりあえず貰ったものはありがたくいただこう。カリカリした魚を咥え上げて、俺は寝床に戻ることにした。
◇
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