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雪貴
2024-07-12 00:36:07
1454文字
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RotR
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魚(うお)も揚がらずば灼かれまい
(R15)高杉と弊刀の高主♂
直接的な表現は無いですが致してるので注意
────横腹の比較的柔い皮膚に食い込む指先の感触に、意識が引き戻される。
無意識に閉じていた目蓋が反射的に開き、己を見下ろす端正な顔と目が合った。
普段の冷静な眼差しは何処へやら。黒曜の眼裏に灼熱の気焔を滾らせた男は、汗を含み顔に張り付いた髪を忌々しそうに搔き上げては、そんな間すら惜しいとばかりに腰を打ち付け荒い呼気を洩らしていた。
腹の中を滅茶苦茶にされるという、ともすれば本能的に嫌悪が勝るようなこの戯れも、今となっては組み敷いてくる男の手練手管によって厭わしいものとは遠い存在となっている。
とは言え、この男なら幾らでも柔らかで良き香りのする女を相手に出来るだろうにと、そう思わない日々は無い。
ほとんど衝動的に口走った告白を悔やむことは無いが、それに対して驚いたと言いつつも、俺もあんたが好きだと返した物好きな男──高杉は、大層女に好かれる質なのだ。
出逢った頃など、遊郭で宴会が催される度、皆が酒精に負けた頃合を見計らっては頬を染めて見詰める遊女に流し目を送り、静かに部屋を抜け出していた。
酔えぬ質ゆえに酔いどれた者達の世話を焼く羽目になることが多くあったため、後は任せたと言わんばかりに座敷から出て行く背中に、箸でも投げ付けてやろうかと、そう思ったことも少なくはない。
それだけ手馴れている男だと言うのに、こんな面白味も無い武骨な身体相手に、全身汗みずくで余裕の無い様を戦場以外で見せるのかと、そう思うことも常だった。
少しだけ取り戻した思考でそんな事を思い出していると、余所事を考えていたことを悟った高杉は、瞳にギヤマンのような重い光沢を載せ、僅かばかり口元を歪ませた。
ああ不味いと思っても、互いに急所を晒し合う中、こちらは特に分が悪い。
高杉は肩まで掲げた脚が汗で滑るのも意に介さず、そのまま腹と腹を合わせるように限界まで身を落としてくる。その圧迫感から逃げ出すために身を捩っても、腰骨をしかと掴んだ手の平はそれを許しはしなかった。
いつもはほんの少し冷えた高杉の指先も、今では灼けるような熱さを帯びている。
ふと、
魚
うお
は人肌に触れると火傷をするのだと、いつだか誰かに聞いたことを思い出した。
この男の熱を直に受け、皮膚が、肉が、
腸
はらわた
が、ずくずくと灼け爛れていくような感覚に、はて、今の己はまるで水揚げされた魚だったかと錯覚してしまう。
その熱さに溶かされてしまったのか、ほんの少し残っていた理性も、今では吹けば風で飛んで行きそうなほど微かなものと成り果てていた。
無理な体勢に軋む骨と、まるで雨のように胸や顔に降り注ぐ高杉の汗と、籠った空気と、意図せず漏れる己の声が、どこか遠くの出来事のように思えてくる。
己を侵食してはみるみる内に塗り潰していくこの強い情動をなんとかしたいのに、この男はそれすらも許さないとばかりに睨み付けては退路を断っていく。
せめて思考くらいは自由にさせてくれても良いだろうに、この男は心と身体を捧げてもなお物足りないと言うのか。
抑えられない程に弾む息と痙攣し始めた筋肉の収縮に、もはや限界も近いと互いに悟る。
「お前、は
……
強欲な、っ、奴だ
……
」
「っ
……
なんだ、今更知ったのか?」
────そんなことはとっくの昔に知っていると、そう音に出来たかは定かでない。
ただ高杉の、「あんたの総てを俺に寄越せ」という、脅迫とも懇願とも取れる言葉を耳朶に受け、心の中で白旗を振りながら緩りと頷いた。
終
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