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ねもとぬん
2024-07-11 21:22:57
7806文字
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HSR:ブトチュリ
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【ブトチュリ・ツイログまとめ】アベンチュリンの顔がいい話(7/30修正)
ブトチュリ民のフレンズがブトチュリの話が見たいと言っていたので出来心で書いたら想像より楽しくなって途中から小説っぽくしてしまった回
※ツイートをほぼコピペしただけなので自我が強いし全体的に粗い
※そも推敲をしていない すみません
7/30にまとめ漏れに気づいて修正し全体的に手直ししました
なるほどね では弊ーレイルの🔫がどの時空でも初対面での🦚のことを「キレイな面した男だな」と思っていたという話をですね
……
これは拙作長編以外の全ての弊ーレイル世界線に共通する話だと思ってほしいんですけど(長編は非常に特殊な設定で書いてるので)
そもそもはキャンパニーの幹部って印象もあって「つかみどころのない優男。何を考えているのか全く分からん」という印象の方が強かったわけなんですよね
ただまあエビキン人ってことは知ってたのと、弱味を見せてでも協力したがるってことはつまり
……
ということで一旦は復讐の仲間として受容するわけなんですよ。ここに関してのみ長編で書いてる回想とだいたい同じ流れ(🦚が弱味を見せてでも協力要請する→🔫が納得する)で共通している
で、まあ情報交換目的でキャンパニーの影響が薄い星系で会ったり、そのついでに食事したりいろいろ話をしたり協力して何かに取り組んだ結果として、「キャンパニーのいけ好かない優男」じゃなくて「抜け目のない策略家の優男」→「強かなヤツ」→「寝は家族想いで穏和。まぁいいヤツ」になる
性格の差異とかも許容してちょうどいいくらいの関係性を築けるようになったころに、ふっと「コイツ本当にいいツラしてるよな」と思うんですよね。昔は話のうまい結婚詐欺師か何かのように見えていた顔が今では屈託なく笑ったり、🔫の冗談で怒ったような素振りを見せたりとか
家族の話をするとちょっとだけ寂しそうだけど愛情に満ちた懐かしそうな顔をするところとか、本当に人間的な一面を🔫の前では見せてくるようになったんですよ
キレイな顔してるな、と思いつつも、🔫としては最近時々「他のヤツの前でもコイツはこういう顔すんのか?」というのが気になってきた
そして、そういうことが気になる時点で、🔫としてはかなり深みにハマってきていることを自覚している。自制することもこれまで通りに振る舞うことも簡単だし、もしも🦚に想い人がいるようなら全く友人として接することができる。
しかし、それはそれとして、非常に気になる。
ある日、話題が🦚の部下や🔫の知り合いのレンジャーの恋愛模様になったので、🔫は何気なく聞いてみた。
「アンタは? そういう話はねぇのか?」
「え?」
🦚は驚いた顔をした。手にしている冷えたカクテルグラスから水滴がテーブルに落ちた。
「そういう話って?」
「話の流れでわかんだろ、付き合ってる奴がいんのかって話だよ」
あえて軽い口調を装って聞いてみると、🦚は黙った。視線をテーブルに落とす。青と桃色のくっきりとした目が、薄い金色のまつ毛の下に何度か隠れる。
「い
……
」
🦚は緊張した面持ちで、口ごもった。
「いないよ」
「そうなのか?」
意外そうな様子の下に安堵を隠して、🔫は問うた。
「アンタの肩書きとツラなら選び放題だと思ってたぜ」
「はは
……
そんなことないさ。人種の問題もあるし、何より前科持ちの死刑囚はね」
「でも、誰からも誘われないわけじゃねぇだろ?」
「
……
」
🦚はちょっと眉間にしわを寄せて、カクテルグラスの液体を口に含んだ。ふう、と息を吐き出す。酒気により、うっすらと首まわりがべに色に染まる。
唇を離して、グラスを回す。質問に答えたくないというより、どう回答したらいいのか悩んでいる風体だった。
こういう時、彼からはキャンパニーの高級幹部としてのしなやかな印象が薄れる。筋張った指先、頭をやるせなく傾けた姿に、生身の男の苦悩が宿る。
彼の美貌は宝石に似ているが、こういう時だけは暗く鋭い色香を纏う。服装が普通の、しかし仕立てと質のいいスーツ姿なのも、またよくないと思う。
🔫は帽子の鍔を何気ない仕草で引き下ろした。どう考えても今の自分は目が光ってしまっている。彼の姿を目にして動揺していると知れてしまう。
絶対嘘だろ、モテないとか。
少なくとも今アンタの目の前にいるサイボーグカウボーイはめちゃくちゃアンタのこと誘いたがってるが。
🦚はもう一度グラスの液体を口に含んだ。そして少しだらけたような口調で話し始めた。
「まあ、お遊びというか、ワンナイトみたいな感じでなら、あるけど」
「ほら、ちゃんとあるじゃねぇか」
🔫はにんまりした口調を装いながら内心で頭を抱えた。
あるのかよ! 聞かなきゃよかった!
「
……
あのね、いくらなんでも流石に寝たりなんてしないよ。立場上ハニートラップだってあり得るわけだし、リスクが大きすぎる」
「ああ? なんだよ。つまんねえな」
よかった
……
よ、よかった
……
。🔫はほっとしてロックグラスをちびりと舐めた。
🔫がどうにか心を落ち着けてから🦚を見ると、🦚は酔いが回ったのか少し遠い目をしていた。
🔫に視線を戻すと、はあ、と息をつき、髪の毛に指を差し入れてうるさげに梳く。セットの崩れかけた髪が額にぱらぱらとかかる。
睨むような目で、🦚は問うた。
「君は?」
「ん?」
「君は? そういう経験、あったの?」
「あ、あー? あぁ
……
まあそうだな
……
」
🔫は再び視線を逸らさざるを得なかった。質問の内容というより、彼の恐ろしげな美貌の強い視線から目を逸らしたくなったというのが大きかった。
彼は時々こういう目をする。賭けをするとき、計画を立てるとき、怒りや復讐心を抱くとき、彼の目は青く燃える。
🍯人がもしも皆彼のような美貌を持っていたのだとしたら、嫉妬を受けるのも頷けると密かに🔫は思っていた。もちろん、🦚の前では決して口にしなかったし、一生そのつもりはないが。
「まぁ、あるっちゃある、が
……
」
「あるんだ」
「
……
ま、この身体になってからは、ちょっとマニアックな奴から誘われることの方が多いな。弄り回されんのもごめんだから、だいたい断ってるが」
「
……
そう」
というか。
「オレ、そういうことできねえんだよな。作り的に」
え、と彼が呟いた声音がした。🔫はロックグラスを置いて、あえて明るい口調を装った。
「ま、仕方ねえんだ。肉体的にも精神的にも、そういうのは弱点になっちまうからな。一人で生きて、一人で死ぬ。それでいいんだ。
……
ま、元々オレは生きてる人間とは言えねぇから、別にいいだろ。ぎゃははは!」
🦚はそれに答えなかった。ただ、もう一度何かを飲み干したような気配がした。その日、🦚は最後まで言葉少なだった。口数のかわりに飲酒量が増えた。そして、🔫がこれまでに見たこともないくらいには酔った。
🔫は彼を帰すことを諦めた。ちょうど今いる星には、🔫の拠点のうち一つが存在する。
幸いにして明日は休日だと聞いている。酔わせた責任を取らなければ。
なんとかアジトへ連れ帰り、彼の服を緩めて寝台に寝かせる。🔫は己に充電コードを繋いでから、彼に水を持って行ってやった。🦚は少しずつ酔いが醒めてきたらしく、起こすと目を開けた。
「起きたか」
「
……
ここ、どこ」
「オレのアジトだ。ま、仮住まいだけどな」
「すまない
……
迷惑をかけて」
「気にすんなと言いたいところだが、酒代だけはあとで払ってくれ」
「もちろん」
助け起こして水を飲んだ後、🦚は「体がベタベタする」と言ってシャワーに向かった。
🔫は可能な限り何も考えないようにして最低限の服(🔫は幸いにして変装用の服を数着持っていた)をシャワールームの外に置くと、彼がそろそろ上がる頃合いで作業台に向かい無心になるためにリボルバーと左手の点検を始めた。どちらも三回くらい点検を終わらせたあたりで、🦚は出てきた。
「やっぱり、君の服ってちょっと大きいんだね」
「
……
、そりゃあな」
今回渡したのは白いシャツと緩めのボトムスだったが、けっこう裾や袖が余っている感じがする。体格が全く違う。
「寝るならあっち使え」
🔫は寝台を示した。🦚は「あれ? 君は?」と訊ねる。
「あー
……
」
正直この状況で🦚と同衾した状態で眠ることはできそうもなかった。
「オレはメンテナンスをするからいい。一人でゆっくり寝てろ」
久々に全身を点検するいい機会だと思うことにした。
夜半、全身の点検が終わった🔫は、ふと小さくすすり泣くような声を手入れ後の聴覚センサーで捉える。立ち上がってそっと様子を見に向かうと、🦚が毛布をかぶって身体を丸めている。
どうしようか、と悩んだが、放っておくことなどとてもできそうになかった。
「おい」
可能な限り穏やかな声音で言う。
「入っていいか?」
弟や妹が多かったかつての🔫は、年長者として彼らの悩みを聞いてやることが多かった。しかし、何にでも首を突っ込んでやればいいというわけではない。家族だからこそ引くべき線がある。だから彼は、余程の緊急事態でもない限りは、家族の部屋に入る時も許可を取った。
🦚は、その問いに息を呑んだ。しばらく答えなかった。どうしたらいいのか迷うような沈黙のあと、もぞり、と布団の山が闇の中で動くのが見えた。彼がこちらを伺って、そして🔫が律義に答えを待っているのを見て、
「
……
いいよ」
なぜかその言葉は、許しというよりも諦念のように聞こえた。
🔫は🦚の枕元に静かに近寄ると、しゃがみ込んだ。
🦚は🔫を見上げた。その表情は虚ろで、かなしげだった。目の端が赤く染まり、頬には涙の痕があった。
「何があった」
やさしく問うと、彼は数度瞬きをして、また苦い顔をして唇を噛んだ。もう数滴の雫が、はたはたと落ちた。
今まで色んな顔を見た。🦚の笑顔も怒った顔も、家族を語って懐かしむ横顔も。けれど彼が泣いたところを、🔫は初めて見た。
慌ててもいたし、困ってもいた。泣き止んで欲しいとも思った。けれどそれ以上に、その場限りのことで対処して終わらせるべきではないと思った。
弟妹が増えたときも、🔫はそうやって物事に向き合ってきた。関係性とはそういうすり合わせによって生まれるものだし、🔫は🦚とそういうものを築きたかった。その表情の意味はなんなのか、なにを考えているのか、何をすると嬉しいのか、何をされると悲しいのか。
🦚はふてくされたような顔をしていた。
「
……
言わなきゃいけないのかい」
「いいや」
🔫は返した。
「無理に言わなくてもいい。オレに、何かできることはあるか?」
「
……
。」
🦚は息を吐き出して、シーツに涙を落とした。なんとか笑おうとして、そして失敗した。
「
……
ない。これは
……
僕の、個人的な問題で、僕が解決しなきゃいけないことで、君とは関係がないことだから」
「無関係だっつうんなら、話を聞くことはできると思うぜ」
「
……
僕は君にこの件について話したくない」
「そうか」
🔫は少し考えた。
こう見えて🦚はめっぽうプライドが高く、更に自責の傾向がある。あの📅とはまた違った方向で完璧主義のきらいがあるのだ。🔫といるときは多少気楽にやってくれているようだが、それでも自身の力不足を嘆いたり、歯を食いしばって耐えている様子が時々見て取れる。
今の🦚も、その問題を解決できない自分に対して腹を立てたり、ふてくされている様子だった。
もしかしたらこうして🔫に悟らせてしまったこと自体、不本意なのかもしれない。それでも🔫には彼のことを放っておくことなどできなかった。
ゆえに。
「じゃあ、もう訊かねえよ。で、代わりに聞きてえんだけどよ、オレがアンタのそばにいるのは、その『解決』に邪魔になるか?」
🦚は今度は、本当に困ったような目をした。
「
……
邪魔になる、って言ったら、どうなるの?」
「ま、明日まで向こうに戻るかな。今の話は全部なかったことになる」
「ならない、って言ったら?」
「明日までここにいる」
🦚は目を閉じた。その頬をまた、涙が伝った。この調子じゃ干からびちまうんじゃねぇかな、と🔫は少し心配になった。
再び開かれた目には、途方に暮れたような迷いがあった。これでいいのか、と葛藤しながらも、彼は🔫に答えを渡した。
「
……
ここにいて」
わかった、と🔫は答えた。
一緒に寝てくれていい、と言うので、🔫はありがたく寝台に上がった。彼は寝台のスペースを🔫のために詰めようと苦心しているようだった。
「こっちに頭載せろ」
己の腕に枕を乗せてクッションにしてやってから、🔫はそう誘った。
🦚は🔫の顔を見て、表情を固めた。枕を見て、もう一度顔を見て。
「えっと、でも」
「
……
? あ、ちっと枕高すぎるか。嫌か?
「あ、いや、そうじゃない」
そうじゃないけど
……
、と口の中で言ってから、🦚はようやっと決心した顔で「それじゃあ
……
ええと、お邪魔します」と言って頭を載せてきた。
🔫は🦚のつむじを見ながら、彼の肩までタオルケットを引き上げてやった。🦚はまた身体をもじつかせてちょうどいい姿勢を探っていたようだが、やがて落ち着いた。
「
……
君ってさあ」
🦚が呆れ声にも似た強がりを乗せて、言った。
「こういうの、誰にでも、するの?」
「流石にしねぇなぁ」
アンタだからやってんだよ。まあ、言わねえけどよ。
「あーっ
……
でもまあ、家族とはたまにやったな。特に弟がな
……
」
家族のことを思い出す。思い出せると確かめるために、噛んで含めるように言う。
「下から三番目の弟がなぁ、雷がな、怖いっつうんだよ。で、誰にも知られたくないんだと。だから、そういう時はこっそり一緒に寝てやってた」
「ふっ」
🦚の肩が震えた。🔫は口角を吊り上げる。
「しかもな、翌朝になるとオレのことを蹴り出しやがるんだよ。オレが雷が怖いっつって潜り込んできたとか言ってくるんだ。おまけに弟の方が語彙力があって口は上手かったから、マジでオレが雷が苦手なことになってよお、マジかよって思ったぜ」
「ふ、ふふっ
……
」
「な、マジかよって思うだろ」
「ふ、くくっ
……
ねえ」
「あ?」
🔫の目の前にある彼の頭が、もじりと動く。
「僕ってもしかして、君の弟に似てたりする?」
「
……
うーん、まあ、どうだろうな? そう、か
……
?」
はて、そうだろうか?
🔫は考えた。
……
確かに、🦚のことを知っていくうちに、弟のことを思い出したのは否めない。
全部が同じというわけではない。弟は黒髪で病弱だったし、🦚より遥かに痩せていた。🦚のように命を投げ出す酔狂もしなかった。
ただ、度胸があるのは事実だった。🔫や大人たちがいないタイミングで農場を襲ったならず者を、口八丁と手製の罠でハメた時の得意げな顔ときたら!
……
そのくせ泣き虫なところもあり、🔫の前では年下の甘えを覗かせたものだった。
己の前でだけはかわいいところを見せるけれど、図太い振る舞いもするし、賢い。考え方によっては、🦚と弟が似ている、というのは間違ってはいないだろう。
「
……
ふふ、そうなんだ」
そっかあ、と🦚は呟いた。
「それだったら、よかった。それなら、うん」
「んあ? 何だよ」
「
……
家族って、特別だろ?」
「ま、そうだな」
「僕は、姉さんのことを思い出すと、ほっとするし
……
うまく説明できないけど、僕、生きてるんだなって感じがするから」
君にとって、そういう存在であれるなら、それはすごく嬉しいことだよ。
🦚は絞り出すように、喜色を滲ませた。
🔫はどう答えるべきか迷った。この言葉は、純粋な本心だと思った。蛹を脱いだ後の柔らかく白い成虫のような言葉をどう傷つけずに済むか、🔫にはわからなかった。
だから、片手を持ち上げて、目の前の髪の毛にゆっくりと指を差し入れて撫でるだけに留めた。
「なぁ」
🔫は言った。
「アンタが嫌じゃなければ、また、ここに来てくれるか?」
「
……
どうして?」
「グランニスタ-Ⅴは工場と建造物から出るスモッグのせいで、天候が安定してねえだろ?」
「
……
それが?」
「天気予報が当てにならねぇから、急に雷雨になっちまったりする。雷が落ちると、オレの充電ケーブルが超スパイシーな導火線みてぇなことになっちまう」
つまりだな。🔫は堂々と言い切った。
「雷が怖ぇから来てほしい」
「
……
ふふっ」
今度こそ本当に🦚は笑った。🔫にも、それが伝わった。
「
……
そういうことなら、仕方ないね。また時間に余裕がある時にでも来るよ」
「ああ、アンタが来たいときだけ来りゃそれでいい。どうせ誰にもこんなこと教えられやしねぇんだからな」
「僕だって」
僕だって。
🦚はそれだけ言って、言葉を切った。🔫はそれを追求しなかった。
訊かないと言った。余計なことも、言いたくないことも、飲み下せない感情のことも。
🔫はその約束を守る。他でもない🦚の心を尊重して、いつか己に秘密を許してくれることを待っている。
……
🦚には言わなかったが、🔫はもう既に、家族の面影の多くを忘却しかけている。
最初に、声を忘れた。ささやかな仕草を忘れた。思い出の一部が滑り落ちていった。これは改造の結果ではなく人として当然のことだと、飲み下すのにはずいぶんな時間を要した。
もう、何かきっかけでもなければ浮かんでこないような思い出が🔫の脳チップの中にはたくさん眠っている。
弟に蹴り出されていたことも、彼が雷を嫌がっていたことも、さっき話してやっと「ああ、確かにそういうこともあったな」と実感を抱くことができた。
だから、そういうことを取りとめもなく話せる🦚との時間は、そんな思い出を柔らかく受け止めて笑う🦚の🔫に存在は、🔫にとってある種の救いだった。
『でも、一つだけさ、覚えてるんだよね』
🦚はある日、目をすがめて呟いた。
『姉さんの笑顔だけは、ぼんやりとだけど、覚えてるんだよ。君はどう?』
🔫は、🦚に悟られないようにゆっくりと思考を巡らせて、そしてぱちぱちと目を瞬いた。
思い出せた。
両親の笑顔。娘がギターを弾いて笑った顔。弟の得意げな顔。
🔫は、家族と友人たち全員のそんな顔を頭の中で確認してから、黙って🦚を見た。
『どうしたの、🔫? ぼうっとして』
それで、🔫はやっと、自分が今は生きた人間ではなく、涙を流せない鋼鉄なのだと思い出したのだった。
🦚は生きている人間だ。
🔫の目の前で、屈託なく笑うし、怒るし、睨んだり、苛立ったりする。
どんな表情を浮かべていても、彼はきれいだった。🔫は彼のそんな生ける変化を見る度に彼を構い倒したくなった。
覚えていたかった。脳チップの奥の、笑顔だけの存在になってほしくなかった。
だから、泣いていてもいい。生きていてさえくれれば。助けを求めてくれるまでは、🔫は彼のそばにいる。彼のその涙を、ただ見ている。
いずれ二人は地獄への道を歩むことになるだろう。だからこその縁で、絆だった。けれど、行く先が同じだろうと、できることはきっとある。
あるんだ、きっと。
例えば、アンタが生きようって思えるようにするとかな。
眠ってしまった🦚の顔を見下ろして、🔫はそっとそのまなじりを拭った。
少しやつれたような顔つきの🦚はやはり脳チップに刻んだ過去のどれとも遜色ないくらいの美しさに見えて、ああ、やっぱりオレはこいつの顔を誰にも知られたくない、死ぬときはオレの脳チップがきっちり破壊されてくれますように、なんてことを願った。
<END>
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